Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

思春期なのよ

2009/11/09 17:33:56
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―――紅い館の悪魔の妹は狂気にとりつかれている。



誰が言い出したかは知らないが、誰もが聞いたことのあるその噂。人里に住む者すら知っているこの噂を、当の館に住む者が知らない筈は無かった。

見目幼き吸血鬼が主として君臨する紅魔館。その地下にある主の妹、フランドール・スカーレットの部屋の前で、二匹の妖精メイドが声を潜めて会話していた。

「ねぇねぇどうしよう。私、妹様の部屋に来るのなんて初めてなんだけどっ!?緊張してきちゃったんだけどっ!!?」
「私だって初めてよ妹様のおやつ係に決まった瞬間からガチガチよ」

この二匹の妖精はどうやら本日のおやつ係、つまり「フランドールへおやつを届ける係」に当たってしまったようだ。それ故、片やティーセットを、片や一切れのケーキを、それぞれトレーに載せて抱えている。もちろん完璧で瀟洒なメイドのお手製である。

恐ろしい噂に妖精ながら震え上がる二匹だが、まず自分たちがいる紅魔館自体が十分恐怖の対象である事にはノータッチである。

「ま、まずは様子を見てみましょう」
「そうしましょう」

重々しい扉を慎重に少しだけ開けた二匹は、そっと中を覗き込んだ。
部屋の中にはほんの少しだけ明かりが点いており、ベッドに腰かける一つの人影がぼんやりと見えた。
その姿はパッと見は普通の少女のようだが、両脇に伸びる奇妙な形の羽がやはりただの人間や妖精などではないことを示していた。

「あれだ」
「はっきりとは見えないけど、やっぱりなんとなくレミリア様と似てるかも」
「うん。・・・あれ、何か言ってる?」

二人は部屋の中から聞こえてくる声に耳を澄ませた。

「どうですか、フランドール様?私が育てた花たちは・・・そんなことわざわざ訊くの?こんなに美しい美鈴が丹精込めて育てた花なんだから、綺麗なのは当たり前でしょ?・・・そんなっ、フランドール様ったら・・・恥ずかしがらないでよ美鈴、襲いたくなっちゃう・・・・・・ふ、ふふ、うふふふふ!」

一人で演劇を繰り広げながら自分を抱き締めるフランドールの姿に、二匹は戦慄した。

「美鈴、愛してる・・・私もです!・・・・・・そんでもってキスしてそれからあーしてこーしてこーやってぇっ!・・・うくっ、くくくくっくっ、くふ、くふくふっ・・・なーんて」
『気 が 狂 っ と る !!』

とんでもなく一人よがりな妄想の現場を見てしまった妖精メイドたちは、思わず叫んでしまった。その声は確実にフランドールの耳に届き、

「・・・見たわね?」
『あ』

目の前には真っ赤な顔のフランドール。その赤さは羞恥か怒りか、スカーレットの名を表すものか。
当然気付かれた妖精メイドたちは、慌てて

「い、いい、妹様、お紅茶をお持ちしました!」
「おケーキをお持ちしました!」

フランドールは差し出されたケーキを無言で鷲掴み、一気に口に押し込んだ。そのまま紅茶をポットの口から直接飲み、これまた一気に押し流す。そしてニヤリとした笑みを浮かべると、

「じゃあ、食後の運動ね」

二匹は悪魔の妹の恐ろしさを身を以って知る事となる。



数時間後、紅魔館門前では門番妖精たちがお喋りをしていた。

「妹様ったらまた暴れたらしいわよ」
「やっぱ情緒不安定なのかなぁ」
「そんな事無いわよ」

その会話に入ってきたのは、緑の服を着た紅髪の女性、紅美鈴。

「あ、門番長」
「『そんな事無い』っと仰られても、実際にさっき暴れたばっかりですよ?」
「フランドール様は理由も無く暴れたりはしないわ。私は昔からお世話させてもらってて、今でもよく一緒に遊ぶけど、ずっと良い子でいらっしゃるし。被害に遭った妖精たちも皆『自分たちが勝手に妹様の部屋を覗いたせいだ』って言ってたから、要はただの凄い恥ずかしがり屋さんなのよ!」
『へぇ~そうだったんですか~』



紅い館の悪魔の妹は狂気にとりつかれている―――嘘ではない。
制御不能の愛は狂気と呼べなくも無い。そんな話。


初めまして、初投稿です。ここでたくさんの方々の色んな作品を読んでいると、やはり自分も書いてみたくなってしまいまして。衝動のままに、自分の脳内に湧き上がるイメージを書かせて頂きました。
これからもまた投稿させて頂くかもしれませんので、どうぞよろしくお願いします。
ずわいがに
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ナイス一人芝居w
しかしもうちょっと書き込んでくれた方が嬉しかったかも
2.名前が無い程度の能力削除
なんともまあ可愛らしい狂い方なんだろうか。
十二分に面白い話ですが、もう一ネタほしいです。
3.名前が無い程度の能力削除
きがくるっとるwwwそりゃそう言いたくもなるわwww
4.名前が無い程度の能力削除
怖いよフランw
気づけよ美鈴w
5.名前が無い程度の能力削除
その発想はあんまりなかった!
これはいいもんだ
6.名前が無い程度の能力削除
メイフラはおれの希望の虹!
7.名前が無い程度の能力削除
ユニークな方向性の狂気w