「……おや? ご主人様じゃないか」
聖から頼まれたことを終わらせ、彼女の部屋に訪れた私を待ち受けていたのは、私の主で、毘沙門天の代理でもある寅丸星であった。
普段はその役職の所為でもあるのだろうが、非常に真面目で引き締まった表情を浮かべているはずの彼女が、どうしたことだろうか、頬は緩み切り、鼻の下は伸びきった、そんな表情を浮かべている。
この表情の原因は分かっている。私の前にいる――――――
「あら……ナズーリンどうかしたの?」
菩薩の如き笑みを浮かべる聖白蓮、彼女の所為である。
誰にでも優しく、そして、甘い。
そんな彼女を、この命蓮寺の面々は心から慕っている。
特にこのご主人様の慕いっぷりといったら、我々の中でも群を抜いている。もはや敬慕を超えて恋慕になっていやしないだろうか、と私は毘沙門天に報告すべきかを迷った。
そんな私の不審な様子に気づいてか、聖は心配するような声色で私に尋ねた。
「……そんなに考え込んで、何か問題でもあったのかしら?」
「いや……そういうわけではないんだ。ああ、聖が気にすることではない、それよりも君の頼み事についてなんだが」
「あら、そういえばそんな頼み事をしていたわね……星、ごめんなさい少し席を外してもらえる?」
「――――ふぇ!? ど、どうしてですか?」
「気が利かないねご主人様、黙って席を外すべきだと私は思うよ」
「ナズーリン! 貴女まで私を蔑ろにするつもりですか!」
語気を荒げ、興奮した星は隠していた耳と尻尾を出してしまった。
しかし、少し席を外すというだけのことで、これ程まで我を忘れるなんて…やはり先程の憶測は現実のものになっているんじゃないのか?
私は笑みを浮かべながらも、嫌な汗が流れ落ちるのを感じざるを得なかった。
ひとまず、こんな状態になったご主人様を止められるのは1名しかいない。
私は縋る思いで、隣で困った顔をしていた聖に視線を送った。その視線に気づいた聖は、宥めるように星に話しかけた。
「ねぇ星……別に私は星を仲間外れにしようとか、そういう思いで言っているのではないのよ?」
「で……では、どうして私に席を外せとおっしゃるのです!?」
「それは…そうね…」
聖は先程私がやったように、視線を私に向けてきた。
あれ、どうして私を見るんだ? いやいや、そんな困ったような表情で見られても私にはご主人様を説得することなんてできやしないって……だから、そんな目で見ないでくれ……
流石に聖の視線から逃げることもできず、気付いた時にはすでに私は口を開いていた。
「……ご主人様、誰にも隠したいことの一つや二つあるものだよ。聖だって例外じゃない、そう、ご主人様が私に内緒の頼み事をしたようにね」
「……内緒の頼み事って、星、何を頼んだの?」
「えっ――――!? それは……内緒です」
「ほら、ご主人様にもあったろう? だから、聖のために席を外して……いや、そんな目をしても私には意味がないって言っているだろう…?」
うるうる、とまるで自分が捨てられるのではないか、というような瞳で私を見るご主人様、どこからともなく、「どうする~?」、という音楽も聞こえてきそうだ。
それに釣られてか聖もまた、どうしましょう、といったような表情で私に視線を送ってくる――――いやいや、君が席を外してくれって言ったんじゃないのか?
私は悩みに悩みぬいた結果、
「……わかったよご主人様、部屋の隅に居るといい…聖、耳打ちで済ませるから、それでいいね?」
「ごめんなさいナズーリン、私が頼んだことなのにね…」
「……いや、聖が悪いわけではないから気にすることはないよ……うん、本当に」
「では、私は部屋の隅に行けばいいんですね」
言われた通り部屋の隅で三角座りをし始めるご主人様。
その姿を、何故だか見たくない私は背を向けて聖の耳元に口を近づける。
が、
「―――――ひゃぅ!」
「ああ、すまない、耳が弱いのかい?」
「……ごめんなさい…でも、私が引き起こしたことなんだから我慢します」
「すまないね、なるべく早くに終わらせる」
聖のためにも早く済ませよう、そう思った私は出来る限り息を吹きかけないよう注意して声を出したのだが。
私の言葉と同時に発せられる息が耳に触れ、その度にぷるぷると震え出す聖。
次第に顔を赤らめて、終わりが来るのはまだかまだかというように、拳を握りしめ、瞼を固く閉じてしまった。
申し訳のない気持ちで一杯の私は、そもそもご主人様が出ていけばこんなことにならなかったのに、と思いながらも報告を続けていた。
そして、それは突然訪れた。
「―――――――うわっ!?」
私は横から強い衝撃を受けたことを感じた。
突き飛ばされた、ということに気付いたのは自分の体が床に叩きつけられてからである。
やや遅れてから鈍い痛みが、床にぶつかった部位に走る。
私は顔をしかめながらも、私を突き飛ばした犯人を見た。そして唖然とした。
私を突き飛ばしたのは、
「……どうしてご主人様に私が突き飛ばされなきゃいけないんだい?」
「ナズーリン! 大丈夫なの!?」
「大丈夫……だと言っておこうかな……痛いけど」
「……星っ! どうしてこんなことをするの!? ナズーリンは貴女の部下で仲間じゃないの!」
「…………です……」
「ご主人様……一応、言い訳は聞きますよ」
「……ナズーリンが! 聖を虐めてたからですよっ!!」
時間が、止まってしまった。
目を丸くする私たち、対するご主人様は息が荒く、顔が真っ赤に染まっている。
ああ、そういうことか…
全てに合点がいった私は、埃を払いながら立ち上がった。――――ご主人様はまったく…もう付き合ってられないよ。
「……もういいよ聖、問題はなかった、報告は以上だ。色々と疲れたからこれで戻らせてもらうよ、私のことは気にしなくてもいい、ご主人様を頼んだ」
「――――え?」
聖が何かを言う前に、邪魔者は退散せよ、とばかりに私は部屋を出た。
▼
気まずい空気が流れる聖の私室。
聖は茫然とナズーリンが出て行った扉を眺め、星は座って俯いたまま動かない。
ただ、時間だけが息苦しいほどにゆっくりと過ぎてゆく。
この状況を先に動かしたのは聖だった。
「……ねぇ星、どうしてあんなことをしたの?」
「そ…それは、聖が虐められていると思ったので…」
「ナズーリンがそんなことをする娘に見えるの?」
「……すいませんでした」
「私に謝るよりもまず、ナズーリンに謝るべきですよ」
「……はい」
「それで、本当はどういうつもりだったの?」
「……それは……その……」
「本当のことを言うまで許しません」
普段穏やかな聖が見せた厳しい表情に、星は、本当に聖が怒っているのだ、と実感した。
そして、観念したように星は呟く。
「……だって、私を部屋の隅に追いやって、二人で楽しそうにしてたじゃないですか……」
「……………はい?」
「先程も、私に内緒話とか……聖は耳が弱いなんて私初めて知りましたし……」
「……それだけなの?」
「それだけですよ……」
しゅんとした星は、言うことはすべて言った、とばかりに再び膝に顔をうずめる。
その様子が愛おしく、かつ面白く見えた聖は思わずお腹を抱えて笑いだす。
星が不審な目で見てくるが、聖はそんなことお構いなしに笑い続ける。
「な……なんで笑うんですか!」
「だ、だって、星がそんな可愛らしいことを言うなんて、思っていなかったもの……」
「可愛らしいって……」
「ふふっ、正直に話してくれてありがとう星」
「もういいですよ……それより、何の報告だったんですか?」
「それは内緒」
「……もういいですよ、聖のことですから、決して悪いことではないでしょうしね」
「分かってもらえて嬉しいわ」
「いえ、私がいけなかったんです、聖のことを信用しなければならないのに、疑ってしまって……」
「星に信頼してもらえるなんて、解放された甲斐があります」
聖は非常に嬉しそうな表情で星に笑いかける。
その笑顔を直で見てしまった星は、今まで必死で抑えてきた理性のタガが外れてしまった。
星は聖の肩をつかむと、そのまま床に押し倒す。
反応の遅れた聖はされるがままに床に組み敷かれ、気付いた時には星に馬乗りにされていたのだった。
星の尋常ではないギラギラした目つきと、自分の直感から、自らの置かれた状況が危険であることを察知する聖は、宥めるように星に話しかけた。
「星……な、何をしようとしているのかしら?」
「……………」
「お、落ち着きなさい、星! 今ならまだ戻れるから!! 絶対に怒らないから!!」
「………………」
「話を聞いて! ちょっ! 近い、近いわ、星……らめぇえええええええええええっ!!!」
▼
遠くから悲鳴が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
…そう思いつつも、私が危惧したことが現実になっていないことを切に願う。
「どうかした、ナズーリン?」
「ん? いや何でもないよ一輪」
「そうか……珍しく貴方が上の空だったから気になっただけなんだ」
「心配をかけてすまない……と、一ついいかい、単純な質問なんだが」
「ん? なんだい?」
「ああ、もし、もしもの話だが、聖が誰かに襲われたとする……一輪、君ならどうする?」
「姐さんが襲われる!? ……冗談にしては面白くないわね」
「まぁ与太話でもあるまい、前例もあることだし」
「そうね……あながち冗談にならないこともありえる、ということね」
「(むしろ手遅れかもしれないけどね……)」
「でも、そんな状況で、私にできることなんて一つしかないじゃない」
「それは……一体?」
「問答無用で雲山の拳骨よ?」
「……ははは、そうか、そうだね……」
「どうかしたのか? 今日の貴方は少々おかしい気がするが」
「いや……気にすることはない……もしもの時は頼んだよ」
「…………?」
翌日会ったご主人様の全身に、無数の擦り傷や痣があったのはきっと気のせいだろう。
聖から頼まれたことを終わらせ、彼女の部屋に訪れた私を待ち受けていたのは、私の主で、毘沙門天の代理でもある寅丸星であった。
普段はその役職の所為でもあるのだろうが、非常に真面目で引き締まった表情を浮かべているはずの彼女が、どうしたことだろうか、頬は緩み切り、鼻の下は伸びきった、そんな表情を浮かべている。
この表情の原因は分かっている。私の前にいる――――――
「あら……ナズーリンどうかしたの?」
菩薩の如き笑みを浮かべる聖白蓮、彼女の所為である。
誰にでも優しく、そして、甘い。
そんな彼女を、この命蓮寺の面々は心から慕っている。
特にこのご主人様の慕いっぷりといったら、我々の中でも群を抜いている。もはや敬慕を超えて恋慕になっていやしないだろうか、と私は毘沙門天に報告すべきかを迷った。
そんな私の不審な様子に気づいてか、聖は心配するような声色で私に尋ねた。
「……そんなに考え込んで、何か問題でもあったのかしら?」
「いや……そういうわけではないんだ。ああ、聖が気にすることではない、それよりも君の頼み事についてなんだが」
「あら、そういえばそんな頼み事をしていたわね……星、ごめんなさい少し席を外してもらえる?」
「――――ふぇ!? ど、どうしてですか?」
「気が利かないねご主人様、黙って席を外すべきだと私は思うよ」
「ナズーリン! 貴女まで私を蔑ろにするつもりですか!」
語気を荒げ、興奮した星は隠していた耳と尻尾を出してしまった。
しかし、少し席を外すというだけのことで、これ程まで我を忘れるなんて…やはり先程の憶測は現実のものになっているんじゃないのか?
私は笑みを浮かべながらも、嫌な汗が流れ落ちるのを感じざるを得なかった。
ひとまず、こんな状態になったご主人様を止められるのは1名しかいない。
私は縋る思いで、隣で困った顔をしていた聖に視線を送った。その視線に気づいた聖は、宥めるように星に話しかけた。
「ねぇ星……別に私は星を仲間外れにしようとか、そういう思いで言っているのではないのよ?」
「で……では、どうして私に席を外せとおっしゃるのです!?」
「それは…そうね…」
聖は先程私がやったように、視線を私に向けてきた。
あれ、どうして私を見るんだ? いやいや、そんな困ったような表情で見られても私にはご主人様を説得することなんてできやしないって……だから、そんな目で見ないでくれ……
流石に聖の視線から逃げることもできず、気付いた時にはすでに私は口を開いていた。
「……ご主人様、誰にも隠したいことの一つや二つあるものだよ。聖だって例外じゃない、そう、ご主人様が私に内緒の頼み事をしたようにね」
「……内緒の頼み事って、星、何を頼んだの?」
「えっ――――!? それは……内緒です」
「ほら、ご主人様にもあったろう? だから、聖のために席を外して……いや、そんな目をしても私には意味がないって言っているだろう…?」
うるうる、とまるで自分が捨てられるのではないか、というような瞳で私を見るご主人様、どこからともなく、「どうする~?」、という音楽も聞こえてきそうだ。
それに釣られてか聖もまた、どうしましょう、といったような表情で私に視線を送ってくる――――いやいや、君が席を外してくれって言ったんじゃないのか?
私は悩みに悩みぬいた結果、
「……わかったよご主人様、部屋の隅に居るといい…聖、耳打ちで済ませるから、それでいいね?」
「ごめんなさいナズーリン、私が頼んだことなのにね…」
「……いや、聖が悪いわけではないから気にすることはないよ……うん、本当に」
「では、私は部屋の隅に行けばいいんですね」
言われた通り部屋の隅で三角座りをし始めるご主人様。
その姿を、何故だか見たくない私は背を向けて聖の耳元に口を近づける。
が、
「―――――ひゃぅ!」
「ああ、すまない、耳が弱いのかい?」
「……ごめんなさい…でも、私が引き起こしたことなんだから我慢します」
「すまないね、なるべく早くに終わらせる」
聖のためにも早く済ませよう、そう思った私は出来る限り息を吹きかけないよう注意して声を出したのだが。
私の言葉と同時に発せられる息が耳に触れ、その度にぷるぷると震え出す聖。
次第に顔を赤らめて、終わりが来るのはまだかまだかというように、拳を握りしめ、瞼を固く閉じてしまった。
申し訳のない気持ちで一杯の私は、そもそもご主人様が出ていけばこんなことにならなかったのに、と思いながらも報告を続けていた。
そして、それは突然訪れた。
「―――――――うわっ!?」
私は横から強い衝撃を受けたことを感じた。
突き飛ばされた、ということに気付いたのは自分の体が床に叩きつけられてからである。
やや遅れてから鈍い痛みが、床にぶつかった部位に走る。
私は顔をしかめながらも、私を突き飛ばした犯人を見た。そして唖然とした。
私を突き飛ばしたのは、
「……どうしてご主人様に私が突き飛ばされなきゃいけないんだい?」
「ナズーリン! 大丈夫なの!?」
「大丈夫……だと言っておこうかな……痛いけど」
「……星っ! どうしてこんなことをするの!? ナズーリンは貴女の部下で仲間じゃないの!」
「…………です……」
「ご主人様……一応、言い訳は聞きますよ」
「……ナズーリンが! 聖を虐めてたからですよっ!!」
時間が、止まってしまった。
目を丸くする私たち、対するご主人様は息が荒く、顔が真っ赤に染まっている。
ああ、そういうことか…
全てに合点がいった私は、埃を払いながら立ち上がった。――――ご主人様はまったく…もう付き合ってられないよ。
「……もういいよ聖、問題はなかった、報告は以上だ。色々と疲れたからこれで戻らせてもらうよ、私のことは気にしなくてもいい、ご主人様を頼んだ」
「――――え?」
聖が何かを言う前に、邪魔者は退散せよ、とばかりに私は部屋を出た。
▼
気まずい空気が流れる聖の私室。
聖は茫然とナズーリンが出て行った扉を眺め、星は座って俯いたまま動かない。
ただ、時間だけが息苦しいほどにゆっくりと過ぎてゆく。
この状況を先に動かしたのは聖だった。
「……ねぇ星、どうしてあんなことをしたの?」
「そ…それは、聖が虐められていると思ったので…」
「ナズーリンがそんなことをする娘に見えるの?」
「……すいませんでした」
「私に謝るよりもまず、ナズーリンに謝るべきですよ」
「……はい」
「それで、本当はどういうつもりだったの?」
「……それは……その……」
「本当のことを言うまで許しません」
普段穏やかな聖が見せた厳しい表情に、星は、本当に聖が怒っているのだ、と実感した。
そして、観念したように星は呟く。
「……だって、私を部屋の隅に追いやって、二人で楽しそうにしてたじゃないですか……」
「……………はい?」
「先程も、私に内緒話とか……聖は耳が弱いなんて私初めて知りましたし……」
「……それだけなの?」
「それだけですよ……」
しゅんとした星は、言うことはすべて言った、とばかりに再び膝に顔をうずめる。
その様子が愛おしく、かつ面白く見えた聖は思わずお腹を抱えて笑いだす。
星が不審な目で見てくるが、聖はそんなことお構いなしに笑い続ける。
「な……なんで笑うんですか!」
「だ、だって、星がそんな可愛らしいことを言うなんて、思っていなかったもの……」
「可愛らしいって……」
「ふふっ、正直に話してくれてありがとう星」
「もういいですよ……それより、何の報告だったんですか?」
「それは内緒」
「……もういいですよ、聖のことですから、決して悪いことではないでしょうしね」
「分かってもらえて嬉しいわ」
「いえ、私がいけなかったんです、聖のことを信用しなければならないのに、疑ってしまって……」
「星に信頼してもらえるなんて、解放された甲斐があります」
聖は非常に嬉しそうな表情で星に笑いかける。
その笑顔を直で見てしまった星は、今まで必死で抑えてきた理性のタガが外れてしまった。
星は聖の肩をつかむと、そのまま床に押し倒す。
反応の遅れた聖はされるがままに床に組み敷かれ、気付いた時には星に馬乗りにされていたのだった。
星の尋常ではないギラギラした目つきと、自分の直感から、自らの置かれた状況が危険であることを察知する聖は、宥めるように星に話しかけた。
「星……な、何をしようとしているのかしら?」
「……………」
「お、落ち着きなさい、星! 今ならまだ戻れるから!! 絶対に怒らないから!!」
「………………」
「話を聞いて! ちょっ! 近い、近いわ、星……らめぇえええええええええええっ!!!」
▼
遠くから悲鳴が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
…そう思いつつも、私が危惧したことが現実になっていないことを切に願う。
「どうかした、ナズーリン?」
「ん? いや何でもないよ一輪」
「そうか……珍しく貴方が上の空だったから気になっただけなんだ」
「心配をかけてすまない……と、一ついいかい、単純な質問なんだが」
「ん? なんだい?」
「ああ、もし、もしもの話だが、聖が誰かに襲われたとする……一輪、君ならどうする?」
「姐さんが襲われる!? ……冗談にしては面白くないわね」
「まぁ与太話でもあるまい、前例もあることだし」
「そうね……あながち冗談にならないこともありえる、ということね」
「(むしろ手遅れかもしれないけどね……)」
「でも、そんな状況で、私にできることなんて一つしかないじゃない」
「それは……一体?」
「問答無用で雲山の拳骨よ?」
「……ははは、そうか、そうだね……」
「どうかしたのか? 今日の貴方は少々おかしい気がするが」
「いや……気にすることはない……もしもの時は頼んだよ」
「…………?」
翌日会ったご主人様の全身に、無数の擦り傷や痣があったのはきっと気のせいだろう。
白星は珍しい…
しかし、星さんは可愛い。
つまり白蓮さん専用