「おぉ寒い寒い」
「何であんたが居るのよ」
霊夢が朝起きると、レティが居た。
居間に居た。
こたつでぬくぬくしていた。
「いやぁ、寒くてね。ほら、今年は一段と冷えるじゃない」
「あんた、冬の妖怪だろうが」
「実は冷え症なのよ。冬は好きなんだけどね。いつも10枚は重ね着してるわ」
自然な動作で、こたつの上にある蜜柑に手を伸ばすレティ。
だが、霊夢はその手に、70kgと書かれている陰陽玉を出現させて、落とす。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
「何勝手に人の家の物食べようとしてるのよ!」
「みぃぃぃぃぃかぁぁぁぁぁんぅぅぅぅぅ!」
「怖っ!? あんたの蜜柑に対する執念怖っ!?」
唸りながらも、蜜柑へと手を伸ばす。
レティの手は死んでいたが、その瞳は、蜜柑を捉えた美しい瞳は、死んでいなかった。
「右手が潰されても左手があるわ!」
左手を伸ばす。
こたつで蜜柑を食べるという、冬最大の贅沢をするために。
しかし、それを簡単に許す博麗の巫女では無い。
「させるかぁ!」
針が左手を襲う。
が、レティは既に死んでいる右手を使ってそれを防ぐ。
もはや痛みを感じない右手を、犠牲にしたのだ。
無駄に格好良い笑みを浮かべるレティ。
「使えない手は、せめてこうやって役立てるしかない」
「やるわね」
霊夢が本格的に戦闘体勢に入る。
それを見たレティも、こたつからゆっくりと出る。無駄に色っぽく、出た。そして、構える。
「あんたは既に右手が使えない。素直に退いた方が身のためじゃない?」
「ふふ、果たしてそれはどうかしら。私は今までこたつに入って暖まっていたわ。つまり、こたつパワーが充分にある」
レティの左手が、真っ白に染まる。
真っ白いのに、何故か電気みたいにバチバチ音を立てている。
恐らくはこたつパワーだろう。
「ふふ、甘いわね。私はさっきまで寝ていたのよ」
「それが何よ?」
「鈍いわねぇ。何処で寝ていたと思う?」
「そんなもの布団に決まって……まさか!?」
レティは、気付く。
冬にパワーを得られるものは、こたつだけではないということに。
「そう、冬の布団ほど、ぬくぬくとしているものは無いわ! 私には布団パワーがある!」
霊夢を囲むようにして、五つの陰陽玉が宙に浮いている。
ちなみにこの陰陽玉、七つ集めると願いが一つだけ叶うとか叶わないとか言われているが、今はどうでもいい。
布団パワーとこたつパワー。
まさに、戦争と言っても過言では無いだろう。いや、やっぱり過言である。
「退くなら今よ?」
「ふふ、退かないわ。私がここで退いたら、こたつを愛する会会長の四季映姫さんに怒られちゃうもの」
こたつを愛する会会長の四季映姫主演映画、『ジャングルはいつもヤマザナドゥ』近日公開予定。
「いくわよ! 夢想封印!」
「なんの! コールドスナップ!」
激しい攻撃がぶつかり合う。
互いに負けられない戦いだった。
こたつと布団、どちらも退くわけにはいかないのだ。
「くぅ……んっ」
「ぁ、つぅ……」
もう限界だった。
我慢が、出来なかった。
「うぁぁぁぁぁ!」
「くぁ、っ……!」
互いに攻撃を止めて、同時に蜜柑の山へと手を伸ばした。
こんな馬鹿な争いをしているよりも、二人仲良く蜜柑を食べていた方が良いということが、分かったのだ。そう、仲良くするのが一番なのだ。
というか、蜜柑が食べたくて食べたくて、攻撃を持続出来なかった。
「やっぱり布団もこたつも最高よね」
「そして蜜柑も」
「あれ、あんた右手潰れて無かった? 何で蜜柑の皮剥けるのよ?」
「いや、妖怪だから。回復速いのよ」
「速すぎでしょ」
はむはむっと、蜜柑を口に含む二人。
さっきまで争っていた二人とは、到底思えなかった。
蜜柑を食べて、ほわぁっと笑顔になる。
「おこたに入りましょう」
「そうね」
もうナチュラルにレティは溶け込んでいた。
二人で、こたつに入りながら仲良く蜜柑を食べる。
「はむはむ」
「もくもく」
「美味しい」
「美味しいわね」
どんどんと蜜柑を食べていく。
それを繰り返すうちに、いつの間にか蜜柑が残り一つになった。
「みぃぃぃぃぃかぁぁぁぁぁんぅぅぅぅぅ!」
「うぉぉぉぉぉぉ! 誰がやるかぁぁぁ!」
また、争いが、始まった。
早くジャングルはいつもヤマザナドゥを書く作業に戻るんだ。
あ、あと映画の公開予定はいつですか?
うん、なんていうか今日も平和だね
内容が想像出来ない!
「これ、土偶ですか?」か「ジャングルはいつもヤマザナドゥ」のどちらかを……
え、えーと…くろまくみこ!くろまくみこ!
みかん…買いにいかなきゃ…
とりあえず「これ、土偶ですか?」ひとつもらおうか。
『ぽんかーん』みたいなものは感じた
なるほど、小町がわがままな四季様に付き合うという物語ですね。