「小傘さん、今日はうちに泊まっていきませんか?」
時刻はすでに夕刻。あと一刻ほどで夜になろうかという時間帯。
彼女、東風谷早苗は帰宅しようとしていたからかさお化けの多々良小傘にそう言葉を投げかけていた。
反応はみな様々。当の小傘はキョトンとした顔で小首をかしげ、夕飯中だった八坂神奈子はガチャンと食器を取り落とし、洩矢諏訪子は開いた口と鼻から味噌汁を垂れ流した。
「え、でも……迷惑じゃないかな?」
「ふふ、そんなことありませんよ。小傘さんのことは信頼してますし、大好きですから」
「はぅ~」
混じりけのない優しい言葉に、小傘は顔から湯気が出そうなほど真っ赤にしてあたふたと慌てふためく。
両手で顔を隠すようにして、早苗のほうを恐る恐る上目遣いで見上げる小傘のなんとかわいらしいことか。
その様子に早苗は苦笑をこぼして、「それに」と言葉を紡ぎだす。
「今夜は、寝かせたりしませんよ。私と、小傘さんの、記念すべき日になるんですから」
「早苗、それって……もしかして」
「ふふふ、小傘さんのご想像のとおりです。きっと、小傘さんは足腰が立たなくなっちゃいますよ」
甘く、囁くような色っぽい声を耳に囁きかけてやると、小傘の顔がますます真っ赤になる。
それと同時に、神様が二人そろって口直しに飲んでいた緑茶を盛大に噴出した。
ばっちぃ虹が室内に誕生した瞬間である。
「あら、どうしたんですか?」
「さ、早苗アンタまさか……」
「もしかして今夜?」
「うふふ、お二人が何をご想像しているのか知りませんが、きっとそうですよ」
絶句。もはや言葉がのどを通らない。あんぐりと口をあけた神様二人そっちのけで「さぁ、行きましょう小傘さん」と彼女の手をとる風祝。
対して小傘は顔を真っ赤にしたままうつむいて、小さく、だがしかし確実に、覚悟を決めたようにこくんと肯いたのだ。
そうして、手をつないだ二人が部屋から退出する。ところがひょこっと早苗が顔を出し、人差し指を口に当てて、そして一言。
「部屋に入っちゃ駄目ですからね、神奈子様、諏訪子様」
ウインクひとつのおまけつきで、小傘と共に自室に駆けていく早苗。
残された二人の神はぽつーんと間の抜けた顔を浮かべるのみでフリーズ状態。
まるでザ・ワールドに時を止められたモブのごとき有様である。
やがて、たっぷり十分ほど経過した後。
「か、神奈子ぉぉぉぉぉぉ!! さ、早苗が、早苗がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「お、おおおおおおお落ち着きな諏訪子!! 赤飯の用意だよ赤飯っ!!」
「がががが合点!!」
混乱真っ只中のてんやわんやの大騒ぎになったのであった。
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そうして深夜。
早苗と小傘はお互いに身を寄せ合っていた。
小傘はうっすらと涙を浮かべ、必死になって早苗の首に腕を回して抱きついたまま離れない。
そう、彼女たちは今夜、大人への階段を駆け上って―――
「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!? さ、早苗!! 怖いっ!! 怖すぎるからぁ!! ヒィッ!!?」
「何をおっしゃいます小傘さん、これからが本番ですよぅ」
いるわけもなく、河童謹製の霊力で稼動するテレビでゲームにいそしんでいたりするのであった。
彼女たちの周りにはバイオ・○ザード、サイ○ント・ヒル、などといったホラーゲームが山の如し。
必死な表情で怖がる小傘に、その様子を見てまんざらでもない様子の早苗。小傘は足腰が立たないのかぺたんと座り込んだままがくがくぶるぶると震えていた。
ちなみに、現在のプレイゲームはサイ○ント・ヒル3である。
小傘の悲鳴が夜の守矢神社に木霊する。
風祝がその様子で鼻血をたらしながらご満悦な表情を浮かべていたことは言うまでもないだろう。
ちなみにこの後、しっかり全クリをした後で映画版までご視聴した際に小傘が気絶したことも言うまでもないし、その度に早苗がたたき起こしたことも言うまでもない。
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そして翌日、朝早苗が起きると赤飯が炊けていましたとさ。
サ◯レントヒールーの歌~♪
誤字報告
>前クリ
全クリ ですよね?
しかし1晩でその量、そしてナイフクリア…早苗さんは間違いなく一級廃人w
色々と深読みし過ぎた私に御柱&洩矢の鉄の輪&八坂の神風
俺がバイオしないのは恐いからじゃなくてみょんにリアルで気持ち悪いからなのぜ。本来はホラー好きなんだが。同じ理由でエ□ゲーの18禁シーンも駄目だったり。
後書きには全面的に同意せざるをえないな。
サイレント○ルはマジ勘弁してほしいゲームだった、面白いけど
私も抱きついた小傘ちゃんの前から手を……でクリ(ここから先は血まみれで読めない)