Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ペアルック

2009/10/30 12:06:12
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いつもの朝、妖怪の山にある守矢神社、そこで諏訪子と神奈子はお茶を啜っていた。
「ふぅ、それにしても最近早苗部屋から出てこないなぁ~」
出てこないといっても引き籠りなわけではなく、信仰集めや家事はするが暇になると部屋に閉じこもってしまうのだ。
それに夜遅くまで起きているので諏訪子としては子孫である早苗が心配なのだ。
「ねぇ神奈子、早苗どうしたの?」
「ん?ああ、心配することはないよ」
「なんで!?だって神奈子は早苗と」
続きを言おうとしたとき、二階からバタン!と扉を開ける音が聞こえると、
ドタドタドタと階段を駆け下りてくる音、そしてバタバタバタと一階の廊下を走り、その音は諏訪子と神奈子が居る居間で止まり、スパン!と音とともに襖が開けられた。
「出来ました神奈子様!ついに完成しました!」
いきなり入ってきて何を言っているんだと思っていた諏訪子だが、神奈子は嬉しそうに立ち上がった。
「ホントかい早苗!?」
「はい!見て下さい!」
手に持っていた物を広げる、シャツのようだが柄は神奈子で見えない。
「おお!流石だよ早苗、さっそくこれを着てみよう!」
「はい!」
シャツを持って隣の部屋へ行く、部屋からはシュッ……パサッと服を着替える音、しばらくすると中から
「おお!いいじゃないか!似合ってるよ早苗!」
「ありがとうございます八坂様、八坂様もお似合いで……」
「おいおい早苗、プライベートでは神奈子……だろ?」
「……はい、神奈子様」
「ふふ、可愛い早苗」
となにやら怪しい雰囲気になっていった。
それからたっぷり十分かけて二人は部屋から出てきた。隣で生実況を聞いていた諏訪子にとっては堪ったものではない。
「……で、終わったの?」
卑猥な音がやみ、若干イライラしながら諏訪子は言葉を投げかけると、
「ああ、見てくれ諏訪子!早苗が作ってくれたんだよ!」
ふん!と胸を張る神奈子、隣で早苗は恥ずかしいやら嬉しいやらで顔を真っ赤にしていたが、
「……なに、その格好」
黒地で前に白蛇、後ろには緑の文字で風とデカデカとプリントされたシャツに、真っ赤なミニスカートを穿いた早苗と神奈子、いわゆるペアルックだ。
「なんで……今どきペアルックなの?」
「やれやれ、あんたは解っちゃいない!解かっちゃいない!」
わざとらしくため息をつくと、神奈子はズイっと前に出た。
「いいかい?ペアルックって言うのは今も昔も愛し合っている者同士がやるんだ!
そして私と早苗も愛し合っている!だったらペアルックをするのは当然だろ!」
とえらく興奮して語り出す神奈子、隣ではさらに顔を赤くさせモジモジする早苗、とても熱く、ラブラブな二人であるが見ている諏訪子は
(ダメだこいつら、はやくなんとか……いや無理か)
と半ば諦めていた。
「よーし早苗!行こうか!」
神奈子が立ち上がり早苗の手を取る。嬉しそうに早苗もその手を取って立ち上がった。
「ちょっと!どこ行くの!?」
「どこって、これをお披露目に行くんだけど?」
諏訪子の問いに、神奈子は当たり前といった様子で答える。それを聞いて諏訪子は若干の眩暈を覚えた。
「やめてよ!なに二人して信仰を減らそうとしてるの!?そんな恰好家だけにしてよ!」
「甘いな諏訪子実に甘い、いいか!?確かに最初は聞かれるかも知れない「なんで一緒の格好なの?」と、そこで言うわけだ、「これは愛する者同士がすることにより、より一層愛が深まるんだ!」とな、するとどうだ、ならば自分たちもと真似をしだす!それにより仲良くなった者達は私たちに感謝をする!すると信仰が増える!完璧だろう!?」
「あ……あ~、ん~?」
自信満々に言い切る神奈子に、諏訪子も「もしかしたらそうなんじゃないか」と思い始める。取りあえず任せてみるのもいいのかもしれない。
「じゃあ……いってらっしゃい」
「おお!わかってくれたかい諏訪子!」
「完璧にってわけじゃないけど……」
「いや!少しだけでもいいんだ!なら行ってくる、行こうか早苗」
「はい、神奈子様!」
神奈子と早苗は固く手を結び空へと飛び立っていく、それを諏訪子はボーっと見ていた。


神奈子と早苗が最初に向かったのは白玉楼だった。今は妖夢はおらず、幽々子一人である。
「おはようさん、亡霊の姫さん」
「おはようございます幽々子さん」
「ええ、おはよう……なんで一緒の格好なの?」
神奈子はよし来たとばかりに、一つ咳払いをすると語り出した。
「これはペアルックと言ってね、愛し合っている者同士が着る物なのさ!
どうだい、あんたもやらないかい?アンタもあの剣士と愛を深めたいんじゃないのかい?」
妖夢のことを言われ、幽々子は顔を赤くする。
「で、でも~、私と妖夢はとっても仲が良いのよ?いまさらそれをするほどでも……」
「でも幽々子さん、妖夢さんを狙ってる人はいるんじゃないですか?あんなに可愛いんですし……」
早苗の言葉に、妖夢を惑わす者は誰か思い浮かべる、それは竹林にいる、永琳の弟子の鈴仙……
「いるわ、あのウサミミ女!いつもいつも私の妖夢をたぶらかすのよ!チッ!こうなったら私の能力で……」
ぶつぶつと何やら危ない方向に行こうとしている幽々子を、早苗は慌てて引き戻す。
「そ、それでですね幽々子さん!このペアルックは、相手をけん制することも出来るんですよ!
お二人の仲の良さを見せつけることで相手を威圧することもできるんです!」
「ほ、ホントに!?」
「ええ、お二人の仲の良さを見れば、そのお相手も自然と手を引くと思いますよ?」
「そ、そうなの?それじゃあやってみようかしら……」
「ええ、頑張って下さい」
「じゃあね、上手くいことを願うよ」
そうして幽々子にペアルックを勧めると、次なる目的地へと向かって神奈子達は飛んでいった。


神奈子達が去ってから、幽々子は部屋の押し入れをあさり出し、奥の方から一つの箱を取り出す、その中には昔幽々子が着ていた服が詰まっていた。
「私と同じような柄の服は……あっ、あったわ!これでいいでしょう!」
服を取り出し、ソワソワしながら幽々子は妖夢を待った。
数分後、お使いから妖夢が帰ってきた。
「ただいま戻りました幽々子様―!」
「おかえり妖夢―」
手に持った食料を台所に置き、妖夢は幽々子の元へと向かう。
「ここにおりましたか幽々子様、あれ?その服は一体……」
「私の昔の服よ、もう着れないから妖夢にあげるわ」
「えっ、そんな!幽々子様の物を、私なんかが貰ってもよろしいのですか!?」
「いいのよ~、それに妖夢だからあげたいの、貰ってくれる?」
「は、はい!」
幽々子から服をもらうと、妖夢は嬉しそうに服を抱き寄せる。
「じゃあ妖夢、さっそくその服着て見せて頂戴」
「はい、では少しお待ちください」
服を持って自分の部屋へと着替えに妖夢は行った。
数分後、先ほどの服を着て妖夢が姿を現した。夜の空に満月と雪桜が刺繍された幽々子と同じ服、サイズも妖夢にはピッタリの服だった。
「ど、どうですか幽々子様、変じゃ…ないですか?」
はにかみながら聞いてくる妖夢、自分とペアルックをしているということと、嬉しそうに自分の服を着ていることで幽々子の気分は絶好調になり、妖夢へと飛びかかる。
「可愛いわよ妖夢―!」
「う、うわぁ!幽々子様!」
捕まえた妖夢を膝の上に乗せ、嬉しそうに妖夢の頭に顎を置く、妖夢も、最初は困った顔をしていたが、やがて妖夢も嬉しそうに幽々子にもたれ掛った。


神奈子達が次に向かったのはマヨヒガ、そこでは藍が裁縫をしていた。
「こんにちは、大妖怪の式よ」
「こんにちは藍さん」
「ああ、山の上の巫女とその神か、どうしたんだ?ペアルックで」
裁縫の手を止め、藍は二人の方を向く、神奈子達は家へと上がって藍の正面に座った。
「なに、ただペアルックで信仰を集めも兼ねて、これのお披露目さね」
「どうです藍さん、藍さんもしてみませんか?」
「いや、わたしはだな……」
と会話をしていると、スキマから紫が帰ってきた。
「藍ただいま~…って、神奈子じゃない、ペアルックでいったい何しに来たの?」
「いやね、ペアルックを広めに来たんだが、この妖狐があまりいい顔しなくてね」
「ああ、そういうこと、それなら進めるだけ無駄よ」
「それはどうしてですか紫さん」
「どうしって、ねえ藍?」
「はい、この服は紫様とお揃いなんですよ」
藍の言葉に、神奈子も早苗もキョトンとする、そんな二人に、藍はゆっくりと話し出した。
「この服はだな、昔紫さまが私を一人前だと認めて下さったときに、紫様自らが御造りになって下さったのだ。その時紫さまは「この服は私と同じ素材で、私と同じ様な柄で造ってあるからお揃いなのよ」とも言って下さった。
だから私にとってこの服は、従者の証であるとともに、家族の証でもるのだよ」
そう言って笑う藍に、神奈子も早苗もなにも言えなかった。
暫くして、神奈子が黙って立ち上がると、早苗もそれに続いた。
「ふぅ、そんな風に言われたら、もう誘えないねぇ……。邪魔したよ」
「お邪魔しました藍さん」
二人はマヨヒガを後にしようと、縁側に出た、その時、ふと早苗が一つ疑問に思ったことを聞いてみた。
「あの、橙ちゃんのは作らないんですか?」
「橙の分?ああ、今私が作っているのがこれだよ、橙ももう少し力の使い方がわかったら、渡そうと思っているんだ。」
「そうですか、早く渡せるといいですね!」
「ああ!」
ニッコリと藍は笑う、それは子を見守る母の笑顔に似ていた。


二人が最後に向かったのは博霊神社だった。神社では霊夢が縁側でお茶を飲んでいる。
「こんにちは霊夢さん」
「よぅ、博霊の巫女」
「早苗に神奈子、あんたたち何しに……ってなんで同じ服装なの?」
「これはですね~、ペアルックと言って、愛する人と一緒の服装をすることで、より愛を深めるという、外の世界での常識なんですよ!」
「常識って、あんた前「常識にとらわれては~」みたいなこと……」
「それとこれとは話は別です!それより、霊夢さんにも好きな人はいるんじゃないですか?」
霊夢は、はぁ~とため息をつくと、持っていた湯呑を置いた。
「あのね早苗、私は博霊の巫女なの。だから私は人にも妖怪にも中立の立場じゃなきゃダメなの、そんなどちらかの味方をするような事は出来ないわよ」
「そうは言いますが、霊夢さんだって普通の女の子です!もし自分が博霊の巫女でなかったら一緒にいたいな、って言う人がいるでしょう!?」
「ん~、あ~、だからね早苗…」
「早苗」
霊夢が何かを言おうとしたとき、神奈子が早苗の肩を叩いた。
「神奈子様?」
「早苗、霊夢には霊夢の恋があるんだ、無理やり押し付けるのは良くないんじゃないかい?」
「……わかりました、神奈子様がそう仰るのなら」
渋々といった形で早苗は神奈子の言葉に頷く、霊夢も「やっと終わったか」みたいな顔をしていた。
「すまなかったね博霊の巫女、でもまぁ、お前さんもそう言う人が出来たら試してみてくれ」
「はいはい、わかったわかった」
早く行けと言わんばかりに、シッシッと手を振る、そんな霊夢をしり目に、早苗達は空へと飛び立っていった。


早苗達が去ってから、霊夢は早苗達の言葉を思い出していた。
(好きな子ねぇ、そんなの私にいたかしら……)
ふっと考えると、浮かんできたのは神社に住み着いた萃香、萃香が来てから一人だった神社が明るくなった。
知らず笑みが零れるが、それもすぐに引いた。
(何を考えてるのかしら、そんな事……あるわけないのに)
自嘲気味な笑みを浮かべてお茶を飲む、あんな話を聞いたからか、
それともあの二人の仲の良さにいらついたのか、先ほどよりお茶は美味しいと感じない、そこへ、
「霊夢―!ただいまー!」
と大きな声を出しながら萃香が帰ってきた。スッと立ち上がり玄関へと向かう。
「はい、おかえ…うわっ、なによあんた、泥だらけじゃない!」
帰ってきた萃香は、服は勿論、顔にも泥がついた状態で帰ってきた。しかしそんな事気にする風もなく、萃香はホレっと手に提げていた物を出した。
「どうだ!少し小さいけど猪捕ってきたぞ、もう下ごしらえは済ませてあるから今日はボタン鍋だ!」
「はいはい、いいからちょっと待ってなさい、今あんたの着替え持ってくるから」
「えっ、服は今日全部洗濯したから無いよ」
「はぁ!あんたまさか今それ一着しかないの!?」
「う…うん」
「ちょっ…もう、少し待ってなさいよ」
「あっ、霊夢!」
萃香を玄関に残したまま、霊夢は服が仕舞ってある部屋へと行く、何かないかと探したが、萃香に合うような服がない、かといって洗濯が済むまで下着姿というのも可哀想ではある。
「なにか無かったかしら……ん?これは…」
一着の服を掴んで広げる、それは萃香にちょうどいいサイズではあったのだが…
「あいつ等の言葉に従うわけじゃないけど…仕方ないわね」
その服を持ったまま霊夢は玄関へと戻って行った。

玄関では萃香が一応泥だけは落として待っていた、持ってきた服を萃香に投げ渡す。
「ほら、お古で悪いけど、これでも着てなさい」
投げられた服を広げる、それは霊夢が来ていた巫女服だった。
「もう小さくなって着れないからね、あんたにあげるわ」
「霊夢の…お古?」
「……何よ、嫌なの?」
「う、ううん、そんなこと無いよ!?」
「そう、じゃあ着替えて服洗濯に出しときなさいね」
それだけ言うと、霊夢はさっさと奥に消えて行った、残された萃香は手元にある服を見つめる。
「霊夢の…服」
ギュッと抱きしめると、微かに霊夢の匂いがした。
「…とりあえず、喜んでくれたのかしら」
陰から萃香を見ていた霊夢、萃香が廊下に上がると、すぐにその場を去った、その顔はどこか嬉しそうだった。
この日から、博霊神社では、時折巫女服を着た萃香が見られるようになった。



早苗達がペアルックを広め始めてから数日、ペアルックは人里だけでなく、他の妖怪たちも真似をしだした。
その甲斐もあってか、守矢神社に対する人々の信仰は上がって行った。
「どうだい諏訪子、私の言ったとおりだっただろう!」
「あー、そうだね、私が悪かったよ」
「いいんだよそんな事は、それよりも諏訪子、お前には誰か居ないのかい?」
「ん?んー、居るにはいるけど……そうだね、この流れに乗るのも悪くないか」
スッと立ち上がると、諏訪子は自分の部屋へと戻っていく、そして引き出しからある物を取り出した。
「じゃあ、行ってくるよ」
「おお!頑張っておいで!」
神奈子を声を背中に受け、諏訪子は空へと飛び立った。


紅魔館近くの湖、そこに諏訪子は降り立った。
「えっと、どこにいるかな~……おっ、居た」
目線の先には水色の髪とこれも同じ水色の服、そして白い羽を生やしたチルノが居た。
「おーいチルノー!」
呼びながら近づいて行く、声が聞こえたのか、チルノは諏訪子の方を向く。
「あっ諏訪子だ!どうしたの?」
「ん、あー、ちょっとね、はいコレ」
諏訪子が出したのはカエルのバッチだった。それを受け取り眺めるチルノ
「何これ?」
「ああ、御守りだよ、チルノが無事なようにって、私の力が入ってるんだ」
「へー、じゃあ貰っておくね!」
そう言って、チルノはカエルのバッチを服に着けた、その時に諏訪子の目に二つの物が目に入った。
「ねえチルノ、その紅いリボンと、黄色のスカーフって誰からの?」
「えっこれ?この紅いのがフランで、黄色いのが幽香のだよ、なんで?」
二人の名前が出た瞬間、諏訪子は内心舌打ちをした。
(ちっ、先を越された!でもいい、先を越すのとチルノを落とすのはまた違ってくる、
 ようはあの二人より先にチルノを振り向かせればいいんだから…)
「どうしたの諏訪子?なんか恐い顔してたけど……」
「あっ、なんでもないよ?そうだ!ねぇチルノ、何か食べに行こうか?奢るよ?」
「ホントに?ヤッター!じゃああたいね、里の大福が食べたい!」
「うんいいよ、じゃあ行こうか」
二人は手をつなぐ、チルノの手は冷たかったが、嬉しそうなチルノを見たらそれも気にはならなかった。それに
(やってやるさ、あの二人よりも先に)
そう決意し、諏訪子は内心ほくそ笑んだ。
久しぶりに投稿しました。覚えている人いますかね?
今回は早苗さんと神奈子様に頑張ってもらいました。あとなんか諏訪子が少し黒いです。
また何時になるかわかりませんが投稿したいと思います。
誤字・脱字の方ありましたら、教えてください。
般若
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
フラチル?幽香チル?諏訪チル?
マズイ鼻血g(ry
2.名前が無い程度の能力削除
この後チルノは文と大ちゃんとレティからもそれぞれペアルックになるようなものを貰うんですね分かります。