Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

不思議な客

2009/10/27 15:09:30
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 その日は満月の月が浮かび、雲一つなく、星が輝き渡る空だった。
今の季節は冬に近づきつつある落葉の秋。
風が吹けば冷たく、寒さが身に染みる季節。
そんな寒さの中の山奥で、私は焼き鳥撲滅という目的を掲げ、屋台を出す準備をしていた。
動いていたり火を使っていれば寒い中でも体が温まる。むしろ熱い。
今日も私は歌いながら八目鰻と書かれた藍色の暖簾を掛け、木の椅子を並べ、鰻を捌くなどの準備をする。

 


 歌いながら作業をしているうちに誰かの気配を感じ、歌うのをやめた。
気配がした方を見ると、暗いが少し離れた所で誰かが山道を歩いているのが見えた。
私は鳥だが鳥目ではない。暗くてもまあ見える
おそらく人間の男だろう、この辺の妖怪にあんな感じの奴はいない。

私は店に呼び込むために、その男に大きな声で話しかけた。

「おーいそこの人! 私の店によっていかないかい?」

すると男はその声に気づき、立ち止まって答える。

「そうしてもいいんですが、生憎お金を持ってないんですよ」

なんだお金を持ってないのか。まあ、それでもいいんだけど。

「それならオマケするよ!」

「いいんですか?……それではお言葉に甘えて」



 私は屋台に戻り、客のための準備を始めた
そう時間が経たない内に男が暖簾をくぐり入ってきた。

「いらっしゃい」

決まり文句を言い、作業する手を止めて男の方へ目をやる。

さっきは離れていて、かつ暗くてよく見えなかったが
提灯や屋台から吊り下げたランプの明かりの下、
男の姿を再びを見ると奇妙な格好をしている。
細身で帽子を被り、眼鏡を掛けているのはどうでもいいのだが
見たことのない服を着ている。

「暖簾に八目鰻と書かれているということは、その専門のお店ですか?」

男はそう言うと木で出来た椅子に座った。
その声を聞いて、私は思考を中断して答える。

「いや、専門というよりはそれくらいしかないだけだよ。後、お酒が少し」

「そうなんですか」

「それじゃお客さん、何にする? とはいっても八目鰻焼きしかないけど」

「ふふ、それじゃあそれと酒を適当に」
男は小さく笑いながら言った。

「あいよ」

そう言って私はグラスに暖め酒を注ぎ、
客である男の前にそれを出して、すでに捌き終わっている鰻を焼き始めた。
男は眼鏡を外し、鼻の根をつまみ始めた。

「お客さん目が疲れてるのかい?」

「ええ、少し霞むんですよ」

「目の栄養が足りてないんじゃない? 八目鰻は目にいいから直によくなるよ」

まあ、私の歌声で鳥目になったのだろうけど。

「目をよく使うからそれは有り難いですね」

男はそう言うと、酒を1口、2口飲んだ。

「やっぱり酒は上手い」


客が酒を飲み温まった所で、私は気になっていた客の服装について尋ねた。

「ところでお客さん。あまり見ない格好だけど……」

「ん、この服装ですか?……最近、人里で買ったんですよ、一目見て気に入ってね」

最近の人間の里ではこういうものがあるのか。

「そうかい。いや、なにぶん珍しかったから少しそれについて聞きたかったのよ」

それから男はしばらく酒を味わっていた。
私は焼かれている鰻に目を移した。

うん、そろそろ鰻も焼けたかな。

私は焼き終えた八目鰻を丸い皿に載せ、タレをかけてから箸を添えて男の前に出した。

「はい焼き八目鰻一丁」

「おお、これは美味そうだ」

客は卓上に置いていた眼鏡を掛け直し、料理を見て言った

「そりゃうちの店の目玉だからね、当然よ」

「それもそうか。それでは頂きます」

男は手を合わせそれから食べ始めた。

「美味い」

「ちなみに焼き鳥と比べてどっちが美味しい?」

「うーん。こっちかな、そうそうここまで美味しいものはないですよ」

私は味を褒められたことと、焼き鳥撲滅へ一歩近づいたのとで純粋に喜んだ。

「そうかい、そうかい。そいつは嬉しいね。今日は気前がいいからもう1つオマケね」

そういい私は笑顔でグラスにもう一杯酒を注ぎ、八目鰻を出す。

「いいんですか。タダでこんなに出しちゃって」

「いいさ。もともと酔狂でやってる店だからね。それにまた来てもらってくれれば万々歳よ」

「そうですか。それなら遠慮するのも悪いですね」

「それに夜の山は寒いだろうし、ゆっくりしていきなよ」

「本当にありがとうございます。今は感謝しかできませんけど」

「いいっていいって」


 それから、客と少しの会話を挟みながら
私は友達や他にも来るかもしれない客のための分を用意しつつ
美味そうに料理を食べ、酒を飲む客の様子を横目で見ていた。






「ご馳走様でした」
男は料理を食べ終え、手を合わせてそう言った。

「では、そろそろ行かないと……」

「また来なよ。いつもこの辺りでこの時間帯にやってるからさ」
そう私は声を掛けた。

「ええ、また機会があれば」
男は本当に感謝してますといった笑みを浮かべて言うと席を立ち、屋台から出て行った。


 男が屋台を出てから。ふと私は疑問に思った。

そういえば、他の人間の客は私が妖怪と知らずに、
何故少女一人だけでこんな夜にこんな山奥で屋台を出しているのか、
とか色々聞いてきたことがあったが。
さっきの客は私のことを見ても何も言わなかったわね。
人間には私が人里で見るような少女に見えるだろうに。

あの客は何も思わなかったのかな。
そう思いながら屋台を出て、男が歩いていったであろう方向を見る。


 
 だがそこにはもう誰もいなかった。
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
目をつかうって言ってるし、もしや神n(ry