Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

無意識なんだからぱんつ穿いてなくてもいいよね

2009/10/25 22:02:21
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「ねえ、お姉ちゃん。常識ってなんなんだろうね」
「とりあえず服を着ることが常識への第一歩だと思いますよ」

 全裸の妹が目の前に現れて質問してきたので、
 私は一瞥して返答した。否、そう返す他無かった。

「待ってお姉ちゃん。それは固定概念というものではないかしら」
「ですが、こいしの髪型がモヒカンなのはどう理由付けすれば良いのですか」

 全裸な上に見事なモヒカン頭――。
 あれ、こいしってこんなファンキーな妖怪だったっけ。
 世界が本格的に、ガラガラと音を立てて崩壊してきた。

 何故、全裸なのか――
 疑問はそれだけに留まらないが、もうなんか面倒なのでそれだけ聞いてみた。





「気持ち良いじゃない」





 ――手遅れだった。


 すでに姉の手の届かない高みにまで、妹は上り詰めてしまっていた。
 こいしもいつか、私の庇護下から飛び出していってしまうとは思っていた。
 だが、その時はあまりにも唐突に訪れ、現実となって私の眼前に仁王立ちしている。
 私は自分のことを頭が悪い方だとは思ってはいないが、
 重すぎる現実を直視するほど回転率の良い頭を持ち合わせているわけではなかった。

「すみませんこいし。お姉ちゃんは夢でも見ているようです。
 まだお昼ですけれど、今日はもう疲れたのでベッドで休んできますね」

 頭痛で頭が痛いので、と言い残して私はそのままベッドの中にもぐりこんだ。
 そうだ、これは夢だ。妹がこんな愚か極まりない行為に走る理由が無い。
 だって、そんな風に育てた覚えが無いもの。もう寝てしまおう。
 全部悪い夢なのです。悪い夢は早く醒めてしまえば良いのです。
 夢から醒めたらきっと、「お姉ちゃ~ん!」って笑顔で言いながら
 グリコのポーズで私に抱きついてくる、最愛の妹が待っているはずなのです。
 夢の世界に逃げましょう! 現実とかいらんわもう!


「あ、私も一緒に寝て良い?」
「なにしてるんですか貴方は」

 全裸のままベッドの毛布の中に入ってきた妹の方を、寝転がったまま向く。
 1枚の毛布の中に2人いるので、自然と顔は近くなり、嫌でも顔を寄せ合うことになる。
 顔立ちは整っているのに、そこにちょこんと添えられたモヒカンが意味不明だった。

 ああ、そういえばこいしが今よりももっと小さかった頃は、こうやっていっしょの毛布
の中でぎゅっと抱き合って寝ていましたね。あの頃のあなたは、小動物のように小さく丸
まって、とってもかわいらしかったんですよ。いえ、今のこいしが可愛らしくないと言っ
ている訳ではないんですよ? ただどうしても、そのモヒカンだけは受け入れがたいと言
うかなんでわざわざそんなどこぞの珍走団(珍走団が何だか判らない人はググレカス)み
たいな髪型にしてしまったんですか。百歩譲って全裸で生活するのは良しとしましょう。
こいしの身体は一部分が非常に貧相で残念極まりないことを除けば、染みひとつ無い綺麗
な身体をしていますからね。一緒にお風呂で流しっこした仲ですから、妹の身体の部位で
把握していない部分はありません。股の付け根のホクロの位置だって完璧に把握してます
よ。なんてったって私は姉ですからね。妹のことでわからないことなんてひとつも――

 そこで、頭の中で無限に展開される思考が、止まる。





 妹のことでわからないことなんて、ないはずなのに。



 それはどうしようもないくらい、真っ赤な嘘で。



 こいしのこころが知りたいのに。



 本当は、わからないことだらけで。



 こいしが瞳を閉ざしてから、どれだけの歳月が過ぎただろうか。



 永い年月の間中ずっと、思い悩まされて。



 心が判らないことが、こんなに不安なことなんだって、思い知らされて。





「私は……こいしの心が、判りません……」

 落涙しながら、その言葉だけを喉の奥からなんとか搾り出す。
 自分でもみっともないくらい、掠れた涙声だった。
 こいしは何も言わず、無表情をこちらに向けている。

「わたしは、誰よりもあなたのことが知りたいのに……!
 誰よりも何よりも、こいしを大切に思っているのに、
 肝心のこいしの心だけがわからないなんて、姉失格です……」

 こいしはやはり何も言わないまま、顔だけを俯かせた。
 ちらと見えた妹の表情は、悲しそうに陰っていた。

「私は、もっとこいしのことが知りたい……。あなたと触れ合いたい……。
 ねえ、こいし、こんなダメなお姉ちゃんを、許してくれる――?」

 言葉を紡ぎ出しながら、こいしの身体を抱き締める。
 みっともないと思っていても、こいしの胸元に顔をうずめて涙を流した。

 こいしは何も言わない。

 優しく私を抱き返してくるだけ。

 私はそれに甘えたように、ぎゅうとより強くこいしの身体を抱き締める。

 本当は、いつもこいしがどこかに行ってしまうのを引き止めたい。

 地霊殿に押しとどめて、目の届かない場所へ行ってしまわないようにしたい。

 でも、それはあなたの意思を蹂躙してしまうから。



 今こうしてこいしの身体を抱き締めることしか、あなたの気持ちを知る術がわからない。

 否。

 私には、ただ抱き締めることしか、できないから。


 今は、もう少しだけ。




 もう少しだけ、このままでいさせて――――




















「……お姉ちゃん」

 しばらくして、こいしが口を開いた。
 静寂が終わり、私はびくりと身体を震わせた。
 うずめてた顔を上げると、こいしは泣きそうな顔をしていた。

「私たちは、お互いたったひとりの家族なんだよ?」
「……そうですね」

 ただ、言葉を肯定する。

 家族。
 たったひとりの家族。

 動きの鈍い頭を、ぐるぐると回し始める。

「だから、私はお姉ちゃんのことが好きとか嫌いとか、許すとか許さないとか。
 わたしたちは、そういう関係じゃないと思うんだ」

 その言葉は、頭をハンマーで殴ったような、鈍い衝撃を私の中に与えた。

 かぞく。家族。カゾク。

 言葉ばかりが、ぐるぐると宙に浮かんでは消えていく。

「私だって、お姉ちゃんが何を考えてるのかなんて判らないよ。
 瞳を閉じてしまったんだから、判りたくても判れないんだよ」

 私は何も言えなかった。
 ただ、こいしの諭すような言葉を飲み込んで、頭に入れる他無い。
 瞳を閉ざしてしまったのだから、こいしだって私の心の正確なところは判らない。
 それは、ごくごく当たり前のことだった。

 私は、こいしのこころが判らない。
 こいしは、私のこころが判らない。

 あまりにも不安定。
 あまりにも不安定なこころたち。

 こいしと視線が合った。
 泣き出しそうな顔で、それでも真っ直ぐに、私を見つめている。

「でも、お姉ちゃんはここにいる。確かに、ここにいる。私がどこかへ行って、いろんなところを廻り回っても、結局はここに帰ってくる。お姉ちゃんのいるところに。私はたったひとりの家族のところに、帰ってくるしかないの」


 ――わたしたちは、家族なんだから。


 そのこいしの言葉に、また涙が溢れてくる。
 強く、さっきよりも強く、こいしの身体を抱き締める。
 こいしも、さっきより強く、私の身体を抱き締める。

 どこまで行っても、こいしと私は繋がり合っているのだ。
 誰にだって、引き剥がせないほどに強く。


 それは運命ですら引き裂くことの出来ないほどの、強い絆。


 家族という、絆なんだ。


 私は、こいしの身体を抱き締める。


 そのままゆっくりと、意識が落ちていく。


 暖かな、家族に包まれて。


 大切な、家族に――



















――――おやすみ、お姉ちゃん――――
Taku
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コメント



1.名前が無い程度の能力削除
切なくも心温まる話でした。
ただ、その…モヒカンが…w
2.名前が無い程度の能力削除
モヒカンはヅラだって俺信じてる。
でも、いい話だなあ。

>こいしの身体は一部分が非常に貧相で残念極まりない
あんたがそれを言うのかよお!
3.名前が無い程度の能力削除
モヒカンで全部台無しwwwwwwwwwwww
4.名前が無い程度の能力削除
地霊殿で火炎放射器の需要はあるだろうか…?
あとグラサンもつけよう
5.名前が無い程度の能力削除
某AAを貼ろうか迷ったが……その、なwwww
6.名前が無い程度の能力削除
いいはな…し…あれ?
7.名前が無い程度の能力削除
しかし、モヒカンである
8.名前が無い程度の能力削除
何時の間にかイイハナシに……でもモヒカンww
9.名前が無い程度の能力削除
イイハナシニナッタナー
10.名前が無い程度の能力削除
古明地姉妹の姉妹愛イエァっ!ってあれ?良い話?
モヒカンは?世紀末は?
11.名前が無い程度の能力削除
消毒だー!
12.名前が無い程度の能力削除
何しれっと良い話っぽく終わらせてるんだw
13.名前が無い程度の能力削除
いいはな・・・し・・・じゃねぇよwww
14.名前が無い程度の能力削除
イイハナシジャナーイ
15.名前が無い程度の能力削除
イイハナシカナー!?