Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

たぶん、キャプテンが悪い話

2009/10/18 14:22:52
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 この話は、作品集50にある『きっとキャプテンが悪い話』の続きな話です。

 でも、前のは読まなくても大丈夫だと思います。




















 きっかけ、というか発端は。

 単に、ムラサがあんまりに鈍くて馬鹿で愚鈍で聖馬鹿だから、いい加減、告白しようと決めた事からだった。





「ムラサなんて大嫌いッ!」
「はいはい。知ってますよ~」

 起き抜けにビシッと言ってやると、ムラサは私の下で眠そうにげんなりした。

 本当は、ムラサに夜這いをかけてやろうと意気込んでいたのだけど、ムラサの部屋に侵入し、寝ているムラサに馬乗りになって、さあ起こそう! という所で、ムラサのすやすやと気持ち良さそうな寝顔が、もうあまりにかわ……間抜け面すぎて! つい時間が経つのも忘れて魅入り、気がついたら窓の外は明るく、ムラサが目を覚ましてしまったので、つい言ってしまった。

「……というか、わざわざ起こしに来てくれたのなら、もう少し優しい起こし方を希望したい」
「うっさい! いいから早く寝ろ!」
「……なんで?」

 あれー? 起こしに来たんだよね?
 と言わんげのムラサに、違うわよ! と怒鳴るのは我慢する。
 私は夜這いに来たのであって、そしてこう、いい雰囲気になった所を告白して、それでムラサを私にメロメロにしてやりたいのだ。

 という訳で、ムラサには寝ていて貰わないと困る。

「……寝ろ」
「をいちょっと? その用途不明で正体不明どころじゃない、薬瓶をどうするつもりよ」

 無理やりでも寝かせようとすると、ムラサが脇に置いていた錨を手に、僅かに戦闘体勢に入ってしまった。

「むぅ」

 ちょっと悔しい。
 ムラサは細身の癖に腕力が洒落にならないので、この至近距離でもし攻撃されてしまっては、大怪我的な意味で困る。……なので、しぶしぶとムラサからどいた。

「……もう。朝から何だってのよ」
「……知らない。嫌い」
「…………」

 ムラサが、カモメ柄のパジャマ姿のまま、「あ、そう」と疲れた顔で、んーと伸びをする。
 そのまま布団から出ると、てきぱきと布団を直し、そのままパジャマを脱ぎ捨てる。早着替えが得意なムラサは、そのまま下着姿になり、愛用の服を取り出し―――え?

「ピッ」
「え? ピッ?」

 セーラー服を首に通したあたりで振り返ったムラサは、私を見て不思議そうに一瞬停止し、すぐに着替えを再開した。

「ぬえ? 私のパジャマ、そんなに気に入ったの?」
「う、うっさいうっさい! か、返して欲しくば、私を抱きしめる事ね!」

 何言ってるんだろう私。
 ムラサの下着姿にぐはっ! ときて、そのまままだ暖かいパジャマを抱きしめて、心の中でキャーキャー言いながら、私はムラサの生着替えに釘付けだった。

 へ、変態なのかな私?!

「はいはい。それお気に入りだから返してね」

 ぎゅう。
 よしよし。
 ふわふわ。

「…………うん、返す」
「あれ? 今日は素直なのね」

 ムラサ、恐ろしい奴……!
 私の混乱なんて無視して、一瞬で私を抱きしめてきやがった!
 私のムラサラブ度はとっくにマックスだ馬鹿ッ! なのに、今上限値を遥かに上回って突き抜けちゃった!

「……ムラサ」
「ん~?」

 鏡の前で、帽子を丁度良く斜めにしながら、ムラサは気のない返事をする。

「ムラサ」
「うん」
「あのさ」
「うん、何?」

「―――な、何でもない!」

 今なら、
 さっきのタイミングなら、
 私はムラサに、嫌い、じゃなくて、好きって言えたかもしれなくて。でも、口を噤んだ。

 おかしいな。

 言うつもりなのに、そのつもりだったのに、何か言えない?

「?」

 いぶかしげに振り向くムラサは、もういつもの船長で。
 可愛いのに格好良くて。
 優しいのに意地悪で。
 聖馬鹿で、でも皆に紳士な。

 キャプテンムラサ。

 村紗、水蜜。

 ?
 ふと引っ掛かった。
 そして、気づいた。

 ……ぁ、ああ。

 いま、なんか分かった。

 好き、が言えなかった理由。


「……ムラ――。ううん、水蜜」

 ふえ? とおかしな顔になる水蜜に、私はにやりと笑う。


「好きだから!」


 ――よしっ! 言えた。

「―――は?」

 驚くムラサに、私は胸を張ってやる。

 そう、なんだ。
 やっと分かった。
 私は、まだ皆のキャプテンムラサには、好きだと、素直に言えないんだ。
 船長のムラサは皆に優しくて、紳士で、だから私はきっと、怖いのだ。
 皆と同じなのが、嫌なのだ。

 でも、
 ただの村紗水蜜になら、ただの幽霊で、少女で、カモメのパジャマが似合う彼女になら、素直に言える。
 だって彼女は、船長じゃない時の水蜜は、とても女の子だから。


「…………えっと? ありがとう」
「ふふん。まあね。さあ、他に言うべき事は?」

 どっくんどっくんうるさい音を無視して、赤面しながらも、私はおかしな顔を続行しているムラサを指差す。
 指先ががくがく震えているのは無視する。
 とにかく、好きと伝えたからには返事が欲しい。

 ムラサにだけ意地悪をして、邪魔をして、追いかけて、仲間になっている私の行動を、少しはその意味を、その根底にある感情を、知って欲しい。

 私の想いの強さに気づいたのか、
 ムラサは、それは真剣な表情で―――


「……つまり、今日の朝御飯はぬえの好物があるから、それをよこせと言っているのね?」


 とってつもない勘違いをしてやがった。

 あっはっはっはっは、この野郎♪

 ムラサがそこらに置いていた錨を手に、私はムラサに懇親の一撃をおみまいするのだった。

 このエセ紳士、乙女の告白をなんだと思ってやがる♪

「ちょぶはんっ?!」

 ズシン……! と悲鳴すら飲み込んでめり込んだムラサと床に、何事かと皆が駆けつけてきた時には、私はムラサの分の朝食も全部食べてやろうと、ぷりぷりしながら台所へと向かった。

 ああもう! ムラサの馬鹿ッ!!











 ◆ ◆ ◆










 拝啓。すでに転生しているだろうお母さん。お父さん。
 私はもしかしなくても、苛めにあっているみたいです。

 とか、頭の中で意味不明な事を思考しながら、私は頭と顔に軽く包帯と巻き、一輪に膝枕されて呻きながら苦しんでいた。

「同情の余地がないわね」
「私は無実だー」
「残念だけど、ぬえが絡めばムラサの言い分はいきなり信用性がなくなるわよ?」
「……ひどー」

 おもいきり被害者なのに、明らかな加害者を見る目の親友に、ちょっと泣きたくなる。
 だって、私朝食すら無かったよ? ぬえに食われて。

「ねえ、ムラサ」
「うん?」
「好きよ」

 真面目な顔で言われた。
 なので、真面目に返す。

「私も好きよ」
「…………」

 一輪は、そこで小さく溜息。
 私がこうなる一端を説明して、何かを悟ったらしい彼女は、しょうがないなーって顔で、私の前髪を整える。

「……ムラサさあ」
「うん?」
「……ツンデレの心意を、よぉく勉強するべきだわ」
「?」

 つんでれ?

「え? でも、私の周辺にツンデレ属性の子なんていないわよ」
「…………」

 一輪は、それはそれは呆れ果てた顔をして、そっと拳を握った。

「ムラサ。これは私の意志じゃない」
「ぅえ?」
「天の意思よ」
「んな無茶あいたああぁっ?!」

 雲山かと言いたいとんでもない拳骨の一撃に、私は二度目の頭への強襲に、なすすべなく震える事しかできなかった。
 一輪は、「天の怒りを知りなさい」と酷く切なげな顔で去っていく。

 まずは謝れと言いたかった。






 さて。頭が痛い。
 廊下を歩きながら、いまだ痛む頭をおさえて、私はゆっくりと歩く。

 ああもう、ズキズキする。
 天の意思って何やねんと理不尽で、頭をさすりながら、目的無く歩いた。

 というか、ツンデレ、ねぇ。

 あれでしょう? ツンツンしている子が、急に脈絡なくでれでれっとしてくる、素直じゃない癖に、変なプライドだけが高い、子供みたいな奴の事でしょう?
 ……多分。

 うーん。詳しい所は一輪に聞いておけば良かったけど。ツンデレの子の心意を学べって、あれでアドバイスなんだろうし、無碍にもできない。

 頭が痛いので実は無碍にしてやりたくなるけど、ここは親友として船長して我慢だ。
 
 そして、そうこう歩いている内に、ぬえを見つけた。

「げっ!? ムラサ」
「あぁ、うん。太ればいいと思う」
「はあ? いきなり呪いの言葉って何様よ」

 やかましい。私はお腹がすいているのよ。
 さげすみの目を向けるぬえに、イラッとしつつも我慢、我慢と自分に言い聞かせる。

 ……にしても、ぬえは私にあんな事をしたというのに、けろりとして、目には剣呑な光を宿してはいるものの、いつも通りだった。

「ねえ、ぬえ」
「嫌だ。何?」
「いきなり否定から入るな。なんていうかさ」
「だから、何よ」
「私の事、好き?」
「―――、……嫌い」
「だよねぇ」

 俯いて、けっと吐き捨てるぬえに、うんうんと頷く。
 いつも嫌がらせをしてくるわ、苛めてくるわで、どう考えても私に好意がない彼女。
 わざわざ私だけを狙ってくるしつこさと視界の狭さ。
 私を苛められるから! とかいうふざけた理由で、私達の仲間になった彼女に、私は何度も頷く。

 あいもかわらず、素直な奴だと。

 ツンデレっていうのには、なれないだろうなぁと。

 好きな奴には、好きってはっきり言って、どんなにふられても諦めなさそうな、強そうな所。

 まあ憎からず思わせる、その有り方は嫌いじゃない。


「うん。すっきりした」
「……何がよ」
「ううん、気にしないで、ああそれとさ」
「……」

 通り過ぎざま、私はぬえに、とりあえず言っておこうと首だけで振り返る。


「私は、ぬえの事けっこう好きよ」


「――――」
「じゃあね」

 手を振って、ずきずきする頭に顔をしかめて苦笑。お風呂とか沁みそうだなと、軽くおさえた。


「……ばか」


 と。
 後ろで、ぬえの憎まれ口が聞こえてきたので振り返ると、ぬえはもういなく。ただ彼女に殴られた傷が、一際大きくずきりとなっただけだった。

 私は首を傾げて、また歩き出した。















 あと、それから、私の愛用のカモメ柄のパジャマが消えた。

 ショックで、しょうがなく今は、ペンギン柄のパジャマを着ている。

 
 
 
 
 
 ふと、思いついて続きを書いてしまいました。

 ぬえは、まっすぐに迷わず偏りながら樹海に直進する一見謎なツンデレさんなので、きっとムラサ船長にはその行動の意味などわかりません。安全第一の船長ですし。

 勝手なイメージです。

 あと、もう少しで自重をちゃんと思い出します。
 
 
夏星
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
うん、確かにキャプテンが悪い
2.名前が無い程度の能力削除
これは確かにキャプテンが悪い
3.名前が無い程度の能力削除
有罪
4.名前が無い程度の能力削除
正体不明のツンデレを理解するのが、今のキャプテンに出来る善行です
5.名前が無い程度の能力削除
不条理な気もするけどキャプテンが悪い
6.名前が無い程度の能力削除
キャプテンったらゆーざいね!
7.名前が無い程度の能力削除
キャプテンはしっかり反省すべき
8.奇声を発する程度の能力削除
キャプテン…有罪です
9.名前が無い程度の能力削除
すごく…有罪です…
10.名前が無い程度の能力削除
キャプテン…罪な女…
11.名前が無い程度の能力削除
有罪確定
12.七星削除
黒です、黒。
13.名前が無い程度の能力削除
キャプテンはツンデレを学ぶべき
作者は自重を思い出さないべき
いいぞもっt(ry
14.名前が無い程度の能力削除
キャプテンは罪を償うべき
15.名前が無い程度の能力削除
満場一致でキャプテンが悪い
作者はもっとやるべき
16.名前が無い程度の能力削除
あなたは自重という言葉を思い出してはいけない。絶対にだ。
ぬえぬえが可愛すぎて生きてるのが辛い。
17.名前が無い程度の能力削除
うん 面白かった けど俺はツンデレが好きじゃない事がわかった
18.名前が無い程度の能力削除
「パジャマが消えた」で吹いたwww
19.名前が無い程度の能力削除
ツンデレと鈍感は見事な凸凹コンビ。
ぬえ可愛いよぬえ、船長可愛いよ船長。
20.名前が無い程度の能力削除
一輪さんそれは天の意思だけじゃない俺たちの意思でもある。
村紗は本当にどうしようもなく有罪。
21.名前が無い程度の能力削除
いいね
22.名前が無い程度の能力削除
キャプテンは有罪なのだー