動かぬ思考、動かぬ人形、それでも進むよ時計の針。
真っ白な紙を前にして、出るのはただただため息ばかり。
「何をやってるんだ、私…」
そうやって頭を抱えるのは何度目か。
そうやってくしゃくしゃにした髪を解かすのは何度目か。
動かぬ思考、動かぬ人形、それでも進むよ時計の針。
黒枠4つを描いてみて、とにかく描くよ起承転結。
従者 瀟洒 ドジ 爆発
神社 賽銭 5銭 爆発
歩く 人形 ボン ボボン
ボン ボン ⑨ ボン ⑨ ボン ボン
「はっ! ははっ! あはハはは!!」
寄稿〆切二日前である。
「イマイチね。」とアリスが言ったから、今日の魔理沙は密告モード。
不敵な笑顔を見た瞬間、きっと背後から撃ち落してでも口止めすべきだった。
ネタの文句に動じない天狗が、よもやオマケの4コマで激高するとは御天道さんも見抜けなんだ。
「畜生が絵心を晒すのは滑稽だとう?!!」
涙で濡れた阿修羅顔。風の速さでその酷い顔を他に見られなかったのは幸いだったかもしれない。
あんまりだったのでハンカチを手渡すと、顔を覆って死後硬直の如く。
永かった。
カラスの声がこんなにも不吉に感じたことはなかった。
「落ち着いた?」
「やー、すいませんね、ホント。」
魔理沙がどう伝えたのかは想像に難くないが、
発端が自分の発言であることに一抹の罪悪感を感じ、家に招いた次第。
茶の1つも出せるし、言い訳も言い分も外に漏れることはない。
「4コマのない新聞はメイド長のいない紅魔館だと外来人が。」
「うわぁ。」
要するに面白そうだから取り入れたというだけである。
それに、実際描いていて楽しかったんだそうだ。
「感性を否定されたら嘆きもしますわ。」
「三流記者がよく言うわ。」
「ばかなことを。私情感情で記事を書くとでも?」
「面白いからネタにするんでしょ?」
「面白くするのも腕の見せ所。」
「そ。 クッキー食べる?」
「いただきましょう。」
「紅茶のおかわりは?」
「悪いね。」
このまま適当に雑談して帰すのも良い。
これだから鳥頭は扱いやすい。
などと邪心を抱いたのが不味かったのか。
「で、どこが不満か聞かせてもらおうか。」
藪の蛇が感づいたようだ。
開き直るのも手か。
「あら。つまらないことに理由なんてあるのかしら?」
「おや、私は『イマイチだ』と言ったと、そう聞いているんですがね?
イマイチ、ということは何かしらの至らないことがおぼろげにしろわかっていると、
そう解釈しているんですが、私の勘違いでしょうかね?
それとも彼女が全くの出鱈目を嘯いたということでいいんでしょうか?
ああ、勘違いしないでいただきたい。
私はより面白いものをという欲に駆られているのであって、
決してアナタを責めているとかそういう訳ではないのですよ?」
この記者モードには悪意を感じる。
ここが外なら飛んで逃げたい。
彼女に纏う気は怒気とか覇気などというチャチなものではなく、
もっと恐ろしい力の篭った何かだ。
「ふむ、まぁ、小利口な魔女に何かを求める方が間違いか。
クッキーは美味しかったよ。じゃあね。」
「そ。食べたくなったらまた来なよ。」
「そうさせてもらおうかな。」
プライドなんかくれてやれ。
勝手なこと好き勝手に言って勝手にすっきりしてればいい。
いいから早く出て行ってくれ。
手に持つカップが割れるその前に。
「あ、そうそう。」
「まだなにか?」
「『私も描いてみたい』と言ってくれた者が何人かいてね、
じゃあいっそ次回はまるまる一面それでいこうと思ったんだ。」
「そう。」
「参加人数は多いほうがいいからね。気が向いたらアナタも参加してみてよ。」
「気が向いたら、ね。」
「楽しみにしてるよ。」
バタン
パキッ
「イマイチだな。」と魔理沙が言ったから、今日のアリスは弾幕モード。
呆れた笑顔を見た瞬間、きっと背後からでも撃ち落していた。
仕返しを果たした天狗は、色とりどりの4コマの1つに○をつけた。
「流石パターンを知り尽くしている。参考にさせて頂こう。」
涙に濡れた阿修羅顔、公衆の面前で晒すには酷すぎた。
あんまりだったので早々ピチュって顔を洗わせた、魔理沙マジ男前。
本人は嫌がったが、人形顔にも表情があるもんだ、とかえって好感を得たそうだ。
余談
『紅魔館のヒトビト』 パチュリー・ノーレッジ
後に不定期連載で読む人々を楽しませることになる。
二人の弟子入りの日は近い。
全体通してわかりづらいかも
とりあえず、あとがきでネガるのは止めた方がいい。
そんなもの、誰の得にもなりゃしない。
>2 真・旧通して自分の書いたものに対する指摘を受けたのは初めてであり、待ち望んでいたことでもありました。大変ありがたいです。
>4 全くその通り。以後、またあるとすれば気をつけたいです。