「貴女って、人参好き?」
「別に」
「玉葱平気?」
「別に」
「わかったわ」
「………」
「ねぇ、咲夜、だっけ?」
「そうよ、アリス」
「あんた、なんでいきなり人の家に来て料理作ってるの?」
「え?貴女ご飯食べないの?」
「いや、別に食べなくても死にはしないし………」
「へー、まぁ私はお腹減ってるのよ」
「でもここ人の家なんだけど………」
「貴女の分も作るって言ってるじゃない」
「いやだから私は………まぁ、別にいいけど」
なんだ、こいつ………
世話になったからと、いきなり押しかけてきて、人の家の材料で料理を始めた。
世話になったわりには、我が物顔でキッチンを占領している。
何か世話、したっけ………
「大分暖かくなってきたわね」
「やっと冬が終わったからねぇ」
そう、やっと冬が終わったんだ。
これからは二度寝の回数が増えるだろう。
「だらしなくなる季節よねぇ」
「ん………ええ、つい眠くなる季節」
私はイスに腰掛けて、あいつはキッチンから料理をしながら話をする。
お互いの顔が見えないので、どんな表情をしているかがわからない。
「………ねぇ、咲夜」
「ん?」
「貴女今、どんな顔してるの?」
「顔?」
「そう」
こんな質問をされたら、普通のやつなら驚いて呆気にとられる。
でもこいつは、きっと微笑んでいるんだろう。
「んー………泣いてるわよ」
「はい?」
泣いてる?なにそれ。
涙ぐんでる声なんてしてないじゃない。
「玉葱切ってたし」
「………」
そうきたか。
面白いやつだな、変なことを聞くなって、普通ならそういうと思うんだけど。
「ねぇ」
「今度はなに?」
「貴女って、変わってるってよく言われない?」
「ええ」
「………」
まぁ、それはそうか。
「変わってるってか、人間にしてはってよく言われるわね」
そうか、こいつ人間だったな。
人間にしては………強かったし、多芸だし。
「変わってるっていうか、垢抜けてるって感じよね」
「それ、よく言われる」
ちょっとだけ笑ったような気がした。
今喋り方が変わったぞ。
「そういえば、貴女は」
「ん?」
「よく友達いないって言われてるわね」
「はい?」
誰が言ったんだそれ?
「まぁ、魔理沙から聞いたんだけど」
「………あいつか」
「で、実際どうなの?」
「どうなのって………友達いないって言われ方すると腹立つけど、確かにここにはあんまり知り合いとか居ないわね」
「ふーん」
「………ねぇあんた、もしかしてそれ聞いたから私の家にきたわけ?」
「………だとしたら?」
「冗談じゃないわ、そんないらん同情はお断りよ」
「………流石にそんなことはないわよ、怒らないで」
………怒ってない。
いや、ムキになっていた。すぐあいつにはそれがバレた。
「私は単純に、貴女のことが気になっただけ」
「………」
「だって貴女、可愛いんだもの」
「………え」
可愛い………?
なんだそれ、私に言ってるのか?
「宴会の時から貴女のこと見てたわ、静かだけど、誰よりも料理を味わって食べてくれてた」
「………」
「お酒のおまけくらいにしかみんな見てないでしょうけど、結構手が込んでるんだから」
「知ってる」
「ええ、知ってるのは貴女くらいじゃないかな」
「あと、ルーミア」
「………そうね」
ルーミアも私と一緒に、お酒よりもむしろ咲夜の料理を進んで食べていた。
他の連中は酒ばっかり、美味しい料理でもなければ付き合ってられなかった。
間接的にではあるが、私は咲夜の参加を目当てにしていたんだ。
「………勝手な連中よ、ほんと」
「あら、貴女そんな風に思ってたの?」
「あんただって、あの吸血鬼のお嬢様に文句の一つでもあるんじゃないの?」
「………んー、文句の一つでもあれば、すぐに言ってるけど」
「………フランクね、あんた」
「おまたせ、冬が終われば、シチューなんて食べる機会無くなるからね」
「そうね、ありがとう」
それはそれは美味しそうなシチューだった。
本を見ながら私が作ってもこうはならないだろう、手馴れている、料理のノウハウってやつをよく知ってるんだろうな。
「………久しぶりの食事だわ」
「よく生きてるわね」
「魔女だし」
誰かと一緒にこうして食卓を囲むのは結構久しぶりだな。
にぎやかなのが好きなわけじゃないけど、誰かと二人っきりなのは落ち着くな。
あんまり面識がないやつと向き合ってるのは結構、気まずいけど。
「………ん、いい出来ね」
「ええ」
「ああ、台所のチーズは傷んでたから捨てておいたわ」
「ああ、そう」
「牛乳も結構」
「そう…」
「………貴女って、意外とだらしないのね」
「………」
「………大掃除してあげようか?」
「いいわよ別に、人の家これ以上荒らさないで」
「荒らさないわよ」
掃除されるのはイヤじゃないけど、他人に自分の家を探られたくない。
でもしっかり否定しないと、咲夜は勝手に掃除を始めてしまう気がした。
「どう、口にあう?」
「え?ええ、美味しいわ」
「………そうね、貴女いっつも、そういう顔してたほうがいいわね」
「………」
「辛気臭い顔してるより、ずっと可愛いわ」
「可愛いって………それやめてよ」
「え?」
「そういう風に言われるの、嫌いなのよ!」
「………アリス?」
可愛いって、言われたら普通嬉しいものなんだろうけど。
私は、なんとなくイヤだ。
下に見られている気がする。
私はあんたより弱いつもりもないし、年下のつもりももちろんない。
「………悪いけど、帰ってもらっていいかしら」
「………」
もう、食事に手をつける気分でもなくなってしまった。
私とこいつは親しい友人じゃないんだ、それなのにあんなことを言われて、私は今気分をかなり害した。
「………そうね、突然来て悪かったわね」
「………」
「作り置きしておいたから、後で食べて」
「………」
「ああ、あと、勝手にいろいろ使って悪かったわね」
「………」
「じゃ、またそのうち」
「まって!」
「………」
「まって、やっぱり、帰らないで」
「………」
「ごめんなさい、謝るわ、勝手なこといってごめんなさい」
「だから………怒らないで」
「………怒ってはないけど」
「………」
振り返った咲夜の表情は笑顔だった。
それなのに、私は焦って情けない顔をしている。
「今引き止めるのは、かっこわるくない?」
「………」
「貴女がそれでもいいなら、私は帰らないけど」
「………かっこ悪くてもいいわよ」
「………」
「私はあんたみたいに、ポーカーフェイスが得意でもなければ、人付き合いってやつも得意なわけじゃない………だから、かっこ悪くても思いついたことを伝えるしかないのよ」
「………」
「………」
「わかった」
「え…」
「貴女、不器用なんだ」
「………」
不器用………
そんなこと言われたの、初めてだ………
「………うん、私、不器用、かも」
「ええ、不器用ね」
ニッコリと笑ってる。
人の気も知らないで、私のことを笑ってる。
「貴女不器用だから言っておいてあげる、私が今笑っているのはね、貴女が自分の弱みを見せてくれたからよ」
「………弱みって」
「だから、私の弱みを教えてあげる、私はさっき帰ってって言われたとき………実は結構傷ついたのよ」
「………うそ」
「本当よ」
「………ごめん」
「………じゃあ」
そっと、咲夜が私に手を伸ばした。
「友達になる?」
「………」
そっと、私も手を伸ばす、でも。
私は、その手を払った。
「………そういうのは、ご免かな」
「だと思った」
それなのにこいつは笑ってる。
見越してたんだ、私が握手を断ることを。
「………仕切りなおし」
「いいわよ」
今度は私がもてなしをする番だ。
美味しいお茶を淹れて、こちらから話を振るんだ。
今度は、私が追い詰める番だ。
.
「別に」
「玉葱平気?」
「別に」
「わかったわ」
「………」
「ねぇ、咲夜、だっけ?」
「そうよ、アリス」
「あんた、なんでいきなり人の家に来て料理作ってるの?」
「え?貴女ご飯食べないの?」
「いや、別に食べなくても死にはしないし………」
「へー、まぁ私はお腹減ってるのよ」
「でもここ人の家なんだけど………」
「貴女の分も作るって言ってるじゃない」
「いやだから私は………まぁ、別にいいけど」
なんだ、こいつ………
世話になったからと、いきなり押しかけてきて、人の家の材料で料理を始めた。
世話になったわりには、我が物顔でキッチンを占領している。
何か世話、したっけ………
「大分暖かくなってきたわね」
「やっと冬が終わったからねぇ」
そう、やっと冬が終わったんだ。
これからは二度寝の回数が増えるだろう。
「だらしなくなる季節よねぇ」
「ん………ええ、つい眠くなる季節」
私はイスに腰掛けて、あいつはキッチンから料理をしながら話をする。
お互いの顔が見えないので、どんな表情をしているかがわからない。
「………ねぇ、咲夜」
「ん?」
「貴女今、どんな顔してるの?」
「顔?」
「そう」
こんな質問をされたら、普通のやつなら驚いて呆気にとられる。
でもこいつは、きっと微笑んでいるんだろう。
「んー………泣いてるわよ」
「はい?」
泣いてる?なにそれ。
涙ぐんでる声なんてしてないじゃない。
「玉葱切ってたし」
「………」
そうきたか。
面白いやつだな、変なことを聞くなって、普通ならそういうと思うんだけど。
「ねぇ」
「今度はなに?」
「貴女って、変わってるってよく言われない?」
「ええ」
「………」
まぁ、それはそうか。
「変わってるってか、人間にしてはってよく言われるわね」
そうか、こいつ人間だったな。
人間にしては………強かったし、多芸だし。
「変わってるっていうか、垢抜けてるって感じよね」
「それ、よく言われる」
ちょっとだけ笑ったような気がした。
今喋り方が変わったぞ。
「そういえば、貴女は」
「ん?」
「よく友達いないって言われてるわね」
「はい?」
誰が言ったんだそれ?
「まぁ、魔理沙から聞いたんだけど」
「………あいつか」
「で、実際どうなの?」
「どうなのって………友達いないって言われ方すると腹立つけど、確かにここにはあんまり知り合いとか居ないわね」
「ふーん」
「………ねぇあんた、もしかしてそれ聞いたから私の家にきたわけ?」
「………だとしたら?」
「冗談じゃないわ、そんないらん同情はお断りよ」
「………流石にそんなことはないわよ、怒らないで」
………怒ってない。
いや、ムキになっていた。すぐあいつにはそれがバレた。
「私は単純に、貴女のことが気になっただけ」
「………」
「だって貴女、可愛いんだもの」
「………え」
可愛い………?
なんだそれ、私に言ってるのか?
「宴会の時から貴女のこと見てたわ、静かだけど、誰よりも料理を味わって食べてくれてた」
「………」
「お酒のおまけくらいにしかみんな見てないでしょうけど、結構手が込んでるんだから」
「知ってる」
「ええ、知ってるのは貴女くらいじゃないかな」
「あと、ルーミア」
「………そうね」
ルーミアも私と一緒に、お酒よりもむしろ咲夜の料理を進んで食べていた。
他の連中は酒ばっかり、美味しい料理でもなければ付き合ってられなかった。
間接的にではあるが、私は咲夜の参加を目当てにしていたんだ。
「………勝手な連中よ、ほんと」
「あら、貴女そんな風に思ってたの?」
「あんただって、あの吸血鬼のお嬢様に文句の一つでもあるんじゃないの?」
「………んー、文句の一つでもあれば、すぐに言ってるけど」
「………フランクね、あんた」
「おまたせ、冬が終われば、シチューなんて食べる機会無くなるからね」
「そうね、ありがとう」
それはそれは美味しそうなシチューだった。
本を見ながら私が作ってもこうはならないだろう、手馴れている、料理のノウハウってやつをよく知ってるんだろうな。
「………久しぶりの食事だわ」
「よく生きてるわね」
「魔女だし」
誰かと一緒にこうして食卓を囲むのは結構久しぶりだな。
にぎやかなのが好きなわけじゃないけど、誰かと二人っきりなのは落ち着くな。
あんまり面識がないやつと向き合ってるのは結構、気まずいけど。
「………ん、いい出来ね」
「ええ」
「ああ、台所のチーズは傷んでたから捨てておいたわ」
「ああ、そう」
「牛乳も結構」
「そう…」
「………貴女って、意外とだらしないのね」
「………」
「………大掃除してあげようか?」
「いいわよ別に、人の家これ以上荒らさないで」
「荒らさないわよ」
掃除されるのはイヤじゃないけど、他人に自分の家を探られたくない。
でもしっかり否定しないと、咲夜は勝手に掃除を始めてしまう気がした。
「どう、口にあう?」
「え?ええ、美味しいわ」
「………そうね、貴女いっつも、そういう顔してたほうがいいわね」
「………」
「辛気臭い顔してるより、ずっと可愛いわ」
「可愛いって………それやめてよ」
「え?」
「そういう風に言われるの、嫌いなのよ!」
「………アリス?」
可愛いって、言われたら普通嬉しいものなんだろうけど。
私は、なんとなくイヤだ。
下に見られている気がする。
私はあんたより弱いつもりもないし、年下のつもりももちろんない。
「………悪いけど、帰ってもらっていいかしら」
「………」
もう、食事に手をつける気分でもなくなってしまった。
私とこいつは親しい友人じゃないんだ、それなのにあんなことを言われて、私は今気分をかなり害した。
「………そうね、突然来て悪かったわね」
「………」
「作り置きしておいたから、後で食べて」
「………」
「ああ、あと、勝手にいろいろ使って悪かったわね」
「………」
「じゃ、またそのうち」
「まって!」
「………」
「まって、やっぱり、帰らないで」
「………」
「ごめんなさい、謝るわ、勝手なこといってごめんなさい」
「だから………怒らないで」
「………怒ってはないけど」
「………」
振り返った咲夜の表情は笑顔だった。
それなのに、私は焦って情けない顔をしている。
「今引き止めるのは、かっこわるくない?」
「………」
「貴女がそれでもいいなら、私は帰らないけど」
「………かっこ悪くてもいいわよ」
「………」
「私はあんたみたいに、ポーカーフェイスが得意でもなければ、人付き合いってやつも得意なわけじゃない………だから、かっこ悪くても思いついたことを伝えるしかないのよ」
「………」
「………」
「わかった」
「え…」
「貴女、不器用なんだ」
「………」
不器用………
そんなこと言われたの、初めてだ………
「………うん、私、不器用、かも」
「ええ、不器用ね」
ニッコリと笑ってる。
人の気も知らないで、私のことを笑ってる。
「貴女不器用だから言っておいてあげる、私が今笑っているのはね、貴女が自分の弱みを見せてくれたからよ」
「………弱みって」
「だから、私の弱みを教えてあげる、私はさっき帰ってって言われたとき………実は結構傷ついたのよ」
「………うそ」
「本当よ」
「………ごめん」
「………じゃあ」
そっと、咲夜が私に手を伸ばした。
「友達になる?」
「………」
そっと、私も手を伸ばす、でも。
私は、その手を払った。
「………そういうのは、ご免かな」
「だと思った」
それなのにこいつは笑ってる。
見越してたんだ、私が握手を断ることを。
「………仕切りなおし」
「いいわよ」
今度は私がもてなしをする番だ。
美味しいお茶を淹れて、こちらから話を振るんだ。
今度は、私が追い詰める番だ。
.
色々な面でライバル関係にもなれそうな点が多い二人組ですから。
お互い刺激し合って高め合えるのは理想の関係だと思います。やらしい意味でなく。
微妙な距離感まで取り戻したあたりがリアルっぽくてなんか良い
この二人の絶妙な距離感が激しく好きだ!!!!!!!
……えっ人形?そうですか、ですよね