『謎の宝船の正体が判明!』
そう書かれた新聞が今朝方、お店の中に放り込まれた
つまり、一つの異変が終わりを迎えたのだろう
自分のお店の中で本を読んでいた僕には今回の異変は関係の無いものである
だが、異変が解決された事で、一つしないといけない仕事が増える
手にしていた新聞をたたみ、机の上に置くと
「今夜の晩辺りだな」
店の前の看板の表示を休業に変える
そしてお客が来ない中、僕はただ黙々と本を読みながら
目的の人物が来るのを待つ事にした
気が付けば昼が過ぎ、夕日も落ちて、辺りが暗闇になりかけてきた頃
休業になっているお店のドアを誰かが小さく叩く音が聞こえてきた
その音が、異変が終わった事を告げる挨拶
僕は読んでいた本を閉じると閉めているドアを開け
「やあ、いらっしゃい」
目的の人物を店に招き入れた
・・・
目的の人物がお店の奥に入ると、ホッとした表情になる
「香霖がお店に居ないかと思ってひやひやしたぜ」
そう呟いて椅子の上に座り込んだのは
異変を解決に向かった張本人、霧雨魔理沙であった
「ほう、僕がお店に居ないとなにか困るのかい?」
「そ、それは」
少々意地悪な質問をすると、魔理沙が言い辛そうに口をつぐむ
流石に意地悪すぎる質問である事を理解しているので
口元を少しだけ緩ませて魔理沙の頭を軽く撫でつつ冗談だと答える
その言葉を聞いて魔理沙が頬を膨らませるが攻撃はしてこない
普段の彼女を知る者からすれば、明らかに様子がおかしいと気が付くだろう
いつもなら、軽口に対してもっと激しく反応して僕を困らせるはず
だが、今の魔理沙はそのような事をする様子は無い
そして、その為に僕は彼女が店に来るのを静かに待っていたのだ
「……香霖」
しばらくの間、僕が何も言わずに魔理沙の傍に居ると彼女が口を開いた
「ごめん……いつものやつ頼む」
僕はその言葉に何も言わずにうなずくと
彼女が着ている帽子とエプロンドレスを脱がせにかかると
あっという間に下着姿だけになる
それは、いつも異変を終えた後に行う一つの儀式であった
「もう、泣いてもいいんだよ?」
そして最後に魔理沙を軽く抱きかかえると魔法の呪文を唱える
「『霧雨魔理沙』」
「ひっぐ……うぇぇっ……」
その呪文と共に幻想郷に名前が響く『普通の魔法使い魔理沙』は
「うえぇぇぇん!怖かったよぉ~!」
ただの少女である『霧雨魔理沙』に戻るのだ
・・・
事の起こりは紅霧異変の頃からである
魔理沙が名高い紅魔館に霊夢と共に向かって異変を解決した後
彼女に言われて八卦炉のメンテナンスを終え
気まぐれに彼女の家にまで運んだ事が切欠であった
部屋の中に居た彼女は充血した目で震えていた
そして、僕の姿を見つけた瞬間我慢していたものが噴出したのだろう
彼女は全力で僕に抱きついて泣き始めた
驚きながら彼女に何があったのかを聞くとポツリポツリと話し始めた
異変が終わった後、眠ろうとしたら
自分が弾幕によって命の危険に会う瞬間の事が思い出されて
眠る事ができなくなっていたそうだ
異変という時は一時の高揚感で恐怖を感じないだろうが
それが終わった後、恐怖はやってくる
相手が繊細な少女であるのなら余計にであろう
しかも、それを周りに知らせる人も居ない
だから、一人で何とかしないといけないと思っていた時に僕が来たのだ
安堵して泣き疲れた魔理沙はやっと眠る事ができたのだ
・・・
「うぅ~……ひっぐ……」
その日以来、異変が解決された後、魔理沙はこうしてやってきて泣く
エプロンドレスを脱ぐのは、それが戦闘装束であるからであり
それを着ている間は『普通の魔法使い魔理沙』であるからだった
そして、今この場に居るのはただの怖がりな少女である
ただの『霧雨魔理沙』であった
「怖かったよ……うっぐ……怖かったよ~」
「よしよし……」
ボロボロに泣きながら抱きついてくる彼女が泣き止むまで
僕はただひたすら優しく背中を擦る
それは、彼女が泣き疲れて眠るまで続けられた
・・・
「……すぅ…すぅ…」
抱きついたまま眠る魔理沙の頭を撫でると
昔聞いた事を思い出していた
・・・
『こんな思いをするのなら、異変解決に行かなくてもいいんじゃないのかい?』
昔ふと、疑問に思って魔理沙に聞いてみたら
魔理沙が首を横に振って
「それをしたら……霊夢が唱えた弾幕バトルの意味がなくなっちまうぜ」
「どういうことだい?」
「人間でも、妖怪と遊ぶ事ができる…そう言って霊夢は提唱したんだ」
名誉決闘……力の差がある妖怪と人がお互いに戦うため
そして、お互い遊びあうために作り出された博麗の巫女が提唱したルール
それにより、妖怪と人間が身近になったという功績は大きい
だが、初めの頃は誰一人としてそのルールに耳を貸さなかったのだ
幸い、提唱されてすぐに紅霧異変が起こった事で
今では幻想郷の中で知らぬ者が居ない程メジャーになったのだ
「でもな、このルールの一番の難関な部分は『人間でも』って所なんだ」
魔理沙の言葉に納得する
如何に遊びと言えど、妖怪と人間では力の差がありすぎる
そう思った人間達も当時は沢山いたのだ
『妖怪と対等に遊べるはずがない』と思って居る者達が
「だからな……私が飛んで証明してやらないといけないんだ」
もし、仮に霊夢だけが紅霧異変の解決に向かっていたら
里の人達も『博麗の巫女さんだからなあ』と思い
名誉決闘…『スペルカードルール』はここまでメジャーにならなかっただろう
だが、生まれが普通の人間である魔理沙も解決に向かって
一緒に解決をした事により、里の人達も『弾幕』に興味を持ったのだ
「だから……私が異変を解決に行かないと、
名誉決闘が人間達から離れて行くかもしれないからな」
そういうと、魔理沙がため息をついて答える
「それに、私が居なくなったらまた別の人間が行く事になる」
そう呟くと、魔理沙が自分の肩を抱きしめて呟いた
「こんな怖い思いをするのは……私だけで十分だぜ」
・・・
「んっ……こう…りん」
魔理沙の寝言で長考していた意識が戻る
気が付けば、それなりの時間が過ぎていた
無論、魔理沙は気持ちよさそうに眠っているが
その姿は寒そうである
急いで用意してあった毛布で魔理沙を包むと
そのまま、ベッドに運ぶ事にする
「よいしょ……っと」
ベッドに魔理沙を寝かせると冷えないように布団をかぶせようとした時
(ぎゅっ……)
「むっ?」
寝ている魔理沙の手が僕の袖をがっしりと掴んでいた
その手を離そうと思って、手を伸ばした時
「……こわい…よぉ……」
その寝言を聞いて僕はため息と共に外そうと思っていた手を戻し
「よしよし……」
魔理沙が寝ているベッドの傍に座り
寝ている魔理沙の頭を優しく撫でる事にした
それだけが、異変を解決に向かった人間に対して
(お疲れ様……魔理沙)
僕ができる唯一の事なのだろうから
そう書かれた新聞が今朝方、お店の中に放り込まれた
つまり、一つの異変が終わりを迎えたのだろう
自分のお店の中で本を読んでいた僕には今回の異変は関係の無いものである
だが、異変が解決された事で、一つしないといけない仕事が増える
手にしていた新聞をたたみ、机の上に置くと
「今夜の晩辺りだな」
店の前の看板の表示を休業に変える
そしてお客が来ない中、僕はただ黙々と本を読みながら
目的の人物が来るのを待つ事にした
気が付けば昼が過ぎ、夕日も落ちて、辺りが暗闇になりかけてきた頃
休業になっているお店のドアを誰かが小さく叩く音が聞こえてきた
その音が、異変が終わった事を告げる挨拶
僕は読んでいた本を閉じると閉めているドアを開け
「やあ、いらっしゃい」
目的の人物を店に招き入れた
・・・
目的の人物がお店の奥に入ると、ホッとした表情になる
「香霖がお店に居ないかと思ってひやひやしたぜ」
そう呟いて椅子の上に座り込んだのは
異変を解決に向かった張本人、霧雨魔理沙であった
「ほう、僕がお店に居ないとなにか困るのかい?」
「そ、それは」
少々意地悪な質問をすると、魔理沙が言い辛そうに口をつぐむ
流石に意地悪すぎる質問である事を理解しているので
口元を少しだけ緩ませて魔理沙の頭を軽く撫でつつ冗談だと答える
その言葉を聞いて魔理沙が頬を膨らませるが攻撃はしてこない
普段の彼女を知る者からすれば、明らかに様子がおかしいと気が付くだろう
いつもなら、軽口に対してもっと激しく反応して僕を困らせるはず
だが、今の魔理沙はそのような事をする様子は無い
そして、その為に僕は彼女が店に来るのを静かに待っていたのだ
「……香霖」
しばらくの間、僕が何も言わずに魔理沙の傍に居ると彼女が口を開いた
「ごめん……いつものやつ頼む」
僕はその言葉に何も言わずにうなずくと
彼女が着ている帽子とエプロンドレスを脱がせにかかると
あっという間に下着姿だけになる
それは、いつも異変を終えた後に行う一つの儀式であった
「もう、泣いてもいいんだよ?」
そして最後に魔理沙を軽く抱きかかえると魔法の呪文を唱える
「『霧雨魔理沙』」
「ひっぐ……うぇぇっ……」
その呪文と共に幻想郷に名前が響く『普通の魔法使い魔理沙』は
「うえぇぇぇん!怖かったよぉ~!」
ただの少女である『霧雨魔理沙』に戻るのだ
・・・
事の起こりは紅霧異変の頃からである
魔理沙が名高い紅魔館に霊夢と共に向かって異変を解決した後
彼女に言われて八卦炉のメンテナンスを終え
気まぐれに彼女の家にまで運んだ事が切欠であった
部屋の中に居た彼女は充血した目で震えていた
そして、僕の姿を見つけた瞬間我慢していたものが噴出したのだろう
彼女は全力で僕に抱きついて泣き始めた
驚きながら彼女に何があったのかを聞くとポツリポツリと話し始めた
異変が終わった後、眠ろうとしたら
自分が弾幕によって命の危険に会う瞬間の事が思い出されて
眠る事ができなくなっていたそうだ
異変という時は一時の高揚感で恐怖を感じないだろうが
それが終わった後、恐怖はやってくる
相手が繊細な少女であるのなら余計にであろう
しかも、それを周りに知らせる人も居ない
だから、一人で何とかしないといけないと思っていた時に僕が来たのだ
安堵して泣き疲れた魔理沙はやっと眠る事ができたのだ
・・・
「うぅ~……ひっぐ……」
その日以来、異変が解決された後、魔理沙はこうしてやってきて泣く
エプロンドレスを脱ぐのは、それが戦闘装束であるからであり
それを着ている間は『普通の魔法使い魔理沙』であるからだった
そして、今この場に居るのはただの怖がりな少女である
ただの『霧雨魔理沙』であった
「怖かったよ……うっぐ……怖かったよ~」
「よしよし……」
ボロボロに泣きながら抱きついてくる彼女が泣き止むまで
僕はただひたすら優しく背中を擦る
それは、彼女が泣き疲れて眠るまで続けられた
・・・
「……すぅ…すぅ…」
抱きついたまま眠る魔理沙の頭を撫でると
昔聞いた事を思い出していた
・・・
『こんな思いをするのなら、異変解決に行かなくてもいいんじゃないのかい?』
昔ふと、疑問に思って魔理沙に聞いてみたら
魔理沙が首を横に振って
「それをしたら……霊夢が唱えた弾幕バトルの意味がなくなっちまうぜ」
「どういうことだい?」
「人間でも、妖怪と遊ぶ事ができる…そう言って霊夢は提唱したんだ」
名誉決闘……力の差がある妖怪と人がお互いに戦うため
そして、お互い遊びあうために作り出された博麗の巫女が提唱したルール
それにより、妖怪と人間が身近になったという功績は大きい
だが、初めの頃は誰一人としてそのルールに耳を貸さなかったのだ
幸い、提唱されてすぐに紅霧異変が起こった事で
今では幻想郷の中で知らぬ者が居ない程メジャーになったのだ
「でもな、このルールの一番の難関な部分は『人間でも』って所なんだ」
魔理沙の言葉に納得する
如何に遊びと言えど、妖怪と人間では力の差がありすぎる
そう思った人間達も当時は沢山いたのだ
『妖怪と対等に遊べるはずがない』と思って居る者達が
「だからな……私が飛んで証明してやらないといけないんだ」
もし、仮に霊夢だけが紅霧異変の解決に向かっていたら
里の人達も『博麗の巫女さんだからなあ』と思い
名誉決闘…『スペルカードルール』はここまでメジャーにならなかっただろう
だが、生まれが普通の人間である魔理沙も解決に向かって
一緒に解決をした事により、里の人達も『弾幕』に興味を持ったのだ
「だから……私が異変を解決に行かないと、
名誉決闘が人間達から離れて行くかもしれないからな」
そういうと、魔理沙がため息をついて答える
「それに、私が居なくなったらまた別の人間が行く事になる」
そう呟くと、魔理沙が自分の肩を抱きしめて呟いた
「こんな怖い思いをするのは……私だけで十分だぜ」
・・・
「んっ……こう…りん」
魔理沙の寝言で長考していた意識が戻る
気が付けば、それなりの時間が過ぎていた
無論、魔理沙は気持ちよさそうに眠っているが
その姿は寒そうである
急いで用意してあった毛布で魔理沙を包むと
そのまま、ベッドに運ぶ事にする
「よいしょ……っと」
ベッドに魔理沙を寝かせると冷えないように布団をかぶせようとした時
(ぎゅっ……)
「むっ?」
寝ている魔理沙の手が僕の袖をがっしりと掴んでいた
その手を離そうと思って、手を伸ばした時
「……こわい…よぉ……」
その寝言を聞いて僕はため息と共に外そうと思っていた手を戻し
「よしよし……」
魔理沙が寝ているベッドの傍に座り
寝ている魔理沙の頭を優しく撫でる事にした
それだけが、異変を解決に向かった人間に対して
(お疲れ様……魔理沙)
僕ができる唯一の事なのだろうから
逮捕理由は魔理沙の可愛さで悶死者を出した事ですねわかります。
彼女もがんばったのに!
私もやはり元が外の世界の現代人(神かもしれないが)の早苗のことを思いました。
日本では普段生活していて命の危険を感じることはないですし。
だがこれもありだ
裸で抱きつくべきだろう
有罪だ
ただ厳密に言うと弾幕決闘は「妖怪が異変を起こしやすく、人間が妖怪を退治しやすくするため」の物なので、巫女が居る限り魔理沙や里の人間が異変を解決する必然はないような。妖怪は博霊の巫女を殺してはいけない決まりなので、魔理沙は無駄なリスクを被っていることに……もしかして、魔理沙はその辺の事情を知らないのでしょうか?
これは同意します。素晴らしいさすが脇役さんだ。
けど、弾幕ごっこ自体に恐怖する魔理沙は、なんか違うなあ。
以後貴様はすばらしいssを書くことを罰とする
あとがきの内容についてはしっかり伝わった
よって無罪
魔理沙の可愛さに悶死しそうだ!
ところで個人的な意見ですがスペカルールは霊夢が無謀にも自分に張り合ってくる魔理沙を
極力危険から守る為に作った法なんじゃないかと思っています。
霊夢は黙ってますが魔理沙はその意図を知っていてこういう行動に出たんじゃないかなぁなんて想ったり。
でも怖いものは怖いですよね。私も魔理沙をよしよししてあげたい