Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

いっけね、傘忘れた

2009/10/07 00:30:25
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こちらに接近してくる大量の茄子に、魔理沙は唖然としていた。


茄子と言っても、麻婆茄子に使えるような手頃なサイズではない。
あきらかに魔理沙より大きい超巨大茄子が、しかも地平線を埋め尽くすほど大群である。
茄子には手も足もはえていない。ただ、飛び跳ねながら迫ってくる。
ボーリングのボールがあったら爽快だろうな、と魔理沙が眺めていると、全ての茄子が同時に180度回転した。
茄子の上部には小傘の顔があった。

『こ~がさ~、こ~がさ~、た~っぷり~、こ~がさ~』

歌を歌いながら迫ってくる茄子型小傘の大群。
その光景は、百戦錬磨の魔理沙にとっても恐ろしいものであった。
故に、魔理沙は逃げ出したくなったが、なぜか体が動かない。
そんなの知ったこっちゃない、と迫りくる茄子小傘。そして──

「むぎゅり」
何かが何かに押しつぶされる音がした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「ひっ」
魔理沙はベッドから飛び起きた。
「なんだ、夢だったか……」
額が汗でびっしょりだ。嫌な夢だったな、と思い起こすだけで思わず体が震える。
ちょっと昼寝をしただけで、こんな目に会うとは。
「どれ、霊夢で憂さ晴らしするとするか」
研究だって手につきそうにないときは、茶を目的に神社に行くのが一番である。
魔理沙は箒を手にして、玄関から外に出た。
外はあいにく、雨が降っていた。
「なんだ、雨か」
文句を言いながら傘置き場から傘を取ろうとしたが、傘がない。
「あれ? ここにあったたくさんの傘はどこ行った?」
家中探してみたが、どこにもない。
「むむむぅ、この魔理沙さんに濡れて行けと、そういいたいんだな? いいだろう、受けて立つぜ」
魔理沙は外に出ると、箒に乗って地面を強く蹴り、空に飛び立った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「霊夢、風呂貸して。その間に茶と茶菓子を準備してくれると助かる」
「いいから帰れ」

ずぶ濡れになった魔理沙を見て、霊夢は顔を曇らせた。

「まあ、そう言わずにな……って、うん?これは私の傘じゃないか?」
ふと魔理沙は、傘置き場の中にあるたくさんの傘の中から、自分の傘を見つけた。
「そうよ、あんたの」
「それだけじゃない、これも、こっちも、ああこいつも、私の傘がいっぱいあるぜ」
「あんたが忘れてったのよ」
「そうだっけ?」
ぽりぽり、と頭をかく魔理沙を、霊夢は指差しながら言った。
「あんたねぇ、ここに来る時雨が降ってたら傘をさすけど、その傘、基本忘れるでしょ?
『雨があがったら帰るぜ』とか言って、あがったら傘持っていかないじゃないの」
「あ、そういうことか」
と言いながら、その傘置き場を物色する魔理沙。
「うん、こいつはレミリアの日傘じゃないか?」
「そうよ。昼に来て深夜に追い出すから、日傘忘れてくのよ」
「こっちには紫の傘もあるな」
「酔って置いていくのよ」
「これって幽香の傘じゃないか?」
「いつ忘れてったのか、見当もつかないわ」
とんでもない量の忘れ傘である。
「どいつもこいつも、あの化け傘が知ったら泣くぞ」
「そうでもないわ」
霊夢はそう言うと、傘置き場の奥から1本の傘を取りだした。
あの茄子傘だった。
「あいつもか……」
魔理沙はどういう反応をしたらいいのか、自分でも分からなくなった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「あー、いい湯だったぜ」
結局、風呂で温まった魔理沙。霊夢はしぶしぶながらお茶を出した。
「お、悪いな」
「全然悪いなんて思ってないんでしょ?」
「まあな」
悪びれる様子もなく、遠慮もせず、お茶をたしなんでいた、ちょうどその時
『茄子麻呂───────!!』
外から台風のように大きな声がした。
『茄子麻呂、どこなの、どこに行っちゃったのー!』
なんの声だかはおおよそ目星がついていたが、霊夢と魔理沙は外を見た。
予想通り、小傘が傘もささずに雨の中、その名を呼んでいたのである。
「なあ、霊夢」
「何よ」
「茄子麻呂って、誰だ?」
「さあ」
「私は、それっぽい奴を傘置き場の中で見たぜ」
「奇遇ね、私もよ」
と言ったところ、小傘が2人の方を見て、すっとんできた。
「本当!? それ本当!?」
霊夢の服をつかんで、前後にゆさぶる小傘。
「あんた、耳がいいのね。でも室内で下駄は脱ぎなさい」
「で、どこなの、どこにいるの!?」
「いいから下駄脱げ」
小傘は下駄を脱ぐ前に、霊夢を離すと玄関の方にすっ飛んで行った。そして
「見つけたぁ!」
傘置き場の中から、迷わずあの茄子傘を引きぬくと、折れるぐらい強く抱きしめた。
「どこ行ってたのよ、心配したんだから!」
涙をぼろぼろこぼしながら、小傘は傘との再会を喜んでいた。
その様子を霊夢と魔理沙はただ茫然と眺めていることしかできなかった。
すすり泣きが変な方向からすると思ったら、玄爺がもらい泣きしていた。
「その傘、茄子麻呂って名前なのか?」
魔理沙が聞くと、小傘は
「本名は『東海道五十三次もびっくり・ハートフル茄子麻呂・リンカーン・スプラッシュ・ゴン太』よ」
「もうちょっといい名前はなかったのか」
魔理沙のつぶやきも、小傘には聞こえていなかった。
「しかし、あんたが傘を忘れるとはねぇ」
霊夢が言うと小傘はキッと霊夢を睨んで
「誰が忘れるもんですか! 茄子麻呂は台風に飛ばされて飛んで行っちゃったのよ!」
と、叱咤した。
それから2人が半ば呆れている前で、小傘はペンをとりだして、
「そうだ、名前を書いておこう。そうすればわちきの傘だと分かるわ」
誰も持ち主を見誤らないわよ、と霊夢は言おうとしたが、玄爺があまりにもおいおい泣いているのでやめた。
「もう大丈夫、ずっと離さないわよ、茄子麻呂。寝るときもお風呂も一緒だよ。さあ、帰ろう」
外はいつのまにか雨があがっていた。
大きな舌を振りまわし、スキップしながらるんるん帰る小傘の後ろ姿を見て、霊夢と魔理沙は何も言えなかった。
「御主人様」
玄爺が、涙でうるんだ声でぼそりと言った。
「青春とは美しいものですなぁ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「じゃあ、もう帰るぜ」
雨も上がり、夕日が空を赤く染めたころ、魔理沙は箒に乗って神社をあとにした。
「まったく、今日は珍客ぞろいだったわね」
霊夢はそう言いながら、空を見て雨戸を閉め始めた。
なんだか雲ゆきが怪しかったので、ひょっとすると台風が来るかもしれない、と思ったのであった。
そして、全ての雨戸を閉めた時、ふと思い出した。
「魔理沙、傘持って帰らなかったわね。まあ、私は困らないからいいけど」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


夜。
魔理沙はすさまじいデジャヴに襲われていた。
というのも、こちらに大量のタラコが、接近してくるのである。
すぐに魔理沙は、これは夢なんだな、と理解した。
しかし、いくら夢とは言えど、いざ目にすると恐怖してしまう。
なんせ相手はタラコである。
さっさと覚めないかなぁ、と魔理沙が眺めていると、全てのタラコが同時に180度回転した。
タラコの上部にはやっぱり小傘の顔があった。

『たた~らこ~、たた~らこ~、た~っぷり~、たた~らこ~』

そして──


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「ひっ」
魔理沙は飛び起きた。
「あー、そう言えば傘を持って帰るの忘れたな」
外から凄い風雨の音がするので、魔理沙は窓の外を見た。
台風であった。すさまじい台風が吹き荒れる中、自分の庭に何かが刺さっているのを魔理沙は見つけた。
厄介なことになるとアレなので、魔理沙は外に出て、それの正体を確認した。
地面に刺さっていたのは小傘であった。
そして近くには、あの茄子傘が落ちていた。
「こんな日に飛んでたら墜落するに決まってるぜ」
と言いながら、魔理沙はその茄子傘に、名前が書いてあるのを見つけた。
昼間、小傘が自分の名前を書いていた部分だった。

『 多々良 小  』

「こいつ、傘忘れやがったな」


 
作者も頻繁に傘忘れる。
バスの中とか、バスタブの中とか
地球人撲滅組合
コメント



1.岩山更夜削除
うまい。と純粋に思うと同時に、何度も吹いてしまったw
たらこと小傘、確かに語呂が似ているなぁと思ったらなるほど、多々良とたらこでしたかw
最後もすとんと綺麗に落ちていて、どこか落語的な印象を受けました。
面白い話、ごちそうさまでした。
2.名前が無い程度の能力削除
ストレートな落ちに納得。
とりあえず茄子小傘はストラップにされるべき。
あと、作者は風呂でナニをしているのか簡潔に述べるべき。
3.名前が無い程度の能力削除
しょっぱなと落ちで吹いたw
4.名前が無い程度の能力削除
本体忘れるなよwww
5.名前が無い程度の能力削除
た"たらこ"がさwww
"たらこ"と呼ぶのを流行らせ…小傘でいいや。
6.名前が無い程度の能力削除
オチもうまい。
そういえば、「ふと気がつくと 夢の中」という歌詞がその歌にある。
7.名前が無い程度の能力削除
>バスタブの中
ああ、干しといたのをそのまま忘れるんですね、分かります

俺は忘れるよりも強風で御臨終になる方が多いなぁ……
8.名前が無い程度の能力削除
上手い。
9.名前が無い程度の能力削除
うまい!
10.名前が無い程度の能力削除
面白かったw
落ちもうまい
11.名前が無い程度の能力削除
ごく自然にいる爺に笑ったw
12.名前が無い程度の能力削除
予想外すぎるw

一本とられました
13.名前が無い程度の能力削除
あのCMが脳内再生されて撃沈しました。大爆笑。
14.名前が無い程度の能力削除
これはうまい!
15.名前が無い程度の能力削除
ううううううううううううううう



うまい!
16.名前が無い程度の能力削除
まぁ、言いたいことはほとんど他の人が言ってくれちゃったが……なぜこれを言わない。

あ、玄爺さんチャース!
17.名前が無い程度の能力削除
内容もさることながら、オチがうまい!
18.名前が無い程度の能力削除
一本とられました

あのCMのインパクトはやばいw
19.名前が無い程度の能力削除
ふと傘が擬人化して小傘と青春する様を幻視した
20.名前が無い程度の能力削除
なんて落語的なオチなんだw
21.名前が無い程度の能力削除
たっぷりたたらこで腹筋が崩壊しました。
美しい天丼に愛を感じます。
22.名前が無い程度の能力削除
あのCM、実際あったら怖いですよねww
あ、でも小傘なら……いやごめんやっぱ無理

畳み込むようなラストにワロタw
23.名前が無い程度の能力削除
というか、もはや創想話内ではあの傘は茄子麻呂で通じるんだな……
24.地球人撲滅組合削除
コメントありがとうございました。
台風一過、レス返ししていきます。


>01
 あたしも落語は大好きですw
>02
 そんなストラップがあったら是非ほしいですw
 お風呂で何をしてるか? そこらへんは、秘密ということでw
>03
 ありがとうございますw
>04
 あれってどっちが本体なんでしょうねw
 いや、たぶん傘の方なんだろうけど。
>05
 『小傘』の方が可愛いですよ。名前的に。
>06
 その部分も使おうかと思ったのですが、知ってる人が少なそうだったのでやめましたw
>07
 そいつは致し方ない
>08
 有難うございますw
>09
 ありがとうございますw
>10
 ありがとうございますw
 落ちを書きたいが為に書いた作品と言っても過言ではないのでw
>11
 げんじっちゃん、ちゃっかりw
>12
 一本取っt(yr
 いや、ありがとうござましたw
>13
 あのCMに勝るシュールCMを、私は未だ見たことがありませんw
>14
 あ、ありがとうございますw
>15
 あああああああああああああああ
 ありがとうございますw
>16
 チャース!
>17
 ありがとうございますww
>18
 最初に見たときはトラウマになりましたw
>19
 一瞬、人間やめて傘になりたいと思っちゃったじゃないですかw
>20
 小傘って何か落語っぽいキャラな気がします。気のせいでしょうかねww
>21
 原作CMのたっぷりたらこで、私も転げましたw
>22
 もはやインベーダーゲームですねw
 あの敵を全部タラコにしたら、さぞ怖いゲームになると思います。
>23
 絶対通じませんww
 検索してみましたが、3作品しかないですものw