☆今作は作品集44『憎々しいなら墓場まで』http://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_p/?mode=read&key=1243863698&log=44の設定を引き継いではいますが無害です☆
☆大切なのは『妹紅と輝夜が結婚して同じ家に住んでいる』という一点のみです☆
☆関連作品には『新婚さんシリーズ』のタグを付けていきたいと思います☆
☆それでもよろしければ☆
迷いの竹林のそのまた外れに建つ、妹紅と輝夜の家。
そこに、一人の客人がやってきていた。
「駄目よ、妹紅を貴女に譲るわけにはいかないわ。あれは私のものだから」
「そこをなんとか。どうにも人手が足りないんだ」
さっきから、似たような問答を繰り返すふたり。あと輝夜、私はいつからお前のものになったんだ。しかも、あれ扱いか。
声には出さない、無駄だから。
それでも慧音さえこの場にいなければ、内装が荒れるのも構わず久々の殺し合いに移行してしまう程度にはイラッと来ていた。
具体的にはこの間、私が薪割りをしている最中に「も~こ~う~」と間延びした声を出しながら飛びかかってきた時くらいムカついた。
その時は、偶然手に持っていた鉈があいつの頸動脈に対して大活躍したもんだ。
事の起こりは、こうだ。
最近人里のあたりで起こった局地的豪雨で、一部の家屋に被害が出た。
動ける人間が総出で改修工事を進めていたらしいんだが、そこでさらに事故が起こってしまった。
結果、工事の責任者に泣き付かれた慧音が、人手を探して奔走する羽目になった、こういう訳だ。
もちろん普段から世話になっている慧音の頼みだし、安定した収入があるのも嬉しい。
私としては、受けるのもやぶさかでは無いんだけど……。
「駄目なものは駄目。人手なら永遠亭から出せるだけ出すわ。妹紅一人と比べれば破格の労働力でしょう?」
「もちろん、出来るならそれも別としてお願いしたい。まともに化けられる者がどれくらい居るかは知らんがな」
輝夜は終始この調子だし、あまりに同じ会話の繰り返しで、目に見えて慧音にイライラが貯まっていくのがわかる。
よし、こうなったら。
「なあ、わたしは別に……」「妹紅は黙ってて」「妹紅、少し黙っていてくれないか」
あれー? なんでこの人たち急に息がぴったりなの? そもそも、私が人里で働くかどうかって話じゃ無かったっけか。
なんで当事者そっちのけなんだよ。
私が少し拗ね気味にふたりの会話を聞いていると、なんだかどんどんキナ臭い方向に進んでいってるみたいだった。
「いいわ、分からず屋には少しキツイお仕置きが必要なようね」
「ふん、箱入りの姫様に世事の話題は縁遠かったか? いいだろう、受けて立ってやる」
あらら、これは不味いな。
仕方がないので実力行使。勢いよく立ち上がろうとした、ふたりの頭にげんこつを落とす。輝夜の方には少し強めに。
※
※
※
ふたりを座り直させる。
別に怒っているつもりはないが、私の一撃で我に返ったようで、とりあえずは大人しくなった。
「わたしを無視して話を進めるのはやめてくれ。慧音、話は分かった。出来る限り早く手伝えるようにするから、今日のところは帰ってくれないか」
「そ、そうか、それは助かる。都合が付いたらウチまで来てくれ、そこで詳しい打ち合わせをしよう」
済まなかった。と言い残し、慧音が帰っていった。
さあ、問題はこっちだな。そんな私の気苦労も知らず、出て行く慧音にはしたなく舌を出している輝夜。少なくとも、姫のやる事じゃないだろ。
……いったい、なんなんだ。
「おい、輝夜。どういうつもりか聞かせてもらおうか」
「言いたくないわ」
「いくらなんでも、それはないだろ? あの慧音が私を頼ってくるなんて、よっぽどの事なんだぞ。それをあんな応対しやがって」
「なによ、随分あの半獣の肩を持つのね」
「そんなんじゃない。困ってる相手を見過ごせるか」
輝夜が目を丸くする。なんだ、そんなに変な事言ったかな。
「そうよね。妹紅はそういう人だったわよね」
今度は目を細め、勝手に納得した様子で頷いている。その後、居住まいを正し。
「ごめんなさい」
と、謝ってきた。こいつのこういう姿は新鮮だな、じゃなくて。
「謝るなら、わたしにじゃなくて慧音にだろ」
突き放した言い方をしてしまう。それでも、輝夜の笑みはさらに柔らかくなって。
「ええ、そうね。永遠亭にも人手を出して貰えるように手紙を書くわ」
その手紙を届けるのは、きっと私なんだろうな。別にいいけどさ。
※
※
※
しばらく時間が経って。
「それで、日程はどんな感じなの?」
慧音との打ち合わせから帰ってきた私に、開口一番浴びせられた質問がこれだ。
「うん、一月はかからないと思うってさ。兎達も来てくれたから、資材の調達も問題ないみたいだな」
「そう、良かったわ」
言って、立ち上がる輝夜。何を思ったか箪笥に向かい、いつの間にか用意してあった大きめの鞄に私の衣類を詰め込み始める。
「何してるんだ?」
「何って、一月近く家を出るなら着替えや生活用品は必要でしょう? まぁ、当座の分さえ持っていけば、後で足りない分は鈴仙=イナバにでも届けさせるから」
突然輝夜が、訳の分からないことを言い出した。
家を出る? 誰が? 私か? 話の流れからすると、そんな感じだよなぁ。
どうにも嫌な予感がする。こういう時の勘って外れたことが無いんだよな、私。
先を聞くべきか否か。いや、これは選択肢になってないか。
そんな、自問自答の後、おそるおそる輝夜に呼びかける。
「なあ、もしかして、工事の間、わたしが人里に泊まり込む、とか思ってないか?」
区切りがちに言った私の言葉で、輝夜の動きが止まる。ああ、やっぱりな。これは誰が悪いんだ? そうか、私か。
ゆっくりと振り返る輝夜に、努めて明るく、何でもないことのように。
「あのな、わたしがお前を置いて、どこかに行くはずがないだろ」
輝夜の顔がみるみる朱く染まっていく。きっと、私の顔も同じかそれ以上に。
しばらく無言の時間が過ぎる。
「え……だって」
「だってじゃない。お前をこの家に一人残したりはしない」
何を言っているんだ私は、これじゃまるで……。
私の考えを見抜いたのか、輝夜が面倒臭い笑いを浮かべて私の心の声を引き継ぐ。
「遅めのプロポーズ?」
私は、鞄をひったくり、輝夜の顔面目掛けて投げつけた。
※
※
※
結局、私にとっては当初の予定通り、人里の現場まで今の家から通う事になった。
出がけに、輝夜お手製の弁当を持たされて。
「いってらっしゃい、頑張ってきてね」
などと笑顔で送り出されては、こちらとしてもどう返していいものかわからない。
「ああ、うん」
と、曖昧に頷いて足早にその場を立ち去る。
なんだか、目を閉じて上向き加減な輝夜がいた気がするが気のせいだ。そうに違いない。
柔らかくなんか無かった、断じて無かった。
初日の仕事も順調に進み、昼飯時。
「おっ、愛妻弁当か!?」とはやし立てる周囲の人間達を一睨みで黙らせる。そうだよ、悪いかよ。
ともあれ、腹は空いている。あいつの料理の腕前から考えて、きちんと食べられる物だとは思うが、油断は出来ない。
最悪、慧音にたかるとしようか。
今考えれば、これも『嫌な予感』に分類されるよな。と気づいたのは、家に帰ってからだったけど。
「…………あんにゃろ~~~~~!!!」
開けた弁当箱をのぞき込んでいた人間達が、私のうなり声をかき消すくらいの歓声を放つ。
色とりどりのおかず、弁当箱の半分を占める御飯。
その上には桜田麩(さくらでんぶ)で描かれたハートマーク。
そこには、さらにそぼろを使ってこう書かれていた。
『アイ ラブ もこう』
☆大切なのは『妹紅と輝夜が結婚して同じ家に住んでいる』という一点のみです☆
☆関連作品には『新婚さんシリーズ』のタグを付けていきたいと思います☆
☆それでもよろしければ☆
迷いの竹林のそのまた外れに建つ、妹紅と輝夜の家。
そこに、一人の客人がやってきていた。
「駄目よ、妹紅を貴女に譲るわけにはいかないわ。あれは私のものだから」
「そこをなんとか。どうにも人手が足りないんだ」
さっきから、似たような問答を繰り返すふたり。あと輝夜、私はいつからお前のものになったんだ。しかも、あれ扱いか。
声には出さない、無駄だから。
それでも慧音さえこの場にいなければ、内装が荒れるのも構わず久々の殺し合いに移行してしまう程度にはイラッと来ていた。
具体的にはこの間、私が薪割りをしている最中に「も~こ~う~」と間延びした声を出しながら飛びかかってきた時くらいムカついた。
その時は、偶然手に持っていた鉈があいつの頸動脈に対して大活躍したもんだ。
事の起こりは、こうだ。
最近人里のあたりで起こった局地的豪雨で、一部の家屋に被害が出た。
動ける人間が総出で改修工事を進めていたらしいんだが、そこでさらに事故が起こってしまった。
結果、工事の責任者に泣き付かれた慧音が、人手を探して奔走する羽目になった、こういう訳だ。
もちろん普段から世話になっている慧音の頼みだし、安定した収入があるのも嬉しい。
私としては、受けるのもやぶさかでは無いんだけど……。
「駄目なものは駄目。人手なら永遠亭から出せるだけ出すわ。妹紅一人と比べれば破格の労働力でしょう?」
「もちろん、出来るならそれも別としてお願いしたい。まともに化けられる者がどれくらい居るかは知らんがな」
輝夜は終始この調子だし、あまりに同じ会話の繰り返しで、目に見えて慧音にイライラが貯まっていくのがわかる。
よし、こうなったら。
「なあ、わたしは別に……」「妹紅は黙ってて」「妹紅、少し黙っていてくれないか」
あれー? なんでこの人たち急に息がぴったりなの? そもそも、私が人里で働くかどうかって話じゃ無かったっけか。
なんで当事者そっちのけなんだよ。
私が少し拗ね気味にふたりの会話を聞いていると、なんだかどんどんキナ臭い方向に進んでいってるみたいだった。
「いいわ、分からず屋には少しキツイお仕置きが必要なようね」
「ふん、箱入りの姫様に世事の話題は縁遠かったか? いいだろう、受けて立ってやる」
あらら、これは不味いな。
仕方がないので実力行使。勢いよく立ち上がろうとした、ふたりの頭にげんこつを落とす。輝夜の方には少し強めに。
※
※
※
ふたりを座り直させる。
別に怒っているつもりはないが、私の一撃で我に返ったようで、とりあえずは大人しくなった。
「わたしを無視して話を進めるのはやめてくれ。慧音、話は分かった。出来る限り早く手伝えるようにするから、今日のところは帰ってくれないか」
「そ、そうか、それは助かる。都合が付いたらウチまで来てくれ、そこで詳しい打ち合わせをしよう」
済まなかった。と言い残し、慧音が帰っていった。
さあ、問題はこっちだな。そんな私の気苦労も知らず、出て行く慧音にはしたなく舌を出している輝夜。少なくとも、姫のやる事じゃないだろ。
……いったい、なんなんだ。
「おい、輝夜。どういうつもりか聞かせてもらおうか」
「言いたくないわ」
「いくらなんでも、それはないだろ? あの慧音が私を頼ってくるなんて、よっぽどの事なんだぞ。それをあんな応対しやがって」
「なによ、随分あの半獣の肩を持つのね」
「そんなんじゃない。困ってる相手を見過ごせるか」
輝夜が目を丸くする。なんだ、そんなに変な事言ったかな。
「そうよね。妹紅はそういう人だったわよね」
今度は目を細め、勝手に納得した様子で頷いている。その後、居住まいを正し。
「ごめんなさい」
と、謝ってきた。こいつのこういう姿は新鮮だな、じゃなくて。
「謝るなら、わたしにじゃなくて慧音にだろ」
突き放した言い方をしてしまう。それでも、輝夜の笑みはさらに柔らかくなって。
「ええ、そうね。永遠亭にも人手を出して貰えるように手紙を書くわ」
その手紙を届けるのは、きっと私なんだろうな。別にいいけどさ。
※
※
※
しばらく時間が経って。
「それで、日程はどんな感じなの?」
慧音との打ち合わせから帰ってきた私に、開口一番浴びせられた質問がこれだ。
「うん、一月はかからないと思うってさ。兎達も来てくれたから、資材の調達も問題ないみたいだな」
「そう、良かったわ」
言って、立ち上がる輝夜。何を思ったか箪笥に向かい、いつの間にか用意してあった大きめの鞄に私の衣類を詰め込み始める。
「何してるんだ?」
「何って、一月近く家を出るなら着替えや生活用品は必要でしょう? まぁ、当座の分さえ持っていけば、後で足りない分は鈴仙=イナバにでも届けさせるから」
突然輝夜が、訳の分からないことを言い出した。
家を出る? 誰が? 私か? 話の流れからすると、そんな感じだよなぁ。
どうにも嫌な予感がする。こういう時の勘って外れたことが無いんだよな、私。
先を聞くべきか否か。いや、これは選択肢になってないか。
そんな、自問自答の後、おそるおそる輝夜に呼びかける。
「なあ、もしかして、工事の間、わたしが人里に泊まり込む、とか思ってないか?」
区切りがちに言った私の言葉で、輝夜の動きが止まる。ああ、やっぱりな。これは誰が悪いんだ? そうか、私か。
ゆっくりと振り返る輝夜に、努めて明るく、何でもないことのように。
「あのな、わたしがお前を置いて、どこかに行くはずがないだろ」
輝夜の顔がみるみる朱く染まっていく。きっと、私の顔も同じかそれ以上に。
しばらく無言の時間が過ぎる。
「え……だって」
「だってじゃない。お前をこの家に一人残したりはしない」
何を言っているんだ私は、これじゃまるで……。
私の考えを見抜いたのか、輝夜が面倒臭い笑いを浮かべて私の心の声を引き継ぐ。
「遅めのプロポーズ?」
私は、鞄をひったくり、輝夜の顔面目掛けて投げつけた。
※
※
※
結局、私にとっては当初の予定通り、人里の現場まで今の家から通う事になった。
出がけに、輝夜お手製の弁当を持たされて。
「いってらっしゃい、頑張ってきてね」
などと笑顔で送り出されては、こちらとしてもどう返していいものかわからない。
「ああ、うん」
と、曖昧に頷いて足早にその場を立ち去る。
なんだか、目を閉じて上向き加減な輝夜がいた気がするが気のせいだ。そうに違いない。
柔らかくなんか無かった、断じて無かった。
初日の仕事も順調に進み、昼飯時。
「おっ、愛妻弁当か!?」とはやし立てる周囲の人間達を一睨みで黙らせる。そうだよ、悪いかよ。
ともあれ、腹は空いている。あいつの料理の腕前から考えて、きちんと食べられる物だとは思うが、油断は出来ない。
最悪、慧音にたかるとしようか。
今考えれば、これも『嫌な予感』に分類されるよな。と気づいたのは、家に帰ってからだったけど。
「…………あんにゃろ~~~~~!!!」
開けた弁当箱をのぞき込んでいた人間達が、私のうなり声をかき消すくらいの歓声を放つ。
色とりどりのおかず、弁当箱の半分を占める御飯。
その上には桜田麩(さくらでんぶ)で描かれたハートマーク。
そこには、さらにそぼろを使ってこう書かれていた。
『アイ ラブ もこう』
とにかく別として、可愛いのは愛し合えているかどうかで決まるかと。
もこがつんでれで且つ幸せ者なので、ええ、もう、それだけで。
いいぞもっとやれ!
これは実にいいものだ
待ってました&もっとやれwww
なんだよこれ、なんなんだよコレは~、ほんとにもう
ちくしょう、これでもかって位、幸せふりまきやがって~
許さん、続けろ!
かわいすぎる