「清く正しい」
「博麗霊夢です」
「台詞取られた!? しかも、清くも正しくも無い人に!」
「捻り潰すわよ?」
「すみませんでした」
軽いやりとりをした後、縁側に座る霊夢の隣りへと腰を下ろす。
「で、今日は何の用かしら?」
「暇潰し」
「あんたを潰してあげようか?」
「遠慮しときます」
「いや、遠慮しないで」
笑顔で針とお札を構える霊夢。
それに対して文は、一瞬で霊夢から離れて、風を操り突風を起こす。
「っ!」
とっさのことに体勢を崩しかけるが、なんとか堪えた。だが、針とお札は風に散らされてしまった。
「今日は私の勝ちですね」
風を止めて、勝者の笑みを浮かべながら霊夢の方へと近寄る文。
「甘い!」
「へっ?」
霊夢は急に顔を上げて、そう叫ぶ。
ぽかんと一瞬止まってしまう文。だが、それがいけなかった。
「目潰し!」
「まさかの目潰し!? 痛い! 地味に痛い!」
「針やお札が無くても、巫女は戦えるのよ。先代の巫女なんか、目潰しだけで千の妖怪を退治したらしいわ」
「巫女怖っ!?」
文は両目を押さえたまま、その場にうずくまる。
いくら力のある妖怪といえども、目を突かれてはそう簡単に痛みは引かない。
「痛い……うぅ」
「はぁ、仕方無いわね」
わざとらしく溜息を吐いて、文に近寄る。
そして――
「きゃうっ!?」
軽く蹴った。
うずくまっていた体勢を崩し、地面へと味気無い口付けを交わすはめになった。
「普通は手を差し伸べません!? 何で蹴り!?」
「いや、痛そうだからとどめを刺して、楽にさせてあげようかと」
「手当てをするという選択肢は!?」
「埋葬ならしてあげるけど」
「殺されるー!?」
ぎゃあぎゃあと、そんなやりとりをする。
互いに、ふざけあっているのは分かっている。
もし霊夢が本気なら、ここで問答無用に追討ちをかけるし、文が本気ならばこう易々と負けたりしない。
妙な信頼感があるからこそ出来るじゃれあいだ。
「はぁ……あんたはわざわざ毎回、こんなくだらないやりとりをするために来てるわけ?」
「分かっていてそれに付き合ってくれるなんて……霊夢さんも満更じゃないわけですね」
「あら? 目潰しは割と本気だったわよ」
「でしょうね。痛かったです」
起き上がり、再び霊夢の隣りへと腰を下ろす。
「いやぁ、あなたと話してると若返った感じがします」
「年寄りっぽいわねぇ」
「見た目は超可愛い少女ですけどね」
「…………」
「あのー……突っ込んで欲しいのですが……」
「自分から突っ込んで欲しいって言うなんて、変態ね」
「何の話ですか!?」
「はいはい、黙れ。私はお茶を飲みながら煎餅食べるのに忙しいのよ」
はむっと煎餅を咥えて、もきゅもきゅと口を動かす。そして、湯飲みに手を伸ばし、お茶を飲む。
ほうっと息を吐いて、リラックスするその表情は、とても成人前の少女には見えなかった。
「霊夢さん、ばばくさい」
「スペルカード、湯飲み『お茶かけ放題』発動」
「あっつ!?」
ぐおぉ、と喚きながらお茶をかけられた顔を押さえる文。
霊夢はぴくりとも動じない。
「火傷の痕が出来ちゃう!」
「大丈夫、そんな熱く無いから。あ、文」
「はい?」
「あんたのせいでお茶無くなったから、新しく入れてきて」
「被害者は私何ですけど!?」
「はいはい、入れてきたらご褒美にこの前紫から貰った、銀のエンゼルとかいう良く分からない物あげるから」
「いらないですよ!」
「銀のエンゼル四枚よ?」
「中途半端だー!?」
「早く行ってきてよ。幻想郷最速なんでしょ」
無理矢理銀のエンゼル四枚を渡されて、仕方無いといったように溜息を吐きながら、お茶を入れに行った。
霊夢は、はむはむと煎餅を食べている。
「はい、どうぞ」
「ん、あんがと。あ、あんたも自分の入れてきたのね」
「えぇ、せっかくですから私も」
「誰が飲んで良いって言った?」
「酷い!」
「冗談よ」
「ですよねー」
二人揃ってお茶を飲む。
ほわぁっと、息を吐く。
「良いですねぇ」
「文、ばばくさい」
「そういう霊夢さんこそ」
「また潰すわよ?」
「はは、すみません」
軽く笑って流す文。
ふと空を見上げると、どこまでも青い空が、いつもより高く見えた。
「霊夢さん、秋ですねぇ」
「そうね」
「秋といえば、柿や焼き芋」
「あら意外、あんたも食べ物が真っ先に思い浮かぶのね」
「女の子ですもの」
「女の子がみんな食べ物優先みたいな言い方するな」
「そういう霊夢さんは?」
「もちろん、食欲の秋!」
「一緒じゃないですか」
「私も女の子だもん」
「女の子がみんな食べ物優先みたいな言い方は、良くないですよ」
「あら? じゃあ今から焼き芋やろうと思ってたけど、文はいらないのね」
「いります!」
ビシッと右手をあげて、欲しいですアピールをする文。
「お座り!」
「もう座ってます」
「む、ならお手!」
「はい」
霊夢が差し出した手のひらに、文は手をちょこんと乗せる。
「も一つお手!」
「はい」
「三回回ってスカートの裾を持ち上げながら、にゃぃと言いなさい」
「はい……って出来ません!」
「まぁ、本当にやったら引くけどね」
「ですよねー」
「それじゃあ、芋持ってくるからあんたは落ち葉集めて」
「うへぇ、私が集め役ですかぁ」
「文句言うならスカート脱がすわよ」
「どんな脅し文句!? 普通は、食べさせないよ、とかじゃないですか!?」
「うるさい黙れ、脱がすわよ」
「はいはい、分かりましたよ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、風を操って落ち葉を集める文。
霊夢は、芋をとりに行く準備をしている。
「……芋調達してくるんですか」
「えぇ」
「何処からです?」
「秋姉妹のとこ」
「……行ってらっしゃい」
「うん、行ってくるわ」
文はもう何も言わなかった。ただ、霊夢の目が割と本気だったから、心の中で秋姉妹に逃げてーと叫んでおいた。
十数分後、服がボロボロになって涙目の秋姉妹ごと、霊夢は連れて帰ってきた。
なんだかんだで、みんなで仲良く焼き芋を食べたとさ。
焼き芋作って食べる少女達。いいですねぇ。
あ、焼き芋って皮ごと食べるとアレが出ないんですよ、霊夢さん。
ベストシーズンなのに…
秋姉妹…季節なのに…うぅ…
いいですね。この雰囲気!
私にもエンゼルをためていたころがありましたww
焼き芋作って笑顔で食べる少女たち、最高ですよね。
>>2様
もっと増えても良いはずです!
>>3様
私もみてみたいです。
>>4様
それでも笑顔で立ち直るのが秋姉妹。
>>5様
ぐだら、秋バージョン。こうなったら秋姉妹でぐだらを書くしか(ry
>>6様
ですよね。これから増えていきますよね!
>>7様
ありがとうございます!
銀のエンゼル、集まりきる前によく無くしてましたw
まさか幻想入りしてませんよね?