「お前でも風邪ひくんだな。」
魔理沙の言葉が頭に響いた。
「何よ、馬鹿は風邪ひかないとでも言いたいの?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……でも良いのか、寝てなくて。」
良いわけない。
けど、顔ぐらい見せておかないと、誰かさんが心配するじゃない。
「平気よ……と、言いたいところだけど、そうね。ここは大人しく寝てようかしら。」
「そうだぜ。どうせ大してすることもないんだろう?」
アンタね……皮肉はそんな、心配そうな顔で言うもんじゃないのよ?
本当はそんな顔をさせたく無かったのに……。
「失礼ね……まぁ良いわ。悪いけど、そういう訳だから帰ってくれる?」
「おいおい、つれないこと言うなよ。なんなら私が看病して──」
「結構よ。元よりそんな酷い風邪でも無いんだから。」
納得できないって顔ね。強がりだってばれちゃってるかしら。
「大丈夫よ、寝てれば良くなるわ。だからまた明日、いらっしゃい。」
根拠なんてないけど。これくらい言わないと、多分魔理沙は帰らない。
「……分かった。また明日来る。そんとき治ってなかったら、問答無用で看病だからな?」
「わかったわよ……。」
全く、お節介なんだから。そんなんだから、誤解する娘が増えるのよ……。
自覚の無い女たらしを見送って、私は一人、寝床に戻った。
違和感を感じたのは、部屋に入ってすぐだった。
部屋の中央に敷かれた布団。それがどうしたことか、綺麗に整えられていた。
確かに片付ける元気もなかったから、今朝は敷いたまま放置したのだが、これはどう見ても人の手が加えられている。
「…………紫、居るんでしょう?」
こんなことするの、私の知ってる中であいつしかいない。
「あら。気づかれてしまったかしら?」
わざと気づかせたくせに……白々しい。
「私風邪ひいてるの。だから──」
「ええ。ですから、看病に来ましたわ。」
眩暈がした。風邪とか関係なく。
「アンタね……さっきの話、聞いてたんでしょう?」
帰りなさいオーラ全開で睨んでやるも、紫は臆する事無く飄々としていた。
「そんなところに立ってても、風邪は良くならなくてよ?」
布団の隣を陣取り、枕をポンポンと叩く紫。
私に寝ろと言っているのか。
「言われなくても寝るから……お願いだからアンタも帰って──」
「ほら、お粥も用意したから。」
「お、お粥……?」
そ、そうね。栄養を摂るのは大事なことよね。
「し、仕方ないわね……。ご馳走になってあげるわ。」
紫の誘導に従って、布団に滑り込む私。
「霊夢……貴女着替えは?」
「どうせ、汗掻くんだから、その時着替えるわ。そんな事よりお粥はどこよ?」
「貴女は本当に食い意地が張ってるわね。」
そんなことはどうでもいい。とにかく私はお粥が食べたい。
「仕方ないですわね。ほら、此処に。」
そう言ってスキマから白い湯気と共に現れるお粥。
ひょい。
私は待ち切れず手を伸ばしたが、紫の手によってお預けをくらってしまった。
「ちょっと! 食べさせてくれるんじゃないの!?」
「もちろん、そのつもりですわ。だからほら、あーん。」
「なっ!?」
目の前に差し出されたレンゲには、美味しそうなお粥が。
食べさせるって、そういうこと……?
「あら。気が利かなくてごめんなさい。ふーふー。はい、これなら熱くないわ。ほら、あーん。」
私の驚愕の視線を、別に意味で捉えた紫──やめて、余計恥ずかしいから。
しかし、背に腹は代えられない。博霊の巫女は目の前にある食べ物を残すなんてことあってはならないのだ。
──えーい、ままよ!
「い、頂きます。」
ひょい。
再びお預けをくらい、憤慨する私。
「今度は何よ!?」
「霊夢……私は、“あーん”と言っているのよ? この意味、分かるわよね?」
しかし紫はと言うと、その顔に思いっきり失望の色を浮かべて、こっちに訴えていた。
食べさせて貰う手前、強く出れないのがうらめしい……。
「わ、わかったわよ……。」
「分かればよろしい♪ ほら、あーん。」
先程とは打って変わり、期待に瞳を輝かせる紫……一体こいつは何がしたいのよ。
「あ、あーん。」
恥ずかしさのあまり顔がものすごく熱い……ああ、なんだか熱っぽくなってきた気もする。
ふーふー。
はい、あーん。
あ、あーん。
お粥が無くなるまで、私たちはずっとこの行為を繰り返した。
「……ごちそうさま。」
「お粗末様。って貴女、顔赤いけど大丈夫?」
大丈夫なもんか。おかげでこっちは、頭がぼっーとして思考がまとまらない。
「もう寝た方が良いわね。ほら、手伝ってあげるから、これに着替えなさい。」
そう言ってスキマから出したのは、狐と猫のイラストが入ったパジャマだった。
──それ、完全にアンタの趣味でしょう?
「…………いい、じぶんでやる。」
「遠慮しないの。こう言う時ぐらい、甘えなさい。」
抵抗する気力も失った私は、されるがままに着せ替えられる。
これも全部、熱のせいであって、他意は無い……はず。
「ねぇ……こういうときじゃないと、甘えちゃだめ?」
「……なに言ってるかしらね、この子は。そうね……普段からこれくらい素直だったら、考えてあげても良くてよ?」
ああ、私は一体何を言ってるのだろう。
「……ぜんしょする。」
「霊夢……貴女本当に大丈夫?」
だから大丈夫だったら、アンタに看病なんかさせてないわよ……。
そうこうしているうちに、着替えも済んだ。
やっと寝られるんだ……なのに何でだろう。何故かすこし、さみしい。
「さて、私はこれで──」
やっぱり。悪戯が済んで、紫は満足しちゃったんだ
──そんなのずるい。わたしはまだ、甘えたりない。
「ねぇ、ゆかり。」
そう思ったら、自然と紫の手を引っ張ってる自分がいた。
「何かしら?」
「甘えて、いいんでしょ?」
本当に私らしくない……。
流石の紫も驚いた顔をしているし。
「…………もちろん。」
でも紫は、笑顔で答えてくれた。
それがどうしようもなく嬉しくて。
布団に潜り込んだ私の傍らで、添い寝してくれる紫にどうしても言いたくなった。
「ゆかり……。」
「なぁに、霊夢。」
「だいすき。」
これもきっと、熱のせい。
魔理沙の言葉が頭に響いた。
「何よ、馬鹿は風邪ひかないとでも言いたいの?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……でも良いのか、寝てなくて。」
良いわけない。
けど、顔ぐらい見せておかないと、誰かさんが心配するじゃない。
「平気よ……と、言いたいところだけど、そうね。ここは大人しく寝てようかしら。」
「そうだぜ。どうせ大してすることもないんだろう?」
アンタね……皮肉はそんな、心配そうな顔で言うもんじゃないのよ?
本当はそんな顔をさせたく無かったのに……。
「失礼ね……まぁ良いわ。悪いけど、そういう訳だから帰ってくれる?」
「おいおい、つれないこと言うなよ。なんなら私が看病して──」
「結構よ。元よりそんな酷い風邪でも無いんだから。」
納得できないって顔ね。強がりだってばれちゃってるかしら。
「大丈夫よ、寝てれば良くなるわ。だからまた明日、いらっしゃい。」
根拠なんてないけど。これくらい言わないと、多分魔理沙は帰らない。
「……分かった。また明日来る。そんとき治ってなかったら、問答無用で看病だからな?」
「わかったわよ……。」
全く、お節介なんだから。そんなんだから、誤解する娘が増えるのよ……。
自覚の無い女たらしを見送って、私は一人、寝床に戻った。
違和感を感じたのは、部屋に入ってすぐだった。
部屋の中央に敷かれた布団。それがどうしたことか、綺麗に整えられていた。
確かに片付ける元気もなかったから、今朝は敷いたまま放置したのだが、これはどう見ても人の手が加えられている。
「…………紫、居るんでしょう?」
こんなことするの、私の知ってる中であいつしかいない。
「あら。気づかれてしまったかしら?」
わざと気づかせたくせに……白々しい。
「私風邪ひいてるの。だから──」
「ええ。ですから、看病に来ましたわ。」
眩暈がした。風邪とか関係なく。
「アンタね……さっきの話、聞いてたんでしょう?」
帰りなさいオーラ全開で睨んでやるも、紫は臆する事無く飄々としていた。
「そんなところに立ってても、風邪は良くならなくてよ?」
布団の隣を陣取り、枕をポンポンと叩く紫。
私に寝ろと言っているのか。
「言われなくても寝るから……お願いだからアンタも帰って──」
「ほら、お粥も用意したから。」
「お、お粥……?」
そ、そうね。栄養を摂るのは大事なことよね。
「し、仕方ないわね……。ご馳走になってあげるわ。」
紫の誘導に従って、布団に滑り込む私。
「霊夢……貴女着替えは?」
「どうせ、汗掻くんだから、その時着替えるわ。そんな事よりお粥はどこよ?」
「貴女は本当に食い意地が張ってるわね。」
そんなことはどうでもいい。とにかく私はお粥が食べたい。
「仕方ないですわね。ほら、此処に。」
そう言ってスキマから白い湯気と共に現れるお粥。
ひょい。
私は待ち切れず手を伸ばしたが、紫の手によってお預けをくらってしまった。
「ちょっと! 食べさせてくれるんじゃないの!?」
「もちろん、そのつもりですわ。だからほら、あーん。」
「なっ!?」
目の前に差し出されたレンゲには、美味しそうなお粥が。
食べさせるって、そういうこと……?
「あら。気が利かなくてごめんなさい。ふーふー。はい、これなら熱くないわ。ほら、あーん。」
私の驚愕の視線を、別に意味で捉えた紫──やめて、余計恥ずかしいから。
しかし、背に腹は代えられない。博霊の巫女は目の前にある食べ物を残すなんてことあってはならないのだ。
──えーい、ままよ!
「い、頂きます。」
ひょい。
再びお預けをくらい、憤慨する私。
「今度は何よ!?」
「霊夢……私は、“あーん”と言っているのよ? この意味、分かるわよね?」
しかし紫はと言うと、その顔に思いっきり失望の色を浮かべて、こっちに訴えていた。
食べさせて貰う手前、強く出れないのがうらめしい……。
「わ、わかったわよ……。」
「分かればよろしい♪ ほら、あーん。」
先程とは打って変わり、期待に瞳を輝かせる紫……一体こいつは何がしたいのよ。
「あ、あーん。」
恥ずかしさのあまり顔がものすごく熱い……ああ、なんだか熱っぽくなってきた気もする。
ふーふー。
はい、あーん。
あ、あーん。
お粥が無くなるまで、私たちはずっとこの行為を繰り返した。
「……ごちそうさま。」
「お粗末様。って貴女、顔赤いけど大丈夫?」
大丈夫なもんか。おかげでこっちは、頭がぼっーとして思考がまとまらない。
「もう寝た方が良いわね。ほら、手伝ってあげるから、これに着替えなさい。」
そう言ってスキマから出したのは、狐と猫のイラストが入ったパジャマだった。
──それ、完全にアンタの趣味でしょう?
「…………いい、じぶんでやる。」
「遠慮しないの。こう言う時ぐらい、甘えなさい。」
抵抗する気力も失った私は、されるがままに着せ替えられる。
これも全部、熱のせいであって、他意は無い……はず。
「ねぇ……こういうときじゃないと、甘えちゃだめ?」
「……なに言ってるかしらね、この子は。そうね……普段からこれくらい素直だったら、考えてあげても良くてよ?」
ああ、私は一体何を言ってるのだろう。
「……ぜんしょする。」
「霊夢……貴女本当に大丈夫?」
だから大丈夫だったら、アンタに看病なんかさせてないわよ……。
そうこうしているうちに、着替えも済んだ。
やっと寝られるんだ……なのに何でだろう。何故かすこし、さみしい。
「さて、私はこれで──」
やっぱり。悪戯が済んで、紫は満足しちゃったんだ
──そんなのずるい。わたしはまだ、甘えたりない。
「ねぇ、ゆかり。」
そう思ったら、自然と紫の手を引っ張ってる自分がいた。
「何かしら?」
「甘えて、いいんでしょ?」
本当に私らしくない……。
流石の紫も驚いた顔をしているし。
「…………もちろん。」
でも紫は、笑顔で答えてくれた。
それがどうしようもなく嬉しくて。
布団に潜り込んだ私の傍らで、添い寝してくれる紫にどうしても言いたくなった。
「ゆかり……。」
「なぁに、霊夢。」
「だいすき。」
これもきっと、熱のせい。
最後の霊夢さんが破壊力がありすぎてヤバい
こんなコーヒーじゃ中和しきれん……
こいつはとんでもない破壊力だ・・っ!
母さん……甘すぎるよ…!