「ちょっと、咲夜」
「え?」
「ウチ、寄ってきなさいよ」
あいつの名前は十六夜咲夜、私の名前はアリス。
私達には接点はない、名前も噂で知っただけだ。
だけど私は今、こうしてあいつのことを家に招待しようと声をかけた。
それはなぜかって?私はこいつに対してかなり強烈な興味を持ったのだ。
何故ならこいつは、私が作りたい人形のイメージに最高に合致しているからだ。
抜群の運動神経、針に糸を通すような正確な投擲能力、見事なメイド服の着こなし、料理の旨さ、どれをとっても一流だ。
そして人形のモデルになってもらうくらいだから、ただではいい返事はもらえないだろう。真似するのだって楽ではない。
まずメイド服を作るところから初めて、お茶を汲むやり方を習得させるのだ。
完璧を目指すのは大変だが、それだけやりがいがあるいうものだ。
「悪いけど今日この後時間が無いの、また今度にして」
「あ、うん」
あ、うんって
なに言ってんだろう私は。
タイミングが悪かったのか?今は宴会の後、今日は終わるのが早かったから深夜を回っていない。
私は普段なら朝まで人形作りに勤しんでいるが、普通のやつってどうやって過ごしてるんだろう。
そうか、人間は必ず寝る生き物なんだったな。
これは浅はかだった、それなら昼間からアポイントを取らないと失礼だな、失敗失敗。
ならまず先に客人を迎え入れる準備を考えておくか。
とりあえず最初に部屋に案内して、イスに座らせる、次はどうしたらいい?そうだ、お茶を入れてやるんだ。
だが相手はその手のプロだぞ、下手な真似はできない、なんならこれから帰って魔理沙で練習するか。
適当に情報を聞き出して、いい時間になってきたら夕飯を食べさせる、そう、ここも重要なポイントになる。
今から霊夢で料理の練習でもしてみるか。
そしていい感じにお酒も入ったら、人形のモデルになって欲しいことを伝える。
こんなところか、化粧でもするか?
うーん、化粧はどうだろう、自分でも上手な方だとは想わない、でもきっとあいつは上手なんだろうな。
少しは飾ってみたほうがいいんだろうか?
よしとりあえず、好きな食べ物やお酒の種類だけでも聞いておくか。
「ねぇ、貴女ってどんな………」
私は誰も居ない空間に話しかけていた。
あれ?さっきまでいたのにどうして誰も居ないんだろう、困ったな。
本当に困ったぞ、誰が咲夜の好物を聞いてくれるんだろう、まったく。
いつからか魔理沙が私を見ていた、酒に酔ってはいるが、その微妙にアンニュイな表情はなんなんだ。
「おい、アリス」
「なによ」
「無理すんなよ、私が話しといてやるから」
「む、無理ってなによ!わ、私は普通に」
「一言喋るのに2分も考えてる奴と、まともに会話できるわけないだろ」
「………2分!?」
2分って120秒ってこと?
私はそれだけ言葉に詰まっていたのか、いや、考え込んでいたのか。
………不慣れなことをするからこういうことになる。
「はぁ…」
「紅魔館に今度行ったら言っておくよ、お前に会いたがってる魔法使いがいるって」
「………会いたがってるって、わけじゃないけど」
「じゃあなんていえばいいんだ?」
「………」
「ほらみろ、私だって2分も待つ気はないぜ」
「う、うう………」
「心配すんなよ、当たり障りない程度に言っておくからさ、美味しいお茶が出るくらい付け加えていいだろ?」
「ま、まってよ、あいつあんなにお茶淹れるの上手なのに、そんなこと…」
「なんだよ、面倒くさいやつだな」
だってそうじゃないか、自分よりは下手だな、なんて想われたくない。
魔理沙が気を使ってくれているのはわかるんだが、私は自分で誤解の無いように伝えたい。
そう思っていると、賽銭箱のほうから不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「まったく、人がいい気分でお酒を飲んでいるってのに」
「そうおっしゃらないでください、今日はフランドール様の誕生日祝いの日でもあるんですから」
「あー、そうだったわね、ま、いいか」
レミリア・スカーレットと十六夜咲夜の声だ。
レミリアの妹の誕生日祝いだから用事があると言ったのか、納得だ。
「じゃ、霊夢また来るからね」
「へいへい」
「………お嬢様、少しよろしいですか?」
「んー?」
咲夜はレミリアを待たせ、凛とした歩き方で麗しき匂いを放ちながらこっちにまっすぐ歩いてきた。
そして私の目の前に達、話した。
「貴女、アリス・マーガトロイドだったわね?」
「はい」
「魔理沙の家の近くに住んでるって聞いたことがあるわ、貴女の人形のコレクションも見てみたいし、今度お邪魔するわ」
「あ………はい」
「じゃあ、また今度ね」
メイドらしい一礼ではなく、咲夜は振り向きざまに私に手を振った。
その姿をずっと見つめ、私はぼーぜんとしていた。
「人形遣い?珍しいね」
「ええ、ちょっと世話になったことがありまして」
「ふーん、じゃ、いくわよ」
「魔理沙」
「ああ」
「気を使ってもらってありがとう、ついでにこんなことを言うのも悪いんだけど…」
「なんだ?」
「咲夜が来るとき貴女も一緒に来てくれない?きっと、私だけじゃ間が持たないもの」
「はははっ、あいつと一緒にいると、そんなこと気にする必要もないってわかるぜ、でも、そうだな、面白そうだし付き合ってやるか」
「ええ、ありがとう」
あいつを前にして私の緊張はピークになった。
工夫した言葉の一つも出てこず、喉から搾り出した返事が「はい」だ。
どうしてあいつをそこまで家に招待したいのかだって、今はもう思い出せないんだから。
「魔理沙、アリス、残ってんのあんた達だけだけどどうする?」
「なんだ、みんな本当に帰っちまったのか?」
「そうみたいね」
「じゃあ、たまには三人で静かに朝まで飲み明かすか!」
「………また?」
「いいじゃない、魔理沙、付き合うわ」
「………」
私がこんなことをいうのは珍しいんだろう、霊夢は少し驚いたようだが、すぐにいつもの呆れ顔になり、しょうがないとため息をついた。
.
「え?」
「ウチ、寄ってきなさいよ」
あいつの名前は十六夜咲夜、私の名前はアリス。
私達には接点はない、名前も噂で知っただけだ。
だけど私は今、こうしてあいつのことを家に招待しようと声をかけた。
それはなぜかって?私はこいつに対してかなり強烈な興味を持ったのだ。
何故ならこいつは、私が作りたい人形のイメージに最高に合致しているからだ。
抜群の運動神経、針に糸を通すような正確な投擲能力、見事なメイド服の着こなし、料理の旨さ、どれをとっても一流だ。
そして人形のモデルになってもらうくらいだから、ただではいい返事はもらえないだろう。真似するのだって楽ではない。
まずメイド服を作るところから初めて、お茶を汲むやり方を習得させるのだ。
完璧を目指すのは大変だが、それだけやりがいがあるいうものだ。
「悪いけど今日この後時間が無いの、また今度にして」
「あ、うん」
あ、うんって
なに言ってんだろう私は。
タイミングが悪かったのか?今は宴会の後、今日は終わるのが早かったから深夜を回っていない。
私は普段なら朝まで人形作りに勤しんでいるが、普通のやつってどうやって過ごしてるんだろう。
そうか、人間は必ず寝る生き物なんだったな。
これは浅はかだった、それなら昼間からアポイントを取らないと失礼だな、失敗失敗。
ならまず先に客人を迎え入れる準備を考えておくか。
とりあえず最初に部屋に案内して、イスに座らせる、次はどうしたらいい?そうだ、お茶を入れてやるんだ。
だが相手はその手のプロだぞ、下手な真似はできない、なんならこれから帰って魔理沙で練習するか。
適当に情報を聞き出して、いい時間になってきたら夕飯を食べさせる、そう、ここも重要なポイントになる。
今から霊夢で料理の練習でもしてみるか。
そしていい感じにお酒も入ったら、人形のモデルになって欲しいことを伝える。
こんなところか、化粧でもするか?
うーん、化粧はどうだろう、自分でも上手な方だとは想わない、でもきっとあいつは上手なんだろうな。
少しは飾ってみたほうがいいんだろうか?
よしとりあえず、好きな食べ物やお酒の種類だけでも聞いておくか。
「ねぇ、貴女ってどんな………」
私は誰も居ない空間に話しかけていた。
あれ?さっきまでいたのにどうして誰も居ないんだろう、困ったな。
本当に困ったぞ、誰が咲夜の好物を聞いてくれるんだろう、まったく。
いつからか魔理沙が私を見ていた、酒に酔ってはいるが、その微妙にアンニュイな表情はなんなんだ。
「おい、アリス」
「なによ」
「無理すんなよ、私が話しといてやるから」
「む、無理ってなによ!わ、私は普通に」
「一言喋るのに2分も考えてる奴と、まともに会話できるわけないだろ」
「………2分!?」
2分って120秒ってこと?
私はそれだけ言葉に詰まっていたのか、いや、考え込んでいたのか。
………不慣れなことをするからこういうことになる。
「はぁ…」
「紅魔館に今度行ったら言っておくよ、お前に会いたがってる魔法使いがいるって」
「………会いたがってるって、わけじゃないけど」
「じゃあなんていえばいいんだ?」
「………」
「ほらみろ、私だって2分も待つ気はないぜ」
「う、うう………」
「心配すんなよ、当たり障りない程度に言っておくからさ、美味しいお茶が出るくらい付け加えていいだろ?」
「ま、まってよ、あいつあんなにお茶淹れるの上手なのに、そんなこと…」
「なんだよ、面倒くさいやつだな」
だってそうじゃないか、自分よりは下手だな、なんて想われたくない。
魔理沙が気を使ってくれているのはわかるんだが、私は自分で誤解の無いように伝えたい。
そう思っていると、賽銭箱のほうから不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「まったく、人がいい気分でお酒を飲んでいるってのに」
「そうおっしゃらないでください、今日はフランドール様の誕生日祝いの日でもあるんですから」
「あー、そうだったわね、ま、いいか」
レミリア・スカーレットと十六夜咲夜の声だ。
レミリアの妹の誕生日祝いだから用事があると言ったのか、納得だ。
「じゃ、霊夢また来るからね」
「へいへい」
「………お嬢様、少しよろしいですか?」
「んー?」
咲夜はレミリアを待たせ、凛とした歩き方で麗しき匂いを放ちながらこっちにまっすぐ歩いてきた。
そして私の目の前に達、話した。
「貴女、アリス・マーガトロイドだったわね?」
「はい」
「魔理沙の家の近くに住んでるって聞いたことがあるわ、貴女の人形のコレクションも見てみたいし、今度お邪魔するわ」
「あ………はい」
「じゃあ、また今度ね」
メイドらしい一礼ではなく、咲夜は振り向きざまに私に手を振った。
その姿をずっと見つめ、私はぼーぜんとしていた。
「人形遣い?珍しいね」
「ええ、ちょっと世話になったことがありまして」
「ふーん、じゃ、いくわよ」
「魔理沙」
「ああ」
「気を使ってもらってありがとう、ついでにこんなことを言うのも悪いんだけど…」
「なんだ?」
「咲夜が来るとき貴女も一緒に来てくれない?きっと、私だけじゃ間が持たないもの」
「はははっ、あいつと一緒にいると、そんなこと気にする必要もないってわかるぜ、でも、そうだな、面白そうだし付き合ってやるか」
「ええ、ありがとう」
あいつを前にして私の緊張はピークになった。
工夫した言葉の一つも出てこず、喉から搾り出した返事が「はい」だ。
どうしてあいつをそこまで家に招待したいのかだって、今はもう思い出せないんだから。
「魔理沙、アリス、残ってんのあんた達だけだけどどうする?」
「なんだ、みんな本当に帰っちまったのか?」
「そうみたいね」
「じゃあ、たまには三人で静かに朝まで飲み明かすか!」
「………また?」
「いいじゃない、魔理沙、付き合うわ」
「………」
私がこんなことをいうのは珍しいんだろう、霊夢は少し驚いたようだが、すぐにいつもの呆れ顔になり、しょうがないとため息をついた。
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混乱して瀟洒な対応が出来そうにないのでアリスが考え込んでいる内に姿を消し、
心を落ち着かせようとしたがどうにも収まらないので、少しマシになった頃合いを見計らってお嬢様に帰宅を促し、
ほんの数言に全身全霊をかけてクールを装い、あとはメイドらしい一礼をする余裕もなく早足でその場を去った、とかだと俺が嬉しい。
咲アリさいこぉう!
同士よ!!!!
貴方の咲アリは本当に素晴らしい!!!!