Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

現人神の居る道具屋 二日目

2009/09/26 01:56:20
最終更新
サイズ
11.71KB
ページ数
1

分類タグ

 注意!
 このSSは作品集50『現人神の居る道具屋 一日目』から設定を受け継いでいます。
 まずはそちらを読んでおくことを強くお勧めします。


 ◇









 不思議な夢を見た。


 星がとても綺麗な夜。


 どこか見覚えがあるような家の縁側で。


 一人の男の人と女の人が、お酒を飲みながら楽しそうに語り合っていて。


 何を話しているのか、その二人組はどんな人なのかはわからなかったけれど。


 とても胸が温かくなる、そんな夢だった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~  


 「号外でーす!」という威勢のいい少女の声で早苗は目を覚ました。
 時計を見るとまだ6時。朝御飯にするには随分と早くに起こされてしまったようである。
 ちなみに守矢神社の朝食時間は7時半だ。
 諏訪子も神奈子も、まだ寝ている時間だろう。早苗が起きたからといって二柱の二人を無理に起こすわけにもいかない。
 かといって二度寝をする気にもなれないのか、彼女はしばしボーっと天井を見上げている。
 早苗は寝起きでうまく働かない頭で暫し考えると、ゆっくりとした動きで立ち上がり、パジャマを脱いで風祝の衣装へと着替え始めた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~


 いつもの服装に着替えると、早苗は玄関を出て神社の裏にある井戸へと向かう。
 井戸の冷たい水で顔を洗い、眠気を吹き飛ばすことから彼女の一日は始まるのである。
 最初は井戸の水、ということにいくらか抵抗があったが、今ではすっかり慣れてしまっていた。
 もはや毎朝の恒例となっているこの行為を遂行するべく、早苗は井戸の水に手を入れた。
 水に手を入れた瞬間、早苗の指に鈍痛が走る。

「ッ・・・」

 昨日包丁で切ってしまった傷に冷水がしみたのだろう。
 奇跡的にもたいした傷では無かったが、昨日寝る前に張っておいた絆創膏が剥がれ掛けていた。
 
(・・・これなら、剥がしておいたほうがいいですね。)

 早苗はそう思い絆創膏を剥がすと、バシャバシャと顔を洗い始める。
 やはり傷にしみるが、我慢できないほどではない。
 顔を洗い終わり、境内の掃除でもしようと思った時、背後から声をかけられた。

「おお早苗、ずいぶんと早起きだねぇ。関心関心。」

 そう言いながらオンバシラ片手に現れたのは、洩矢諏訪子と双璧をなす守矢神社の神、八坂神奈子である。

「八坂様、おはようございます。
 昨夜は何を考えておられたのですか?」
「ん?諏訪子の奴から聞いてないのかい?河童達の技術水準向上のために
 産業革命を起こすって・・・」
「あぁ、そういえば・・・でも、産業革命といっても具体的に何をするんです?」
「あー、それなんだけどねぇ。
 どうにかして力の元は抑えてあるんだけど、いかんせんその力に適合するような
 いい人材が見つからなくて困っているんだよね。」
「力?適合?」
「おっと、ここから先はまだ早苗にも秘密事項さ。
 ま、うまくいったら教えるからその時まで待ってておくれよ。」
「そ、そうですか・・・わかりました。」
  
 そう言うと神奈子はどこか楽しそうにオンバシラを担ぎながら、湖の方へ歩いていった。

「・・・何をするんでしょう、神奈子様・・・」

 信頼している神奈子を疑うわけではないが、何やら嫌な予感がする。
 神奈子のことだから大丈夫だとは思うが・・・やっぱり不安だ。

「・・・まあ、良いか。まだ朝食まで時間もありますし。
 香霖堂にでもちょっと行ってみますか。」

 もし神奈子が原因で何か起きたとしても、麓の巫女やあの白黒が止めてくれるだろう、という結論に
至った早苗は、出かける支度をしに本殿の中へと戻っていった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~



(えーっと、どのあたりでしたっけ・・・香霖堂。)

 まだ麓の巫女がグーグー寝ている時間。
 朝日が照りつける中、早苗は空を飛び香霖堂へ向かっていた。
 この時間帯は夜行性の妖怪も眠り始める時間である。その逆もまたしかり、夜行性ではない妖怪もまだ睡眠中である為か、途中で妖怪の類に襲われることはなかった。
 つまるとこ、朝日に照らされた美しい幻想郷の景色を見ながら安全に飛ぶには格好の時間帯である。
 まあ、普通の人間には叶わないことなのだが・・・
 早苗は魔法の森の中に見覚えのある家を見つけると、真っ直ぐにそこへ向かう。

「あった、あれが香霖堂ですね・・・・・・?」

 よく見ると、何やら霖之助と思わしき人物が店と倉庫の中を行き来しているのが見える。
 どうやら、倉庫の品と店内の品物を整理しているようだ。
 早苗は作業をしている霖之助の近くに降り、声をかけた。

「こんな朝早くから何をしているんですか?」
「おや、君は確か・・・・・・早苗、だったね。
 見ての通り、拾ってきた外の世界の物と倉庫、店内の物を整理しているんだ。」
「・・・拾ってきた?」
 
 早苗がキョロキョロとあたりを見回すと、何やらリアカーと思わしき物から積み降ろされたのであろうガラクタ・・・
もとい、外の世界の物が一箇所に集められていた。
 その中には、いかにも今では見ないような怪しい雑誌や人形の他、牛乳ビンや携帯ゲーム機といった見覚えのある物も多数ある。

「僕は毎朝、こうやって無縁塚に流れ着いた物を拾ってくるのが日課でね。
 いつもはこれの半分もないんだが・・・今日は大収穫のようだ。整理のし甲斐がある。」
「でも、それだけの量を整理するのは大変じゃないですか?」
「そうだね。以前もこれぐらいの量を集めることが出来た日があったのだが・・・
 見たことも無い道具について考察をしながら整理していたら、終わった時にはいつの間にか
 あたりは真っ暗になっていたよ。あれにはさすがに驚いた。」
「へ・・・?」

 つまり、未知の物についての使用法を考えながら整理していたら日が落ちてしまったということか?
 その様子を想像するとひどく滑稽でシュールではあるが、逆に不気味でもある。
 いや、それよりも・・・そんな事態になられたら勧誘するどころではない。
 それに、夜は危険からあまり外を出歩かない方がいい、と早苗は諏訪子や神奈子に言われているのだ。

「しかし、これだけの量が集まれば今日も以前のように一日・・・」
「あ、じゃあ整理のお手伝いをしましょうか?」

 それだけは避けなければ、と思った時。早苗は既に行動に出ていた。

「いいのかい?君とは昨日知り合ったばかりだが・・・」
「いいんですいいんです、私は森近さんに用があって来たんですから。
 荷物の整理で一日終わられてはわざわざ朝早くに来た意味がありませんし。」
「ふむ、それもそうだね。ではとりかかるとしようか。」

 そういうと、二人はさっそく作業にとりかかった。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~




 積まれた物の整理が終わる頃には、既にお昼を過ぎた時間になっていた。
 今の時間は12時57分。始めた時間が約6時20分頃であるから、最低でも6時間はかかったことになる。
 まさか整理だけでこれほどの時間がかかるとは、恐るべし香霖堂。
 早苗の手伝いがなければ、この倍以上の時間がかかっていただろう。
 慣れない力仕事を長時間したせいで、彼女はもはや疲労困憊である。朝御飯も食べずにやったのだから当然といえば当然か。
 縁側でぐったりしていると、霖之助が台所から何かを持ってやってきた。

「君が手伝ってくれたおかげでだいぶ早く片付いた。
 ご褒美といってはなんだが、冷たい麦茶はいかがかな?」
「ぜ、ぜひ・・・」
 
 霖之助から麦茶の入った湯飲みを受け取ると、早苗はそれをゴクゴクと一気に飲み干した。
 麦茶を飲むまでは今にも死にそうな表情であったが、まるで生き返ったかのように笑顔になる。
 
「ぷはっ、やっぱり一仕事の後の麦茶は美味しいですね!」
「それについては僕も同感だ。
 あとは甘い物でもあればいいのだが・・・おや、怪我をしてるのかい?」

 気付くと、昨日包丁で切ってしまった傷から血が滲み出ている。
 整理に夢中だったので傷が少し開いたことに気付かなかったのだろう。
 
「このぐらいなんともないですよ、水で洗っておけばそのうち・・・」
「傷をそのままにしておくのは衛生上良く無いだろう?
 怪我を見せてごらん、手当てしよう。」
「いえ、そこまでご迷惑は・・・」

 ご迷惑はかけられない、と言おうとした早苗だったが、言い終わる前に霖之助は彼女の左手を掴み、
傷の具合を見ていた。
 
「ふむ、大して傷は深くないようだね。傷も治りかけているようだし、
 そこまで心配はいらないようだ。」
「だ、だから言ったじゃないですか・・・」
「しかし油断大敵、という言葉もある。
 傷口から黴菌が入らないように、これを張っておこう。」

 そういって霖之助が懐から取り出したのは・・・絆創膏だった。
 霖之助は慣れた手つきで裏のテープをはがすと、怪我をしている指にペタリとはりつけた。

「これは【絆創膏】という外の世界の医療用道具でね。
 切り傷を黴菌から保護し、しかも防水効果まであるという優れものだ。
 ・・・さぁ、これで大丈夫だろう。」
「あ、ありがとうございます・・・」

 絆創膏をはっただけだというのに、何故か早苗は恥ずかしそうにしていた。
 その様子に霖之助は疑問を抱いたが、そこまで気にすることでも無いと判断したのか

「そういえば、君は何の用でここに来たんだい?」

 と、早苗がここに来た目的を聞きだした。
 早苗自身も忘れかけていたのか「あ、そういえば・・・」と当初の目的を話し始める。

「じ、実はですね・・・森近さんに聞きたい事がありまして・・・」



 ~~~~~~~~~~~~~~~



「・・・ふむ、つまり人里に僕と行って、その八坂神奈子という山の神の信仰を
 広めるのを手伝って欲しい、ということかい?」
「はい・・・その、私は妖怪の山に住んでいるので、
 あまり人里に知り合いがいないもので・・・」
「ふむ・・・」

 いや、本当は違う。
 私が霖之助さんに聞きたい事というのは「山の神様である八坂様を信仰してくれないか」というものだった。
 ダメだったなら、諦めて守矢神社に帰る予定だったはずです。
 それがいつの間にか「午後からもし予定が無ければ、人里で私が信仰している八坂様の信仰を広めるのを
手伝ってはもらえませんか?」に変わってしまっていた。
 なんでだろう?と考えても、余計に頭の中がモヤモヤして訳がわからなくなります。
 まあ・・・そのうち、わかりますよね。たぶん。

「君には先程の整理の借りがあるから僕は別に構わないが・・・
 その八坂神奈子という神様は、具体的にはどんな神様なんだい?」
「神奈子様は、風と雨を司る農業の神様なんです。
 人間や作物にとって重要な恵みの雨を降らすことが出来るのも、全て神奈子様のおかげなんですよ?
 それなのに幻想郷の人間の人達は・・・」
「・・・幻想郷の人間?その言い方には少しひっかかるが、何となく
 信仰が集まらない理由がわかったかもしれないな。」
「え、本当ですか?」
「ああ。まず今の季節を考えてみてくれたまえ。
 今は季節的にはもう秋に入ってしまって、人は育てた作物を収穫し始める時期だ。
 もし夏だったならば、作物に雨をもたらす八坂の神は大いに信仰されただろう。
 だが、収穫の時期である今に雨を降らされては、せっかく作った作物がダメになる恐れもある。
 そうとわかっていて、わざわざ信仰する者は少ないのではないかな?」
「あ・・・」
 
 気が付いてみれば確かに・・・
 私がまだ小さい時に、保育園の行事で芋掘りしている最中に雨が降られて大変困った記憶があります。
 ま、気にせず掘って掘って掘りまくりましたけどね。
 テレビのニュースでは、近くの川が大雨で氾濫して収穫前の農作物に被害がでたとか・・・
 ・・・そういえば八坂様も「この時期は人間相手に信仰は集まらないよ」と笑って言っていた気がする。

「つまり、八坂様の信仰を集めるのに今は季節的に厳しいということですか?」
「そうなってしまうね、残念なことだが・・・来年の夏を期待するほか無いだろう。
 それともう一つ、これは君に聞きたいことでもあるのだが・・・」
「?」

 何でしょう、私に聞きたいことって・・・?

「君はさきほど、人里には知り合いがいないといっていたが・・・
 もしかしてとは思うが、君は人見知りだったりするかい?」
「う・・・そ、そうですね。
 少し人見知りがあるかもしれません。
 ちょっと前まではそうでもなかったんですけど、ある出来事を境に
 自信が持てなくなってしまって・・・」

 ある出来事とは勿論、守矢神社に麓の巫女と白黒が殴りこんできたことである。
 あのおかげで自分に自信をなくしてしまいました。しくしく。

「・・・どうすればいいんでしょう。」
「そうだね、まずは君自身もっと愛嬌良く人と接するべきだろう。
 人里の人間は基本的に良い人達ばかりだ。君が愛嬌良く接すれば、
 あちらも同様に接してくれるさ。
 それに君のような可愛らしい女性は、笑っているほうが似合うだろう。」
「ふぇっ!?」

 か、かかかかかかかっ可愛らしい!!?わ、私みたいな人がですかっ!!?!?
 な、何をいきなり言い出すかと思えば!ふ、ふざけてるんですか!?
 いいたくないですけど、外の世界でそんな事を言われた事なんて一回も無いんですよ!?
 先程の絆創膏も、男の人にはってもらうなんて初めてでちょっと恥ずかしかったし・・・
 それなのに、この人は・・・

「?どうしたんだい、また顔が赤くなっているようだが?」

 気付いてません。最後の一言がその原因だってことに。
 決して秋だから紅葉してるとかじゃありませんよ。
 平然と恥ずかしいことを言うし、するし、まったく、霖之助さんはどういう神経してるんでしょうか・・・
 まあとりあえず、さっさと人里へ行くことにしましょう。

「な、なんでもありません!お気になさらないで結構です!
 それより、人里に早く行きましょう!」
「?何を怒っているんだ?僕に何か非があったのならば
 謝罪するが・・・」
「お、怒っているわけじゃありませんけど・・・
 もうちょっと言葉を選んでほしいというか・・・」
「ふむ・・・可愛らしいでは確かに少々幼稚である気もしなくはない。
 では『魅力的な女性』ではどうかな?」
「ッーーーーー!!?」



 ちなみにこの二人のやり取りは人里に着く直前まで続いた。
諏「早苗・・・朝御飯も作らずに何処へ・・・」
神「オンバシラ巻きならあるけど食べる?」
諏「断じていらん!!」

2作目です。前回と変わらず見づらい文章かと思われます。
というより前回よりも酷い文章と化してる気も・・・(汗

前作にコメントを下さった心優しい方々、本当に有難うございます!
小説ってやっぱり書いていて難しいものですね。
過去の作品でこういうカプ話を書かれている偉大なるお三方の作品を読んでいて、改めて私自身の文章力の無さを実感・・・
でも暫くはこんな感じで進んでいくと思います。
次回は人里編。早苗と霖之助以外のキャラがようやく登場します。

最後まで読んでいただき有難うございました!
Crown
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ちょっと神社に殴りこみしてくるのぜ
2.名前が無い程度の能力削除
ダメだ、早苗さんが初々し過ぎてニヤニヤが止まらない。
3.名前が無い程度の能力削除
これで次代の風祝も安心ですねw
4.名前が無い程度の能力削除
おお、前回と違って文章構成が良くなって読みやすくなってる
しかし、霖之助は秋にしか無縁塚に拾いに行かないよ。
だからこの季節か時期って一文入れれば良かったかな。
5.名前が無い程度の能力削除
オンバシラ巻き・・・!いただきます!
6.名前が無い程度の能力削除
あぁ、オンバシラ巻きってそういう…
7.名前が無い程度の能力削除
これが壮大な機織り劇の幕開けだったのです…
8.名前が無い程度の能力削除
オンバシラ巻き・・・
具がオンバシラか?
9.名前が無い程度の能力削除
御柱巻き食いてぇ
10.名前が無い程度の能力削除
霖の字…お前って奴は…
何はともあれGJ!!
早苗さん初心でかわいいよ、にやけてしまいました

御柱巻きのインパクトですべて消し飛ばされましたがwww
11.名前が無い程度の能力削除
オンバシラ巻き……オンバシラが巻かれてるのか、オンバシラほど太いのか…。

……食ってみたいぜ。
12.名前が無い程度の能力削除
「幻想郷の人間」よりもむしろ「人間の人達」の部分に突っ込むべきだと思うぜ、霖之助?
13.名前が無い程度の能力削除
諏訪子が食わないなら俺がもらおうか

>>4
確かに原作で秋に無縁塚に拾いに行った話はあったけど
霖之助が秋にしか行かないなんて描写はなかったよ
むしろいつ外の世界から道具が流れ着くか分からない分
1年に何回かは見に行くと思う
あくまで俺の想像だけどね
14.名前が無い程度の能力削除
オンバシラw
今回も面白かった!!