Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

はじめてのおさんぽ

2009/09/25 23:17:25
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 人里近くに建てられた寺、命蓮寺。
 太陽の白い光が眩しい早朝、住職である聖白蓮は両手を組み伸ばして、ん、と一つ唸った。
 目覚めてから暫く経つが、どうにも体がなまってしまっている。
 腰に手を当て二三度捻ると、こきりこきりと小気味の良い音がした。
 やはり、なまっているようだ。

 小さく息をつき、吸う。
 再び吐き出し、呼吸を整える。
 涼しい朝の空気に肺を満足させ、白蓮は口を開いた。



「あぁたぁらしぃいあぁさがきたぁ」
「聖! ストップです!」
「あら、星、おはよう」



 腹の底から歌っていた白蓮は、それでもさっと振り向き、寺の中から出てきた寅丸星に笑顔を咲かせる。

「さぁ、ご一緒に」
「きぃぼぉうのあぁさ――違う!」
「え、合ってるわよ? よろこぉびにむぁっ!?」

 吠える星に首を傾げながら続ける白蓮。
 だったが、星の物理的介入により中断。
 具体的に言うと、手で口を押さえられた。

 そっと外し、問う。

「お経バージョンの方が良かった?」
「んなもんありません」
「作ったんですもの」

 えへんと胸を張る白蓮。
 星が額に手をあてた。
 南無三。

「何処か痛いの、星?」
「……ええまぁ。頭が痛い」
「痛いの痛いの飛んでけー!」

 星の頭を撫で、白蓮は両手を広げる。

「……飛んでった?」
「意識ごと吹き飛びそうです」
「むぅ……魔法までもなまってしまったのかしら」

 唇に指を当て唸ると、何処からか大きな溜息が聞こえてきた。三つほど。

「……星?」
「違いますよ」
「じゃあ、誰かしら」
「ともかく!」
「なぁに?」

 ずぃと詰め寄ってくる星。
 眉間に皺が出来ている。
 結構深め。

「なんか色々削れていくのでそういう歌はお止めなさい!」

 撫でて解してあげたいと思う白蓮に、‘なんか色々‘がまた削れていった。

「でもね、星。体がなまってしまっているのよ」

 言葉に、怒気さえも漂わせていた星の視線が逸れる。

 彼女は無論、知っている。
 白蓮が途方もない永い時間、封印されていた事を。
 体力が、魔力が、全盛期に程遠い事は想像に難くない。

 喚起された心の痛みをどうにか沈め、平静な顔で星が振り向く。

「もどかしさを感じているのですね、聖」
「でも、九時頃になると眠くなっちゃうんだから仕方ないわね」
「そう言えば昨日は八時にお休みでしたね。ただの寝過ぎじゃないですか!?」
「早寝早起きは三文の得よ。あ、私の三文、星にあげるわ」
「虎ぉぉぉぉぉッッ」

 腰を落とし、唸りをあげる星。

 ――の頭に、拳と錨が降ってきた。

「ふぎゃ!?」

 ついでとばかりに鼠も一匹落ちてきた。ちゅー。

「ぐ、あ、あぁ、わかってる、わかっていますよ!」
「いや、あの、私は訳がわかんないんだけど」
「聖は解らなくてよろしい!」
「ごろごろ」
「にゃー」

 じゃあとばかりに星の喉を摩る。
 可愛らしい鳴き声が響いた。
 白蓮大満足。

「ちがぁぁぁぁぁう!」

 違うらしい。白蓮しょんぼり。



「いいですか、聖!
 貴女が自身なまっていると思うなら!
 その足でこの新天地、幻想郷を歩みなさい!」



 びしぃと言い放つ星。

 一理ある、と白蓮も頷いた。

「お散歩ね!」
「どうしてそう言う色々削れる言い方をしますか!?」
「え、あれ、ダメ? えっと、じゃあ、『はじめてのおさんぽ』」

 今日一番の笑顔で言う白蓮。

「違うでしょう、そうじゃないでしょう、聖」
「でも、お寺も放っておけないし……」
「あー、それなら、大丈夫」

 どっと疲れた顔の星だったが、こほんと一つ咳払いして気を取り戻す。
 頭の上の鼠を撫で、傍らに下ろした錨に拳を当てた。
 微笑みながら、言う。



「寺が出来てから、貴女は休みなく、妖怪に人間に説法を施した。
 永い間お眠りしていた体には、一時の休憩が必要でしょう。
 ですから――是は、私たち共通の申し出です」



 星もまた、今日一番の笑顔。



「そう……じゃあ、お言葉に甘えさせて頂くわ」



 だから、白蓮は四の五の言わず、その申し出を有難く受け入れた。





 人妖問わず受け入れてきた。

 しかし、自身はこの幻想郷に受け入れらているのだろうか。

 小さな不安と大きな好奇心を胸に、白蓮は、なまった足に喝を入れ、歩み出すのであった――。





                     <幕>





 白蓮が去った後。



「――で、ですね、聖。
 散歩とは言え貴女ヒトリでは退屈でしょう。
 そ、そこでですね、よければその、私も……!
 あぁいや、なんでもない、なんでもないですっ!
 あ、ですが、そう、私、美味しい蒲焼屋さんを知っているんですよ!?」

「いや、ご主人様」

「ナズーリンに聞いたんですけどね、ですが、場所がちょっと説明しにくくて!」

「ご主人。星様」

「い、一緒に――って、っきゃー!」

「何乙女叫びしてるんですか、おっきな猫」

「誰が虎ですか、ナズーリン!?」
「失礼。ロールに失敗してしまって」
「それなら仕方ありません。……あー?」
「細かい事は置いといて」
「細かいかしら……」
「聖様、もう行っちゃいましたよ」
「え? あれ……えぇぇぇぇ!?」
「えぇぇぇぇ、じゃありません」
「だって、だって!」
「だってでもありません。ご主人様は回りくど過ぎます」
「せ、精一杯頑張りました!?」

 ――ちゅーちゅーちゅーちゅー!
 ――ふにゃふにゃふにゃふぎゃぁ……。

「……おぉ。あれぞまさしく嬲ーリン」
「一輪、上手い事言ったって顔してないで」
「まぁねぇ。わからんでもない。さんざ練習台にされたしね」
「あら、そんな事言いつつ満更でもなかったんじゃない?」
「可愛い星って珍しいから。センチョもでしょ?」
「ほどほどには、ですね」

 ――きゃっきゃうふふ。

「あんたらって、何時もこんな感じなの?」
「……」
「そっかぁ。……ついていくの間違ったかなぁ」
「……」
「あ、あ、冗談! 冗談だからそんな泣きそうな顔しないで!?」

 ――ウンザーン。



 それはそれで宜しくやっている、命蓮寺の諸々であったとさ。



「け、けれど、ナズーリン! 誘おうとした心意気は進歩したと言えるんではないでしょうか!?」
「はぁ……。そんなだから、‘白‘って文字を見ただけでキャーキャー言うんじゃないですか」
「ちょ、それ、秘密!? あ、こら、みんな笑うな、呆れるな、愛でるなぁーっ!?」



 星以外。




                     <ウンザーン>
・聖様と呼ぶとカリスマに溢れてるけど、白蓮さんと呼ぶとおっぱいがいっぱいですよね。お読み頂きありがとうございます。

・星さんマジ乙女。

・……あとがきで言いたい事が上記で終わってしまったので、いじょ。
道標
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ガンガレ星さんwwww
続きを希望します!!
2.名前が無い程度の能力削除
イエス、乙女っ!
にしても、この白蓮さんは神綺さまと絡んで欲しくなるなぁw
3.名前が無い程度の能力削除
ああ、白蓮姉様すっかり天然が板についてしまったみたいですねwww
4.名前が無い程度の能力削除
ああ、白蓮さんの天然がどんどん固定化されていくww
5.名前が無い程度の能力削除
そうか。ナズーリンはセージ技能が無いのか
6.名前が無い程度の能力削除
白蓮さんの天然は完全に固定されましたなwww
そして星ナズのこの時代のあえての星白…いいね!
7.名前が無い程度の能力削除
聖お姉様はカリスマが削れたとしても無限に湧き続けるから大丈夫さw
8.名前が無い程度の能力削除
寺にいろいろ寄進したいレベル。
9.謳魚削除
星蓮船三ボス以降分かりませんが。

道標さんの聖さん達は正義って事は確信しました。

雲山可愛いです雲山。
10.名前が無い程度の能力削除
天然な聖。奥手で生真面目な星。もうイメージ固定されてきましたねw
11.名前が無い程度の能力削除
こうして白蓮様のカリスマは天然に呑まれてしまうのだろうか…
僕は白蓮様を信じますがね

しかし天然白蓮様いいなぁwww