「あ! おくう、あのさぁ……」
「話し掛けるな愚か者」
「へ?」
「頭がたかぁい! 今日は私の日よ! 静まれ静まれぇ! この制御棒が目に入らぬかぁ!」
「お、おくうが、とうとう壊れた……」
「くっ……静まれ私の制御棒……」
「お、おくう? 完全に壊れた……」
友人の壊れっぷりに、膝から崩れる燐。
残念な部分も多いけれども、それでも、いざというときは頼りになり、心優しい良き友人だった、と涙ぐむ。
目を閉じれば思い出す。
優しかった空、ちょっと馬鹿っぽい仕草が可愛かった空、喧嘩したけど最後は仲直りした想い出、何もかもが懐かしく感じた。
「せめて最後はあたいの手で始末してあげる……」
「ちょ!? お燐、何それ!」
右手に死体、左手にも死体。
それで涙を流しつつ、迫ってくるお燐は、何と言うか恐ろしい。
子どもが見たら、軽くトラウマになるだろう。
さすがに空も、これには慌てる。
「大丈夫、痛くない痛くない」
「お燐の言動が痛い!?」
「壊れた友人を救うため、あたいは鬼になる!」
「鬼と聞いて飛んで来たよ!」
「帰れ! 呼んで無いから!」
鬼と聞いて飛んで来た勇儀を軽くあしらう空。しゅんと俯いて、勇儀は去って行った。
「さぁ、右手の死体と左手の死体、どっちが良い?」
「ど、どっちもいやー!?」
空の今の心情を例えるなら、新婚生活で仕事から帰ってきたら奥さんに「お帰りなさい、あなた。先に死体にする? 死体にする? それとも、し・た・い?」と迫られてるような心情だ。
どれを選んでも、バッドエンドにしかいかない。
「わ、私が悪かったからお燐!」
「ごめん、あたいは地獄烏の言葉は分からない。ほら、あたい猫だから」
「さっきまで会話してたじゃん!?」
「過去を振り返ってばかりはいけないよ。あたいたちは、未来を見ないといけないんだ!」
「無駄に格好良いこと言って誤魔化してる!?」
燐を攻撃したくない、そんな思考があるせいで、空は追い詰められていた。
「くっ……やめてよ! 私、お燐と争いたく無い!」
「呪精『ゾンビフェアリー』! 妖怪『火焔の車輪』!」
「容赦なさすぎ!? うにゅー!?」
◇◇◇
「――と、言うわけで、おくうを倒しました」
「やりすぎでしょう」
「……うにゅー」
縄でぐるぐると巻かれて、正座している空。
燐がさとりに今までの経緯を説明し終えた。
さとりは、引きつった笑みを浮かべている。
「ただ、いつも以上に浮かれていたってことでしょう?」
「で、でも! あたいはあんなおくう、見たくなかったから……」
「はぁ……難儀なものね」
「……うにゅー」
燐からすれば、空が大好きだからこそ、みっともない姿を見るのが嫌だったのだろう。
伝わってくる心の声に、さとりはただただ溜息を吐くだけ。
空は完全に落ち込んでいる。
「おくうは、何で浮かれていたのかしら?」
「……私の日だから」
「おくうの日?」
「ね? さとり様、おかしいでしょう?」
浮かれていたのは私の日だったから、と言う空。
さとりに伝わる空の心は、確かに嘘は吐いていないようだった。
「おくうの日……あぁ!」
「どうしたんですか、さとり様」
「なるほど、ね……ふふ、確かにおくうの日ね」
全てが分かった、というように笑うさとり。
「おくう、カレンダーを見たのね」
「カレンダー?」
「えぇ、お燐も見てみなさい」
「んー……あっ!」
カレンダーには、空の日と書いてあった。
「本当におくうの日だ!」
「正しくは、空の日(そらのひ)ね。それを読み間違えたのでしょう」
「うにゅー……」
燐は空の縄を解き、解放する。
「ごめんね、おくう。あたい間違ってた」
「ううん、私も浮かれすぎてた」
「別におくうの日では無いですから、お燐は間違ってませんがね」
ひしっ、と抱き合う二人を見て、余所でやれや、と心の中で呟くさとり。
でも、そんなことは一切表情に出さずに、
「仲直りおめでとう」
とだけ言った。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
なんだかんだで、大したことじゃないもので騒いで、呆気なく解決。
そんなドタバタが、地霊殿の日常だった。
空の日の由来ってなんだろ、ググるか
うつほの日詳細希望
さてGoogle先生に聞いてくるか。
これで撃墜された俺って…w
最後のはグッドエンドのような・・・?
もうお空の日でいいじゃない!
わわっ、ありがとうございます。
>>2様
楽しんでもらえてなによりです。
>>3様
由来は、当たり前ですが空に関係してます。
>>4様
想像しやすいです。
>>5様
実際、想像したらかなり嫌ですよw
>>6様
それは意味が変わってますねw
>>7様
何をですか!?
>>8様
それには同意ですね。
>>9様
良いですね、実に良いです!
喉飴さんの書く地霊殿はいつもほのぼのしていて素敵です。
読み方は当然「うつほのひ」
たまりませんなぁ!!!