永遠亭の夕暮れ時。
一日の仕事を終えたうさぎ達だが、どうもそわそわと落ち着きがない。
それもそのはず、今日は輝夜が晩御飯に手料理を振舞ってくれるのだ。
姫にそんなことをさせるわけには、と反対していた永琳を、皆に感謝の気持ちを伝えるためと説き伏せ、永琳をつれて食材を吟味しに行ったのが今日の朝のこと。
厨房から漂ういい匂いに誘われて、多くのうさぎが早くに座敷に集まっていた。
「姫の手料理ってどんなのだと思う?」
「うーん、やっぱり見たこともない料理が出てくるんじゃないかなあ」
そんな会話がそこかしこで交わされる。
場の期待が最高に盛り上がったところで、輝夜が入ってきた。
「皆、いつもありがとう。
今日は感謝の気持ちをこめて私がご飯を作りました。
たくさんあるから、遠慮しないで食べてね」
そう言って何匹かの因幡とともに配膳を始めた。
配り終わったところで、皆でいただきますの挨拶をする。
配られたのは白飯と野菜炒め、漬物に汁と何の変哲もない家庭料理だったが、
不思議と暖かい味で、皆競ってお代りを申し出ていた。
輝夜の近くに座っていた鈴仙は、ふと輝夜の様子が気になった。
嬉しそうに皆の様子を見ている輝夜だが、自分の分にはまだ手をつけていなかったのだ。
「姫は召し上がらないのですか?」
「ああ、ちょっと味見しすぎちゃってね。どう、美味しい?」
「凄く美味しいです。特にこの汁物、今まで食べたことのない味なんですけど、
一体なんて料理なんですか?」
「ああ、それは『えーりん汁』って言うのよ」
「えーりん汁? 師匠考案の料理なんですか?」
首をかしげる鈴仙に輝夜は笑って首を振る。
「たぬき汁はたぬきが入ってるし豚汁は豚が入ってる。
じゃあえーりん汁が入ってるのは……」
かたん、と鈴仙の持っている箸が膳に落ちた。
「ちょ、ちょーっとまってください。
そういえばさっきから師匠を見ないと思ってたんですけど、ひょっとして……」
「あ、大丈夫よ。ちょっと怪我して治療してるだけだから」
「それはぜんぜん安心できません!」
鈴仙は髪を振り乱して輝夜に詰め寄る。
「え、姫様冗談ですよね。
これってドッキリで、後ろから師匠がばあーって出てくるんですよね」
「私たちって腕の一本ぐらいなら落ちても再生するから、意外と肉の処理にこまるのよね~」
「だからそう関係なさそうに怖い話をしないでください!」
「お戯れが過ぎますよ、姫」
そう言って永琳がやってきた。
「鈴仙、いくらなんでも姫が私を鍋にしちゃうわけがないでしょう?」
「そ、そうですよね。びっくりしました」
「大体えーりん汁とかそんな料理は存在しないんだから」
ね、と顔を見合わせる主従。
ほっと息をついた鈴仙は、ふと気になって余計なことを口にした。
「え、じゃあ本当はこの料理、なんていうんですか?」
「もこう鍋」
鈴仙の叫び声は、遠く、人里まで聞こえたと言う。
まぁ確かに料理に人の名前つけてもおかしくないですよね…
さりげない仲良し臭がグッジョブ。
仲いいなw
約一名ハートフルボッコだけどww
いやいやまさかね……