Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

シスター、じゃなくてマスター(師匠と弟子)

2006/04/10 10:52:11
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※ 東方キャラが携帯とか持ってます。
  あと、デパートとか出てきます。
  永琳壊れ系、かな。







「あら?」




買い物から帰った永琳が自室の戸を開けると中には弟子の鈴仙が背を向けて立っていた。

「……ただいま、ウドンゲ」
「……」

この時点で永琳は、鈴仙が勝手に自室に入ったことを指摘しないつもりでいた。
普段永琳は弟子が部屋に入ることを禁止していないが、鈴仙の性格を考えると何か特別な
事情でも無い限りその様な事をするとは思えなかった。

「ウドンゲ、たーだーいーま」
「……」

そして気になるのは鈴仙が黙ったまま此方を向こうともしない事と、耳がいつもとは比べ物
にならないほど垂れ下がっている事だった。
とりあえず持っていた紙袋を机に置いて、言った。

「ウドンゲ、私がただいま、と言ってるのよ。何か言うことがあるでしょう?」
「……」

言葉に棘を含ませてみても反応が無かった。一体どうしたのだろうと思い、
一歩近づくと、鈴仙の肩がほんの少し震えている事に気付いた。

「そろそろこっちを向いてくれても良いんじゃない?…………一体どうしたの?」
「……」

だんだんと心配になってきた、一体どれほどの事態が弟子の身に降りかかったのだろうか。
今、鈴仙の背中は如何なる感情も語ってはくれなかった。
――悲しいこと?――喜ばしいこと?――それとも……。

「ウドンゲ、もしかして怒ってる?」
「……」

言った後で、永琳は自分が妙に納得している事に気がついた。
よく見てみると、今、鈴仙の纏っている雰囲気は、怒り、と呼ぶのが何故か一番しっくり来るような気がした。
耳が垂れ下がっている、肩が震えている。普通に考えれば、それらの情報からは鈴仙が泣いている、
少なくとも、悲しんでいる。と推察できる筈なのだが、どうも永琳にはそうは思えなかった。
だが永琳には当然、鈴仙の怒りを買うような事は何ひとつ――

「別に私貴女に怒られるような事一つも……あった、か」

あった。

「そうなのよ、確かにそう、いや確かに私、ウドンゲの名前と顔写真と電話の番号、勝手にレズ雑誌の
 文通コーナーに送ったりしたし、確かにデパートの女子トイレの個室のドアの内側に、
 『私はウサギ、もちろん、性的な意味で』ってあなたの名前と携帯の番号書いたわ……。
 だからって……無視することは無いんじゃない?」

少々焦りつつまくし立てると、突然鈴仙が振り返った。
今にも泣き出しそうなその表情を見て、咄嗟に永琳は顔を背けてしまった。


「ししょ~~」
「……(ううっ)」

鈴仙が発した、その喉の奥から絞り出すような声は、今更ながら永琳の罪悪感を引き摺り出した。
そうか、だから鈴仙は震えていたのか。師匠の裏切りによる悲しみと、怒りによって。
そう思うと最早どんな言葉も出せなくなった永琳に対して、鈴仙は再び口を開いた。

「歯が痛ぁい……」
「歯が痛い!?」

思わずオウム返し。

「歯が痛いんですよ~」
「なぁんだ、歯が痛かったの。私てっきり何か怒ってるのかと思ったわ」

何のことは無い。鈴仙が怒って見えたのは、元々心の奥底で自分が負い目を感じていたからなのだ。
そう思うと、急に気が晴れて、同時に口調も軽くなってしまう。

「師匠、随分な告白してくれましたね」
「あぁ、御免なさいね、悪かったわ」
「どうりで私の携帯が鳴りっぱなしな筈ですよ~」
「あーもぅだからこうして謝ってるじゃないの」

少々逆ギレ気味に。
永琳は、鈴仙がそれほど怒っていないことにすっかり安心していた。

「何とかならないんですか?」
「どっちの話?」
「どっちも、と言いたい所ですけど……とりあえず今は歯の方を」

鳴りっぱなしの携帯を後回しにするほどに余裕が無いらしい。
とりあえず今は鳴っていなかったが。

「う~~~ん……あ、知ってる? 歯が痛いときって言うのは、それ以外の刺激を外部
 から受けると、痛みが分散して感じにくくなるの」
「え、あのそこは師匠が何か薬を出してくれるとか、そういう流れになるんじゃないんですか?」
「虫歯痛の特効薬なんか常備してないわよ。それに今から作るにしても時間がかかるしね。
 麻酔も全身麻酔しかないし……やる? モルヒネ……」
「いえ、遠慮しときます……」

それじゃあ、と続ける。

「私に何か、ショッキングな事を言ってみて下さい」
「成る程、ショック療法ね。それじゃあ……」

コホンと咳払いをひとつ。

「ねえレイセン?」
「……はい」
「今度のプレイはね、ハア、私が受けで、ハア、やらせてほしいの……ハア、永琳実はMだったの、ハア」
「……」
「……」
「……」
「……あれ、ショッキングじゃないの?」
「だって最近私にかかってくる電話そういうのばっかりなんですもん」 
「え、そうなの?」
「もう慣れちゃいました、刺激が足りませんよ。ていうか何なんですかプレイって一体」
「ひとつ言っておくわ」
「え?」
「私は須らく受けのプレイなんぞは致しません」
「聞いてません。あ、また歯が……」
「あら、それは大変。ん~、刺激が足りない、か……じゃあこういうのはどう?…………あ!」
「え?」
「フンッ!!」

シュバッ
掛け声とともに永琳は胃(ストマック)を打った。下30度から手首を利かせると内部へ響きやすい。

「ゲェエエエェッ!」
「とと……。大丈夫、急所は外した。失神している間は痛みを忘れるってっていう、民間療法
 にもならないけど案外馬鹿にもできないもの……」
「ェエエエェ~~歯とおなかが痛い~~」
「……えーと、も一回……この部分!!!」

ドブッ
掛け声とともに永琳は肝臓(レバー)を打った。右肋骨下方向より60度にて…重く…残るように…。

「~~~~~~~~!!!!」
「失神している間は、痛みを忘れるってっていう……」
「あ゛ぁ゛ぁ゛~~歯とおなかが二箇所、合計三箇所が痛い~~」
「ふう、やっぱりこんなのじゃ駄目ね。兎になら効くかと思ったんだけど」
「ぜんぜんだめじゃないですか~~。それに兎とか多分関係ないですよ、それ……」
「うん、私も何となく気付いてた……あ、そうだウドンゲ、折れたときイチバン厄介な骨って……」
「もういいです!……あ、そうだ。師匠さっき買い物に行ってきたんですよね、
 もしかしたらその中に何か役に立つものがあるんじゃないですか?」
「そんな偶然無いわよ。私が買ってきたものは……」

永琳は紙袋を漁り始めた。

「まずはこれ、空きビン。きれいでしょ、あんまり普通には売ってないのよ」
「…………」
「ああそうね、後はねー」

ビンを机に置いて、永琳は検索を再開する。

「このビンでしょ、でビンでビン。まずこれがビンね」
「…………」
「後はねーあ、これは凄いわよー」

と言って永琳は手を止めた。
そして鈴仙が顔を近づけてくるタイミングを見計らって。

「ビン」
「…………」

二人して首を傾げつつ微妙な笑みを交わす。

「で、次に、あ……これだけは役に立たないかな……うん、役に立たない」

役に立たないと断言されながらも気になってつい覗いてしまう。

「ビン」
「…………」
「…………」
「……え、ビンしか無いんですか?」
「紙袋」
「いやもうビンで良いです…………あー、冷たくてとりあえず気持ちが良い」
「良かったー」

ビンを頬に当てる鈴仙を、永琳は満足そうに眺めた。

「ところで師匠」
「なに?」
「こんなにいっぱいビンばっかり買ってきて、一体何に使うんですか?」
「ええ、ちょっと割ろうと思ってね」
「割る?」
「……ああ例えばね、ウドンゲが私に対して何かムカつく事を言ったとするでしょ? そうした時に
 こう、カチ割るのよ。パリーン、と、ウドンゲの馬鹿野郎っ!てね」
「……はぁ」

返答に困る鈴仙をよそに講義を続ける永琳。

「ウドンゲ馬鹿野朗。ウドンゲ馬鹿野朗」

段々とその表情が険しくなっているのは見間違いだろうか。
まあ、見間違いだろうな。と鈴仙は考えることにした。

「ウドンゲこの野朗 ウドンゲこの野朗! このウドン野朗!!」

パリーン パリーン
ガラスの割れるような音が聞こえるのは聞き間違いだろうか。
まあ……いやいや、それはちょっと……。と鈴仙は考えることにした。

「あの……ちょっと師匠?」
「このレズウドン! 百合ウドン!」

 バリーン     ガシャーン

「NOVAウドン!! 性欲の奴隷!!」

 ドカーン     バキューン

「新世紀ウドンゲリオン!!!!」

  ピー ガシャーーン!

「ちょ、やめて! やめてくださいよ~、私まだムカつく事言ってないじゃないですか~、
 それに何ですか一体ウドンゲリオンって」
「あ、ああそういえばそうね。ごめんなさい、ちょっと狂気に中てられちゃったのかしら。
 私としたことが……お詫びにそのビン何本かあげるわ、あなたも私に対して何か腹が立ったら割っていいわよ」 
「あ、いえ。私別にそんなこと……」
「ちょっとトイレに行ってくるわね」

ピシャリ

主のいなくなった部屋に、残されて、一人、思う。

「(くそ~師匠め、あちこちで私がレズだなんて言いふらしやがって。復讐してやる!)」

物騒な単語が頭をよぎったが、自分の携帯に入っている三桁に及ぶ不在着信に想いを
馳せればそれも許されるような気がした。
実は鈴仙は怒っていたのだ。

「よーし、師匠が私にムカついてビンを割ったら物凄い勢いで爆砕して顔中血だらけ作戦だッ」

そう言って鈴仙は、弾幕勝負の際に使う爆弾の小型サイズの物を取り出して、ビンに入れ、
それを幻術で見えなくし……ようとして、そこで思いとどまった。

今自分は何をしようとしている?
自分の実の師匠の、女性の顔を傷つけようとしているのだ。
確かに永琳にはいつも、半ば無理やりに新薬の効果の実験体をやらされているし、
今回のこれに至っては、およそ薬の開発とは何の関係が有るとも思えなかった。
しかし、だからと言って、こんなことが許されるのだろうか?
仮に成功したとして、その様を見て喜ぶなどというのは、人として最低なんじゃないのか、
人じゃないけど。

鈴仙は手に持ったビンを眺めながらそう思った。
そのとき

バン!

「きゃっ!?」

突然中の爆弾が爆ぜた。
ビンのガラス部分は割れなかったものの、蓋が吹き飛んで彼女の鼻先を掠めた。
全く虚を衝かれて驚きのあまりその場に尻餅をついた。スカートが捲れてしまっているが
その事を気にとめることもできずに、ただ呆としていた。
そして。

カシャッ   

ウィ~~ン

「あ」

尻餅をついた体制のまま首だけを部屋の入り口に向けた鈴仙は、そこにカメラを持って、出てきた
写真をパタパタと振っている永琳を見た。
沈黙。
沈黙。
沈黙。
写真を手に、口笛を吹き、明後日の方向を見ている永琳と。「あ」の表情のまま固まっている鈴仙。
やがて永琳は写真を確認する。そして。

「ちょっとデパート行ってくる」
「ちょっ、やめてくださいよ~」

玄関に向かおうとする永琳を、咄嗟に立ち上がって必死で引き止める。

「何を?」
「その写真をデパートのトイレに貼ることをですよ!」
「あら、何で分かったのかしら?」
「あれ、何でだろ?」

鈴仙がキョトンとしている間にさっさと踵を返そうとする永琳。

「とにかく、やめてください!」
「あぁもう分かったわよ、デパートには行かない。じゃあこうしましょ、封印してしまうの、
 こういう恥ずかしい写真は、このビンに詰めて、蓋もしましょう…………」
「……」
「……」

ビンを凝視する永琳は、再び玄関に向かおうとする。

「……ちょっと湖行ってくる」
「いや、やめてくださいよ!」
「何を?」
「そのビンを湖に流すことをです!」
「あぁ分かった、じゃあ湖には行かないわ」

再び踵を返そうとする永琳。

「いやいや、やめてくださいよ~!!」
「何を?」
「そのビンを川に流すことをです!!」
「あら、何で分かったのかしら?」
「もう分かりますよ大体」
「も~、分かった分かった。じゃあこのビンのことはもう……水に流しましょう」

三度踵を返そうとする永琳。

「ってどっちの意味でですか~!?」
「私にとって都合の良いほうの意味でだよぉ!!」
「ちょ、流す気満々じゃないですか~~」
「あぁもう、だって考えても見なさい! いい!? 全世界のレズがあなたに電話してくるのよ?」
「全世界って、一体何本流す気なんですか!?」
「何本って、まず1でしょ、それから2、3、4、5…………」

数えながら机の下から次々とビンを取り出す。

「ちょっと待ってくださいよ。これ全部私の写真じゃないですか!?」
「何? 一体誰がこんなことを……」
「いや師匠でしょ!」
「そうよね、私がやったんだもんね。もう良いじゃない早く第二弾流しましょ」
「……え?」

今なんて言った? 第二弾……?
キョトン顔の鈴仙をよそに、永琳は嬉々として並べたビンを数えている。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って師匠、ちょっと待ってください……え、第二弾?」
「うん」
「え、じゃあもう第一弾流しちゃったんですか?」
「うん」
「……何本?」

永琳は答えることをしなかったが、代わりに指を4本立てて見せた。

「4本?」
「……500本」
「…………マジかよぉ~~~~~……指も違うし~」
「……」

絶望のあまりその場にうずくまり髪を掻き毟り始める鈴仙と、それを見て黙り込んでしまう永琳。
部屋には鈴仙の嗚咽にも似た叫び声が響いていた。

やがて永琳はポツリと語りかける。

「どう? ウドンゲ」
「うええぇぇぇぇぇぇ~~……うぇ?」

底無しの優しさが含まれた声だった。

「だから、どうかしら? 歯」
「歯? ……あ、痛くない」

鈴仙は立ち上がって自分の頬に手を当ててみる。
永琳はそれを見てにこやかに微笑んだ。

「まあ……ショック療法……みたいな?」
「え、じゃああの500本とか、全部ウソなんですか?」
「そんなもんウソに決まってるじゃない」
「ししょぉ~~~~」

心底安堵して息をついた。そんな鈴仙の肩を軽く叩いて永琳は言い放つ。

「505本よ(はぁと)」
「うわああああアアアアあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

今度こそ涙腺を破壊された鈴仙は背中を反らし、そのままブリッヂの体制に移行して泣き叫ぶ。


部屋には一羽のウサギの泣き声と、無機質な機械音が響いていた。


「あ、ねえあなたの携帯鳴ってるわよ……。ねえ取らないの?取らないと私出ちゃうわよ?
 ………………もしもし、鈴仙の携帯ですけど……Oh yes!My name is Udonge.
 I am a rabbit. Of course, in a sexual meaning.
 …………Okey!come on! come on come on my sisteraaahhhhhh!!!」









ブラックアウト












425/545キロウドン
以前此方に、拙作「現代香霖概論」を投稿させていただいた所、
「東方成分が少なすぎて、ここでやる意味があるのか疑問です」
との至極真っ当な御意見をいただきました。
貴重なコメントをいただいたそのお礼と言っては何ですが、ここに新作を投下します。
元ネタは、ラーメンズのコント、ブラザーです。少しは東方成分が増したでしょうか。
こんばんは。黴人間です。
この文章へのご感想。ご指摘。突っ込み。批判。絶賛募集中です。

そういえばウドンゲの写真入りビンってその後どうなったんでしょう。
505本も流したんだからもしかしたら皆さんの元にも届いてるかもしれません。
とりあえず家の近くの川に流れ着いてた写真張っておきます。↓↓
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
黴人間
コメント



1.名無し妖怪削除
工口ぃ
2.どっかの牛っぽいの削除
御主やるな
3.名無し妖怪削除
ラーメンズ大人気だな