「妖夢の忠義が厚いから 今日陽の光を浴びた私は さんさんと仕返しして見ちゃったり」
春麗らかなお日様ほのぼの ポカポカ殴るは必死で止める妖夢の優しさ
強く胸に思い描いてから私は自ら光りだす 太陽さんからさんさん照らされ暖まるのだけはもう飽きた
無邪気恨みます 妖夢純粋 私への好意はまるで陽の影
「幽々子様 幽々子様 それ以上は危険です 解けない謎にも解せない意味は
げに幽々子様ったら熔け始めてる お帽子へなりと曲がりくねりて うぷりと泡を立て始めてる
もうこれ以上自ら光るのはやめて下さい 何がご不満でそんな駄々をこねるのですか」
「いやいや妖夢 イヤイヤ止めない 何が哀しくて駄々をこねると 哀しくなくても駄々ならこねると
つまり こねてるところは大正解 ホントに貴女に非は無いわ けれど日に日に 貴女の陽にini照らされて
皮肉に私は そこんところが不満です ぷぅ」
「可愛くごまかされても分かりません 緋に染まるは 既に火の貴女
熔けてこぽりと零り落ちる妃 光らないで幽々子様 光らないで熔けないで」
泣いてまで止める妖夢の優しさ 零れてキラリと地に染み込んだ
茶色い大地は陽の涙に焦がされて 焦げちゃう色に染まってく
意地で始めた事だけど 何故不満に思ったか理解した
だって陽の光で暖まるのは母なる大地 幽々なる霊鬼は 冷気は素通り
貴女の優しさが私に注がれても 私はいつでも素の通り のらりくらりと 変わらずに居た
例え心が変わることが出来たとしても 私は霊鬼 いつの間にか例規 元なる様に落ち着いて
定められたる存在をして 変わらぬ私が素通り続く 記憶のみただ積み重なるのみ いつの間にか元通り
妖夢。
貴女が嫌いじゃないのです 昔と今で私が変わったわけでもないの
そしてこのまま光り居て 変わりゆく事だって無ないの
例えば貴女に恋焦がれる少女 例えば貴女を心から憎む 例えば貴女を忘れてしまう
例えばあなたを軽蔑したり 例えても貴女を師と敬う 貴女の死を望み 貴女の師を望む
無二の親友となり 肩を並べて泣きあい 酒を酌み交わし笑いあい
ちょっぴり互いの優越感を探り合って感じながら神経すり減らす女の友情を張り巡らしてみたり
そんな私たちに無いもの 私たちが決してなりえないものにも 貴女の陽の光は注ぎ得る
貴女が私だけに向けてくれている その優しい陽の光は 私を素通りして 私たちに無いものを暖める事が出来る
妖夢という存在は 幽々と縛られた太陽そのもの 私を照らすだけには収まらない
それが不満だから 私も光り返してみたのだけれど 熔けるまで光ってみて考えが変わったの
泣かないで 妖夢 私は私という存在を変質させたからこそ すこし、変れたのかも知れないわ
貴女の光を全て受け止めてみたくなった 陽に照らされる大地となって 母なる大地 幽々なる代地
幽々子は今から熔けて混ざって 幻想郷の代地となります
こぽりと零り幽々子は解けた 己が存在因果規律を妖夢中心に回す問いを
それは必然ではなく選択 気まぐれにして逸脱 ただ 陽の光をたまには全身で浴びてみたくて
くてりこぽりとくぷりたるたう うぬ たるうすらと ふわりふらさわ ぬらり。
焦げちゃう色の大地に染みて幽々子色が広がっていった
音もなく をとも無くただ 御供泣く 目の前で帰依逝く主が 存在を辞めたと勘違いして
陽の涙は 代地を焦がし 幽々子と混ざり相成って 薄く溶かした幽々たる要素を広め行く
幽々たる要素は二百由旬を染め代え 石階段を冷やして染みて やがて地に降りさらに
どこまでもどこまでも広がっていった
『
幽久に在る幽雅な園郷 幽々たる幻想郷
初めに気がついたのは博麗が巫女だった
彼女は事の大きさと得体の知れなさと理解しがたさに後れを取った
太陽と大地を裁くのは人と妖怪を調停する巫女の務めからは逸脱しすぎていた
これから起きる事をいくらか想像し 既に代わってしまった幻想郷をそれでも保つと誓った
少しの間人々は妖怪は幽々子がいなくなった事くらいでしか変化を捉えてなかった。
代地は自然の日の光を全身に浴び豊かまり想い深まり豊穣のときを迎えた
幽々たる代地に作物は実り、草食む獣がそれを喰らい、獣をまた獣が喰らい
人が喰らい、妖怪が喰らった
濃縮され行く幽々たる代地の秘は紅き液体に濃く実をうつした
』
初めの異変は紅魔館 地に日を浴びた血を飲む悪魔 その髪の毛から 幽々子が生えた
「お嬢様。頭に幽々子様が生えています」
「ええ、咲夜。言われなくても分かっているわ。でもどうしたものかしら」
「抜いてみたらいかがでしょう」
「そうね」
「えーちょっと待ってーせっかく生えてきたのにー、酷いわ悪魔、私はただ陽の光が浴びたいだけだったのに~」
煩かったが抜いてみた 抜くとそれは黙ってハラリ 体半分夜色の髪 地に落ちてふわりと風に舞い
そのままどこかに飛び去った 悪魔の頭の上の幽々子 望みの一番叶わぬ場所から生えた幽々
それでもめげない幽々たる幽々子 次の日は三本生えていた
「いやいや私」
「いやいや私」
「いやいや私」
「お嬢様……」
「駄目咲夜、抜きすぎると禿るのよ!」
「ですがこのままでは……」
「博麗の巫女は何をしているのよ!!!!」
神社は幽々子でいっぱいだった
生えてくる草 生えてくる花 土から顔を出した土筆の頭に 風に舞う砂一粒一粒
それらが全て幽々子だった 巫女は掃いて集めて焼くのに追われていた それはいつもに代わった掃除の風景
湖の水 そこにすむ生 森の木々の新芽 きのこと蝶と 薔薇のつぼみは幽々めいて そのうちいくつかは子めいてて
竹を切れば幽々太郎飴 里の稚児にまで面影が差し ひまわり畑の種犇いて 三途の川にも流れてる
代地は幽々子で溢れていた 幽々子たる原因は想いから 下にたまって幻想郷
天上冥界で涙に濡れていた妖夢はすぐにこれに気がつかなかった
やがて、陽の光を待ちわびた幽々子たちが 幻想を埋め尽くし 完全に大地を覆った頃
妖夢は遂に冥界に咲いた一輪の幽々花に気がついた
「幽々子様!!」
幽々花はそっと下界を指し示した
そこに広がるは幽々たる幻想郷 幽久に在る幽雅な園郷
妖夢の陽に光が戻った むしろ強さを増した陽が幻想郷に飛び込んで片っ端から注がれていく
大地となった幽々子と幽々子たちはその陽かりを余すところ泣く受け止めた