むかしむかし、あるところに、物凄く貧乏な青年が居ました。
霊夢「あ~~~~………寒。」
この青年はロクに働きもせず、一日中家でゴロゴロしていました。
真面目に働いてみたこともあったのですが、一向に裕福にならず、
もう馬鹿馬鹿しくなって仕事をしなくなったのです。
霊夢「お茶でも淹れるか……って、お茶も切らしてたんだっけ。はぁ~……。」
お茶を買いに行くお金も無ければ、その気力もありません。
全部、貧乏が悪いのだと、彼は思っています。
??「ほれ、これでも飲むと良い。」
霊夢「あら、ありがと。」
と、誰かからお茶を渡されました。
青年は何の疑問も抱かず、お茶をぐいっと飲みました。
霊夢「ぶーーーッ!何よ!この不味い液体は!」
小町「その辺に生えてた草とかを煎じたんだ。大丈夫、栄養満点。」
霊夢「何が大丈夫なのよ!…って、あんたは?」
小町「あたいか?あたいは貧乏神さ。この家に住んでる、な。」
霊夢「貧乏神?」
お茶を渡した誰かとは、何とこの家に住む貧乏神だったのです。
小町「驚いたか?一応神様の内だからな。さあ、遠慮なく崇め奉るが良い。」
霊夢「出てけ~!!」
小町「うわー!なにをする!?いたたたた!」
青年は貧乏神に襲いかかりました。
小町「痛い痛い!」
霊夢「働けど働けど私が貧乏なのは、全部あんたのせいなのね!」
小町「いや、そりゃあんたの何時もの行いが……痛い!痛いってば!やめてって!」
霊夢「うるさ~い!さっさと出て行きなさい!」
小町「わかった!わかったから!どっちにしろ出て行くつもりだったし。」
霊夢「え、そうなの?あ~よかった。」
どうやら貧乏神は、この家に居るのも飽きたので、
今日のうちに出て行こうとしていたようです。
小町「出て行くついでに、一つ教えてやろう。明日、この家の前を、三台の馬車が通る。
初めの馬車には金、次の馬車には銀、最後の馬車には真珠や珊瑚が、それぞれ積まれている。
この馬車を止めることが出来たら、積荷はお前のものになるだろう。」
霊夢「ほんとに?何か嘘くさいなぁ。」
小町「嘘など言うものか。これでも神様だからな。」
霊夢「ほら、言ってることが嘘くさい。」
小町「……嘘ついたら、四季さまに説教くらうし……。」
霊夢「本当の話みたいね。うん。」
小町「じゃ、あたいは出て行くよ。達者でな。」
貧乏神は、家を出て行きました。
霊夢「とりあえず、明日は早起きしなきゃいけないわね。」
青年は、金銀を手に入れて、お金持ちになる夢を見ながら、眠りに就きました。
そして、次の日の朝です。
霊夢「む~……お賽銭が~……溢れる~……うふふふふ……。」
だらけた生活が身についてしまった青年に、早起きは無理だったようです。
もう日が昇って結構経つと言うのに、まだ寝ています。
そのころ家の前を一台の馬車が通過して行きました。
リリカ「それそれ!もっと飛ばせ~!」
ルナサ「無理だってば……。もうヘトヘトよ……。」
メルラン「ほら、リリカ。時間だから次はあんたの番よ。」
リリカ「うえ~。…あいたたた。急にお腹が~。」
ルナサ「サボったら晩御飯抜きよ。」
リリカ「う~、わかったわよ~。」
メルラン「この金を山中に埋めて、『虹川埋蔵金』として後世に語り継ぐのよ~。」
馬車が一台、走り去って行きました。
そう、昨日貧乏神が言っていた、金を積んだ馬車だったのです。
霊夢「う~ん…あ~、よく寝た。」
既に馬車は一台通り過ぎてしまいました。
そうとも気付かず、青年は目を覚ましました。
霊夢「さて、気合入れて狩るわよ!」
青年が、久々に本気になりました。
その辺から太くて長い棒を拾ってくると、ぶんぶんと振り始めました。
と、その時、遠くの方から、馬の蹄の音が聴こえてきました。
霊夢「来たわね!」
青年は物陰に隠れ、待ち構えます。
だんだんと、音が近くなってきます。
霊夢「さん……にい……いち……それ!」
青年は道に飛び出しました。
そして、手に持った棒で、馬車をぶっ叩いて止めようとしました。
しかし、
??「みぎゃー!!」
霊夢「やった!………え?」
青年のその手に、手ごたえはありました。
しかし、そこに居たのは、
美鈴「きゅ~………。」
馬だけでした。
では、馬車はどうしたかと言うと、
咲夜「折角手に入れた銀、みすみす渡せはしませんわ。」
レミリア「ハイヨー、さくやー。」
パチュリー「うぷ……気持ち悪い……。」
別の馬に引かれて、そのまま行ってしまいました。
どうやら、馬一匹を犠牲にして、変わり身の術を使ったみたいです。
霊夢「……う~ん、金は逃がしたか~。次は逃がせないわね。」
青年はまだ、さっきの馬車が金を積んだ馬車だと思っています。
次は真珠や珊瑚を積んだ馬車なのですが、青年は銀を積んだ馬車だと信じています。
と、そうこうしているうちに、次の馬車が近づいて来ました。
青年は気を取り直して、物陰に隠れました。
霊夢「スリー…ツー…ワン……それ!」
タイミングを合わせて、青年は馬車に飛びかかりました!
?「ふぎゃ~!」
霊夢「やった!………へ?」
手応えはありました。
しかし、そこに居たのは、
藍「うう……。」
またしても、馬でした。
橙「あ~!藍さま~!」
紫「藍は私たちを逃がすため、身体を張ってくれたのよ。」
橙「紫様が藍様を盾にしたんじゃ……。」
紫「さあ、藍の犠牲を無駄にしてはいけないわ。逃げるのよ!」
橙「うわ~ん、重いよ~!」
最近の輸送業界は、みんな変わり身の術を身に付けているのでしょうか?
変わり身の術に翻弄され、青年はまたしても馬車を逃がしてしまいました。
霊夢「ううう、また逃がした……。」
馬車は全部逃がしてしまったのですが、青年はまだ、次の馬車が来ると思っています。
気を取り直して物陰に隠れ、じっと馬車が通るのを待つことにしました。
霊夢「……来た!」
何と、向こうから馬車がやって来るではありませんか。
霊夢「タイミングを計るのも面倒くさいわ!突撃ー!」
青年は、そのまま馬車に向かって突撃しました。
霊夢「てぇえええい!!」
??「どわぁ!?」
馬車が豪快に横転しました。
すかさず青年は、馬車に乗っていた人に襲いかかりました。
霊夢「それ!お札お札!ニードルニードル!」
??「やめてやめて!痛い痛い!」
霊夢「とどめに夢想封印!」
??「ふぎゃ~~~~!」
霊夢「よ~し、討ち取ったわ!」
青年は、馬車に乗っていた人を、コテンパンに叩きのめしました。
霊夢「さあ、お宝を渡してもらうわよ!」
小町「うぅ~……。」
霊夢「あ、あれ?」
青年がさっきまで殴っていたのは何と、出て行ったはずの貧乏神だったのです。
小町「な、なんて事するんだ……死ぬかと思ったじゃないか……ぐふぅ……。」
霊夢「何であんたが居るのよ!お宝はどうしたのよお宝は!」
小町「何でって……真珠と珊瑚を積んだ馬車の後ろを付いていってただけじゃないか……。」
霊夢「え?」
小町「あたいは、三台って言ったぞ。四台目止めて、何が入ってるって思ったのよ?」
霊夢「え~!それじゃあ最初に通ったのが2番目の馬車だったって言うの~?」
青年はここでようやく、自分が寝過ごしてしまったことに気付いたようです。
霊夢「あ~もう、それじゃああんたに用は無いわ。行っていいわよ。」
小町「そんな酷い……大体、あたいは、言ったぞ。」
霊夢「あ~?」
小町「馬車を止めることが出来たら、馬車の積荷はお前の物。
この馬車の積荷は、あたいだ。つまり、あたいはあんたのモンだ。
ああ、勘違いするなよ。やらしい意味じゃなくて、文字通り……。」
霊夢「結局元の木阿弥ってこと~?そんな~。」
結局青年は、この貧乏神と死ぬまで一緒に暮らすことになってしまったそうな………。
霊夢「あ~~~………寒。」
小町「寒いねぇ………。」
霊夢「お茶。」
小町「ん。」
霊夢「ずず~……。」
小町「……………。」
霊夢「……草汁も、慣れれば何とも無いわねぇ。」
小町「住めば都。」
霊夢「それは何か違うと思う。」
あと、ついでに馬も一緒に暮らすことになったそうですが、
青年も貧乏神も、すっかり忘れているようです。
美鈴「…………お腹すいた…………。」
藍「…………ひもじい……………。」
おしまい
キャスト
青年 ・・・ 博麗 霊夢
貧乏神 ・・・ 小野塚 小町
最初の馬車 ・・・ プリズムリバー三姉妹
二番目の馬車 ・・・ 紅魔館一党
三番目の馬車 ・・・ 八雲一家
霊夢「あ~~~~………寒。」
この青年はロクに働きもせず、一日中家でゴロゴロしていました。
真面目に働いてみたこともあったのですが、一向に裕福にならず、
もう馬鹿馬鹿しくなって仕事をしなくなったのです。
霊夢「お茶でも淹れるか……って、お茶も切らしてたんだっけ。はぁ~……。」
お茶を買いに行くお金も無ければ、その気力もありません。
全部、貧乏が悪いのだと、彼は思っています。
??「ほれ、これでも飲むと良い。」
霊夢「あら、ありがと。」
と、誰かからお茶を渡されました。
青年は何の疑問も抱かず、お茶をぐいっと飲みました。
霊夢「ぶーーーッ!何よ!この不味い液体は!」
小町「その辺に生えてた草とかを煎じたんだ。大丈夫、栄養満点。」
霊夢「何が大丈夫なのよ!…って、あんたは?」
小町「あたいか?あたいは貧乏神さ。この家に住んでる、な。」
霊夢「貧乏神?」
お茶を渡した誰かとは、何とこの家に住む貧乏神だったのです。
小町「驚いたか?一応神様の内だからな。さあ、遠慮なく崇め奉るが良い。」
霊夢「出てけ~!!」
小町「うわー!なにをする!?いたたたた!」
青年は貧乏神に襲いかかりました。
小町「痛い痛い!」
霊夢「働けど働けど私が貧乏なのは、全部あんたのせいなのね!」
小町「いや、そりゃあんたの何時もの行いが……痛い!痛いってば!やめてって!」
霊夢「うるさ~い!さっさと出て行きなさい!」
小町「わかった!わかったから!どっちにしろ出て行くつもりだったし。」
霊夢「え、そうなの?あ~よかった。」
どうやら貧乏神は、この家に居るのも飽きたので、
今日のうちに出て行こうとしていたようです。
小町「出て行くついでに、一つ教えてやろう。明日、この家の前を、三台の馬車が通る。
初めの馬車には金、次の馬車には銀、最後の馬車には真珠や珊瑚が、それぞれ積まれている。
この馬車を止めることが出来たら、積荷はお前のものになるだろう。」
霊夢「ほんとに?何か嘘くさいなぁ。」
小町「嘘など言うものか。これでも神様だからな。」
霊夢「ほら、言ってることが嘘くさい。」
小町「……嘘ついたら、四季さまに説教くらうし……。」
霊夢「本当の話みたいね。うん。」
小町「じゃ、あたいは出て行くよ。達者でな。」
貧乏神は、家を出て行きました。
霊夢「とりあえず、明日は早起きしなきゃいけないわね。」
青年は、金銀を手に入れて、お金持ちになる夢を見ながら、眠りに就きました。
そして、次の日の朝です。
霊夢「む~……お賽銭が~……溢れる~……うふふふふ……。」
だらけた生活が身についてしまった青年に、早起きは無理だったようです。
もう日が昇って結構経つと言うのに、まだ寝ています。
そのころ家の前を一台の馬車が通過して行きました。
リリカ「それそれ!もっと飛ばせ~!」
ルナサ「無理だってば……。もうヘトヘトよ……。」
メルラン「ほら、リリカ。時間だから次はあんたの番よ。」
リリカ「うえ~。…あいたたた。急にお腹が~。」
ルナサ「サボったら晩御飯抜きよ。」
リリカ「う~、わかったわよ~。」
メルラン「この金を山中に埋めて、『虹川埋蔵金』として後世に語り継ぐのよ~。」
馬車が一台、走り去って行きました。
そう、昨日貧乏神が言っていた、金を積んだ馬車だったのです。
霊夢「う~ん…あ~、よく寝た。」
既に馬車は一台通り過ぎてしまいました。
そうとも気付かず、青年は目を覚ましました。
霊夢「さて、気合入れて狩るわよ!」
青年が、久々に本気になりました。
その辺から太くて長い棒を拾ってくると、ぶんぶんと振り始めました。
と、その時、遠くの方から、馬の蹄の音が聴こえてきました。
霊夢「来たわね!」
青年は物陰に隠れ、待ち構えます。
だんだんと、音が近くなってきます。
霊夢「さん……にい……いち……それ!」
青年は道に飛び出しました。
そして、手に持った棒で、馬車をぶっ叩いて止めようとしました。
しかし、
??「みぎゃー!!」
霊夢「やった!………え?」
青年のその手に、手ごたえはありました。
しかし、そこに居たのは、
美鈴「きゅ~………。」
馬だけでした。
では、馬車はどうしたかと言うと、
咲夜「折角手に入れた銀、みすみす渡せはしませんわ。」
レミリア「ハイヨー、さくやー。」
パチュリー「うぷ……気持ち悪い……。」
別の馬に引かれて、そのまま行ってしまいました。
どうやら、馬一匹を犠牲にして、変わり身の術を使ったみたいです。
霊夢「……う~ん、金は逃がしたか~。次は逃がせないわね。」
青年はまだ、さっきの馬車が金を積んだ馬車だと思っています。
次は真珠や珊瑚を積んだ馬車なのですが、青年は銀を積んだ馬車だと信じています。
と、そうこうしているうちに、次の馬車が近づいて来ました。
青年は気を取り直して、物陰に隠れました。
霊夢「スリー…ツー…ワン……それ!」
タイミングを合わせて、青年は馬車に飛びかかりました!
?「ふぎゃ~!」
霊夢「やった!………へ?」
手応えはありました。
しかし、そこに居たのは、
藍「うう……。」
またしても、馬でした。
橙「あ~!藍さま~!」
紫「藍は私たちを逃がすため、身体を張ってくれたのよ。」
橙「紫様が藍様を盾にしたんじゃ……。」
紫「さあ、藍の犠牲を無駄にしてはいけないわ。逃げるのよ!」
橙「うわ~ん、重いよ~!」
最近の輸送業界は、みんな変わり身の術を身に付けているのでしょうか?
変わり身の術に翻弄され、青年はまたしても馬車を逃がしてしまいました。
霊夢「ううう、また逃がした……。」
馬車は全部逃がしてしまったのですが、青年はまだ、次の馬車が来ると思っています。
気を取り直して物陰に隠れ、じっと馬車が通るのを待つことにしました。
霊夢「……来た!」
何と、向こうから馬車がやって来るではありませんか。
霊夢「タイミングを計るのも面倒くさいわ!突撃ー!」
青年は、そのまま馬車に向かって突撃しました。
霊夢「てぇえええい!!」
??「どわぁ!?」
馬車が豪快に横転しました。
すかさず青年は、馬車に乗っていた人に襲いかかりました。
霊夢「それ!お札お札!ニードルニードル!」
??「やめてやめて!痛い痛い!」
霊夢「とどめに夢想封印!」
??「ふぎゃ~~~~!」
霊夢「よ~し、討ち取ったわ!」
青年は、馬車に乗っていた人を、コテンパンに叩きのめしました。
霊夢「さあ、お宝を渡してもらうわよ!」
小町「うぅ~……。」
霊夢「あ、あれ?」
青年がさっきまで殴っていたのは何と、出て行ったはずの貧乏神だったのです。
小町「な、なんて事するんだ……死ぬかと思ったじゃないか……ぐふぅ……。」
霊夢「何であんたが居るのよ!お宝はどうしたのよお宝は!」
小町「何でって……真珠と珊瑚を積んだ馬車の後ろを付いていってただけじゃないか……。」
霊夢「え?」
小町「あたいは、三台って言ったぞ。四台目止めて、何が入ってるって思ったのよ?」
霊夢「え~!それじゃあ最初に通ったのが2番目の馬車だったって言うの~?」
青年はここでようやく、自分が寝過ごしてしまったことに気付いたようです。
霊夢「あ~もう、それじゃああんたに用は無いわ。行っていいわよ。」
小町「そんな酷い……大体、あたいは、言ったぞ。」
霊夢「あ~?」
小町「馬車を止めることが出来たら、馬車の積荷はお前の物。
この馬車の積荷は、あたいだ。つまり、あたいはあんたのモンだ。
ああ、勘違いするなよ。やらしい意味じゃなくて、文字通り……。」
霊夢「結局元の木阿弥ってこと~?そんな~。」
結局青年は、この貧乏神と死ぬまで一緒に暮らすことになってしまったそうな………。
霊夢「あ~~~………寒。」
小町「寒いねぇ………。」
霊夢「お茶。」
小町「ん。」
霊夢「ずず~……。」
小町「……………。」
霊夢「……草汁も、慣れれば何とも無いわねぇ。」
小町「住めば都。」
霊夢「それは何か違うと思う。」
あと、ついでに馬も一緒に暮らすことになったそうですが、
青年も貧乏神も、すっかり忘れているようです。
美鈴「…………お腹すいた…………。」
藍「…………ひもじい……………。」
おしまい
キャスト
青年 ・・・ 博麗 霊夢
貧乏神 ・・・ 小野塚 小町
最初の馬車 ・・・ プリズムリバー三姉妹
二番目の馬車 ・・・ 紅魔館一党
三番目の馬車 ・・・ 八雲一家