Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

整理整頓に役立つ魔法

2006/03/31 11:35:15
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魔法の森を少女が歩く。従えるは上海と蓬莱の2体の人形。向かうは愛しい恋人の家。
「3日も会いに来ないだなんて、何かあったのかと心配になるじゃない。」
「恋人同士なんだし私のほうから家に訪ねたっってかまわないわよね。」
「もう、何で私がこんなことで悩まなくちゃならないのよ……。」
1人なにやらつぶやきながらも、足早に魔法の森をかけていく。
行き慣れた森路。その足取りは、はやる気持ちを抑えきれずに自然と急いてしまう。

たどりつきしは魔法の森の奥。こぢんまりとした、滅多に人を招き入れる事の無い霧雨邸。
古めかしいノッカーをいくら叩けども、一向に返事はなく。
「どうしたのかしら、まさかどこかに出かけているんじゃ。」
ためしにノブを引いてみると鍵はかかっておらず、静かな音を立てて扉が開いた。
「鍵もかけずに無用心ね。うーん。勝手に入ってもいいのかしら。」
「うん。恋人の家なんだもの。入っちゃいけないってことはないでしょう。」
言い訳じみた言葉で自分を納得させ、おずおずと落ち着きのない足取りで、忍び込むように霧雨亭の中へと入っていった。

「なんともまぁ。」
家中を覆い尽くすもの、もの、もの。
各種のマジックアイテムやら、曰くありげな壺やら、紅魔館から持ち出したと思しき魔導書に、白玉楼の桜の花びらと、よくここまで集めたものだと感心するほどの品々が所狭しと並んでいた。
積み上げられたアイテムの数々によって幾分狭くなった邸内を進んでいくと、物々しい扉の部屋にたどり着いた。
ノブに手をかけると魔法錠がかけられていることに気づく。
「あら、この部屋には鍵がかかっているのね。」
いつも持ち歩いている魔導書を開き透視のスペルを唱える。
多少の魔法障壁など持ち前の幻視力にかかればあってなきがごとし。
扉の向こうの魔理沙は、乱雑に積み上げられた魔導書に囲まれて安らかな寝息をたてていた。
「あぁ、ここにいたのね。」
魔理沙から、研究に没頭するあまり寝食すら忘れてしまうことがある、などという話を聞かされたことを思い出し、一安心する。
「魔理沙が起きるまでにやらないといけないことがいっぱいあるわね。」
「上海、蓬莱、働いてもらうわよ。」


そして、芳しい匂いにつられて、魔理沙は目を覚ました。
工房から出ると、
「のわ!?」
自分の家とは思えないほどに綺麗になった廊下。
漂ってくる匂いに引き寄せられるようにキッチンへと向かっていく。
「なんだなんだ。ブラウニーでも湧いたのか。」
乱雑におかれていた数々のアイテムが整頓されただけでまるで違う家のよう。
困惑しながらキッチンの扉をくぐるとそこには久しく会っていなかった恋人の姿。
いつものブルーのドレスにエプロンをかけて、深い鍋をお玉でかき混ぜているその後姿。
魔理沙は何かに憑かれたようにアリスの背後に歩み寄り、不意に抱きしめた。
「アリス。嫁に来てくれ。」
「きゃぁ。な、な、なによ魔理沙。いきなりそんなこと言われても、心の準備が……。」
「……」
「……」
後ろから抱きかかえられたまま、アリスはバツの悪そうに顔を背ける。
「えっと、その。家の掃除してくれたのありがとうな。」
「え、ええ。勝手に片付けてしまってよかったのかしら。」
「大歓迎だぜ。」
ぎこちなく言葉を交わす二人。
「あっ。シチューが焦げちゃうわ。」
触れ合った体を名残惜しげに離し、これまた綺麗に整えられた食卓につく。
言葉少なに食器を鳴らす音だけが響く。
「なぁ、アリス。」
意を決して魔理沙が口を開いた
「あのさ。もっとちゃんとした形で言うからさ、そのときまで待っててくれよな。」
「え……。」
「あ、あまり気にしないでくれ。」
慌ててそう続ける魔理沙をアリスはただ見つめるのでした。

かくして、整理整頓に役立つ魔法の研究は幕を閉じたのであります。
もっとアリマリする!!

もとい、拙いSSを読んでいただきありがとうございます。
初めてこの手のSSを書いたものだから何をどうすればいいのやらわからんこと……。
とりあえず、通い妻アリスはいいものだ、ということを感じてもらえたらそれで満足です。


ムジカ
コメント



1.いー削除
もっとアリマリする!
2.月影蓮哉削除
きゃー、素敵でございます。
3.名無し妖怪削除
いいものだっ!!
4.削除
整理整頓に役立つ魔法~
「アリス、結婚してくれ!」

ラーニングした。
5.名無し妖怪削除
むじかくんに、ありまりされてる……