Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

たとえばこんな出会い方

2006/03/31 04:32:19
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遠い昔、少女は人を愛していた。
多くの人に紛れ、共に暮らしていた日々もある。
しかし、周りと違いその少女だけが老いず、傷を負ってもすぐに癒え、
長く居れば居るほど、その不思議な力は際立ち、注目を集めていくことになる。

最初は驚き、そして羨望、賞賛さえされていたその人外の力は、いつしか
妬み、恐怖へと取って代わり、最後にはついに直接の攻撃となった。
自分の身を守るため、そして、それでも自分についてきてくれる僅かな人達を守るために、
少女は愛していた―今でも愛している―人々に対し、力を振るった。

それが始まり。そして、何度も繰り返すことになる苦しみの始まりだった。

ある時、繰り返される苦しみに耐えられなくなった少女は、人里を離れることにする。
遠く離れた竹林に居を構え、時々人里に下りては、大好きな人々と過ごす短い時間を楽しんだ。

だが、それも長くは続かなかった。
人の口に戸は立てられないもので、いつしか「あの竹林には物の怪が住んでいる」だとか、
「何時までも姿の変わらない少女の姿をしている」だとか、挙句の果てに
「少女の姿で人を惑わし、捕って食う」だとか…。
そんな噂話が瞬く間に近隣の村々に広がり、少女はまた追われる事になった。

何度も何度もそんな苦しみを繰り返した。
たまに「討伐」などといって攻めてくる輩も居たが、その悉くを追い返した。
林に迷い込んだ人も、少女の姿を見るなり逃げ出した。
そうして逃げ帰ってきた人々が、また噂を広めていく結果となり…
もう、いくら少女が人々を愛していようとも、人々にとって少女は、恐怖の対象でしかなかった。



そして、その方が傷つく人が少なくてすむだろう、と、少女はその現実を受け入れた。



「――だから、だからお前がここに来たときも、『またか』と思っただけだった。
 迷い込んだだけなら、姿を見せれば逃げ帰る。噂を聞いて、名声欲しさに私を
 倒しに来たのなら、少し脅して追い返してやればいい、と」

目の前に倒れている少女に語りかける。
彼女はそのどちらでもなかった。目の前にいきなり自分が現れても、威嚇して脅しても、
なぜか笑顔で近づいて来ようとする。
牽制のつもりで、子供でも避けれる速度まで落として振るった力を、なぜか避けようともせず
受け、倒れてなおも

「…大丈夫…」

そう言いながら立ち上がり、近づいてこようとする。
また力を振るい、やはり避けずにそれを受け、倒れ、そのたびに起き上がり…
気がつけば今までのことを叫ぶように語っている自分がいた。

「何がしたいんだ?何が大丈夫なんだ!お前に…お前に私の何がわかるって言うんだ!」

もう自分でも何を言ってるか解らない。ただ心情のままに、今までに溜め込んだものをすべて
吐き出すように叫び続け、ふと、今度はなかなか起き上がってこない少女に気がついた。
そういえば、もう何度も自分の攻撃を受けている。
いくら抑えているとはいえ、こうも連続で受ければ―

「…まさか……私は、なんてことを…」

これではまったくの噂通り―自分は化け物そのものではないか。
思わず蹲り、さまざまな感情が渦巻き、何も考えられなくなりそうな時

「大丈夫」

同じ言葉が、届いた。

顔をあげたそこに、ぼろぼろで、あちこち傷だらけで、足を引きずりながらも、
笑顔で立ち上がっている少女がいた。

「大丈夫…私はこのくらいじゃ死なないから。っていうか、死ねないから」

「お前…なんで…」

「やー、実は話をしてみたかっただけなんだけどさー。なんかもう初っ端からキマってたから、
 こりゃ落ち着くまで相手しなきゃだめかなーとか」

「…へ?」

「近くの村々で話を聞いたんだ。そりゃもう身も凍るような噂の数々を。
 で、実は私も似たような身の上でありまして。人恋しさというか同属恋しさというか」

「同…属…?」

「そ。今実証した通り、死なない体になっちゃってね。歳も取らないから人里にも長く居られない。
 各地を転々としてる時、あんたの噂を聞いて、あー、そのうち私もこうなるんだろうなーって
 思ったら、同じ境遇の先輩と少し話をしてみたくなって」

確かにさっきの傷がもう塞がりかけている。
…だったら最初からそう言え、とかほんのちょっとだけ思ったり。
ちくしょう。私の魂の叫びを返せ。

「にしてもあんたの人間好きも筋金入りだね。こんな現状でも手加減するし。
 私だったら有無を言わさず消し炭にしそうなものなのに。
 ま、消し炭にされても私は死なないけど」

「…筋金入りで悪かったな」

「悪くはないんじゃない?それだけ頑丈な筋金入ってれば、そうそう諦められないだろうし、
 そのうちきっとそんなでも受け入れてくれる人達にも会えるでしょ。
 それまでは…まぁ、『元』人間で我慢してくれないかな?」

「お前…」

「藤原 妹紅、よ。
 …大丈夫。私は決して、あなたより先に逝ったりしないし、怖がったり、妬んだり、
 裏切ったりしない。…まぁ、喧嘩くらいはするかもしれないけど、それでもずっと
 あなたと一緒に居ることは出来る。だから、折角会えた同属なんだし、仲良くしない?」

なんだか少し前と人間が変わったんじゃないか?と疑うほど飄々とした態度で、
でも変わらない笑顔で差し出された手は、なんだかすごく暖かく、眩しく見えて。
その手をとりながら、思わず私も笑っていた。

「慧音。…上白沢 慧音。その…なんて言っていいか解らないけど…ごめん。ありがとう。
それと…よろしく、妹紅」

「こちらこそよろしく、慧音」


そんな出会いのお話が、遠い昔にあったりなかったり。
勿論、永い夜を越えた今も、少女は人間を愛している。
まずは読んでくれたことに感謝。

なんかこう、血だらけ泥だらけだけど、笑顔でけーねに手を差し出してる。そんなもこの絵が、
ふとmy腐脳に浮かんだわけですよ。脈略もなく唐突に。
しかし自分は絵スキルが壊滅的なので、何とか文章にしてみようと…みよう…と…。
前半と後半がギャップありすぎですが、仕様です。
なんかもこが頭軽そうですが、それも仕様です。
後半というよりも長すぎる気もする台詞部分ですが、やっぱり仕様で…ごめんなさい(ぇ

しかしどこかで似たようなお話が既に存在してそうな恐怖っorz
みみみ
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