Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

流れ星にさようなら。

2006/03/30 08:56:41
最終更新
サイズ
4.93KB
ページ数
1
@注意・微グロアリ升  アリマリデス














                 表
               (アリス)











 膝の上。幸せそうに眠る魔理沙の頭を、アリスはゆっくりと撫でる。
 金の髪に手を入れてすすく。さらさらと流れ落ちる髪を、アリスは好きだった。
 魔理沙の全てが好きだった。彼女の姿も、仕草も、生き方も。
 こうして、今彼女といることは、何よりも幸せだった。


「ねぇ魔理沙。楽しかったわよね」


 眠る魔理沙に語りかける。返事は期待しない。
 彼女が起きていれば、こんなことは恥ずかしくて言えなかった。


「何度も弾幕ごっこをしたわ。私、いつも勝てなかったけど、あなたと遊ぶのは楽しかった。
 一緒に月を捜しにいったの覚えてる? 私、魔理沙魔理沙って言ってばかりだったね。
 本当は、貴方のこと、頼りにしてたのよ。」


 髪を撫でる手が、頬へとのびる。
 紅色のひかれた魔理沙の唇を、アリスは見つめる。
 言葉は、それ以上、出てこなかった。
 ただ無言のまま、その唇に吸い寄せられるように、アリスは動いた――








 ――唇は柔らかく。

 甘い、魔理沙の味がした。











 アリスは考えてみる。
 いつからこうなのかを。
 いつからこうなったのかを。
 きっかけを思い出すことすらできない。
 きっかけかあったかどうかすら定かではない。
 いつも、そこに魔理沙がいた。
 そこにいるのが当然だった。そこにいないことはなかった。
 まるで常に付き添う半霊のように、魔理沙はそこにいた。
 そして、アリスもまた、魔理沙のそばにいた。
 味方として。
 敵として。
 友人として。
 相棒として。
 そして――恋人として。
 アリスのそばに魔理沙はいた。
 魔理沙のそばにアリスはいた。
 味方でも敵でも友人でも相棒でも恋人でもない――かけがえのない存在として。
 二人は、つねに一緒だった。
 離れるだなんて、思ってもいなかった。
 離れるだなんて、考えもしなかった。


 ――たとえ死が訪れたとしても。


 魔理沙は誓う。


 ――二人を別つことはできない。


 アリスも誓う。







 そういうことが、昔にあった。

 そして――





 ――それは、今。







 二人の間で、確かに守られている。





















                   ◆ ◆ ◆



                     裏
                   (霖之助)




 

 ザッ、という足音とともに、男が現れる。香霖堂店主、森近 霖之助だ。
 彼がそこに来るのは珍しい。
 霖之助は、ここ『数十年』ここには現れなかった。
 ここ――魔理沙の家には。
 魔理沙の家の前。
 木に背を添えるようにして座る二人の少女を――二人の少女だったものを――霖之助は見る。
 ソレを見ても、眉一つ変えない。
 ため息をはくことも侮蔑の目で見ることもなく、ソレらを見つめた。


「今さら何しにきたの?」


 アリスの冷ややかな問い。悪意すら感じさせる。敵意をはらむ声。
 その声に、霖之助は冷ややかに答える。
 悪意も敵意も感じさせない、感情のない声で。
 淡々と事実を言うように、霖之助は言う。


「――ソレ。埋めないのかい?」


 ソレ。もう、霖之助は、魔理沙を人扱いしていなかった。
 アリスはそれが悔しかった。
 ――魔理沙は、ここにいる。ここに、ちゃんといるのに。
 それはしかし、アリスにしか分からない論理だ。
 彼女の論理。
 彼女の倫理。
 彼女の理論。
 彼女の世界。
 それはもう破綻していると、霖之助は思う。
 けれども、同時に。


 破綻しても――破綻したからこそ、彼女の世界は幸せなのだと、霖之助は思うのだ。


「魔理沙はここにいるわ」


 魔理沙だったものを抱き寄せるアリス。
 その様子を霖之助はじっと見詰める。
 魔理沙だったものを、じっと見つめる。
 見つめて、言う。


「金の髪は抜け落ちて。頬はこけて、肉は無くなり。枯れた唇には、君の血が塗られている。
 それはもう、かすかに肉がついた骨だ。
 それはもう、人ではない。人だったものだ。
 それはもう、霧雨 魔理沙という少女ではない。
 それはもう――君の幻想だ」


 そこにいるのは――そこにあるのは、ただの死骸だった。
 霖之助の言うとおりの、ただの死骸を、アリスは愛しそうに抱きしめている。
 不自然に赤い紅が、魔理沙だったものと、アリスについている。
 血のキス。
 血の味のキス。
 死の味のキス。 




 けれど。





 アリスの目には、そこに、魔理沙が『いる』のだ。
 いつまでも変わらない、美しく、流れ星のような、少女が。
 魔理沙のキスの感触を、アリスは、たしかに感じていたのだ。



 霖之助の指摘に、アリスは、微笑んでこたえる。






 その顔は――












「ええ、幻想よ。それでも彼女はここにいるわ」














 ――心のそこから、幸せそうだった。









                                              終わらない。終われない。終わりはない。
                                                           永遠に続く。
                                                  アリスの中で少女は永遠となる。
                                                  魔理沙の中で少女は永遠となる。
                                                  傷だらけの永遠は、終わらない。
サイ娘倶楽部隊員α参上!
サイ娘倶楽部
コメント



1.CACAO100%削除
そういう事なのか・・・彼女等は行ってしまったのか
如何し様も無い、彼女を保つのは彼女の存在のみ