Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

『明日はきっと……あれ? ~another diary~』

2006/03/20 06:48:57
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注意:この作品は、「明日もきっと晴れ」 銀の夢with創想話のえrい作家さんたち の裏日記です。
   できればそちらからご賞味下さい。




 [曙に陽が昇り、黄昏に陽が沈み、夜に星が空に歌おうとも……] 


 麗らかな春の日。桜は蕾、風は凪。柔らかい日差しがほんやりと包み込んでいる。
 八雲 紫は縁側でお茶を啜りつつ

 「ほぅ……」

 と、安堵の息を洩らした。

 啓蟄と言っても目覚めるのは蟲だけではない。蛙も熊もそしてやっかいな大妖怪も暖かな日差しに
目を覚ます。紫が目覚めて約半月。藍に結界の管理を任せていたが、それでもところどころに綻びが
生まれている。
 藍はしきりに恐縮していたが、こればかりは仕方がない。
 幻想郷を包み込む結界の維持は非常に困難。何しろ大元の結界はガネーシャが踏んでも壊れないく
らい頑丈な癖に、僅かな綻びはほいほい生まれてくるのだ。雨後の筍の如く、そりゃもーほいほいと。

 冬眠から目覚めた紫は、藍と橙を引き連れて幻想郷中を廻った。致命的な綻びはなかったものの、
あっちこっちと破れてる。あまりの面倒臭さに紫は投げ出して逃げ出そうとしたが、藍が身体を張っ
て引き止めた事により、何とか補修を終える事が出来たのだが――

 補修を終えたのが昨日。

 紫は縁側でのんびりと茶を飲み、藍は未だ全身打撲により布団で唸っている。南無。


「さてさて一仕事を終えた後は、何らかのご褒美がなくっちゃねぇ」

 紫は右手をすいっと上げ、ぱちんと指を鳴らす。

「出でよ、我が忠実なる僕!」
「わわわわっっっ!!!」

 スキマがひょいと開いて、転がり出るは伊吹の小鬼。
 いかにぽかぽか陽気の気持ちの良い日中とはいえ、ノースリーブとは如何なものか?
 まあいいか、鬼だし。

「いきなり何すんのよ! それに何時、誰があんたの僕になったって言うの!」
「特級大吟醸『万寿』」
「犬とお呼びください」

 差し出された一升瓶を歯で抉じ開け、らっぱ飲みしはじめる愉快な小鬼。ぷはーと吐く息も桜色に染ま
る程の桃色吐息。ふにゃふにゃと崩れた顔に鬼の威厳など1ミクロンも存在しない。

「で、犬さん」
「わん」
「寝てる間に頼んでいたブツは?」
「はっ! ここに!」

 萃香の懐から取り出される色とりどりの雑記帖。

 紫は満足気な笑みを洩らして、んーよしよしと言いながら萃香の背中を撫でてやる。
 目を細めてきゅーきゅー言ってる姿は正に犬。犬種は豆芝、角・鎖付き。時々咬みます、気を付けて。

「さーて、私がいない間にどんな面白おかしい事が起こったのかしらねぇ」


 紫は口元をにたりと吊り上げ、目に付いた雑記帖を手に取った……










■3月☆○日 [魔理沙のヤツ……] アリス=マーガトロイド

 朝、いつもどおりの時間に起床。
 目覚めに笑顔を振りまいてくれる上海たちにおはようと言って、朝食。
 大体の家事はいつもどおり人形たちが手伝ってくれるから、お昼頃までには一通り終わった。
 それからゆったり昼食をとって、午後のティータイム。
 そんないつもどおりの日のはずだった。


 魔理沙が来るまでは。


 唐突にやってきて大きな声で呼んできた。
 ……近所迷惑ってものを考えないのかしら? といってもここは誰もいない森だけど。
 とりあえず返事をしておいて玄関に出ると、そこに魔理沙の顔――


 じゃなくて、山のようなキノコ……


 思わず叫んでしまった私に、キノコの山の向こうから気軽に挨拶してくる魔理沙。
 なんでアイツはこんなことを平然とできるのかしら……

 門前払いもなんだから一応客間に通してお茶を出してあげた。
 用件を聞いてみると予想通り、キノコのおすそ分けにきた、と。
 何でも珍しいキノコだから私にも、と思って持ってきたらしい。

 ……私のことをわかっててあえてやってるのかな。
 だとしたら……いろいろ、泣けてくる。
 でも、あきれ半分に困ってしまうと、魔理沙はきょとんとして……■■■。

 って思ってたらいつの間にか魔理沙がキノコのひとつを手にとってすぐ目の前にいた。
 何をするのかと思えば。

 急に、キノコの傘を私の頬にねじ込んできた。

 一瞬、そのキノコの発する甘い香りに蕩けてしまいそうになる。
 ほれほれ、とか言いながらぐりぐりと押し込んでくる魔理沙はどこか楽しそうで、そして
いたずらめいた笑みを浮かべていた。
 そうされるたびに、このキノコは汁気が強いのか、プシュッ、プシュッって音を立てて汁が飛び散る。
 やぁっ、とかやめてとか叫んでも一向に聞いてくれなくて、むしろいたずらはますます
エスカレートしていって、 床に、服に、肌に、顔に、蕩けるようなキノコの甘い香りのする、
糸を引く液体がぶちまけられた。
 流されちゃダメ、って思っても……体が火照って、体中グショグショになっちゃっていて……




 それからのことはあんまり思い出したくない気がする。
 確かなのは今、私のすぐそばで魔理沙が寝ているということ。それも、あられもない姿で。
 とても、無防備に。
 思わず泣いちゃった。けど、泣き止ませてくれたのも魔理沙。
 本当、人の気持ちを考えないんだから……
 まあでも……この寝顔を見ていたら、許してあげようかな、って思う。
 ほっぺたを突っついてみたら、ふにゅっとしていてすごくやわらかかった。






「ほほぅ! いいわねー甘酸っぱいわねー青春ねー!」

 きゃいきゃい言いながらはしゃぐ紫。過ぎ去りし青春時代に思いを馳せ、まるで一介の女学生のように
赤面しながら萃香をばしばし叩いている。一体何処の青春時代に、白い催淫剤入りの粘液を飛ばすアヤシ
ゲなきのこが介在するのか小一時間問い詰めたいと思いつつも、酒が美味いからまぁいーかーと思う萃香
であった。

「あぁ……いいわー。可憐な女の子同士のイ・ン・モ・ラ・ル☆ 昔は私も……じゅるり」
「あーそこそこ。涎を垂らさない垂らさない」

 おっとっと、と言いながら袖で拭う紫。でも顔のにやにやは治まっていない。
 昔を思い出しているのか、うっとりとした表情で、どっか遠いお花畑に飛んでいる。

「あーお楽しみのとこ悪いけど……それ夢だから」
「へ?」
「その日記……アリスのとこから持ってきたけど、そんな事実ないから。いっつも見てるし、私」
「……それじゃこれは……」
「そ、夢。ドリーム。妄想。ヤッバいよねーその日記書いてる時のアリス、完全に目が飛んでたもん」
「……」
「何かコメントは?」

「……強くイキロ」








「さーて、気を取り直してお次は、と」
「あ、ストップ。こっからは順番あんの。この順番で読んでみてねー 面 白 い か ら w」
「はいはい、了解。どれどれー」







■3月○□日――[本日の日記] 十六夜咲夜 晴れ 三日月

 12時ごろ起床。
 いつも通りメイドとしての服に着替え……ようとしたところで気がついた。
 ヘッドドレスが……無い。
 ドレッサーを覗いても無い、昨日部屋に戻ってきた時に置いた場所にもない。
 盗難かと思ったのだが、そもそもこの紅魔館に来て、私のヘッドドレスだけを盗む意図が解らない。
 現に下着やなんかはそのまま残っているのだ、変態の仕業とは思えない。
 部屋中を捜してみたが、予備すらも見つからなかった。
 洗濯に出したわけでもないし……。
 このままではなんだか頭のあたりがスースーして落ち着かない。
 もう一度部屋を見渡して、ソレが目に入った。
 窓際に置かれた一つのカチューシャ。
 確かにコレなら頭に着けられる……のだがいかんせんその形状に問題がある。
 そう、犬の耳を模して作られていたのだ。
 一体誰がこんなモノを置いたのか見当もつかない。
 とりあえず何も着けずにお嬢様の前に出る事にする。
「いつものアレは?」やっぱり聞かれた。
「はぁ、朝起きたらコレに変わってました」と犬の耳のついたカチューシャを差し出す。
「……」あぁ、やっぱり呆れてらっしゃるんだろうか……。
「着けなさい」「はい?」思わず本音が声に出てしまった。
「いいから、着けてみせなさい」もう何がなんだかサッパリわからない。
「はぁ……」おずおずとカチューシャを着けてみる。ここに鏡が無い為、自分の姿が確認できない事が恐ろしい。
「……ちょっとコッチまで来なさい」と言われたので近づいてみる。
「目を閉じなさい」なんか首元でカチャカチャ音がするんですけど?
「……いいわ、やっぱり犬には首輪も必須よね」はぁ? あの、本気ですか……?
「ところで咲夜、喉が渇いたのだけど?」一体何だったんだろう……。
「はい、お紅茶ですね。すぐにご用意致しますわ」
「いいえ、今ココで頂く事にするわ」はい?

 ……この後の記憶が非常に曖昧である。
 覚えてる事と言えば乱れたシーツとか、こぼれた紅い液体とか、妙なシミとか。
 ……まぁ、その、お察しくださいですわ、というか。
 何を書いてるんだろうか、いくら日記とはいえ、今日の事は記憶の片隅に封じ込めて蓋をしてしまおうと硬く決心する。


 追記
 ……ま、まぁ、その、たまにはこんな日もいいかと思う。







■Someday, March ― ○☆ ――[今日メモ]  レミリア・S 

 本日の予定は円滑に進んでいた。
 といっても、家の中の事は粗方咲夜がやってくれるもんだから、私はソファーでごろごろして暇を持て余してたんだけどね。
 
 唐突に閃いて、霊夢の神社に遊びに行こうと思ったら雨が降った。これまた唐突に。
 後ろで咲夜がニヤニヤしていた。
 仕方が無いので館内をぶらぶらしていたら、物凄い勢いで頭から絨毯へ突っ込んでしまった。何も無いはずの廊下で。
 後ろで咲夜が見ている気がした。
 汚れてしまった服を……いや埃なんて落ちてはいないけど威厳的に。どうにかしようと、とりあえず咲夜を呼んだ。
 手洗い場で私の服を脱がす咲夜が異様に楽しそうだった。
 ついでにお風呂に入った。咲夜がまたも付いてきた。
 あえて何をどうしたかは明記しまい。

 新しく用意された衣は、なぜか大きめのYシャツ一枚だった。
 「ただいまお嬢様のお召し物は全て洗濯に出しておりますので」嘘つけ。
 言い返せなかった私の威厳が危ぶまれた。
 
 最早開き直った私はパチェの図書館へと歩いて向かった。
 メイド達の視線が痛い。咲夜が混じっていた。
 図書館ではパチェが錬金術に手をつけていた。小悪魔も一緒のようだった。 
 「何よそんな格好で……ところで、今聖水を作ってるんだけど」私に何の恨みがあるんだ。
 フラスコの中でごぽごぽ音を立てる、そのドロドロとした白い液体は明らかに私には致命的な香りを発していた。
 「ちょっと実験に付き合ってくれないかしら」
 それに驚く暇もなく、私は身体中から力が抜けるのを感じていた。
 薄れ往く視界の中、パチェはニヤニヤしていた。小悪魔はビクビクしていた。後ろで咲夜の気配がした。

 そこからの記憶は無い。

 
 気付いたら私は自室のベッドに寝かされていた。
 Yシャツ一枚だった筈だが、私の服はいつも通りの白いワンピースに戻っていた。
 咲夜がずーっと横にいたらしい。気絶している間に何をした。
 
 まぁ、これらの一連の流れも全て予定調和の内なのよ。
 運命は私の手中にあるんだし。 
 
 
  
 追伸:腹いせに咲夜のヘッドドレスに細工をしておいた。明日が楽しみ。








「むぅ……相変わらず油断のならないところね。紅魔館は……」
「主従共に隙を見せればキズモノに……まーさーにー修羅道シャバダバドゥ。相変わらず怪しげな魔女が、妖しげな
薬で暗躍してるし。一寸先は闇、渡る世間は鬼ばかり。あれ? それって所謂パライソ?」
「豆鉄砲で殲滅されるパライソってのもシュールねぇ」
「む、馬鹿にされた気がする……」
「そんな事ないわーほら奈良漬食べる?」
「わぁい。むぐむぐ。っかー良く染みてるねぇ」
「いえいえ遠慮なく。ほほほ」
「むぐむぐ……それにしても紅魔館も色々変なものあるねぇ……犬耳やら首輪やら男物のYシャツやら」
「あ、それは私からのプレゼント♪」
「お前犯人かっ!」
「私が犯人よっ!」
「……」
「……」
「……で誰に渡したの?」
「小悪魔」
「……小悪魔……侮れねぇ」

 ぴーひょろろ~と遠くでトンビが飛んでいる。
 うん、今日もいい天気。







「さーて、お次は、と……」

 紫が次の雑記帖に手を伸ばす。ど・れ・に・し・よ・う・か・な・♪ なんて楽しげに。
 萃香は思う。いい年こいて馬鹿じゃry ゴイン!

「――っぐは!! いきなりタライがっ!」
「ほほほ、口の利き方には気をつけなさい」
「読心術まで使えるのっ!?」
「経験と勘よ」
「……侮れねぇ」






 
■3月○×日――[文々。日記] 射命丸 文

 曇り 後 晴れ

 ただ今ノッピキならない状況で、慌てて取り出したのが何故か持ってたこの日記帳だった為、
仕方なく書き綴る事にします。正直これは記事にして良いのか悪いのか判断できません。日記帳が
手元にあったのは運命だったのでしょうか。ああもうこんな頭文書いてる暇は無いんです。

 簡単に現状を記録します。
 まずネタを探して飛んでたら、沼の方から手下カラスナンバー29、通称『カイザーウィング』の
田代きよしから緊急コールが。自慢の俊足にて僅か0,01秒で瞬着! 瞬間に到着って意味ですよギャバン。
 誰だよギャバンって。ああもう日記で何を書いてるんですか私! 何で私にまで敬語なんですか私!
 消しゴムかける余裕も無いし、急いでるから文字も滅茶苦茶です。

 沼では、毎度懲りずに氷精さんが大ガマにケンカを売っていました。緊急コールで呼び出された割に
大した事件じゃなかった。なかったんです。
 私も、まぁこれも、ネタが無いときにまたお世話になるかもと、特にノートもカメラも構えず静観して
いました。これが大きな間違いだったのです。

 途中経過は省いて、また氷精……チルノさんは敗北しました。そこまではいつも通りです。

 ぼろぼろのチルノさん。その前に立つ大ガマ。
 すると大ガマの体がぴかっと光ったんです。光ったんですよ!
 大ガマは随分長い時を生きた妖怪ガマです。変化の術などはお手のもの……なのは解ります。
 でも光が消えて現れたのは、何と緑色のさらさら髪を風に揺らす美少年だったのです。

 で、今、そのガマ美少年とチルノさんが向かい合って何かを話しています。何を話しているかは
残念ながらここからじゃ聞こえません。
 何かチルノさんがわめいたり怒鳴ったりそっぽを向いたりしてたのですが、ガマ美少年がにっこり
笑って何かを言いました。

 チルノさんの頬に朱色が混じってきましたよ!
 おいおいチルノさん、あなたが話してるのは大ガマですよ? 今は美少年ですけど蛙ですよ?

 ガマ美少年、何を言ったのですか!? チルノさんから抱き付きに行きましたよ!?
 チルノさん凄く幸せそうな顔しています! 涙まで流してます!
 これはあれですか? チルノ堕(おつ)ってやつですか? ガマ美少年も優しく背中なんか擦って……
 その手が下に! ガマ美少年は本気です! マジでチルノを散るのな気です!
 チルノさんは恥ずかしげに目を閉じて、ガマ美少年の胸に顔を押し付けています。真っ赤です。
 捲った! スカート捲った! でも幻想郷少女はドロワーズ標準装備だから安心です。
 安心なのはドロワーズはいてるからであって脱がせちゃ駄目でしょう!? チルノさんお尻綺麗です。

 表記に困るところに手が! 新聞記者の前に天狗、天狗の前に乙女な私にはとても書けない!
 って言うかコレ記事に出来ないです! チルノさんいくらなんでもサービスし過ぎです!
 ああ書けないよそんな事書けないよガマ美少年は顔に似合わず何てバッドガイ!
 ドラゴンでもインストールする気ですか! チルノさんはそれを愛しそうに見つめてます。
 するんですか? するんですか!?
 それ以上は私も知らない世界ですよ! おしべとかめしべとかで赤面しちゃう自分がちょっと嫌。
 でもチルノさんが私より先にシンデレラになっちゃうのはもっと嫌! 相手がガマなのも嫌!
 女の子にはいずれ白馬に乗った王子カラスがやって来るはずなんですそれまでは操は堅く!
 だからチルノさんそれ以上は駄目です! って力強く日記に書いても伝わりませんね予想通り。

 駄目ですもう書けませんだって凄い事やってますよあいつ等わたしいしきがとお  の い   て
 ** ** * ******  ***(既に文字では無い記号の羅列になっている)



 (追記)
 しばらく気を失っていたようです。最後の方は記憶が曖昧で、いま日記を見返しても、
書いた私ですら解読できない文字ばかりです。写真も、1枚すら撮れませんでした。一生の不覚です。
 いまはもう夜です。雲は切れて満天の星空が見えます。
 チルノさんも大ガマも、もう姿はありません。
 事の次第を、ある程度は克明に記する事も出来そうですが……止めておく事にします。

 この世には2種類のスクープがある。
 見て良いスクープと、見てはいけないスクープが、ある。
 私は今日、この言葉を悟り胸に刻みました。

 ただ、最後に、これだけは書き記しておく事にします。

 チルノさんが大ガマに勝った、と。







「あらあらまぁまぁ、どうしましょチルノちゃんったら~」
「……その言い方はおばさんくさry ひでぶっ!!」
「それにしてもチルノちゃんったら、大人の階段昇っちゃったのかしら? キミはまだーシンデレラーさ♪」
「……下手くry ぶべらっっ!!」
「それにしても……幻想郷中の女の子は全て私のものだというのに……とりあえず大蝦蟇シメてこようかしら?」
「あー必要ないんじゃない? 結局二人とも手を握ってモジモジしてただけだし」
「お、見てたの?」
「当然」
「何もなかったの?」
「だって蛙とチルノだよ? なーにが出来るってゆーのさ」
「その……えと……舌を伸ばして触手プレイとか?」
「わぁ、マニアック。魔法少女 哀? でもやってろ」
「んだと」
「やるか」
「ょおしっ! 表出ろ、このへたれ角ぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!」
「ってやらぁ! この厚化粧ぅぅぅぅううううううううううううううううう!!!!!!!」


 どかーん どかーん

 さわやかな爆音が幻想郷の空にこだまする。マヨイガには今日も怒りで真っ赤な紫が現れる。
 穢れきった心身を包むのは深い紫のワンピース。
 スカートの裾は乱さないように、弾幕結界をいつでも撃てるようにゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
 もちろん、萃香を走って追いかけてネックハンギングツリーかますなんてはしたないのは紫一人で充分だ。

「あーら萃香さん、タイが曲がっていてよぉぉぉおおお」
「ギギギギギギギ あ、あーらお姉さまこそぉぉぉおおお」


 ぴーひょろろ~と遠くでトンビが飛んでいる。
 うん、今日もやっぱりいい天気。  







「さて次はこれにしようかな」
「んーどれどれ。あーこれかーまた紫好みな……」
「ほほぅ!」

 紫の瞳が妖しく輝く。その瞳はさながら獲物を見つけた肉食獣の如く。
 わくわくという擬音が目に見えるみたいだ。

「わくわく」
「って本当に言うなよ」







■3月○×日――[……日記] ルナサ・プリズムリバー

 晴れ


 ……練乳をぶっかけられた。



 朝、居間に降りると妹二人が暑さにやられていた。
 確かに今は夏だし、今日は特に暑い。
 だからといって下着だけで寝転がるのはどうかと思った。
 その時私はいつもの服装だったのだが、その格好は見ているだけで暑いとリリカが言い出した。
 ……この時逃げておけば何事もなかっただろうに。
 そんなリリカに呼応するようにメルランまで暑いと言い出す。
 ちくしょうそのタンクトップからこぼれそうな胸が憎かった。
 気づくと妹二人は私の服を脱がそうと取り囲んでいた。
 抵抗空しく下着とストッキングだけにされたのだがそれがいけなかった。
 黒ストー! と叫びつつメルランが発狂したのだ。
 リリカにもそれが感染ったのか、台所から練乳を持ち出してきた。
 そして私は練乳まみれにされた。主に下半身を。

 ……妹二人はもういない。

 今頃西行妖で首を吊っている頃だろう。



 私の鬱の音楽はこのように非常に危険なのものなのだ。
 軽々しく使ってはならないと自分への警告としてこの文を記す。








「……練乳か」
「……練乳ね」
「……甘くて白くてトロトロのミルクか」
「……甘くて白くてトロトロなのかどーかは知らないけどミルクね」
「……いいねっ!」
「……いいのかよっ!」
「……ねぇ萃香ちゃん? 甘ーいイチゴミルク食べたくない?」
「……わぁい。だが断るっ!」
「……ちっ」







「んじゃ、お次は、と」
「あ、ちょっと待って。これはえーとうーと……はい。この順番で」
「お、連作?」
「おぅいえ」
「わくわく?」
「てかてか」
「よぉっし! んじゃ逝ってみよー!」
「いぇー!」






 弥生の×× 

 ……今日の日記と言ってもすでに日付は変わってしまっているのだけど。
 とりあえず今は、布団の中で筆を執っている。
 久しぶりに慧音の家に泊まったこともあって、どうも書くのが遅れてしまった。

『意外と律儀なのだな』
 ……。
『どうした、書かないのか』
 ……なんでわざわざ筆談?
『まあ、こういうのも面白いなと思ってな。で、書かないのか? 今日のこと』
 まあ、書くけど。でも今日は昨日と大して変わったことなんてないよ。
『そうかな? 私が隣にいるだろう』
 ……いや、書けるわけないでしょ。だって、その。人に見せられないでしょ。
『見せないのなら赤裸々に語っても問題ないだろう? 例えば、今布団に残っている染み
とか、妹紅は体温が高めとか……そうだな、今日は三度(墨が滲んで読めない)』
 いやだから書いちゃダメだって!
 ……いつもはもうちょっとこう、受け身な感じなのになんで満月のときだけそんなに。
『……激しいのはイヤか?』
 ……イヤじゃない、けど。
 って、ここまで書いたらもう見せられないじゃないの。
 墨塗りにするわけにもいかないし……ああもう。
『どうせ見せないのだろう。なら問題ないさ。……そろそろ寝る。明日も早いしな』
 ん、お休み。……ちゃんと寝なさいよ?
『分かってるさ』







 ……まあ、見せないついでだし、書く。


 慧音、大好き。










 弥生の××

 隠れるようにして日記を記すというのも、時には良いものなのかもしれない。
 今日と言う日は一つを除いて特に取り沙汰する事もなかったので、その一つについてのみを書い
ておこうと思う。
 端的に言えば、妹紅が家に泊まりに来たという事だ。普段でも泊まりに来る事はあるし、別段珍
しい事でもない。
 しかし、満月の夜となれば話は別だ。
 満月を見ると心身共に昂り、普段気後れするような事が容易にできる。それが言葉であれ行為で
あれ、変わらない。
 従って、普段より激しかったという点が本日この件が取り沙汰される最要因だろう。
 普段強気な妹紅だが、攻め崩すと途端に可愛らしくなるので、つい執拗にやってしまったのは反
省すべき点なのか、それとも今後さらに活かすべき点なのか悩むところである。当人に確認出来な
いのが、もどかしくもあり可笑しくもある事だ。
 今こうして隣で寝息を立てる妹紅の寝顔からは、あの艶やかさは窺えない。まぁ、窺えずとも彼
女が愛しい人間であり、また私にとって特別な存在であるというのは書くまでも無い。
 だが、些細な事であれ嘘を吐き続けている事はここで告白しておく。
 恐らく妹紅は私が寝たと確信するまで起きているつもりだったらしく、さっきまで起きていたの
だ。今は眠気に屈しているのだが、その経緯が分かっている時点で私はあまりにも頑ななのだろう。
 里の為にも見回りを怠る訳にはいかない。
 そっと布団から出れば今までの通り見つかる事はないの



 と、考えている事くらいお見通しなの。甘いわね? 慧音。
 たまには本当にぐっすりとお休みなさい。



 そういう訳で今夜の見回りは中止となった。
 分かったと言ったところで妹紅が信用しないのは明白で、現在書き物すらやや難しい程抱き締めら
れている。しかも彼女はそのまま寝てしまった。
 これでは寝ざるをえないので、寝る事にする。











■弥生の○◎――[曖昧な現と明確な夢の錯綜するコピー&ペースト] 八意永琳 記
・気温 17.6度 ・湿度 47.8% ・気圧 1004hPa (自室内)

 気楽なとき。気楽なとき。
 今朝方から、姫が偉く楽しそうなとき。
 あの藤原妹紅が一つ屋根の下、どこぞの半獣としっぽりずっぽり。
 嗚呼、自分が介在していなくてもおぅけぃなのですね姫。手間要らずで大変よろしい。
 なればこそ、私も安心して己が究明に力を注げるというもの。

 今日は観察日。観察対象は今考えたコードネームINABA#0-1000。
 先だって投与した胡蝶夢丸ナイトメアタイプの発現予想日がおおよその今宵。
 時刻は未明、頃合なので随時書き込んでいく。

 子の正刻、廊下。因幡は皆寝静まるか、あるいは寝床でしっぽりずっぽり。手間要らずで大変よろしい。
 便利なとき。便利なとき。
 タンパク源やら手勢やらが、見る度勝手に増えているとき。

 丑の初刻、某室。静謐を極める永遠亭は通常喧騒とはほど遠いため、更にその個室への進入は困難を極めた。
 が、そこは逆転の発想。

 BGM:交響曲第5番ハ短調「運命」♪

 果たして成功だった。戸を引く音など聞こえもしない。そして爆音と共に震動するラジカセと本書を携え、COOLに接近する。
 対象は予想通り魘されている。悪夢に魘されているのかベートーベンに魘されているのか判断に苦しむ場面だが、うわ言が
聞こえたので抜かりなく記録、以下走り書き。

 もういいですもういいです、もうそんなに弄らなくていいです。
 もう姫が起きるまで時間ないんでしょう。夜が明けちゃいますからいいですから。
 だからそんなにもう我慢してられませんって。
 んっ、もういいっていってるのに。上になりますからお願いします。ほら。
 なんでじらすんですか。じらなくていいって。じらすなよ。
 駄目ですよ、キツ過ぎですって。キツいって。よしてよほら。
 やっ、あ、なんでまだじらすんですか。すごいことなってますって。
 何て体位ですかそれ。やめてくださいって。レイバックですかって。
 聞いてんですかじらすなって。なんでじらすの。やめないでよ、やめないでって。
 誰が冷ましてくれるんですかこれ。もういいですから。いいからさ。
 ねえ、ほんとに我慢できないって。つーか聞いてんですか。ねえ。
 もうやめて、じらさないで。やめないでって。じらさなくていいって。
 やめないでって。もうやめてよ。やめて、じらすのやめて。じらすな。じらすな。
 師匠何してんですか。じらすとかじらさないとかの話じゃなくて何やってるんですかって。
 おい、ほんとなにしてんですか、汗じゃないって。汚いですって。
 もうやめてくださいよ。やめてよ。やーめーなーいーでーよ。

 愉快なとき。愉快なとき。
 色々な意味で、弟子がアンビバレンツなとき。
 さて、いつの間にやら字数も残り少なくなってきている。名残惜しいけれど、ここで一言。






「後ろを見なさい、てゐ」

 卯の正刻、某室にて。
 







「ほほぅ」
「ふむー」
「ほほほほほぅ」
「ふむむむむー」
「乱れてますな」
「乱れてますね」
「ドロドロですな」
「ネチョネチョですね」

 鼻を膨らませて、ふんふんいってる紫と萃香。
 その姿はまーさーにーエロ親父。まるで三十路の油ギッチュな親父様のようだ。
 こうなってはいけない見本のようである。
 駄ー目駄ー目駄目駄目人間ー、駄ー目にんげーん、にんげーーーん♪
 ま、いいか。妖怪と鬼だし。

「しっかしあの堅物がねぇ」
「夜は激しいらしいよ?」
「あら、伝聞形? 見てないの?」
「見たけどさっ!」
「はははこやつめ」
「ははは」

 高らかに笑いあう二人。

 その澄んだ笑いは、穏やかな春の空へと吸い込まれていく。
 その笑い声は爽やかな春風に乗って、何処までも何処までも飛んでいく。

 マヨイガから、山を越え、川を超え、遠く遠く何処までも遠く、空の果てまで響き渡り―ー

 




 ……あ、リリーが落ちた。ごぼごぼ泡吹いてる。南無。



「それに永琳……やはりあいつは私の宿敵のようね……」
「そう? 気が合いそうだけど」
「シャーラップ! あいつがいなきゃ幻想郷における『頼れる素敵なお姉さん』の座は私だけのものだったのよ!」
「……誰が、んな事言ってんの?」
「主に私!」
「ソーナノカー」
「ったく。あいつが妙な勢力図を伸ばしているから、この私の幻想郷ハーレム建造計画が遅れに遅れて……兎達だけ
でなくゴスロリ毒人形もきゃつの魔の手に……ぐぬぬ、やはり不倶戴天の宿敵!!」
「わぁ、そんなクレイジーな事考えてたのかー ははは、一回脳みそ丸洗いしてきなさい?」
「何言ってるのよ! 幻想郷に可愛い娘たちをこんだけ掻き集めたんだもん、今更引けますかっ!」
「……は? 幻想郷に掻き集めたって……ま、まさか……」
「ふっ……幻想郷にいる娘たちは、一人残らず皆可愛い……これが偶然だと思って?」

 妖しく微笑む紫。怯えたような眼差しの萃香。
 紫の瞳が妖艶に輝き、その唇がぬらりと光る。
 食虫植物のような、獲物を狙う蛇のような、そんな絶対的で蟲惑的な……


「見目麗しき少女たち……彼女たちに記憶と力を与え……そしてこの幻想郷へと誘う……

 ふふっ……貴女もその一人よ……萃香……」

「――っ!!」

 紫の左手が萃香の顎の線をなぞる。
 触れるか触れないかの境界を、探るように妖(あや)すように。
 
 萃香の身体が、びくりと電流が流れたかの如く跳ねる。
 紫がふふっと艶かしく微笑み、そっと唇を萃香の耳元へと近づける。
 
 萃香は覚悟を決めたかの如く固く瞳を閉じ、紫は甘く蕩けそうな吐息を吹き掛けながら、彼我の距離を狭めていき……








 (少女弾幕中  しばらくお待ちください)







「ふふっ……良かったわよ……貴女」
「ううっ……もう……お嫁にいけない……っ」

 いつの間にか敷かれた布団で、気だるげに煙草を吹かす紫。
 漂う紫煙が陽光差し込む真昼の和室を、退廃と汚濁の交わる淫靡な堕落都市(ソドム)へと堕としめる。
 甘い香りが理性を溶かし、惚けた視界が現世を穢し、痺れた指先が背徳に慄く。

 もう此処は……堕ちた楽園。
 
 神に見放された永劫楽土――









「なーんて戯言はここまでにして次逝ってみよー」
「おおー!」

 布団を蹴飛ばし立ち上がり、意気揚々と鬨の声を上げる二人。
 さて、一体こいつらは何を考えているのか?
 勿論誰にも解りはしない。解ってたまるかバカヤロー

「……で、さっきの話だけど……」
「ん?」
「貴女が少女たちを幻想郷に集めたって……」
「あーあれ? う・そ ☆」
「だと思ったよ。コンチクショー!」







 
■3月○□日――[本日の記録] 四季映姫・ヤマザナドゥ 快晴 

本日の計測値 ○○.○○cm

 おかしい。そんな筈はない。何故に昨日より3mmも縮むのだ? 増えるなら解るがどうして小さくなっているんだ?
測り間違いかと思い、何度も何度も測り直してみるも結果は変わらない。途中でまた1mm小さくなっていたので、思わず
メジャーを引き千切ってしまった。短気はいけない。反省反省。

 確かにホルモンやら体調やら温度、湿度その他諸々の要因で多少の増減はある。しかしだからといって何もマイナス方
向に進まなくても良いではないか。一昨日は1mm増えていたので、秘蔵の酒を引っ張り出して祝杯を挙げたばかりだとい
うのに。三歩歩いて二歩下がるどころか大いなる後退ではないか!

 何故だ、確かに今日は忙しかった。しかし普段と変わらぬ一日だったというのに。
 朝からのうのうと二日酔いなんですよーと言って遅刻してきた小町をしばき、午前中事務処理をしながら開廷を待ってい
たのに一向に被告人が現れないので三途の川へと様子を見に行ってみると、小町が二日酔いの上に船酔いがーと言って
下呂吐いて苦しんでいたので優しく川へと叩き込み、午後一杯使って裁判を終わらし今日もお疲れ様と小町のところへ
行ってみると、「お嬢ちゃん、あちきと遊ばない?」と浮浪雲の如く黒百合をナンパしていたので閻魔ソバットで沈めておい
たくらいだ。
 心労や消費カロリーも普段と変わらない筈。何の変哲もない一日だったというのに!

 あ、もしかしたら日課のマッサージが足りなかったのだろうか。毎朝5時から一時間みっちり使って一日たりと欠かす事
なく続けているというのに。そういえば今日は寄せて~上げて~の下りがいつもより5秒程溜めが足りなかった気がする。
 僅か5秒とはいえ侮るべからず。5秒あれば小町を40回しばく事が出来る。その5秒を疎かにした結果がこのマイナス
3㎜なのだ。恐るべし5秒。これからは1秒たりと無駄にする事ないよう大切にしよう。

 時間を大切にする事。これが私に積める善行ね。

 さて、もう寝る時間だ。寝る前のマッサージは特に念入りにやっておこう。



 追記:また1㎜縮んでいた。許せない。
  






「……」
「……」
「……何てコメントしようか?」
「……どうしたもんだろうね?」
「……なかった事に?」
「……なかった事に」
「でもあれよねぇ……胸なんか大きくても良い事ないのに……重いし、肩は凝るし、他人の視線は煩わしいし……」
「ハハハ 喧嘩ウッテル?」
「いえいえ、まさかまさか。おほほほほほほほ」
「ギギギギギギギギギ」







「さーていよいよ最後の日記ねー誰の分かしら。わくわく」
「あ、あー紫……これ……読むの止めない?」
「え、どうして?」
「あーいや、その……面白くないよ?」
「む、面白いかどうかは自分で判断するわ。他人の価値観に踊らされ、己の目を曇らせる事ほど愚かな事はない。
 貴女は私をそんな愚か者だと思っているのかしら?」
「うん」
「まぁ、素直な回答ありがとう。知ってる? 正直者は早死にするって……」
「いえ、全く全然ちーっともそんな事は思っていません。つか目が恐いですお姉さま」
「貴女はお利口ねぇ。そうだ、ウイスキーボンボン上げましょう」
「わぁい。むぐむぐ……む、これは中々……ねー紫ーこれの中身だけくれない?」
「高いから駄目」
「けちー」ごしかぁん! 「ぐは――っ! ロードローラーがっっっっ!!!」

「さてさて、と。おや? これ幽々子のじゃない……どれどれ……どんな事書いてるのかしら?」







◆月×日

 紫が「幽々子は本当にカリスマが無いわねぇ。
 そんなだからドリー○キャストなんて言われるのよ」なんて言っていた。許せない。


△月□日

 紫が私に隠れてよりによってあんな巫女なんかと逢引していた。許せない。


◇月●日

 紫が「貴女は適当にそれっぽい事だけ言ってふらふらしとけばいいんだから楽なもんよね」
 なんて言っていた。許せない。


▼月△日

 紫が変な境界を弄った所為で私はレベル8なんかに出演させられる羽目になった。
 それなのに自分はちゃっかりEXに出ていた。許せない。


×月◇日

 紫は第三回最萌トーナメントが行われたら私が決勝まで残れないと思っている。
 「幽々子の人気はテーマ曲のおかげなのよ」なんて事も言っていた。許せない。


▽月■日

 紫は次にキャラリセットがあったとしても自分だけは残ると思っている。許せない。


○月▲日

 紫が楽しみに取っておいた桜餅を勝手に食べた。許せない。


□月▽日

 紫は私がわざわざ起こしにいったというのに全く起きる気配が無い。
 挙句やっと起きたと思ったらいきなり襲いかかってきた。危うく死ぬところだった。
 許せない。







「……」

 紫は言葉を失う。
 萃香はそこでぺっちゃんこになってるので、今は紫一人きり。

 読み返す、読み返す、何度も何度も読み返す。
 なのに……何度読んでもその中身は変わらなかった。
 延々と何十ページにも渡り、びっしりと書き込んである。
 
「え、あれ? ……そんな……あはは、何かの間違いよね、これ。あの幽々子がこんな事考えている筈が」

 その時、

 風が変わった――冷たく、突き刺すように冷たく
 太陽が翳った――暗雲が、蒼空の全てを真っ黒に
 空気が凍った――冷気が、極北のような厳しさで


「な、何……」

 湧き上がる暗雲に同調するように、鬱々とした不安が捲き起こる。
 やばい、此処にいてはいけないと、本能が警鐘を鳴らす。

 紫が慌てて立ち上がろうとした瞬間――

「――紫様」
「ひ、ひゃいっ!!」

 襖がすっと開かれ、そこに折り目正しく正座していたのは自らの使役する式の姿。
 全身に痛々しく包帯を巻きながら、凛と背筋を伸ばし毅然とした態度でそこに在る。

「ら、藍!? おどかさないでよ、もう! 心臓が止まるかと……」
「――幽々子様がお待ちです」

「…………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………………へ?」

 がらりと開けられた襖の先、藍の隣に佇むは西行寺の当主の姿。
 柔らかな色合いの和服を優雅に着こなし、すっと背筋を伸ばして座する様はまるで美しき楼閣のよう。

 その顔にはにこにことした笑みが浮かび……訂正、目が全然笑っていない。

「ゆ、ゆゆゆゆゆ子!?」
「あら、ゆが四個多いわよ? 友達の名前を間違えるなんて失礼ねぇ」
「あ、えと、その……何時から?」
「うふふ……最初から?」
「あ、あのね! これには訳があって……そうそう! そこで蛙みたいに潰れてる小鬼が私はそんなの見た
くないって言ってるのに無理矢理――」
「……言いたい事はそれだけかしら?」
「え、えええとひとつだけっ」
「……」
「貴女もう死んでるじゃない?」
「――紫」
「は、はい!」

 幽々子は凛とした態度を崩さぬまま、その背後には何やら死霊の如く禍々しい何かが蠢いており、白い
貌に浮かぶ笑みはさながら永久凍土の深奥部に秘された根雪の如く冷たく、周囲は全ての春が奪い去られ
たかの如く氷点下まで冷え込み……





 ユ ル セ ナ イ






 それが紫が聞いた最後の言葉だった――















 麗らかな春の日。桜は蕾、風は凪。柔らかい日差しがほんやりと包み込んでいる。
 西行寺 幽々子は縁側でお茶を啜りつつ

 「ほぅ……」

 と、安堵の息を洩らした。

 ぴーひょろろ~と遠くでトンビが飛んでいる。
 うん、今日もやっぱりいい天気。  
  
 いつもどおりお日様が昇って、空からみんなを照らしてくれて、黄昏とともに稜線に沈んでいく。
 そうしたら星が夜空に浮かんで子守唄を唄ってくれる。
 明日もきっと晴れ。また、いつもどおりの明日がやってくる。
 
 そんな当たり前の事をしみじみと噛み締めながら、幽々子はずずっとお茶を啜った。


「明日も晴れるわね。きっと」


 幽々子は色めき出した桜の並木を、決して満開になる事のない西行妖を見ながらそんな事を呟く。
 西行妖に逆さ吊りにされた妖怪と小鬼が、ぶらぶら、ぶらぶらと揺れている。
 先程まで様々な人妖たちが集い、賑やかに『惨度罰具(さんどばっぐ)殴打祭り~明日に向かって
撃つべし~』が催されていたが、皆も引き上げ白玉楼には再び静寂が戻ってきていた。  




「あー逆さだから、雨になるかもしれないわねぇ……ねぇ、紫?」







 へんじがない ただのしかばねのようだ










                            終 つか終わってしまえ。


こんにちわ、床間たろひです。
今宵どどめ色の夢に集いしは、羅喉星のごとき創想話の実力派作家たち。
彼らの織り成す物語はいかがでしたか?

というわけでこの作品は、私床間たろひの企画に賛同して集まってくださった作家様方による合作になります。
本当、力をお貸しくださった作家様方には感謝を。(つか、銀の夢さんが裏プロデューサーですが)
今の段階ではあえてどなたが参加なさっているのか、どのパートを担当しているのか、は伏せておこうと思います。
読者の皆様が彼らの紡ぐお話を読んで、それを想像して楽しむのもまた一興かと思いますので。

まぁ、すでに表日記の裏という事で、何かとバレバレですが。


昨日と同じように訪れた今日。疑うことなく明日もそれが来ると信じられる。
連綿と続く、そんな当たり前の日常。それはきっと、何物にも変えがたい、幸せのひとかけら。
明日も晴れるといいですね、いつもどおり……でもこの作品みたいな日常はちょっと勘弁な。


それでは、お読みいただきましてありがとうございました。


P.S.~Wiki管理人様、まとめサイト管理人様~
本作品は合作ということなのですが、上記のようにしばらく参加作家様を伏せておこうと考えております。近日中に公開いたしますので、お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。

追記 3月21日

中の人の発表デース! すでにバレバレかもしれませんが。

プロローグ・映姫の日記・酔いどれ漫才コンビによるコメント・エピローグ
以上4つ担当:床間たろひ

アリス担当:銀の夢氏
咲夜担当:河瀬 圭氏
レミリア担当:低速回線氏
文担当:豆蔵氏
ルナサ担当:新角氏
妹紅担当:世界爺氏
慧音担当:Hodumi氏
永琳担当:セノオハルカ氏
幽々子担当:近藤氏

以上、総勢10名の合作でお送りいたしました。

床間たろひ with 創想話のエロい作家さんたち
コメント



1.名無し妖怪削除
こやつめ、ハハハ!
こんな所で色々やらかしおって
2.ぐい井戸・御簾田削除
>「そんな事ないわーほら奈良漬食べる?」
>「わぁい。むぐむぐ。っかー良く染みてるねぇ」

あえて萃香のかわいさに着目してみる!やっぱ「むぐむぐ」だよなあ。むぐむぐ。
3.CODEX削除
ふ、ふ、ふくしゅうちょうキター!
表日記の爽やか読後感台無し加減が素敵すぎ♪
4.名無し妖怪削除
むははは
最高だ!!11!1!
5.上泉 涼削除
ああ、皆様揃いも揃ってエロ過ぎですよ。ホントに。
だが素晴らしい。最高です。
6.名無し妖怪削除
本編の読後感が台無しになった。 許せない。



でも春度は高かった。許す。
7.名無し妖怪削除
ナニコレ、ダイナシダ
8.名無し妖怪削除
どうみてもパロディです。許せない
色々と台無しです。許せない
パロがわかる自分がやるせない。許せない
ゆゆ様が怖い。許せない
アリスがアレな子に。許せない

だが春度が高かった。許す
9.名無し妖怪削除
大変乱れきっています!
ちくしょう、もっとやれ(笑)
10.no削除
中身もさることながら、紫さまの最初の台詞までの状況描写がすばらしいです。

やっかいな大妖怪って。
11.名無し妖怪削除
黒幽々子吹いた
やはり春で桜だからだろうかと現実逃避してみるw
12.名無し妖怪削除
どいつもこいつも春なんだからwww
それはさておき一言。

てゐ、横恋慕はイカンよ・・・
13.名無し妖怪削除
紫と萃香の会話がオバサンだ。許せない。

>「――紫様」
>「ひ、ひゃいっ!!」
かわいいじゃぁないか。許す。
14.名無し妖怪削除
じゃ○にかふくしゅうちょう吹いた
15.二見削除
ゆゆ様が紫様をネッチョネチョのぐっちょぐちょに陵辱する様子が
全く書かれていない。許せない。
ネットのありとあらゆる場所を探してもその文章が見つからない。許せない。
誰がこの部分を書いたのか予想がつくけど確証が持てないので
作者の元に殴り込みにもいけない。許せない。
私にドラゴンもインストールされてしまった。許せない。
高ぶるこの思いをどう処理していいのか分からない。許せない。
自分の書いているコメントが馬鹿すぎる。許せない。
16.名前を喰われた人削除
GUAHAHAHA~!!
表の爽やかな読後感がマジで台無しじゃねーか!ドウシテクレルノヨ!(↑誉メ言葉デスヨ?コレデモ
何だよこのエrさはよぉ!(コレモ誉メ言葉ヨ?
話しが変わるが、萃香かわいいなかわいいよ萃香。
迷惑が服着て歩き回ってる様な年増の大妖怪はどうでも良いg(深弾幕結界
17.はむすた削除
魔理沙は次にキャラリセットがあったとしても自分だけは残ると思っている。許せない(アリス)

すごいわ、これ、本当にすごいわ。
カモーン!練乳ルナサー!
18.名無し妖怪削除
春ですよー

色んな意味でヤb
19.翔菜削除
練乳! 練乳! くーろすと!
20.wasabi削除
ちょwwwアリswww
21.名無し妖怪削除
表の読後感が台無しにww

さりげなく柊?
22.名無し妖怪削除
大ガマの王子様っ!?発想が凄い!そしてチルノよ、私の大ガマに何をしたっ!?

…あれ?
23.ウェスカー削除
>へんじがない ただのしかばねのようだ
クソ吹いたwww