「今日も八目うなぎがたいりょーたいりょー♪」
これだけ沢山取れたらしばらくはもちそうね。昨日みたいに大食い幽霊がやってきて在庫を残らず食べつくしたりしなければだけど。
ほんとにあの幽霊には困ったもんだわ。店に来るたびに他のお客さんの分まで食べていっちゃうんだもん。
それに私を見る目がやばい。やばすぎる。
あれは危険だわ。
いつかは決着をつけないといけないのかもしれない。そう、夜雀としてのプライドと命をかけた戦いを……。
「おーー♪ ミスティアー♪ お前はー何故ー♪ 命をかけてーたたかーうのかー♪」
なんでだろう?
自分でもわかんない。
「お店にとおちゃーく」
さーて、今日お店で出す分以外はたらいのなかにいれてっと。
よーし。ばりばり下ごしらえするわよー!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!!!
「なっなにっ! この激しく耳をつんざく轟音は! タイガーヘリ!?」
「いいえ。タイガーヘリではないわ」
そう言いながら店の扉をガラッと開けて永琳が入ってきた。
この薬師がこの店にくるのはめずらしいわね。
「タイガーヘリじゃなければなんだっていうのよ。……はっ! もっもしかして火蜂なの!?」
永琳は悲しげに首を横に振った。
「残念ながら違うわ。あなたも聞いたことはあるでしょう。宇宙最強の敵……“ナニ”よ」
「頭脳戦艦ガル……」
それは破滅の言葉だ。
「というのは冗談なんだけどね」
「なによそれは! 冗談はいいからこの音なんとかしてよ! うるさすぎて耳が変になりそうよ!」
「わかったわ。ウドンゲ、ちょっと止まりなさい」
「ハイ。シショウ」
ウイィィィン。プスッ。
そして、耳の痛くなるような静寂がおとずれた。
「えっえいりん。あんたいまなんて……」
「ねえ。ミスティア。いいことを教えてあげる。どんなに綺麗な歌声も、それをうとましく思うものにとっては、騒音でしかない。
とってもかわいらしい夜雀も、冥界の姫にとっては、たんぱく質でしかない。
それを忘れないことね」
「………………」
「まだこの計画を知られるわけにはいかない。そう、今は」
そう言うと永琳はバッと黒いマントをはためかせて去っていった。
だが私には聞こえてしまった。
永琳が店を出る直前、『次の満月……』とつぶやいたのを。
その日、私は開店時間まで立ったままその場所を動くことができなかった。
つづかない