Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

双丘伝説 最終章

2006/03/09 08:42:39
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「諸君」
 片手にお払い棒を持ち、それで掌を叩きながら、彼女は言う。
「よく集まってくれた」
 彼女の言葉に従い、集ったのは。
「……来ないわけにはいかないぜ」
 魔法の森の奥地にて、今日も人の迷惑顧みず、自分の欲求追求魔法娘。
「そもそも、依頼者は私よ」
 悪魔の館にて、何かもう色々苦労しているうちに年増疑惑がわき起こっているメイド。
「……あの、どうして私まで?」
 冥界にて、人一倍の苦労を知りながらも献身的に仕えるちびっこ剣士。
 ――そして。
「マム、ご所望のものをお持ち致しました」
「結構」
 がらっ、と襖を開けて現れたのは天狗の少女。
 彼女は手にした封筒の中身をちゃぶ台の上にざーっと広げてみせた。
「日々、何とかして撮影を試みるべく、努力致しました」
「あなたの苦労は認めるわ。そして、成果も」
「ははーっ」
 何か妙に威厳のある主宰者の巫女は、広げられた写真を一瞥する。
「これが、我々が目指す領域よ」
 そこに写し出されている人物を列挙しよう。
 まず、紅魔館の門番、紅美鈴。
 続いて、冥界の主、西行寺幽々子。
 結界の主を持つ式、八雲藍。
 この幻想郷そのものを象徴する妖、八雲紫。
 静寂の竹林の奥で時を刻む薬師、八意永琳。
 そして、無縁塚の橋渡し、小野塚小町。
「くっ……! 改めて見ても……!」
「……ええ。私たちには、到底……」
「……えーっと。あの、私、幽々子さまの晩ご飯の用意がありますので……」
「しゃらーっぷ!」
 びしぃっ、とお払い棒突きつけられて、剣士がびくぅっと背筋を伸ばす。
「妖夢、あなた、悔しくないの!? 私たちと彼女たちとの違いをここまで見せつけられて!」
「そうだ! 見ろ、こいつらの自信に満ちた表情を!」
「いや、あの、これ、別段日常の着替えシーン……って、いつ撮影したんですか」
「天狗の目に不可能はありません。そして、私も……私も……現役女子中学生とか言われるのはまだわかりますけどだからってないぺたはないんじゃないですか属性確定ですか好きで真っ平らなわけじゃないんですよわかりますよね妖夢さんいやわかるはずだ貴様ならわかるはずなぜなら私の同志だからだそうだな同志妖夢よ!」
「……えっと……その、わかりましたから、鬼気迫る表情で、しかも片手に風扇持って近づかないでくれませんか怖いから」
「……しかし、相変わらず、すごいわね」
 そこに存在するのは、いずれも険しく強大な渓谷。近寄るだけで吸い込まれそうな深い深い峡谷は、しかし、無機質で無慈悲な冷たさを持たず、圧倒的な包容力と幸せを体現する柔らかさを持ち、なおかつ、ありとあらゆるものを魅了する魔性の本性を持っている。
「彼女たちの食生活について、文」
「ははっ。
 いずれの食生活においても、基本は三食きっかりです。医食同源を地でいっていると言っても過言ではないでしょう。健康的です。と言うか、幽々子さん食べ過ぎじゃないですか?」
「……私もそう思うんですけど」
「ならば、私生活について。文」
「ははっ。
 彼女たちの私生活は、種々様々です。
 紅美鈴は、朝起床、もしくは夕方起床後、紅魔館の門前で日々を過ごしています。よく撃墜されたり黒こげにされたりナイフまみれにされたりして泣いてますが、おおむね、問題はありません」
「……ふっ。あの巨大なものを見ていると、どうしても殺意が湧いてきてな……」
「なら何でうちの門まで壊すのよ」
「西行寺幽々子は、朝は早くから起きてご飯、昼まで縁側などでごろごろしつつお茶、その後お昼ご飯を食べてお昼寝、夕方に起きてきて晩ご飯を食べて食後のお茶をしつつおまんじゅうの生活です。
 ……太らないのが羨ましいですねぇ、亡霊って」
「……私の苦労、わかってくれます?」
「八雲藍については、非常に健康的な生活です。朝起きてきて、己の式と一緒に『らじおたいそう』なるものに時間を費やし、その後、主のために食事を作り、掃除・洗濯・買い出し、などなど。おさんどんとしての日々を過ごしつつ、夜、主の愚痴をつきながら晩酌して睡眠」
「……あいつも苦労してるなぁ」
「八雲紫は……これ、生活って言うんですか? 一日の九割寝てますが。起きてるのは食事とお風呂とトイレのみ。希に、自分の欲求を満たすために好き勝手なことしてます」
「彼女は、幻想郷の生きる迷惑ね」
「八意永琳は、起床後、朝食を摂り、その後は基本的には薬剤の研究です。診療所の医師として天然さんぶりを思う存分発揮しつつも自己の欲求を追求するその姿は、まさに天才と言えるでしょう。希に、自分のペット……じゃない、弟子に『医術の基礎よ』とだまくらかして身体検査などの行為を行っているようです。なお、手法は、結構アレ」
「……鈴仙さん、大変ですね」
「小野塚小町に関しては、基本的に以下の繰り返しです。
 起きる。サボる。怒鳴られる。仕事する。逃げる。サボる。お仕置きされる。寝る。以上」
「よろしい」
 一体、何がどうよろしかったのかよくわからないのだが、巫女は鷹揚にうなずいた。その支配者ぶりに畏怖の念を感じながら、天狗は後ろに下がる。
「以上が、彼女たちの日々よ。この中に、乳がでかくなる理由が必ずあるはず」
「乱れた生活と規則正しい生活が入り交じってるな」
「あと、苦労するものと苦労させる側というのもね」
「……あ、そろそろ幽々子さまが『三時のおやつ~』って騒ぎ出す頃だ……」
「妖夢!」
「はひぃっ!」
「……一つ、訊ねるわ。あなたは小さいままがいいの?」
「よっ、よくありません! 大きくなりたいです!」
「よろしい」
 色々、自分には関係ないことのように装う剣士を一喝し、その顔に嫌な汗を流させるプレッシャーを放ちながら、巫女は室内を行ったり来たりを繰り返す。
「さて、諸君」
 彼女は足を止め、一同を睥睨する。
「これに迫るため、我々が何をすればいいか、思いつくまま、挙げてちょうだい」
「牛乳」
「体操」
「マッサージ」
「……ふっ」
 当たり前と言えば当たり前。そして、誰もが通ってきた苦難の道。しかし、当たり前であると言うことは王道と言うことであり、王道と言うことはまぁその何だ、アレなんだよ。
「……無駄ね」
「何ぃ!?」
「なぜ!?」
「それをやって、私たちのこれは大きくなったのっ!?」
『ああっ!?』
 ピシャァァァァァァンッ! と雷に打たれたかのように硬直する一同。なお、剣士は『帰ったら、この前、紫様からもらった特製おせんべいを出して……』などと仕える主のおやつプランを考えていたりする。
「そ、それは……」
「……確かに」
「天狗仲間に聞いても『牛乳を飲めば胸が大きくなるっていうのは都市伝説だよー』って……」
「そう! だから、私たちは、もっと具体的な手段に出るしかないの!」
 写真の中から一枚、初代大キャラとして抜擢された美鈴のを手に取り、それを指さす。
「羨ましくないの!? この谷間が! 圧倒的な柔らかさが! 全てを包み込むような包容力が! 女の象徴が!」
「う、羨ましいっ!」
「羨ましいわっ!」
「ものすごく羨ましいです!」
「でしょう!?
 なればこそ、私たちに必要なのは、さらなる可能性を追求した必殺奥義なのよ!」
『ひ、必殺奥義!?』
「……あの~……何か、話が混沌としているような」
「つまり!」
 剣士の指摘などどこ吹く風。
 巫女は叫ぶ。
「……豊胸剤よ」
「ほ、豊胸剤っ!?」
「薬の力に頼るというの!? 霊夢!」
「いけません、霊夢さん! それは……それは、修羅の道です!」
「黙りなさい! もはや、我々に残された直接的な手段はそれのみ! この薬師の乳を見なさい!」
 美鈴の写真をテーブルに戻し、永琳のそれを手に取る。
 ちょうど着替えのシーン。服のあわせの襟から覗く、黒のレースブラジャーに包まれた、ものすごい自己主張に、一同、息を飲む。
「自然に育ったものだとするならば、それはそれで! 薬に頼ったかもしれない可能性は捨てきれないわ!」
「だ、だが、霊夢! 薬を使ったとするならば、ウドンゲなんかもでかくなってなきゃおかしくないか!?」
「あいつはかなりでかめじゃない! 具体的にはD前後!」
「ううっ……! た、確かにっ!」
「しかもこれから成長の可能性ありよ!?」
「……私も……私も、成長の未来が欲しいっ……!」
「いや、咲夜さんって、そのスタイルから行くなら結構妥当……」
「妖夢さん! 咲夜さんのプライドを傷つけるような真似は許しませんよ!」
「は、はい! すいませんでした!」
 何で私、こんな所に来ちゃったのかなぁ、と思いながら剣士が居住まいを正す。
「ならば、何かしら、月の技術とか、天才の智恵とか、そんなのがあってもおかしくないわっ! これぞ宇宙的神秘なのよ!」
『宇宙的神秘っ!?』
「……ここに、小瓶が一つ、ある」
 どこから取り出したのか、それを、ことん、とテーブルの上に置く巫女。
「そ、それは……!」
「永琳からもらってきたものよ。試薬らしいのだけど……ね」
「や、やっぱり作っていたのね、あの女……!」
「なんて卑怯な……じゃない、グッドタイミングなっ!」
「試してみる価値は……ある。
 幸い、これは、ちょうどこの場に集った五人分」
「え? 私も含まれて……じゃない、光栄です。はい」
「我々の未来を信じて」
 ものすごい目でにらまれて黙り込んだ剣士を尻目に、巫女はコップの中へとその薬を注ぎ入れていく。色は無色透明、そして無味無臭であると言うことだった。
 全員が、それを手に取る。
 そして。
「栄光を掴むために!」
 ぐいっ、とそれを飲み干す。
 剣士だけは、こっそり、後ろを向いてコップの中に中身を戻していたのだが。




「あれ? 師匠。この前作ったっていうおっぱいが大きくなる薬、ないですね」
「ああ、それ? 霊夢が『欲しい』って言ってきたから譲ってあげたの」
「へぇ、珍しいですね。何の対価もなく」
「うん、そうね。
 でも、いいのよ。ちょうど、クランケが欲しかったところだから」
「………………あの、それって、変な副作用とかは?」
「ないわよ。ただ、あれは可能性を追求する薬だから、大きくなる人には確実に作用するけれど、その未来を持たない人には無力、っていう効能なの。我ながら、なかなかベストなものが出来たと思っているわ」
「あ、そうなんですか。それなら安心ですね」
「ええ。あとは、大きくなったか変わらないかで、彼女たちの未来がわかる、と。なかなか面白いでしょう?」
「いや、かなり残酷だと思います」
「そうかな? 無駄な希望は抱かない方が本人のためだし」
「師匠。それを、『永琳、わかんな~い』っていう顔で言うの、やめましょうよ……」
「?」
「……いや、わからないならいいです。ほんとに」




 彼女たちの未来については、各人のご想像にお任せしよう。
 だが、忘れないで欲しい。
 決して、小さいことは悪いことではないということを。むしろ小さい方がいいんじゃないか色々と、という意見がないこともないことを。
 故に、ここから示されるのは、常に可能性の未来である。



「うわーん! 全然変わらないー! 何で!? どーしてー!?」
「まぁ……何て言うか。霊夢、あなたはそのままで充分魅力的よ」
「なら視線逸らすなちくしょー!」




「ちくしょー! アリス、お前ならこの気持ち、わかってくれるよな!?」
「何で私なのよ!? っつか、私は結構それなりだから……」
「うわーん、パチュリー!」
「ああっ、待って、魔理沙! わかる、ものすっごくわかるから!」




「……ふ……ふふふ……。そうよ……これが我が運命……」
「……お嬢様、咲夜さん、どうしたんですか?」
「さ、さあ……。何か、ものすごく近寄りがたいわね……」




「永琳さんが嘘をつくはずありません。大きくなるはずなんです。大きく……大きく……大きく……って、全然大きくならないじゃないですかー!
 うえーん、私の新聞の、新たな未来がー!!」





「あら、妖夢ぅ」
「はい?」
「何かぁ、少しだけぇ、背が伸びたかしらぁ?」
「あ、はい。三センチほどですけど」
「まあまあ。よかったわねぇ」
「はい」
(……何で背が伸びたんだろう。不思議だなぁ)





 幻想郷の少女達に、幸あれ。
このまま突っ走るかと思いきや、K・S節で締めるという結末。誰もがこれを予想してなかったはずだ。
はい裏切りましたすんませんOTL


何でこんな連作を作ったかと言えば、唐突に「そうだ、おっぱいだ」という天啓が舞い降りてきまして。
あとはもう、つらつらと思いの丈を。
どのお話にも思いの丈をぶつけましたが、どれに一番気合いが入ったかは、見てくれたあなたの心が語ります。

というわけで、全ての「好き」な人にこれを捧ぐ。
もしかしたら「新」とかついてまた始まるかもしれませんが。
haruka
コメント



1.翔菜削除
文は実は結構あるほうだと思うんだ、うん。


……あるって、絶対ある。
2.五百小竹削除
少女達が求め続ける限り伝説は終わらない……と、思う。

私も文は結構あるほうだと思ってます。音で例えるなら…ぷよぷよ?
3.煌庫削除
将来的には妖夢が一番平均的・・・つまり一番成長するんじゃないかなと。みょんな具合に。
4.削除
彼女らは一度幻想として固定化されてしまった。
それを変化させることは神主以外には不可能であろう。

ええ、おっぱいいっぱいぼくげんき!ですわ。
5.銀の夢削除
どれに一番気合が入ったか――それは氏のこれまでの作品から推測させていただきますが。私は信じるよ、おそらくカプの好みは私と氏は似通っているはずだ!

まあ、あろうがなかろうがすなわち桜色のつぼみたるがゆえにこそ少女の花、それがおっぱいであると私は思う。
然るがゆえに大きさなど無為なのです。小さい組が羨望に終わっただけなのがちょっと残念だったかなぁ、とか思ったりなんだり。

されどこのえrさ、堪能させていただきました。完結お疲れ様です。
6.名無し妖怪削除
つまりこのシリーズは「双丘(に叶わぬ望みをたくす少女達の)伝説」ってことですか。
というか。大半をコップの中に吐き戻した妖夢がそれでも3センチ伸びたってことは、
将来は長身モデル体型みょんの出来上がり? それはそれで。
7.名無し妖怪削除
あれ、何でだろう?
涙出てきた。
8.名無し妖怪削除
???「「むちゃしやがって・・・」」
9.名前が無い程度の能力削除
>「そうだ、おっぱいだ」という天啓が

きっとおっぱいの神の祝福を受けたに違いない