深夜。
夜雀の屋台においてとある悪巧みが進行していた。
「なるほど、ではここの払いは私が持ちということで……」
「ふふふ、任せときなさい。この私にかかればお安い御用よ……」
頭を寄せ合って不気味に笑う二人をミスティアは呆れ顔で見ていた。
『告発!! 紅魔館のメイド長(推定16)はパッドだった!?』
『くまさんパンツ! 白玉楼庭師の意外な一面!』
『妖狐は露出狂! 深夜のマヨイガに響く嬌声!』
『兎詐欺の罠! 不幸をバラ撒く老ウサギを追え!』
これはここ数日の文々。新聞の一面を飾った記事である。
写真こそ無いものの、詳細な状況が文章で緻密に描写されている。
どれもこれも当人達とその近しい人間以外には知られていなかった事実。
何故漏れた。何処から知られた?
当人達は目を血走らせ情報の流出先を探したが一向に見つからない。
それならばと、烏天狗本人から聞き出そうとするものの、幻想郷随一の速さを誇る烏天狗を捕まえるのは至難の技であった。
しかし危機を感じていたのは彼女等だけではない。
記事にはされずとも人に知られたくない秘密を持っている輩は幻想郷に多い。
彼等も自らの保身の為、秘密裏に調査に乗り出した。
幻想郷の実力者が本気で調査に乗り出したのだ。ほどなくして真相が発覚する。
情報提供者はミスティア。西行寺の当主に食われかけていたのを庭師が助け、その際に聞きだしたのだ。
夜雀曰く、犯人は伊吹萃香。
彼女の持つ能力。密と疎を操る能力によって無数に分かれた萃香が幻想郷中を徘徊監視ストーキングしているのだった。
この報は電撃的に幻想郷中に伝わり、萃香の燻り出しが各所で行われることになった。
「いい? 箪笥の裏、ベッドの下、カーテンの裏、引き出しの奥。隠れてそうな場所はすべて探しなさい!」
紅魔館ではメイド長の指揮の下、一斉捜索が開始されていた。
分裂しているせいで一匹一匹は大した能力でないと判明した為、全メイドが刈り出されている。
「メイド長! 一匹捕まえました!」
一人のメイドが小さい萃香を摘みあげている。
「うわーん放せちくしょー」
だが、二センチ大の大きさでは迫力もないもない。むしろ可愛いくらいだ。
「捕まえたらパチュリー様の所へ連行して! 豆の結界が置いてあるわ!」
丸一日かけて集められた萃香は優に百を越えた。
マヨイガに呼ばれたのは蟲を操る少女。
「虫の報せサービスはこんな事に使うんじゃないんだけど……?」
「気持ちはわからなくもないがな。私達の平穏の為にも頑張ってくれ」
リグルの肩を申し訳なさそうに叩く藍。
「それじゃいくわよ!」
少女が手を振るとそこら中から現れる蟲達。ヤスデ、ムカデ、団子蟲、カマドウマ、ハチ、そしてゴキブリ。
しばらくするとその蟲達は思い思いにに萃香を捕まえて集まってきた。
ムカデに縛り上げられたもの、ハチに咥えられたもの。その様子はまさに地獄。
ミニ萃香が一様に気絶していたのも無理のない話であった。
「妖夢~。ほんとに出てなきゃダメ?」
「ダメです。藍様にも紫様にも話は通してますので今日一日はマヨイガでゆっくりしてきてください」
妖夢はそういって主を追い出すと、白玉楼内すべての襖を取り払い、すべての窓と雨戸を閉める。
そして各部屋に丸い円筒形の物を設置。
しばらくするとその物体から煙が勢いよく噴出してくる。
香霖堂で手に入れた「ばるさん」という物だった。
すでに妖夢は屋敷が煙で充満する前に庭へ出ている。
数時間後、雨戸を開け放ち空気を入れ替え屋敷の中へ入ると、そこには新鮮な空気を求め途中で力尽きたであろう無数のミニ萃香が累々と横たわっていた。
妖夢はそれを箒とちりとりでかき集め結界付きのゴミ袋へ放り込む。
すべて終わった時、ゴミ袋は3袋に達していた。
永遠亭でも同じような光景が繰り広げられている。
こちらでは月から持ち出した銘酒を囮に誘い出し、月兎の狂視で一網打尽という方法が取られていた。
「師匠。すごい数ですねこれ」
「まったくね。鬼というのはどうしてこう……」
「一匹みかけたら三十匹はいるに違いないわね」
「とりあえず鬼除けの結界を張らないとね。まったく面倒ばかりなんだから」
永遠亭の管理運営を一手に取り仕切る薬師は頭を抱えるのだった。
各所から伝えられる全滅の報を萃香は博麗神社の賽銭箱の中で聞いていた。
今や幻想郷全てが敵になった事を知る。
「なんとか、なんとかして逃げ出さないと……」
しかし、幻想郷は広いとはいえ博麗大結界によって閉じられている。いわば密室。
いずれ見つけられるのは目に見えている。
そんな時、端末のひとつが文が捕まった事を報せてくる。
パンツを剥ぎ取られ西行妖から吊り下げられるというその仕打ちは萃香を心胆寒からしめる。
慌てて逃げ出そうと賽銭箱の箱の扉に手をやる。しかし開かない。
バカな。ちゃんと鍵は壊しておいたはず。同時に賽銭箱を囲む異様な気配を察知する。
風切り音と共に賽銭箱にナイフが突き刺さる。
今度は刀が、クナイが。賽銭箱に突き立てられる。
それらを狭い箱の中で必死に躱す萃香。
すると今度は杵で賽銭箱ごと吹き飛ばされる。
これで壊れない賽銭箱の頑丈さを心底呪う。
「さて、そろそろトドメといきましょうか」
「人の知られたくない秘密を無神経に暴くからです」
「天罰覿面よね」
「覚悟はできているな?」
四方から叩きつけられる殺気に萃香はもはや笑う事しかできなかった。
後日西行妖に全身納豆まみれの新たな吊り下げ死体が追加された。
夜雀の屋台においてとある悪巧みが進行していた。
「なるほど、ではここの払いは私が持ちということで……」
「ふふふ、任せときなさい。この私にかかればお安い御用よ……」
頭を寄せ合って不気味に笑う二人をミスティアは呆れ顔で見ていた。
『告発!! 紅魔館のメイド長(推定16)はパッドだった!?』
『くまさんパンツ! 白玉楼庭師の意外な一面!』
『妖狐は露出狂! 深夜のマヨイガに響く嬌声!』
『兎詐欺の罠! 不幸をバラ撒く老ウサギを追え!』
これはここ数日の文々。新聞の一面を飾った記事である。
写真こそ無いものの、詳細な状況が文章で緻密に描写されている。
どれもこれも当人達とその近しい人間以外には知られていなかった事実。
何故漏れた。何処から知られた?
当人達は目を血走らせ情報の流出先を探したが一向に見つからない。
それならばと、烏天狗本人から聞き出そうとするものの、幻想郷随一の速さを誇る烏天狗を捕まえるのは至難の技であった。
しかし危機を感じていたのは彼女等だけではない。
記事にはされずとも人に知られたくない秘密を持っている輩は幻想郷に多い。
彼等も自らの保身の為、秘密裏に調査に乗り出した。
幻想郷の実力者が本気で調査に乗り出したのだ。ほどなくして真相が発覚する。
情報提供者はミスティア。西行寺の当主に食われかけていたのを庭師が助け、その際に聞きだしたのだ。
夜雀曰く、犯人は伊吹萃香。
彼女の持つ能力。密と疎を操る能力によって無数に分かれた萃香が幻想郷中を徘徊監視ストーキングしているのだった。
この報は電撃的に幻想郷中に伝わり、萃香の燻り出しが各所で行われることになった。
「いい? 箪笥の裏、ベッドの下、カーテンの裏、引き出しの奥。隠れてそうな場所はすべて探しなさい!」
紅魔館ではメイド長の指揮の下、一斉捜索が開始されていた。
分裂しているせいで一匹一匹は大した能力でないと判明した為、全メイドが刈り出されている。
「メイド長! 一匹捕まえました!」
一人のメイドが小さい萃香を摘みあげている。
「うわーん放せちくしょー」
だが、二センチ大の大きさでは迫力もないもない。むしろ可愛いくらいだ。
「捕まえたらパチュリー様の所へ連行して! 豆の結界が置いてあるわ!」
丸一日かけて集められた萃香は優に百を越えた。
マヨイガに呼ばれたのは蟲を操る少女。
「虫の報せサービスはこんな事に使うんじゃないんだけど……?」
「気持ちはわからなくもないがな。私達の平穏の為にも頑張ってくれ」
リグルの肩を申し訳なさそうに叩く藍。
「それじゃいくわよ!」
少女が手を振るとそこら中から現れる蟲達。ヤスデ、ムカデ、団子蟲、カマドウマ、ハチ、そしてゴキブリ。
しばらくするとその蟲達は思い思いにに萃香を捕まえて集まってきた。
ムカデに縛り上げられたもの、ハチに咥えられたもの。その様子はまさに地獄。
ミニ萃香が一様に気絶していたのも無理のない話であった。
「妖夢~。ほんとに出てなきゃダメ?」
「ダメです。藍様にも紫様にも話は通してますので今日一日はマヨイガでゆっくりしてきてください」
妖夢はそういって主を追い出すと、白玉楼内すべての襖を取り払い、すべての窓と雨戸を閉める。
そして各部屋に丸い円筒形の物を設置。
しばらくするとその物体から煙が勢いよく噴出してくる。
香霖堂で手に入れた「ばるさん」という物だった。
すでに妖夢は屋敷が煙で充満する前に庭へ出ている。
数時間後、雨戸を開け放ち空気を入れ替え屋敷の中へ入ると、そこには新鮮な空気を求め途中で力尽きたであろう無数のミニ萃香が累々と横たわっていた。
妖夢はそれを箒とちりとりでかき集め結界付きのゴミ袋へ放り込む。
すべて終わった時、ゴミ袋は3袋に達していた。
永遠亭でも同じような光景が繰り広げられている。
こちらでは月から持ち出した銘酒を囮に誘い出し、月兎の狂視で一網打尽という方法が取られていた。
「師匠。すごい数ですねこれ」
「まったくね。鬼というのはどうしてこう……」
「一匹みかけたら三十匹はいるに違いないわね」
「とりあえず鬼除けの結界を張らないとね。まったく面倒ばかりなんだから」
永遠亭の管理運営を一手に取り仕切る薬師は頭を抱えるのだった。
各所から伝えられる全滅の報を萃香は博麗神社の賽銭箱の中で聞いていた。
今や幻想郷全てが敵になった事を知る。
「なんとか、なんとかして逃げ出さないと……」
しかし、幻想郷は広いとはいえ博麗大結界によって閉じられている。いわば密室。
いずれ見つけられるのは目に見えている。
そんな時、端末のひとつが文が捕まった事を報せてくる。
パンツを剥ぎ取られ西行妖から吊り下げられるというその仕打ちは萃香を心胆寒からしめる。
慌てて逃げ出そうと賽銭箱の箱の扉に手をやる。しかし開かない。
バカな。ちゃんと鍵は壊しておいたはず。同時に賽銭箱を囲む異様な気配を察知する。
風切り音と共に賽銭箱にナイフが突き刺さる。
今度は刀が、クナイが。賽銭箱に突き立てられる。
それらを狭い箱の中で必死に躱す萃香。
すると今度は杵で賽銭箱ごと吹き飛ばされる。
これで壊れない賽銭箱の頑丈さを心底呪う。
「さて、そろそろトドメといきましょうか」
「人の知られたくない秘密を無神経に暴くからです」
「天罰覿面よね」
「覚悟はできているな?」
四方から叩きつけられる殺気に萃香はもはや笑う事しかできなかった。
後日西行妖に全身納豆まみれの新たな吊り下げ死体が追加された。