「ん……ふぁ……」
小さくあくびをしながら身を起こしてみると、すでに窓から入ってくる日の光は、まぶしいくらいになっていた。
一体、今、何時なのだろうと、私は手を時計に伸ばす。時刻はすでにお昼を回ってしまっていた。
どうしてこんな時間まで寝ていたのか。それについて、記憶を総動員して考える。
――ああ、そうだ。今日はお昼から番だったからだ。
私、十六夜咲夜の日々は、一言で言うならば忙しく、二言で言うならものすごく忙しく、三言で言うならとんでもなく忙しくて目が回るくらいなのである。
「ああ……どうしましょう」
とは言いつつも、内心では、案外落ち着いているのがわかる。昨日は、お嬢様に言われたのだ。「あなたは少し働き過ぎよ。たまにはシフトの通りに従いなさい」と。
そうして私の身を重んじてくれるのは嬉しいのだけど、昨今、休むと言うことは時間の浪費に過ぎないと言うことに気がつきつつある私にとっては何とも悩ましい言葉だった。お嬢様の言葉なら従わないわけにはいかない。しかし、私でないとはかどらない仕事があるのもまた確か。これならいっそのこと、優秀なメイドをさらに雇い入れるというのが正しい判断なのかもしれないけれど、悲しいかな、ここ、紅魔館に『新人募集の告知を見て来ました! 一生懸命働きますので、これからよろしくお願いします!』という殊勝な娘がいないのは確かなのだ。……いや、幻想郷に、かしら。
まぁ、ともあれ、活動を開始しないといけない。お昼からのシフトは、午後の十二時からスタートなのに、私は完全に寝過ごしてしまっている。誰も起こしに来てくれなかったのかしら。
少し憤慨しながらベッドから立ち上がって――ふと、気づく。
「……あれ?」
今、完全で瀟洒を自負している自分にあるまじき光景が見えなかったか?
ごしごしと目をこすって、もう一度。
「……っ!」
慌てて、ベッドのシーツを体に巻き付ける。
何で私は裸で寝ていたの? よく考えろ、考えるんだ、十六夜咲夜。いや感じなくていいから。
そう……確か、昨日はとても大変だった。先日やってきた霧雨魔理沙が破壊していった館の修理から始まり、メイド達の教育をこなし、掃除をして、食事の用意をして、翌日のシフトを考えて、さらに、なぜか壊れた大浴場の湯船の修理をして……と。
全ての仕事が終わったのが、確か、明け方になってからだったと思う。実に二十四時間働けますかを地でいってしまったわけだ。そして、疲れに疲れて、部屋のシャワーを浴びてそのまま……。
「……ああ、もう」
やってしまった、とばかりに頭をかく。手をやれば、髪の毛もぼさぼさ。こんなんじゃ、お嬢様達の前に顔を見せられないではないか。
完全で瀟洒なメイドも人間。
不覚ながら、それを思い切り感じさせられる朝でした。
「さて……と」
シャワーを浴びて、改めて身だしなみを整えてから、服を着替えることにする。
いつものメイド服は当然として、その下を、少しは彩りたいと思うのが乙女心。……誰? 乙女って誰、って言ったの。怒らないから前に出ていらっしゃい。今なら殺人ドールで勘弁してあげるわ。
「これ……が、いいかしら」
取り出したのは、ついこの前、手に入れた下着。
「ちょっと……派手かしらね」
それを見ていると、少し、顔が赤くなる。
ガーターベルト。しかも黒。ショーツも黒のレースで、うっすらとだけど、股間の部分の布地のレース部分が透けている。
実はこれ、永遠亭の薬師からもらったもの。彼女曰く、『うちの弟子につけてあげようと思ったのだけど、なぜか全力で拒否されてしまって。あなたなら、こういうの、似合うんじゃない?』と言われて受け取ったのだ。まぁ、この幻想郷に住まう人間で、こういうアダルトな下着が似合う人間なんて、ぶっちゃけ、私以外にいないと思う。
閑話休題。
「……」
ごくりと喉を鳴らして、一緒に渡された黒いタイツと一緒に身につけてみることにする。
「うわ……」
姿見に映し出された自分の姿に、思わず赤面。
上は何もつけてないからさておきとして、問題は下半身。
白い素肌に黒の地がよく栄える。レース部分にうっすらと見えるのは股間の繁み部分で。くるりと身をひねって後ろを映すと、これもまた見事なTバックになっていた。大きく……とまでは言えないかもしれないけど、形よく盛り上がったお尻の肉付きとスタイルがこれ以上ないほどに強調されたその格好は、ものすごくエロティック。
「……彼女、こんな下着つけて歩いてるのね」
あの女になら、こういうのは似合うだろうと思った。
何となく、胸元を手で隠しながらセクシーポーズなんて取ってみたりする。腰をくねらせたり、お尻を突き出してみたりなんかして。
ああ、もう、何やってるのかしら。
自分のバカさ加減に気がつくと、顔がぼっと熱くなる。慌てて、次なる装備のブラジャーへ。
「何がいいかしら……」
いつも装着している白のフリルつき。……少女趣味で悪うございました。
でもダメね、これは下のアダルトな雰囲気に似合わないわ。それじゃ……この、黒のレース?
「うーん……」
いまいち。
なので、次は同じく、黒のハーフカップを手に取ってみる。
これって、ちょっと情けないけれど、私には過ぎた代物のような気がする。大きい人になら、その柔肉が存分に強調されて、場合によっては桃色の部分までが自己主張してくれるだろうけど、私みたいに……中途半端な身分としては。
「くっ……!」
でもね……私だって、形はいいのよ。
上を向いたお椀型で、重力に逆らってつんと立った形なんて最高じゃない。掌サイズよりも幾分大きな感じだから、揉むとそれなりに柔らかいし。それにほら、小さい方が感度がいいって言うじゃない。そりゃ、挟んだりとかは出来ないかもしれないけど……って、何考えてるの、私は。
「ダメね、これじゃ、瀟洒ではない……!」
でも、完全ではあるのかなぁ、なんて考えながら。
そのハーフカップブラは、メイドか、もしくは美鈴にでもあげようかと考えながら、いよいよ奥の手を取り出す。
「……」
取り出したのは、やっぱりこれも永遠亭の彼女からもらったアンダーカップブラ。
わからない人のために解説すると、まぁ、ぶっちゃけ、隠しません。下から支えます。
「……刺激を与えたら成長するとか聞いたことがあるわ……」
どうせ、下がこれなんだ、上にこれをつけたって違和感はないだろう。それに、仮にも完全で瀟洒たるメイドであるこの私が、迂闊に他人に下着を見せると思っているのだろうか。見ようとした瞬間、もしくは見えた瞬間に時間停止して記憶消去は当たり前なのよ。
うん、だから、大丈夫。
「あ……」
つけてみて、いよいよエロティックな雰囲気が増してくる。
これって……すごい。
自分のサイズがそれほどでもないことはわかっているけど、これのおかげで軽く乳房が持ち上げられて、心なしか大きさも増したように感じるし……。そ、それに何より、この色気が……。張りのある乳房。黒地のおかげでよけいに際だつ白とピンクのコントラストは、さながら芸術品のよう。横から映してみても、より一層、誘うように膨らんだそれは私のものではないかのような気がして。
「あは……」
……いいよね、たまには。
――というわけで、その下着の上にいつもの服を身につけようとして。
気がついた。
「……?」
耳を澄ましてみる。
『まてまてー!』
『ひぇぇぇぇっ! お、お助けぇぇぇぇぇぇっ!』
『めーりん、何で逃げるのー!? 逃げてばかりじゃ面白くないよー!』
『逃げますってぇぇぇぇぇっ!』
何やら、不穏当な叫び声。
そっとドアを開けて視線を廊下にやれば、ものすっごい笑顔で楽しそうなフランドール様とこの世の終わりみたいな顔して、目の前にある『希望』という文字に必死ですがっている美鈴の姿。
……ああ、なるほど。今日は彼女がフランドール様のお相手役なのね。
ちなみに今、フランドール様が放っているのは、最近になって開発したらしい『スターボウティンオプトリック』とかいう代物。一言で言うなら、レーヴァティンで上下左右の動きを封じつつ、展開される七色の中弾が上下から滝のように迫り、さらに真横から大弾と中弾と小弾が反射しながら突っ込んで来るという悪魔のようなスペルである。
これを唯一、回避した霧雨魔理沙曰く、『一ドットの隙間を見いだせばどうと言うことはない!』だそうである。もちろん、んなルナシューターテクニック、あの美鈴が持っているわけもない。
……って。
「助けてぇぇぇぇっ!」
慌ててドアから飛び退いた私の前でドアが弾けるように開かれ、涙で顔中ぐしゃぐしゃにした美鈴が飛び込んできた。
『あれー? めーりんどこ行ったのー?
ぶぅー。
……あ、ちょうどいいや。ねぇねぇ、フランと弾幕ごっこしよー』
『え? い、いえ、あの、私はこれからお屋敷のお掃除が……』
『いっくよー!』
『きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?』
偶然、通りすがったらしい哀れなメイドが犠牲になったようだった。
「はぁー……はぁー……はぁー……。し、死ぬかと思った……」
鬼気迫る形相とはまさにこのことか。
……ま、それはいいとして。
「美鈴」
「……はえ?」
「いつまで人の部屋にいるつもりなの」
「ひぇっ!? さ、咲夜さ……!」
飛び退いていた私と彼女との距離は、まぁ、大体一メートルもないくらい。
慌てて外に飛び出そうとした美鈴の背後で『ずっどぉぉぉぉぉん』という爆音。フランドール様が何かやらかしたらしい。その爆風でドアごと美鈴はこっちに吹っ飛ばされてきて……って!?
「きゃあっ!?」
「ひゃあぁぁぁぁっ!?」
どんがらがっしゃんごとんがんぷにっ。
……思いっきり、私を巻き込んでくれやがりました……。……ん? ちょっと待て、何か今変な音が……。
「あいたたた……。あ、ご、ごめんなさい、咲夜さん。今すぐ……どき……」
「……あ、あなた……」
解説。
私、下。美鈴、上。馬乗り状態。俗に言う騎乗位ってやつ。そして美鈴の手は、私の胸の上。
「ひゃっ!?」
「きゃんっ……!」
「あ、ご、ごめんなさい! あ、ああのあの……」
「やっ……あっ……こらっ……!」
パニックになってもみもみしてくる美鈴。
……これで普段のブラなら何の問題もなかったのかもしれない。容赦なく時間を止めてパーフェクトメイドでも喰らわしてやれば。しかし、今の私のブラジャーは先の通りで。
……露出された胸をむぎゅむぎゅされれば、誰だって感じます。
「うわ……柔らかい……」
「あ、あなたには自前のでっかいのがあるでしょ! そっちを揉みなさい!」
「で、でも、ほら、咲夜さん。私の掌にぴったりですよ。何かマシュマロみたいで……あ、何か少し固くなって……」
「手を離しなさいよぉっ!」
ばたばた暴れても、残念なことに腕力とかそう言う面では美鈴にはかなわないわけで。
……しかも、ちょっぴり嫌じゃない。もう少しだけ続けてて欲しいかなー……なんて……。
「すごい……。何か、ふわふわってだけじゃなくて……握ったら、指先に吸い付いてくるみたいで……。あったかくて柔らかくて、それだけじゃなくて……」
「や……やだ……」
ああ、まずい。流される。このままじゃ流される。
何とか助けを求めて視線をやって……って、ここは私の部屋だし。どうにかするには……って……。
「何事? この騒ぎは」
外から聞こえてくるのはお嬢様の声。
「お、お嬢様!」
「あら? その声はさく………………」
そこでお嬢様の時間が停止。どういうお顔をしているのか、目に浮かぶよう。
「……こほん。
ごめんなさいね。邪魔しちゃ悪いわね。
こら、フラン。はしゃぎすぎよ。こっちいらっしゃい」
「痛いー! 痛いよー、お姉さまー! ごめんなさーい!」
「それじゃ、ごゆっくり……」
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉ!?」
人は言いました。
おっぱいは正義である、と。
確かにわからなくもない。あの、何とも言えない至高の魅力をたたえた二つの魔性は、私をも魅了することがある。豊かに揺れ動く曲線。弾むように震えながら、人の目を、意識を引きつけ、虜にする。
うん、わからなくもないの。むしろよくわかるのよ。
「あの……もう少し、触っていていいですか?」
「よ、よく……」
よくないと言いたかったのだけど。
「……少しだけなら」
負けました。はい。
小さくあくびをしながら身を起こしてみると、すでに窓から入ってくる日の光は、まぶしいくらいになっていた。
一体、今、何時なのだろうと、私は手を時計に伸ばす。時刻はすでにお昼を回ってしまっていた。
どうしてこんな時間まで寝ていたのか。それについて、記憶を総動員して考える。
――ああ、そうだ。今日はお昼から番だったからだ。
私、十六夜咲夜の日々は、一言で言うならば忙しく、二言で言うならものすごく忙しく、三言で言うならとんでもなく忙しくて目が回るくらいなのである。
「ああ……どうしましょう」
とは言いつつも、内心では、案外落ち着いているのがわかる。昨日は、お嬢様に言われたのだ。「あなたは少し働き過ぎよ。たまにはシフトの通りに従いなさい」と。
そうして私の身を重んじてくれるのは嬉しいのだけど、昨今、休むと言うことは時間の浪費に過ぎないと言うことに気がつきつつある私にとっては何とも悩ましい言葉だった。お嬢様の言葉なら従わないわけにはいかない。しかし、私でないとはかどらない仕事があるのもまた確か。これならいっそのこと、優秀なメイドをさらに雇い入れるというのが正しい判断なのかもしれないけれど、悲しいかな、ここ、紅魔館に『新人募集の告知を見て来ました! 一生懸命働きますので、これからよろしくお願いします!』という殊勝な娘がいないのは確かなのだ。……いや、幻想郷に、かしら。
まぁ、ともあれ、活動を開始しないといけない。お昼からのシフトは、午後の十二時からスタートなのに、私は完全に寝過ごしてしまっている。誰も起こしに来てくれなかったのかしら。
少し憤慨しながらベッドから立ち上がって――ふと、気づく。
「……あれ?」
今、完全で瀟洒を自負している自分にあるまじき光景が見えなかったか?
ごしごしと目をこすって、もう一度。
「……っ!」
慌てて、ベッドのシーツを体に巻き付ける。
何で私は裸で寝ていたの? よく考えろ、考えるんだ、十六夜咲夜。いや感じなくていいから。
そう……確か、昨日はとても大変だった。先日やってきた霧雨魔理沙が破壊していった館の修理から始まり、メイド達の教育をこなし、掃除をして、食事の用意をして、翌日のシフトを考えて、さらに、なぜか壊れた大浴場の湯船の修理をして……と。
全ての仕事が終わったのが、確か、明け方になってからだったと思う。実に二十四時間働けますかを地でいってしまったわけだ。そして、疲れに疲れて、部屋のシャワーを浴びてそのまま……。
「……ああ、もう」
やってしまった、とばかりに頭をかく。手をやれば、髪の毛もぼさぼさ。こんなんじゃ、お嬢様達の前に顔を見せられないではないか。
完全で瀟洒なメイドも人間。
不覚ながら、それを思い切り感じさせられる朝でした。
「さて……と」
シャワーを浴びて、改めて身だしなみを整えてから、服を着替えることにする。
いつものメイド服は当然として、その下を、少しは彩りたいと思うのが乙女心。……誰? 乙女って誰、って言ったの。怒らないから前に出ていらっしゃい。今なら殺人ドールで勘弁してあげるわ。
「これ……が、いいかしら」
取り出したのは、ついこの前、手に入れた下着。
「ちょっと……派手かしらね」
それを見ていると、少し、顔が赤くなる。
ガーターベルト。しかも黒。ショーツも黒のレースで、うっすらとだけど、股間の部分の布地のレース部分が透けている。
実はこれ、永遠亭の薬師からもらったもの。彼女曰く、『うちの弟子につけてあげようと思ったのだけど、なぜか全力で拒否されてしまって。あなたなら、こういうの、似合うんじゃない?』と言われて受け取ったのだ。まぁ、この幻想郷に住まう人間で、こういうアダルトな下着が似合う人間なんて、ぶっちゃけ、私以外にいないと思う。
閑話休題。
「……」
ごくりと喉を鳴らして、一緒に渡された黒いタイツと一緒に身につけてみることにする。
「うわ……」
姿見に映し出された自分の姿に、思わず赤面。
上は何もつけてないからさておきとして、問題は下半身。
白い素肌に黒の地がよく栄える。レース部分にうっすらと見えるのは股間の繁み部分で。くるりと身をひねって後ろを映すと、これもまた見事なTバックになっていた。大きく……とまでは言えないかもしれないけど、形よく盛り上がったお尻の肉付きとスタイルがこれ以上ないほどに強調されたその格好は、ものすごくエロティック。
「……彼女、こんな下着つけて歩いてるのね」
あの女になら、こういうのは似合うだろうと思った。
何となく、胸元を手で隠しながらセクシーポーズなんて取ってみたりする。腰をくねらせたり、お尻を突き出してみたりなんかして。
ああ、もう、何やってるのかしら。
自分のバカさ加減に気がつくと、顔がぼっと熱くなる。慌てて、次なる装備のブラジャーへ。
「何がいいかしら……」
いつも装着している白のフリルつき。……少女趣味で悪うございました。
でもダメね、これは下のアダルトな雰囲気に似合わないわ。それじゃ……この、黒のレース?
「うーん……」
いまいち。
なので、次は同じく、黒のハーフカップを手に取ってみる。
これって、ちょっと情けないけれど、私には過ぎた代物のような気がする。大きい人になら、その柔肉が存分に強調されて、場合によっては桃色の部分までが自己主張してくれるだろうけど、私みたいに……中途半端な身分としては。
「くっ……!」
でもね……私だって、形はいいのよ。
上を向いたお椀型で、重力に逆らってつんと立った形なんて最高じゃない。掌サイズよりも幾分大きな感じだから、揉むとそれなりに柔らかいし。それにほら、小さい方が感度がいいって言うじゃない。そりゃ、挟んだりとかは出来ないかもしれないけど……って、何考えてるの、私は。
「ダメね、これじゃ、瀟洒ではない……!」
でも、完全ではあるのかなぁ、なんて考えながら。
そのハーフカップブラは、メイドか、もしくは美鈴にでもあげようかと考えながら、いよいよ奥の手を取り出す。
「……」
取り出したのは、やっぱりこれも永遠亭の彼女からもらったアンダーカップブラ。
わからない人のために解説すると、まぁ、ぶっちゃけ、隠しません。下から支えます。
「……刺激を与えたら成長するとか聞いたことがあるわ……」
どうせ、下がこれなんだ、上にこれをつけたって違和感はないだろう。それに、仮にも完全で瀟洒たるメイドであるこの私が、迂闊に他人に下着を見せると思っているのだろうか。見ようとした瞬間、もしくは見えた瞬間に時間停止して記憶消去は当たり前なのよ。
うん、だから、大丈夫。
「あ……」
つけてみて、いよいよエロティックな雰囲気が増してくる。
これって……すごい。
自分のサイズがそれほどでもないことはわかっているけど、これのおかげで軽く乳房が持ち上げられて、心なしか大きさも増したように感じるし……。そ、それに何より、この色気が……。張りのある乳房。黒地のおかげでよけいに際だつ白とピンクのコントラストは、さながら芸術品のよう。横から映してみても、より一層、誘うように膨らんだそれは私のものではないかのような気がして。
「あは……」
……いいよね、たまには。
――というわけで、その下着の上にいつもの服を身につけようとして。
気がついた。
「……?」
耳を澄ましてみる。
『まてまてー!』
『ひぇぇぇぇっ! お、お助けぇぇぇぇぇぇっ!』
『めーりん、何で逃げるのー!? 逃げてばかりじゃ面白くないよー!』
『逃げますってぇぇぇぇぇっ!』
何やら、不穏当な叫び声。
そっとドアを開けて視線を廊下にやれば、ものすっごい笑顔で楽しそうなフランドール様とこの世の終わりみたいな顔して、目の前にある『希望』という文字に必死ですがっている美鈴の姿。
……ああ、なるほど。今日は彼女がフランドール様のお相手役なのね。
ちなみに今、フランドール様が放っているのは、最近になって開発したらしい『スターボウティンオプトリック』とかいう代物。一言で言うなら、レーヴァティンで上下左右の動きを封じつつ、展開される七色の中弾が上下から滝のように迫り、さらに真横から大弾と中弾と小弾が反射しながら突っ込んで来るという悪魔のようなスペルである。
これを唯一、回避した霧雨魔理沙曰く、『一ドットの隙間を見いだせばどうと言うことはない!』だそうである。もちろん、んなルナシューターテクニック、あの美鈴が持っているわけもない。
……って。
「助けてぇぇぇぇっ!」
慌ててドアから飛び退いた私の前でドアが弾けるように開かれ、涙で顔中ぐしゃぐしゃにした美鈴が飛び込んできた。
『あれー? めーりんどこ行ったのー?
ぶぅー。
……あ、ちょうどいいや。ねぇねぇ、フランと弾幕ごっこしよー』
『え? い、いえ、あの、私はこれからお屋敷のお掃除が……』
『いっくよー!』
『きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?』
偶然、通りすがったらしい哀れなメイドが犠牲になったようだった。
「はぁー……はぁー……はぁー……。し、死ぬかと思った……」
鬼気迫る形相とはまさにこのことか。
……ま、それはいいとして。
「美鈴」
「……はえ?」
「いつまで人の部屋にいるつもりなの」
「ひぇっ!? さ、咲夜さ……!」
飛び退いていた私と彼女との距離は、まぁ、大体一メートルもないくらい。
慌てて外に飛び出そうとした美鈴の背後で『ずっどぉぉぉぉぉん』という爆音。フランドール様が何かやらかしたらしい。その爆風でドアごと美鈴はこっちに吹っ飛ばされてきて……って!?
「きゃあっ!?」
「ひゃあぁぁぁぁっ!?」
どんがらがっしゃんごとんがんぷにっ。
……思いっきり、私を巻き込んでくれやがりました……。……ん? ちょっと待て、何か今変な音が……。
「あいたたた……。あ、ご、ごめんなさい、咲夜さん。今すぐ……どき……」
「……あ、あなた……」
解説。
私、下。美鈴、上。馬乗り状態。俗に言う騎乗位ってやつ。そして美鈴の手は、私の胸の上。
「ひゃっ!?」
「きゃんっ……!」
「あ、ご、ごめんなさい! あ、ああのあの……」
「やっ……あっ……こらっ……!」
パニックになってもみもみしてくる美鈴。
……これで普段のブラなら何の問題もなかったのかもしれない。容赦なく時間を止めてパーフェクトメイドでも喰らわしてやれば。しかし、今の私のブラジャーは先の通りで。
……露出された胸をむぎゅむぎゅされれば、誰だって感じます。
「うわ……柔らかい……」
「あ、あなたには自前のでっかいのがあるでしょ! そっちを揉みなさい!」
「で、でも、ほら、咲夜さん。私の掌にぴったりですよ。何かマシュマロみたいで……あ、何か少し固くなって……」
「手を離しなさいよぉっ!」
ばたばた暴れても、残念なことに腕力とかそう言う面では美鈴にはかなわないわけで。
……しかも、ちょっぴり嫌じゃない。もう少しだけ続けてて欲しいかなー……なんて……。
「すごい……。何か、ふわふわってだけじゃなくて……握ったら、指先に吸い付いてくるみたいで……。あったかくて柔らかくて、それだけじゃなくて……」
「や……やだ……」
ああ、まずい。流される。このままじゃ流される。
何とか助けを求めて視線をやって……って、ここは私の部屋だし。どうにかするには……って……。
「何事? この騒ぎは」
外から聞こえてくるのはお嬢様の声。
「お、お嬢様!」
「あら? その声はさく………………」
そこでお嬢様の時間が停止。どういうお顔をしているのか、目に浮かぶよう。
「……こほん。
ごめんなさいね。邪魔しちゃ悪いわね。
こら、フラン。はしゃぎすぎよ。こっちいらっしゃい」
「痛いー! 痛いよー、お姉さまー! ごめんなさーい!」
「それじゃ、ごゆっくり……」
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉ!?」
人は言いました。
おっぱいは正義である、と。
確かにわからなくもない。あの、何とも言えない至高の魅力をたたえた二つの魔性は、私をも魅了することがある。豊かに揺れ動く曲線。弾むように震えながら、人の目を、意識を引きつけ、虜にする。
うん、わからなくもないの。むしろよくわかるのよ。
「あの……もう少し、触っていていいですか?」
「よ、よく……」
よくないと言いたかったのだけど。
「……少しだけなら」
負けました。はい。
や h え な。おお、や h え な!!
( ゚Д゚)
(;゚Д゚)
(*゚Д゚)
( ゚Д゚ )
よし、ここはついこの前やっと紅魔郷EXクリアした私めが・・・
って妹様、更に恋の迷路を追加しないでください絶対無理ですかr(恋のスターボウティンオプトリック
しかし…それは… 無理ってもんだッ! こんなモノ見せられてえろいって思わねえヤツはいねえッ!
ところで、うっかり目撃☆ドキュンしちゃってそそくさと退散するレミ様の位置を得るにはどうしたらいいですか?
GJ
ほんと、えrい。えrすぎるあなたというお方は。
や h え な !
ウァァァァァァ(過去を刻む恋のスターボウティンオプトリック
裏(ネチョ)にこいや!
(*´д`*)
誰か文呼んで来て!
……アッ----!!