今回の春は花が咲き乱れていた。
春に咲かないはずの花も咲いているのだが、リリーホワイトにとってはそんなの些細なことであって気づきもしなかった。
気温が上がり、雪は溶け花が咲く。ならばそれは春なのだ。たとえ、咲いている花が春の物に限らないとしても。
かくして、リリーホワイトは、春の訪れを知らしめる為に幻想郷を飛び回っては目に付く人間、妖精、妖怪、全てに春を伝えている。
春の訪れを知らせる事は、リリーを昂ぶらせ、その知らせは一つの風と弾幕となって対象に春を知らせる。
だが、人も妖怪も妖精すらその弾幕を交わして反撃に出る。
やられたらやられたで仕方ない、次に春を伝える相手を探す為に再びあてもなく飛び回る。
やがて、何度も返り討ちに会う中でリリーは何かこの春はおかしいということに気づいた。
いつもならば春の訪れは、全てが祝福されるはずなのに、今回の春はどこか、悲しげだ。
何だろうか。何が違うのだろう。
空中を一旦静止し、考える事にとした。
何が違うのか。辺りを見渡すと人間が空を飛んでいる。それはいつもの事だ。
だから、リリーは考えるのを止めて春の訪れを知らせてあげることにした。
春の訪れを知らせるのは中々骨の折れる作業だ。とリリーは思う。
人間も妖怪も妖精も、皆凶暴で、春を伝えてあげてるのに攻撃をしかけてくる。それに耐えながら春を繰り返し伝えねばならない。やられてしまうことも多々ある。
だがリリーホワイトは諦めない。なぜならば、今は春であるからだ。
そうして今日だけでももう何回も返り討ちにあって少し疲れていた。
いくらなんでも普段より凶暴に過ぎるのではないか。春なのに。リリーはそう思っていたが道行く者達はそんなことお構いなしに飛んでいく。
人影も絶えたので、さっきの続きを考えた。
何が、違うのか。
辺りを見渡すと見渡す限りの花畑。前よりも、前の前よりも多くの花が咲いている。
何か雰囲気が違う。その程度の事しか分からなかった。だがリリーにとってはそれで十分だった。
次に春を伝える相手を探してリリーは花畑を後にした。
幻想郷中を飛び回り、目に付いた全ての者へと春を伝える。
どこかから話し声が聞こえた。
何でもこの花々には魂が宿っているらしい。特にこの紫の桜には罪人の魂が付いている。そう聞こえた
ああ、だから雰囲気が違うのか。そうリリーは納得した。
だが、この花達は春で祝福されるのだろうか。この後極楽に行くにしろ地獄に行くにしろ、その裁判すらまだ行われていない状態では祝福しも、されもしないのではないか。
この花達は春を喜ばないのではないか。そう思うと春を伝えるのを躊躇してしまう。
だが、共に春を祝ってきた周りの妖精達は黒い服を着込んでいた。喪服のつもりらしい。
なるほど。春に祝福を、死者に弔意を。そういうことか。
リリーは妖精に倣って服を黒い物に変え、花に宿る魂への喪とすることにした。
眼前に伝えるべき相手は二人いた。今度は躊躇することなく常のように行うことが出来るだろう。
死した者とやがて死にゆく者へ。同時に祈り、祝い、弔い、伝えるために
それから数日。
悲しげな雰囲気を伴った花々は徐々に散っていった。
そこに宿っていた魂は無事裁かれ生前の行いに相応しい行き先へと移ったのだろう。
今度こそ、何一つ曇りなく、万物に祝福される春を伝えねばならない。
いつもの様に空を飛んでいると人影が見える。
伝えなければ。悲しかった春を。そして楽しい春を。
伝えなければ。冬は去り、春が訪れたことを。
リリーは目標より上空に占位する為上昇を開始した。
距離よし。角度よし。太陽は背中。完璧な位置をとれた。
今日は真正面からじゃなくて突然春を伝えて驚かせてあげよう。まだ春は終わっていないのだから。
リリーは息を吸い込んだ。
春が続いていることを知らせる為に大きな声で知らせてあげよう。
目標はパタパタとまっすぐ飛んでいる。
春を伝えよう。この間痛い目に合わされたお礼も少しだけ。
リリーは降下を開始した。目標はまだ気づかない。
目標に今にも触れそうなぐらい近づいたとき、リリーはいつもとは違い大声で、いつものように春を伝えた。
「まだ春じゃねえの!?」
春に咲かないはずの花も咲いているのだが、リリーホワイトにとってはそんなの些細なことであって気づきもしなかった。
気温が上がり、雪は溶け花が咲く。ならばそれは春なのだ。たとえ、咲いている花が春の物に限らないとしても。
かくして、リリーホワイトは、春の訪れを知らしめる為に幻想郷を飛び回っては目に付く人間、妖精、妖怪、全てに春を伝えている。
春の訪れを知らせる事は、リリーを昂ぶらせ、その知らせは一つの風と弾幕となって対象に春を知らせる。
だが、人も妖怪も妖精すらその弾幕を交わして反撃に出る。
やられたらやられたで仕方ない、次に春を伝える相手を探す為に再びあてもなく飛び回る。
やがて、何度も返り討ちに会う中でリリーは何かこの春はおかしいということに気づいた。
いつもならば春の訪れは、全てが祝福されるはずなのに、今回の春はどこか、悲しげだ。
何だろうか。何が違うのだろう。
空中を一旦静止し、考える事にとした。
何が違うのか。辺りを見渡すと人間が空を飛んでいる。それはいつもの事だ。
だから、リリーは考えるのを止めて春の訪れを知らせてあげることにした。
春の訪れを知らせるのは中々骨の折れる作業だ。とリリーは思う。
人間も妖怪も妖精も、皆凶暴で、春を伝えてあげてるのに攻撃をしかけてくる。それに耐えながら春を繰り返し伝えねばならない。やられてしまうことも多々ある。
だがリリーホワイトは諦めない。なぜならば、今は春であるからだ。
そうして今日だけでももう何回も返り討ちにあって少し疲れていた。
いくらなんでも普段より凶暴に過ぎるのではないか。春なのに。リリーはそう思っていたが道行く者達はそんなことお構いなしに飛んでいく。
人影も絶えたので、さっきの続きを考えた。
何が、違うのか。
辺りを見渡すと見渡す限りの花畑。前よりも、前の前よりも多くの花が咲いている。
何か雰囲気が違う。その程度の事しか分からなかった。だがリリーにとってはそれで十分だった。
次に春を伝える相手を探してリリーは花畑を後にした。
幻想郷中を飛び回り、目に付いた全ての者へと春を伝える。
どこかから話し声が聞こえた。
何でもこの花々には魂が宿っているらしい。特にこの紫の桜には罪人の魂が付いている。そう聞こえた
ああ、だから雰囲気が違うのか。そうリリーは納得した。
だが、この花達は春で祝福されるのだろうか。この後極楽に行くにしろ地獄に行くにしろ、その裁判すらまだ行われていない状態では祝福しも、されもしないのではないか。
この花達は春を喜ばないのではないか。そう思うと春を伝えるのを躊躇してしまう。
だが、共に春を祝ってきた周りの妖精達は黒い服を着込んでいた。喪服のつもりらしい。
なるほど。春に祝福を、死者に弔意を。そういうことか。
リリーは妖精に倣って服を黒い物に変え、花に宿る魂への喪とすることにした。
眼前に伝えるべき相手は二人いた。今度は躊躇することなく常のように行うことが出来るだろう。
死した者とやがて死にゆく者へ。同時に祈り、祝い、弔い、伝えるために
それから数日。
悲しげな雰囲気を伴った花々は徐々に散っていった。
そこに宿っていた魂は無事裁かれ生前の行いに相応しい行き先へと移ったのだろう。
今度こそ、何一つ曇りなく、万物に祝福される春を伝えねばならない。
いつもの様に空を飛んでいると人影が見える。
伝えなければ。悲しかった春を。そして楽しい春を。
伝えなければ。冬は去り、春が訪れたことを。
リリーは目標より上空に占位する為上昇を開始した。
距離よし。角度よし。太陽は背中。完璧な位置をとれた。
今日は真正面からじゃなくて突然春を伝えて驚かせてあげよう。まだ春は終わっていないのだから。
リリーは息を吸い込んだ。
春が続いていることを知らせる為に大きな声で知らせてあげよう。
目標はパタパタとまっすぐ飛んでいる。
春を伝えよう。この間痛い目に合わされたお礼も少しだけ。
リリーは降下を開始した。目標はまだ気づかない。
目標に今にも触れそうなぐらい近づいたとき、リリーはいつもとは違い大声で、いつものように春を伝えた。
「まだ春じゃねえの!?」