Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

双丘伝説 第二章

2006/03/06 08:02:59
最終更新
サイズ
9.68KB
ページ数
1
 季節は滞りなく移り変わる。
 それはもう、止まった時間が動き出す、と形容してもおかしくないくらいに唐突に移り変わったりもする。四季の変化があると言うことはいいことである。千変万化する光景に目を楽しませてもらい、折々に移り変わる要素を満喫するという高尚な趣味を持ってみたり、と。
 故に。
「春ですよー」
「ぎゃー!」
「何でこんなタイミングでーっ!!」
 その、脳天気な声と共に響き渡る断末魔も、これまた季節恒例の物語だと思って頂ければ、色んなものが美しく見えていいのではないかと。


「うぇぇ~ん……」
「また、今回もずたぼろにやられてきたものね」
「だってだって~……。私は、ただ単に春を伝えに行っただけなのに、みんなで集中攻撃してくるんだも~ん……」
 ぐしぐしと泣きながら家(なお、どこにあるかは不明)に帰ってきたのは、春の妖精として一部では最近に拘わらず、有名なリリーホワイト。全身ぼろぼろで、服が破けていたり顔がすすけていたりと散々である。破けた服の切れ間からちらりと見える白い素肌や、たわわな一部、ついでにその頂点などが見えてしまっている様は、とてもではないが他人には見せられない光景である。
 そんな彼女を出迎えたのは、その彼女とほとんど一緒の外見をした少女。通称、リリーブラックである。おっとり丸顔のホワイトと違って、シャープで切れ長の目つきなど、どことなくつんとした様子が漂う彼女は、ある春の時に唐突に現れ、その鮮烈なデビューによって某所で『ついに2Pキャラの降臨か!?』『となるとこいつはツンデレ黒タイツに違いない!』などなどの話が飛び交うことにもなったのだが閑話休題。
「巫女さんなんて、『夢想封印連打ー!!』って叫びながら針とかお札とか弾とか玉とか何か色々ぶつけてくるし、魔法使いさんなんて『マスタースパークキャンセルファイナルスパーク!』って物理的におかしな攻撃してきたんだよぉ!?」
「……何か、色々混じってない?」
 顔を引きつらせるブラックに、ほっぺたぱんぱんに膨らませたホワイトが『だって~』と訴える。
「ともかく。
 やっぱり、あんたの春の伝え方はぬるいのよ。そうやって、手加減なんてしてるから春のありがたみがわからない連中が逆ギレすんのよ。あたしみたいに、容赦なく、徹底的に春を伝えてやればいいのに」
「う~……ぬるいのかなぁ~……」
 まぁ、この娘に、何かにつけて『厳しくしろ』とは無理な話だろう。リリー『ホワイト』というだけあって、彼女の性格は天真爛漫おおらかで天然日溜まり娘なのだから。こんな少女が容赦なく『覚悟しなさい、このゴミクズどもが!』と叫ぶのには無茶がある。いや、一部には『それもいい!』という声があるだろうがそれはさておき。
「全く。情けない。そんなんじゃ、正式に『リリー』の名前は継げないわね」
「ふえっ!?」
「あんたみたいな三流ののろま天然格下娘は、そこら辺でのんびりゆったり春を告げていればいいのよ。あたしが正式な『リリー』の称号はもらってやるから、まぁ、ありがたく思いなさいな」
「ひ、ひどいよぉ……。ブラックちゃんのバカー!」
 右フック、左ボディーブロー、コークスクリュー右アッパーカット。さらにそこにキャンセル左後ろ回し蹴りが入り、リリーブラックは「げぼぁぁぁぁぁっ!」と叫びながら吹っ飛んでいって台所でどんがらがっしゃーんというけたたましい音を立てた。ホワイトの方はというと、泣きながら自分の部屋へと駆け込んでいってしまった。
「くっ……あの子、弾幕ばらまくより近接戦闘で殴りかかった方が強いんじゃ……」
 口許から流れている血(?)をかっこよくぬぐいながら立ち上がる。
 しかし、これでいい、これでいいんだ、と彼女は自分に言い聞かせた。
「……仕方ないのよ、ホワイト。あなたのその性格では、正式な『リリー』の称号を得るには、とてもではないけれど……」
 そう。彼女たち、『リリー一族』には厳しい掟があるのである。
『我々、リリーの名前を持つものは、あえて春を伝えなくてはならない! どちらもよけるのが不可能な弾幕の中に飛び込み、春を伝えるのが我らの使命なのだ!』
『憎まれようと、そねまれようと、それが私たちの使命なの! この厳しい現実を直視できず、リリー一族を去ったものも大勢いるわ』
『ブラックよ。お前は、ホワイトを知っているな? あの子は優しい子だ。こんな事実が、我らの中にあると知ったら、恐らく、春を伝えることが出来なくなるだろう』
『あなたなら大丈夫とは言わないわ。でも、あなたなら……あなたなら、きっと、ホワイトちゃんにも認めてもらえるリリーになれるはず』
『あの子の優しさと笑顔を守るためにも。ブラック、お前が――』
 以上、リリーの父&リリーの母との会話の記録である。
 そのために、ブラックはこの土地にやってきた。ホワイトの笑顔のために。彼女の純粋な『春』への思いのために。全ての汚名と、春を伝えられたもの達の罵りを背負う覚悟で。
「そう……あたしが頑張らないといけないのよ……!」
 ぐぐっ、と彼女は拳を握りしめ、思う。
 真の『リリー』となるために。私が、必ず、あの子の分まで『春』を伝えて回る、と。
 ――しかし、そこには問題があった。
「……………」
 見下ろしてみて思う。
 無限に広がる大平原。そして同時に、頭の中に思い浮かべてみて、思う。ホワイトの胸元に装備された、絶対双丘兵器を。
「……あたしがリリーになるためには、これが足りないのね……」
 そう。足りないのだ。容赦なく足りないのだ。
 それがどれくらい足りないかというと、わかりやすく言うならば本来神社の人間が生活(?)していくために必要な浄財の額と比べた博麗神社の浄財の額くらいに。
 対するホワイトの胸元は、それはもう存分に足りている。容赦ないくらいに足りている。何度かお風呂を一緒に入っているが、憎たらしいくらいにたゆんぷるん揺れるあれを見て、何度、殺意を芽生えさせたことか。
 いつまで経っても育たない自分の胸部。それでもどこぞの閻魔様よりはマシかな、とちょっと優越感を持っていたのだが、いざ、幻想郷にやってきてみると、そのまた一部の連中が凄まじい。たゆんどころではない。あれはぶるんだ。ぼいんだ。そして、ホワイトはそれに負けないのだ。ほぼ互角の戦いをしていると言っていいだろう。なのに、なのに自分は洗濯板も真っ青。
「……あたしが頑張らないといけないのは……!」
 寄せても当てても、間違っても掌にふにゃっとした感覚のないこの部分を育てること!
「待ってて、ホワイト。今はまだ、あなたに苦しい思いをさせるけど、必ず、あたしがあなたを……!」
 ぐぐっ、と拳を握りしめ、ブラックは宣言する。
 ああ、美しきかな、家族愛。かくも、家族を思う心というのは強いものなのである。たとえるなら某巫女のシリーズ登場回数くらいに。


 
 それから、ブラックの、血のにじむような努力の日々が始まった。
 マッサージに牛乳、体操、その他色々。でかい奴らに恥を忍んで聞きに行ったこともあった。屈辱に耐える思いを胸に、日々を過ごし続けた。その間、なるべく、ホワイトが変な連中に春を伝えに行かないように妨害もしたりした。
 ホワイトは、ブラックの思いをわかっていない。明らかにこちらに対して怒りを持っている。どうして邪魔するの、と。
 だが、それでいい。それでいいのだ。
 たとえどれだけ憎まれてもいい。あたしがホワイトを守るんだ。
 その気持ちだけを胸に、今日も彼女は牛乳を一気飲みし、思いっきりむせかえる――。



 そして、ある日のことである。
「やった……!」
 姿見に自分の姿を映しながら、メジャーを片手にブラックは声を上げる。数値は伏せるが、見事に、日々の苦労が実ったその胸部は、優にFカップ。かつてはAAとまで言われたそれが、ここまでになったのだ。
 もう大丈夫。これで、今日からあたしはあの子の代わりになれる!
 何度かポーズを取ってみたり寄せてみたり谷間を作ってみたりしながら、それを堪能した後、服に着替えて階下へと降りる。そこではすでにホワイトがほんわか笑顔で朝ご飯を頬張っている。
 そこで、彼女は宣言した。
「ホワイト!」
「?」
「今日から、あたしがリリーの名前を継がせてもらうわ!」
「え?」
「あなたに負けないくらいのものを手に入れたあたしなら、もう、どこへ出ても恥ずかしくない、立派なリリー! 伝説のリリー姉妹に名を連ねられるくらいにね!
 ご苦労様、ホワイト。あなたはこれまで一生懸命、頑張ってくれたわ。でも、これからは、もうそんなに頑張らなくていいの。家に帰って、それで――」
「……ひどい……!」
「……え?」
 唐突に。
 全てが止まった。
「ブラックちゃん……ひどいよ……!」
「え? あの、何が……」
「ブラックちゃんの属性はツンデレとないぺただったのにっ! そんなに大きくなっちゃったら、私と区別がつかなくなって、ブラックちゃんそのものの存在が必要なくなっちゃうんだよ!?」
「なっ……!?」
 ふらりと、思わずよろめいた。
「ブラックちゃんが、私のために一生懸命だったの、私、わかってた! ブラックちゃんと一緒に頑張ろうって、私、思って……! それで……!」
「あ……ああ……」
「それなのにっ! どうして大きくなっちゃったの!? そんなんじゃ、ブラックちゃんのファンの人だって離れちゃうのにぃっ!」
「な、何ですって……!?」
「ブラックちゃんの、バカーっ!!」
 家を駆け出していくホワイト。その後ろ姿に、ブラックは必死で声をかける。待って、戻ってきて、と。
「あ……ああ……そんな……」
 がっくりと、その場に膝を落とす。
 ……自分は間違っていたのか。ないぺた属性ってのはそんなに、私自身にとって必要なことだったのか。確かによく考えてみれば、今大きいのが小さくなるのはありかもしれないが、小さいのが大きくなるのは無理がないだろうか。それがキャラを作るための要素だというのなら、『小さい』と言うことがイコールでそのキャラと結びつくのだ。
「あ……あたし……なんてことを……!」
 もはや後悔しても遅い。
 彼女は、間違ってしまったのだ。ホワイトのことを思うが故に自分のことをないがしろにしてしまったのである。『ぺたんでないリリーブラックなどリリーブラックにあらず。それはただのリリーである』。この事実を忘れてしまっていたのだ。
「……そんな……!」
 今は、憎い。
 必死になって育て上げた、この二つの塊が憎い。ええい、ゆさゆさ揺れおって。
 さらしで押さえつけようが、ブラジャーで無理矢理小さくまとめようが、しかし、それは無駄なこと。これから、彼女はこの二連装桃まんと一緒に生きて行かなくてはいけないのだ。自らが道を誤ってしまった傷痕として。
「うっ……ううっ……」
 大きくたっていいことなんてないんだ。小さいなら小さいなりにいいところはたくさんあったんだ。そうだ、ホワイトにならなくてもよかったのだ。自分は自分として、彼女の『代わり』になればよかったのだ。
 それなのに、自分は、追い求めるべき道を誤ってしまった。もう、後悔してもどうすることも出来ない。全てを失ったと共に手に入れた、この谷間と共に生きていこう。ずっと、一人で。
「ごめん……ホワイト……!」











 ――という夢を見た。
 目を覚まして見てみれば、いつまで経っても相変わらずの大平原だった。
 なぜかベッドに潜り込んですやすや寝ていたホワイトの胸部は、相変わらずのビッグライトいらずぶりだった。むかついたので徹底的に揉んでやったら、何か知らんけど育ったらしい。
 さらにむかついたので、とある巫女と魔法使いがレベル五十弾幕(当社比)を展開しているところに乱入して春を伝えてやった。面白いくらい被弾して落ちていった。
 何か、ものすごくすかっとした。

 
「ブラジャーいらずの妖精とかいうなちくしょー!!」
ないぺたとたゆん、それぞれにはそれぞれのジャスティスがある。
でもやっぱり大きいのが好きという諸君、遠慮せずに手を挙げなさい。
haruka
コメント



1.ななし削除
ノシ
2.翔菜削除
壁]`ミノ
3.削除
大きいのがってよりは大きいのもって感じでむしろおっぱい自体が好きなわけで要するにおにゃのこが好きだ。
諸君、私は女性が大好きだ。
4.煌庫削除
大きいのは好きだ。だがブラックは無い方がジャスティスだと断言する。
5.銀の夢削除
|ウサギ小屋|∀`)ノシ
6.名前が無い程度の能力削除
100点だ。100点をやろう。
リリーかわいいよ。

ショートケープからのぞくリリーの幻想郷に心動かされました。