「そろそろお暇しようかしら」
「そう、ね。もうそんな時間か」
西の空が赤くなってきた頃。
博麗神社を訪れていたスキマ妖怪はそう言って腰を上げた。
「今日も霊夢とたくさん話しちゃったわ」
「ばかいってんじゃないわよ」
楽しい時間は早く過ぎるもの。
それが憎からず思っている二人ならば、なおさらである。
だが、今日に関してはその判断を下すのは早計だったようだ。
スキマを開いて帰ろうとした紫の袖を、霊夢はちょん、と引っ張って押し止める。
「今日は、晩御飯鍋なのよね」
「は?」
「家、宴会用のでかい鍋しかないから、どんなに少なく作っても一人だと余るのよ」
「……」
「そうじゃなくてもこの間の宴会の余りがいっぱいあるし」
「霊夢、それって……」
霊夢は赤い顔を隠すようにそっぽを向いて言った。
「泊まってけって言ってるのよ馬鹿」
その光景を見ていたチルノは不思議だった。
紫が馬鹿といわれて喜んでいる。
自分にはかなわないが、まあ頭のいいほうである紫が喜ぶということは、
「泊まっていけ」という言葉をつけた「馬鹿」は、ひょっとして褒め言葉なのだろうか?
そう思いついたチルノは、傍らで顔を赤くしてる大妖精に声をかけた。
「ねえ大ちゃん、あたいに
『泊まっていけ』って言ってくれないの?」
翌日
魔理沙は湖の上でへろへろと飛んでいるチルノを見かけた。
また大蝦蟇にでもちょっかいをかけたのだろうか、と話を聞いてみるが、どうも違うらしい。
「それでね、大ちゃんたら昨日はずっとすべすべ~とかひやひや~ってくっついてきたの。
あたい疲れちゃったよ」
「ちょ、ちょっと待て、お前一体大妖精に何を言ったんだ?」
「えーなんだっけ、霊夢が紫に言ってたのをまねしたんだけど」
「……マジで何を言ったんだ?」
「なんか、イケ、とかイク、とか、あ、でも馬鹿って言ってた!」
「何?私の顔に何かついてる?」
「いや、なんでもないぜ?」
紅茶を口に運ぶことで動揺をごまかす。
アリス宅を訪ねた魔理沙は、複雑な感情をもてあましていた。
霊夢と紫がお互いを大切に思っていることは知っていた。
だが、まさか行き着くところまでいってしまっているとは。
昔から霊夢のことを知っているものとしては、いささか複雑である。
それに……。
ちらり、とアリスの表情を伺う。
魔理沙にとっては、そんなことを考える相手は今のところ、一人しかいなかった。
どうやら区切りがついたのか、アリスが編み棒を置いてうーんっと伸びをする。
細かい作業に疲れたのか、紅茶を一口啜ってでたのは、ちょっとした愚痴だった。
「まったく、いきなりこんなサイズの服もってくるんじゃないわよ」
文句を言いながらもその仕事は丁寧で正確だ。
子供服だろうか、ちょうど赤ん坊が着るぐらいの可愛らしいデザインの洋服である。
わざわざアリスに子供服を頼むとは、なかなか剛毅な両親らしい。
「なあ、それどこに下ろす奴なんだ?」
「八雲家よ」
魔理沙は紅茶を噴出しそうになった。
「へ、へぇ。それはやっぱり橙が着るんだよな?」
「いくらなんでもこんなサイズが入るはずがないでしょ?
でも、そうね。確かに誰が着るのかしら」
「……アリス、もしかしたら、なんだけどな」
そう言って魔理沙は今日聞いた話を語り始めた。
「ごめんください、預けていた服を取りにきました」
「ああ、はいはいできてるわよ」
服を受け取ろうとして、橙は不思議に思った。
どうしてこの人形師の人はこんな引きつった顔をしてるんだろう?
そう思っているうちに、アリスのほうが橙に質問をした。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、この服って一体誰が着るのかしら?」
「はい、今度生まれる子がいるんで、お祝いに着せてあげるんです!」
「そう、……魔理沙の言ってたことは、本当だったのね」
そう言って奥に引っ込むと、大きな包みをもって出てきた。
「これ、紫にあげて頂戴。私からの、心ばかりの贈り物だって」
「? ありがとうございます。でも、どうして突然?」
「私たちもいつか、紫と同じ道を通ることになるから、かしら」
「?」
やっぱりよく分からない橙だった。
「藍さまー。お使い行ってきましたよ!」
「ご苦労様、橙」
「いいえ、藍様が使った服をいただけるんですから!
きっとこれであの猫も丈夫に育つと思います」
「そうだね。きっと元気に育つよ」
「それと、アリスさんから紫様に贈り物です」
「へえ、なんだい?」
「私もまだ見てないんですけど」
「じゃあ紫様が帰ってきたら見てみようか」
そんな会話をしていると、ちょうど紫が帰ってきた。
「ただいま~。ああねむいねむい」
「あ、紫様、アリスから贈り物が届いていますよ?」
「適当に開けといて~。私ちょっと寝てくるから」
そう言って紫は寝室に引っ込む。
「最近、紫さま朝帰りが多くないですか?」
「うーん、まあ。でも、紫様にはいろいろあるからね」
「ねえ藍さま、私アリスさんからの贈り物開けてみたいです!」
「そうだね、ちょっと開けてみようか」
そう言って藍が袋を開けるとそこには、
HAPPY MARRIAGEのメッセージカードと
ウェディングドレスが入っていた。
いやぁ2828させていただきました
このあとこのウェディングドレスとカードを偶然見た霊夢が、紫が自分以外の誰かと結婚すると勘違いして、アリスや魔理沙、幻想郷中を巻き込んで、何もわかってない紫と盛大な痴話喧嘩をするわけですねw
そしてアリスは仕事早いなww
しかし朝帰りでしかも眠いって……あながち間違いでも(ry
伝言ゲーム恐ろしい。
一番の原因はチルノでも、それを鵜呑みにした魔理沙も問題だと思うんだwww
> 『泊まっていけ』って言ってくれないの?」
殺し文句として最強すぎるだろうw