Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

大型休暇の過ごし方 ~紅魔館~

2009/09/18 00:28:17
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 ある晴れた日の、紅魔館門前。



「さぁ、お前達、用意はできたか!?」

 数多の妖精メイドたちを前に、‘紅い悪魔‘レミリア・スカーレットが声を張り上げた。

「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」

 ここまでコピペなし。

 整然とした十二の列と先頭に立つメイドたちの返答に、レミリアは満足げに頷く。

「うむ――次からはギル、お前が代表して返事をするように」
「は、承りました、お嬢様」
「終わんないからな」

 その後ろで、彼女よりも小さな影が二つ、こっそりと肩を寄せあった。

「レミリア、格好いいね」
「……うん、格好いい」
「わ、珍しく素直」

 慌てる一方は、‘悪魔の妹‘ことフランドール・スカーレット。

 彼女たち吸血鬼姉妹、館内の妖精メイドたちの足元には、各々小さな鞄が置かれている。
 中身はそれぞれ、着替えやら枕やらお菓子やら。
 夢が一杯詰まっていた。

「ね、眠いから!」
「お昼前だもんね。にやにや」
「こ、こんにゃろ……!」

 囃す一方は、‘閉じた恋の瞳‘。
 或いは‘地霊殿の主、古明地さとりの妹‘――古明地こいし。
 彼女は、彼女の住ま居へとレミリアたちを導くため、此処にいる。

「休憩は二度! 入り口前と旧都だ!」
「はい、お嬢様!」
「諸々の場所にいる雑多な輩には目もくれるな! 挨拶だけはしろ!」
「はい、お嬢様!」
「よしよし。うぅむ、よしよし」

 つまり――レミリアをはじめとした紅魔館ほぼ一同は、地霊殿にお呼ばれしていた。



「いざ往かん、幼稚園児の住処、地下の動物園!!」
「サ! イエッサっ!」
「え、動物園?」



 こいしが呟く。SHOCKだ。

「あぁ、うん。お姉様もテンションあがってるんだと思う」
「慰めになってないわ、フラン」
「お返しだもの」

 舌を出すフランドール。
 こいしの頬が膨らんだ。
 ――数瞬後、同時に噴き出す。

 無論の事、彼女たちのテンションも高かった――。





 一方その頃、地霊殿。



「あらあらまぁまぁ、どうしましょうどうしましょう、どーしましょー!
 あ、お燐、なんですかその目は、私は別に普段通りですよ、敢えて英語で言うとゆーじゅありぃですよ。
 こらこら、お空、なんたらストーカーはともかく、フランさんたちを迎えるのに何時もの服装ではいけません。ドレスを!」

 さとりも絶好調だ。

「あたいたちはどうにでもしますから、さとり様こそ着替えて来てください」
「です。お掃除でお洋服が真黒ですよ」
「まーまーまーまー!」

 ぱたぱたぱたと自室へと引っ込んだ。

「ねぇ、お空」
「なぁに、お燐?」
「全力で、レミリアたちをもてなすよ」
「勿論、そのつもり」
「ん」

 頷き合う二匹。

 長年にわたって仕える彼女たちですら、主人のアレほどの喜びようを見たのは数える程度だ。
 友達を招く――そんな、ある意味では当り前の、取り上げるものでもない一コマ。
 そう捉える事が出来るよう今後も続けていく為に、楽しんでもらいたい。

 全ては主人の為に。二匹は手を打ち、決意を新たにした――。





 所戻って、紅魔館。



「出発されましたねぇ」
「……そうね」

 最後尾の妖精メイドに手を振り終えた少女たちが、のんべんだらりと会話を交わす。

「そう言えば、私、申したい事が」
「……なによ」
「地下の動物園って呼称はどうかと思います」

 全くだ。

「そこ!?」
「こう、どことなく卑猥な」
「もっと色々あるでしょうに! 例えば――」

 くすりと笑みながら、一方の少女が言葉を重ねる。

 例えば――。

「地下に地上の妖怪は出入り禁止では?」
「『んな事知らん』ですって」
「さもありなん」
「あちらのお嬢様が大分と掛け合った面もあるみたいだけど」
「お嬢様も妹様も、本当に楽しみにしていらっしゃいましたから。実現して良かったです」

 例えば――。

「妹様、外出して宜しかったんですか?」
「以前にも湖に出ていたような……」
「それはまぁ、置いといて」
「置いとかないの。条件は一緒だもの」
「お嬢様のご同行とあちらの妹様の力、ですか」

 例えば――。

 少女が続けて口を開こうとすると、もう一方の少女がじとりと半眼になった。
 見ようによっては、まさしく刺すような視線。
 けれど、少女は軽やかに笑んだ。

 鈴の様な笑い声を転がし、続ける。



「例えば――何故、貴女が残っているんですか、咲夜さん?」
「貴女も人の事は言えないでしょうに」
「私は門番ですから」



 レミリアの部下で残っているのは、‘完全で瀟洒なメイド‘十六夜咲夜と‘華人小娘‘紅美鈴だけだった。

 門の前、咲夜は壁に寄りかかり、美鈴は突っ立っている。

「『今回は全部仕切りたいから』って」
「なるほど。ついてくるな、と」
「そこまでは言われてない」
「ええ。でしょうね」
「貴女ね……」

 変わらず注ぐ半眼に、変わらず向ける微笑。
 視線と視線のやり取りは美鈴に分があった。
 ぷぃとそっぽを向き、咲夜がぽつりと呟く。

「私も休暇を与えられたのよ。だから――」

 ――言葉が、詰まる。

 咲夜は美鈴を見た。
 美鈴は咲夜を見返した。
 フタリの表情は、変わらない。

 ただ、片方の頬に不自然なまでの赤みが生じているだけだ。

「だから――今日一日、お付き合いして頂けませんか?」
「あ、貴女が言うんなら、『だったら』でしょう!?」
「やだ、咲夜さんったら可愛い」

 囃され、咲夜の赤は顔全体に広がる。完全なメイドもこうなれば形無しだ。

「いいでしょ偶には!? 私だって里に出てお団子食べたりはいあーんとかそう言う感じの!」
「でも残念。私は門番なので此処を守らなければならないのでした」
「ですとろぉぉぉぉぉい!」

 叫ぶや否や、門にワンパンを入れる咲夜。
 ワンパンとは即ち『ワン・パンチ』。
 砕けた音が辺りに響く。

「痛い、痛いわ!?」

 打ちつけた右手を天にあげ、咲夜が叫ぶ。門ではなく骨でもなく、瀟洒の称号が砕けて散った。

「閉じればいいだけなんですが……」
「そゆ事は早く言いなさいよ!?」
「時間止めてたじゃないですか」

 形をなくした‘完全‘と‘瀟洒‘がスキップして遠ざかる。
 ‘メイド‘も口に手を当て空気を読んだ。
 残ったのは、‘少女‘。

 咲夜は言い返せず背を向けた。

 ほぞを噛み俯く咲夜の視界に、一条の布がひらりと映る。
 同時に、後ろから密着される躰。
 顔をあげ見上げるのは――。

「動かないで下さいね。包帯巻きますから」

 ――美鈴の微笑。

 咲夜は動かない。動けない。動くつもりも、ない。

 ぐる。
 ぐるぐる。
 ぐるぐるぐる。

「って、ねぇ、ちょっと巻き過ぎじゃない?」
「わぁ、四次元ポケットとか持ってそう」
「何時の間に両手を!?」

 ぼぉくさくやもん。

「……語呂的にはこう、ドスをもった方々のような」
「ドスも何もこの手じゃ持てないわよ」
「偶にはいいじゃないですか」

 なにがどう偶にはなのか。

 拳で問い質そうとする咲夜だったが、直前に応えを提示される。小さなキャンディ。

「はい、あー」
「ーんっ」
「ね?」

 もごもごもご。

「ん……」

 両手が使えない。
 故に、食べさせてもらうしかない。
 陥った状況に、咲夜は拳を額に当て、了解の意を返した。

 見合った音を立て、大きな門が閉じられる。
 腕を差し出され、絡みつく。
 そして、浮かぶ。

「お昼御飯はお団子として、晩御飯はどうします?」
「えっと、戻ってきて、カレーがいい」
「わぉ、久々ですね」
「私が作るんじゃなくて、美鈴の」
「ですから、久々。『太陽のお嬢様』ってまだあるんですかねぇ」



 少女フタリの大型休暇は、斯様にして始まった――。



「晩は任せるから、朝は任せて頂戴。好きな物、作ったげる」
「では、きつめでお願いします。今晩は甘甘なので」
「その言い方に不穏なものを感じるんだけど!?」
「なんなら今から。此処で」
「心の準備が!?」



 ……フタリの大型休暇は、斯様にして始まったのであった――。







 ――珍しく閉じられている門を飛びこえ、二日ぶりに戻ってきた‘魔女‘パチュリー・ノーレッジ。
 彼女が最初に聞いた声は、己が使い魔のものであった。
 何と言うか、絶叫。

 も、あらん限りの絶叫。

「逃げる奴は鼠だ! 逃げない奴はよく訓練された鼠だぁぁぁぁぁ!?」

 箒両手に小悪魔無双。

 しかし、相手が相手なので格好良くも何ともない。
 彼女の言葉の通り、現在対峙しているのは鼠なのだ。
 何時もの白黒魔法使いではない――人形遣いと共に、今はまだ冥界にいるのだから。

 けれど、ただの鼠かと言えばそうでもない。

『隊長、A班が壊滅! 撤退致しますか!?』
『……仕方ないか。お前達はさがれ!』
『はっ! で、ですが、隊長は!?』
『責任を取るのが、長ってものよ』
『隊長ぉぉぉ!』

 妙に統率が執られていた。

 ――ちゅー!

「見上げた心意気よ! この小悪魔、全身全霊をもってひゃぁんっ!?」

 微妙な所に潜り込まれたようだ。

「……何やってんだか」

 身をくねらせる小悪魔に半眼を向けながら、パチュリーが呟く。

「と言うか、彼女はあの子たちの言葉が解るのかい?」
「哺乳類は大体制覇したみたいね。鳥類もほどほど」
「……調教師か何かなのかな、あぁ見えて」
「一応、私の使い魔で、図書館の司書よ」
「と言う事は、君がこの館の責任者?」

 問いに、パチュリーはスペルカードを取り出した。

「違うわ。
 ところで、貴女は何方?
 返答によっては、威力を下げてあげる」

 一瞬にして、魔法陣が展開される。
 魔女を中心に力が迸った。
 放つ。

「レディを前に、是は失礼」

 ――寸前、質問者が頭を下げる。
 大仰に腕を伸ばし、曲げて胸に当て、演者の様に。
 唐突な動作に面食らったパチュリーは、その動きを止めた。

「私はナズーリン。鼠たちの大将さ」

 質問者――‘ダウザーの小さな大将‘ナズーリンが、続ける。

「ダウザーを生業にしている。
 簡単に言うと、宝を探している訳だ。
 古い館ってのはそう言う物が多いだろう?」

 パチュリーの腕が、再びあがる。

「お生憎様ね。
 鼠が喜ぶ宝なんて此処にはないわ。
 だけど、報いは受けなさい。不法侵入と――首振って、何よ?」

 既に陣を展開しているという状況が、パチュリーに隙を与えた。

 ナズーリンが応える。

「あぁ! 君の言う通り、なかったんだろう。
 けれど、今は、確かにある。
 わかるかい?」

 片腕を伸ばし、微笑しながら、言った。



「君が、宝さ」



 むっきゅーん!

「な、ななな、いきなり何を言い出すのよ!?」
「どうだろう、一緒に来てくれないかい?」
「わ、私は体が弱いのよ! 外になんて」
「私が、必ず守ってみせる」
「あぁ!?」

 よろめくパチュリー。
 駆け寄るナズーリン。
 割って入る、隊長鼠。

 死闘の末、小悪魔が投げたのだ。

「ちらつく太腿がぐっとくる鼠さん! 私のもやしを齧ろうたぁ、あ、パチュリー様、笑顔が怖い!?」
「何時の間に主従が逆転したのかしら。あと、もやしって、なぁに?」
「私の主食です。こう、主に夜の」
「火水木金土符‘賢者の石‘」
「うっきゃー!?」

 なんだか何時も通りの展開になってきた。

「ふぅむ、雲行きが怪しくなってきたね」
「ちゅー」
「そうかそうか。お宝を拝めたかい」
「ちゅー」
「じゃあ、そろそろお暇しよう」

 蹴散らされて目を回す鼠たちを回収し、ナズーリンは去っていった。



「今何か凄い事言いませんでしたかって、あんたら何しにやってきたぁぁぁ!?」
「お泊まりを途中で切り上げて帰ってきたって言うのに、貴女ときたら!」
「ハプニングは起こりましたか膜は残っていますかいざチェック!」
「貴女の方が凄い事言ってるわよ!? スペル宣言っ」
「どんとこぉぉぉい!」
「休暇、なし!」



 小悪魔が吹っ飛んだ。



 ――かくして。少女ヒトリの大型休暇は、そもそも始まらないのであったとさ。





                     <ちゃんちゃん>
・悪魔の扱いが鳥並になってきた。前からな気もする。お読み頂きありがとうございます。

・と言う訳で、紅魔館の面々+αでした。

・お嬢様たちは無事に地霊殿に着けるのか。
・咲夜さんは食べられてしまうのか。
・はたしてパッチェさんのまk。

・尚、今後登場する際、ナズーリンの性格が変わっているかもしれません。だってまだクリアできてないんだもん。
道標
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ナズーリンが女たらしwww
まるで一時期の魔理沙のような…ん…ナズマリ…?
2.名前が無い程度の能力削除
>ここまでコピペなし
労力使うところおかしいよ!?
それはそれとして、さりげなくつんでれなフランちゃんかわいいです。
紳士らしいナズーリンもいいものだ。
3.名前が無い程度の能力削除
当然だが地霊殿編もあるよな?むろん無いとは言わせんぞ!
ナズのあれは素なのかw
4.名前が無い程度の能力削除
このナズは濡れるww