Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

旧作結界

2009/09/07 20:25:38
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「……なんか落ち着かない」
「あ、靈夢も?」

 苛々するというか、なんというか。
 私と魔理沙は、どうにも落ち着かない気持ちを胸にお茶を啜っていた。
 なんだろう。この、思い出せないような煩わしさわ。
 
「ねぇ、魔理沙」
「何かしら」
「なんかさ。こう、なんていうのかな。頭の中が、ごわごわしない?」
「んー。私はもっと、なんか、んー……あぁ、言葉にならない!」

 魔理沙もどうやら、私と同じみたい。
 何なのかしら、これ。あぁ、鬱陶しい。
 頭の中が白むような、あの、物の名前がパッと出てこない感じ。
 季節的な問題なのかしら。

「スッキリしないわ」

 こういう気分の時は気が滅入る。
 もっと大勢でいた方が好いかも知れない。魔理沙と玄爺がいるけど、なんか、他の奴に会いたい。
 はぁ。じゃあ、わざわざ遠方まで会いに行かないと駄目よね。
 そうよ。ここは寂しすぎる。
 この神社の周囲は、静かすぎるんだわ。

「それにしてもこの神社、少し埃っぽいわよ。ちゃんと掃除してるの?」
「失礼ね。ちゃんとして……あれ? たと思うんだけど。あれ、おかしいわね。掃除した憶えが」
「してないんじゃないの」
「しなくても良かった様な、気がして、あれ?」
「呆けないでよね。まったく。何年サボってたんだか」
「誰かが掃除してくれてたとか」
「そんな都合良い人ここにはいないわよ」
「そっかぁ」

 それもそうよね。
 変なの。なんか、誰かがここで家事でもやってくれてた様な気がしてた。
 夢でも見たのかしら。

「寝てても駄目だわ。散歩にでも往く?」
「そうね。そうしましょうか」

 ということで、散歩にでも出ることにしたわ。
 飛んでれば、その内にこの曇ったみたいな気分も晴れるでしょう。

 それだから、二人揃って庭に出る。私は玄爺に、魔理沙は箒に、それぞれ跨って準備を整える。

「ご主人様。どちらに往くのでしょう」

 そういえば何処へ往こう。
 何も考えていなかったでの少し考えよう。
 そう思っていると、魔理沙がすぐに提案をしてきた。

「そうだ、ねぇ靈夢、あんみつでも食べに里に往かない?」
「パス。私はどっちかっていうと……そうね。誰かに会って、この鬱陶しさをみんなが感じてるものなのか調べたいわ」

 そう。今は誰かに会いたい。丁度良い機会だわ。

「それ悪趣味じゃないかしら。自分が怠いからって」

 それに魔理沙は唇を尖らせて不満をアピールしてくる。

「いいでしょ。それに、私たちだけならいいけど、もし私たちだけじゃないとすれば流行病みたいで恐いじゃない」
「それはそうだけどね。まぁいいか。じゃ、幽香にでも会いに行ってみる?」
「そうね」

 というわけで、私たちは夢幻館を目指して飛んだ。

 馬鹿みたいに大きな屋敷で、たった一人暮らしている妖怪。
 なんでそんな寂しいことををしているのだろうと、ちょっとだけ疑問に思う。
 でもあいつのことだから、他の奴を自分の家に置いておくのが我慢できないのかも知れないわね。
 
 その館は、現実世界と夢幻世界の境界に建つ。
 まったく、なんであんな中途半端なところに一人で暮らしているのかしら。
 夢幻世界に知り合いが居るわけでもないのに。
 
 そんなことを想いながら、道中誰かと会うこともなく夢幻館へ辿り着いた。
 戸を開けると、巨大な館を飛んで移動する。
 
 あぁ、あいつどこにいるのよ。
 
 少し苛々しながら飛んでいると、見覚えのある部屋に付く。

「あ、ここ?」
「そうみたいね」

 揃って止まり、戸を開けて中に入る。
 すると、優雅そうに椅子に腰を下ろし、窓の外を眺めている主が居た。
 その横にティーセットがあったが、ティーサーバーは空で、ティーカップも茶渋で汚れていた。
 
「あら、珍しいのが来たわね」
「幽香。あんたもうちょっと面倒がらずに食器くらい洗いなさいよ」
「それ靈夢が云っても説得力全然ないわよ」
「うっさい」

 なんで私に茶々入れるかな。
 
 ん? なんか幽香が、嫌にお姉さんみたいな目で見てる。
 ……何よ。

「どうしたの?」
「ううん。なんでもないわ」
「変なの」

 本当。変な奴。

「そういえば幽香。あんた門番くらい置いたら? この大きな屋敷に一人じゃ、管理面倒でしょう」
「……そうね。考えておくわ」
「そうよ。あなた掃除好きじゃないでしょ……でも、それにしては綺麗ね」
「もしかしたら、誰か掃除をしてくれてた奴がいたのかもしれないわね」
「あなたも靈夢みたいなこと云うのね」
「そんな都合の良いのがいたら私が欲しいわ」
「あ、私も欲しいかな」

 云ってケラケラ笑い合う。
 だけど不思議と、なんか、幽香だけが妙に大人ぶっていた様に思えた。
 それが、なんだか癪に障った。
 
「それじゃ、私たちは帰るわから」
「今度来た時にはメイドでも雇っておいて、紅茶でもごちそうして欲しいわね」
「気が向いたら、どこかから引っ張ってくるわ」
 
 そんな挨拶で、私たちは別れた。
 幽香は、ろくに見送ろうともしなかった。



 *********

 
 
 はぁ。往ったか。
 もう往っちゃったのね。
 短かったなぁ。
 
 乾いたティーカップを撫でる。
 これに紅茶を淹れてくれた者はもういない。

「もう私もいなくなるわ。世話を掛けたわね」

 私の世話を焼いてくれたもの。
 私を置いてくれた館。
 そして私が消えるまで、ここにあってくれた夢幻世界。
 
 心残りなのは、自分が世界の中心でなかったこと。
 この世界の先へ進む資格を持っていられなかったこと。
 
 それが、ちょっと悔しい。

 まぁ、今更だけどね。

 精々頑張りなさい。
 あんたたちはきっと、次の世界、次の次の世界、次の次の次の世界まで、果てなく旅を続けるわ。
 
 あぁ、羨ましい。

「さようなら、二人とも。でももし、また会いたくなったら、その時は会いに来てあげるわ」

 あぁ。白いものね。
 段々と、ゆっくりと、世界が崩れていく。
 
 
 
 *********



 あれ? 私たち何してたんだっけ?
 飛んでいた。
 でも、どこへ?

「どうしたの、呆けた顔して」
「え、あ、えと。私たち何してるんだっけ?」
「誰かに会いに行くんでしょ。耄碌したのかしら?」
「なっ! 違うわよ」

 確かに呆けてたけど、そうだわ。誰かに会いに行こうとしたのよね。
 誰に会いに行こう。

「何よ、まだ誰に会いに行くか悩んでるの? じゃ、久しぶりに魔界とかどうかしら」
「魔界ぃ?」
「露骨に嫌そうな顔するじゃない」
「だって遠い上に神綺しかいないじゃない」
「どうせそんなに知り合い多くないんだからつべこべ云わない」

 サラッと酷いこと云うじゃない。
 そりゃさ、私ら二人揃って知り合いなんて両手で足りるけど。

 ……あれ。片手で充分だ。

 そんなショックに打ちのめされながら、揃って魔界へ向かう。
 目指すは神綺の住む屋敷。
 自分一人しかいない世界なんか創って、何が楽しいのか。
 
「あれ? 靈夢、あれ神綺じゃない?」
「え、どこ?」
「下、下」
「えっと……玄爺邪魔」
「無茶云わないでください!」

 少し旋回してもらって、どうにか地上を見る。
 すると、暢気そうな神綺が地上で手を振っていた。
 呆れるけど、まぁ往かなくて済んだので良しとしよう。

「あんた、なんでこんなところにいるのよ」
「今から往こうと思ってたのよ」
「だろうと思って会いに来たの」

 軽いわね、神様。

「でもなんでこんなところに?」
「飛んできたら疲れちゃって」
「随分体力ないのね」

 魔理沙も呆れ顔。
 正直私も呆れた。
 いいのか神。そんなんで。
 
「いいの。二人に気付いてもらえたし、顔も見れたし。さて、魔界に帰ろうかな」
「えぇ!? 何よ、何しに来たの!?」
「顔見に来たの」
「ひ、暇なのね、神様って」
「あぁ、そんなことないのよ。いい、魔理沙ちゃん。こう見えて、世界を維持するのって大変なんだから」
「え、あ、はぁ」

 威厳といって良いのか判らないけど、威圧されて魔理沙がたじろいでいた。
 珍しいかも。

「というわけで、忙しい私はもう帰らないといけないのよ」
「大変ね」
「うん」
「が、頑張って」
「うん」

 ぱぁっと笑顔になって、神綺はまた歩き出した。

「二人とも。ばいばい。元気でね」

 そんなちょっと間の抜けた挨拶を口にすると、神綺は魔界の方へ帰って行った。
 ……徒歩で。

「良く判らないけど、気分も楽になったし、神社に戻ろうか」
「そうねぇ。もう知り合い魅魔様くらいしかいないしねぇ」

 本当に知人いないわね、私たち。
 

 *********
 
 
 
「……どうにか、笑っていられたわね」

 痛い。身体が痛い。
 無理しすぎたかな。もう飛べないなぁ。
 
「駄目ね。無理矢理逆、魔界を維持したから……いたたたた」

 どうにか、最後の瞬間まで魔界を残しておきたかった。
 でも、駄目だったわね。
 魔界は残っても、そこに生きていた人は、みんな残せなかった。
 
 神様失格ね。
 
 ちょっと溜め息。

「あはは。みんなの分も、二人を応援できたかな」
 
 もう判らない。
 でも、あの二人なら大丈夫。お気楽に、嫌なことは忘れて、きっと器用に生きていける。

「ちょっと寂しいかな。あぁ、そうだ。もし、またいくつか先の世界で生まれたら」
 
 そう、またもう一度生まれたら。
 
「今度は負けないからね。靈夢ちゃん。魔理沙ちゃん」



 *********



「私たち、結局誰とも会えなかったわね」
「何してるのかしら。私たち。ねぇ、魅魔様に会うんでしょ?」
「そのつもり」
「なんでこんな大回りしたのよ」
「知らないわよ!」

 何故か酷く疲れた。
 余計な遠回りをして、ようやく目的の相手を見付けた様な感じ。
 
 最初から魅魔しか選択肢にないはずなのに。
 何やってるのかな。

「ほら、魅魔様が元気してたら、里往ってあんみつ食べましょ」
「まだ云ってるし」
「私は甘味が食べたいの」
「はいはい、判ったわよ」

 不承不承肯定すると、魔理沙は嬉しそうに笑った。
 
「靈夢の奢り?」
「そんなわけないでしょ」
「ちぇ」

 私たちは神社へ飛ぶ。
 
「でも、魅魔様なら神社にいるのに、なんで私たち飛んでったのかしらね」
「風に当たりたかったんでしょ」
「ん~」

 揃って腑に落ちない表情のまま、私と魔理沙は神社に戻った。

「ん~? おぉ、お帰り」
「ただいま」
「ただいま。魅魔様、お体の具合はどうです?」
「はい?」

 きょとんとした顔。

「なんか怠かったりしない?」
「ははは。霊魂に怠いもないだろう。私は元気だよ」
「それもそうよね」
「ほら、解決。靈夢、あんみつ食べに行きましょ。魅魔様もどうです?」

 魔理沙の目がキラキラ輝く。
 現金な奴。

「私はいいわ。あ、でもそうだな。私の分は買って持ってきてくれないか」
「えーーー」

 面倒。

「判りました。買ってきます」
「えーーー」
「靈夢五月蠅い」
「はいはい」

 ってことは買って帰ってきて食べるってことじゃない。
 ……お茶入れないといけないじゃない。

「じゃ。私はここで待ってるから」
「はい、さ、往くわよ靈夢」
「はいはい」

 くそう、今に見てなさい。いつか私があんたを使役してやる。



 *********

 

 あぁ。終わった終わった。
 これで、私の出番は終了かい。
 
 いやぁ、楽しかった。
 満足だ。
 あの馬鹿二人が弟子みたいなもんだったしね。
 魔界の子供をメイドにしたり、好き勝手やらせてもらったもんだよ。
 
 ……ほんと。満足さ。
 
 満足なハズなのに、意地悪く色々思い浮かべちまう。
 嫌だねぇ。そりゃやりたいことなんてあるけどさ。

 これ以上ごちゃごちゃ考えるのはなしにしとこう。

 そうさ。悪霊魅魔は此処で終わる。
 はい、全部諦めた。もうなしなし。なんにもなーし。
 
 はは。こんな葛藤見せられないね。
 
 なんて、ちょっと照れ笑い。
 
「それじゃあね。未熟者共。私は、神社で眠らせてもらうよ。気が向いたら起こしてくれ」

 目を閉じる。私の意識は、そこで終わる。
 
 

 *********



 私たちは空を飛んでいた。
 だけど、途中で玄爺が疲れたから休ませてくれと云い出したので、その辺に適当に降りることにした。
 湖畔。周囲に何もない開けた場所。
 
 どう飛んできたのか。ここがどこなのか判らない。

「ご主人様。儂はもう疲れました。もう、ここらで休憩させてください」
「何、だらしないわね。いつもは玄爺がサボるなだらけるなって云う癖に」
「手厳しい」
「仕返しよ」

 疲れたのか、玄爺は地上に降り立ったまま動こうとしない。
 早く行きたいのになぁ。

 どこへ?

 少し疑問が湧くけれど、判らない。
 気にできない。
 
「儂はしばらく休んでから追いかけます。ご主人様や魔理沙殿は、先に往ってください」
「何よ。別に待ってるわよ」
「いえ。もうご主人様は、儂がいなくても飛べるじゃないですか」

 え……あぁ、そういえばそうね。
 そうだわ。私は飛べるじゃない。
 なんで今飛んでいないのかしら

 私はゆっくりと、玄爺から降りた。

 そう。もう一人で飛べるのよ。
 そんな想いが、強く頭の中で反響する。

「それじゃ、先に往くわね。玄爺」
「はい」
「また駆けっこましょうね、玄爺」
「魔理沙殿にはもう勝てそうにありませんが」

 その言葉に笑顔を見せると、魔理沙は先に飛んでいった。
 残された私と玄爺がお互いの顔を見る。

「それじゃ、本当に往くわ」
「はい、お元気で」
「何よ、今生の別れみたいに。待ってるからね、玄爺」
「えぇ、すぐに」

 それだけの言葉を交わすと、私の体はふわりと浮き上がった。
 身体が地面から離れ、そのくせ立っているように安定する。
 不思議だ。飛べる力が湧いてくる。飛ぶことを身体が知っている。
 
「今まで、ありがとうね」

 思わず、そんな言葉が漏れた。
 その言葉の意味が判らなくて、すぐに飛んで魔理沙を追いかけた。

「ご主人様。魔理沙殿。これからもどうかお達者で。なかなか楽しい毎日でした」

 そんな玄爺の言葉が、耳に届いく。でも、振り返らなかった。

 だって、誰の為に振り返るっていうの。

 後にはもう、誰もいないじゃない。




 私たちは飛んでいた。
 真っ白い世界を。

 ここはどこだろう。

 判らない。

 でも、きっと続いていく。

「それじゃ、往こう。霊夢」
「そうね」

 私たちは歩を進めた。
 何かを忘れ、そして、
 
 新しく、出会っていく為に。
残る者と移り変わる者
残酷なのはどっちなのかな


>>3さん
しゅうせい
焼き竿
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
PC-98からWinへの移行ですね。 ここに出てきたキャラ以外の心境を考えてみると、何か胸が熱くなります
2.名前が無い程度の能力削除
泣けてきた。
3.名前が無い程度の能力削除
切ない…しかし教授らはどこに…

>次の世界、次の次の世界、次の次の世界
になってますが最後一個足りないのでは?
4.名前が無い程度の能力削除
作品に浸ろうにも短くて残念
5.名前が無い程度の能力削除
しかし本当のところは誰一人として
いや、それは野暮ってものですかな
6.謳魚削除
来ますぜ。なにかが。
7.名前が無い程度の能力削除
ここに書かれなかった人たちのサイドストーリーも交えてもう一回!
って言いたくなります
それも野暮かな、やっぱり