私が幽々子様の部屋へ入ると畳の上でアユがぴちぴちと跳ねていたのだ。
びたりびたりと体を動かし、そのたびに水滴と独特の生臭さが周りへ広がった。
その鮎はなぜか大きさが人間ほどもあった。まるでカマスである。自分がアユと認識できたのは不思議である。
また、鮎は幽々子様の着物にすっぽりとはまっていた。水色を基調とした桜の舞う着物、間違いなく幽々子様のものである。着ているようにもみえたが魚が一人、いや一尾でしかもあのひれで着ることができるはずもない。そもそも陸に上がることもできないので必然的に犯人がいることになる。既に目星はついている。どうせあの二人のどちらかであろう、両方かもしれない。全く、悪戯はいいが片付ける方の身にもなってほしい。
小さくため息をついた。
とにかくまずはこの巨大アユをどうにかしなければならない。いつまでも部屋が魚屋では駄目であるし、鮎も口をパクパクさせている。えら呼吸である。
巻きついている帯を解くと着物から鮎が転がり出る。転がることにより光の変化できらきらと輝くウロコ、湿り気を帯びた体にしなやかな曲線、ほんの少し背徳感を感じる。
え、背徳感? いやいやこんな魚類に欲など感じないだろう、これは食欲に違いない。あの銀色に輝く体躯、粗塩をまぶして炭火で焼いたらさぞうまいことだろう。
おっとよだれが。あわてて口を拭う。すぐ食事と関連づけて考えるのは幽々子様の癖が移ってしまったに違いない。困ったものだ。え、決して本人を馬鹿にしているわけじゃございません。ほんとです。
さてようやく本来の姿を取り戻したな、魚よ。とりあえずこいつは庭にある池にほうりこんでおこう。あの池の広さならこの巨体でも不自由しないだろう。
アユを抱えようとして体の下に手を入れる。ぐ、重い。これは相当な重量だ。いつぞや幽々子様をお姫様抱っこしたときより大変である。そしてなぜ私は鮎をお姫様抱っこしているんだろうか。ぬるぬるするんだよこいつ。その上びちびち跳ねるし。
「おい、やめろって。うわっ!」
尾びれの一撃が頬へと直撃し、私は障子を突き破り庭を転がり池へと突っ込んだ。一連の流れは私の目にはひどく遅く見え、舞い散る障子紙や口からこぼれ出る空気の泡がよく見えた。
強い衝撃を受け困惑する頭と節々が痛む体であったが、なんとか池から這い出ることができた。全身ぬるぬるのぐっちょぐちょである。非常に気持ち悪い。髪にからまっていた水草をはぎとり、部屋へと戻る。よし決まったぞ。今日のお夕飯がな。
廊下から部屋を見る。すでにアユは酸欠からかほとんど動かない。えらがヒクヒクとするだけで時折ぴちりとひれが畳を打つくらい。
いい気味じゃあないか。このまま息絶えるのを眺めているのも悪くない。が、味が落ちてしまうような気がする。早速三枚おろしにして台所へ持っていこう。それとも台所へ持って行ってからのほうがいいかな。血で部屋が汚れてしまうし。
めんどくさい、やっぱりここで斬ろう。幽々子様には適当な理由でもでっちあげておけばいいだろう。伝説のアユ魔人が白玉楼の錦鯉を解放しにきて、死闘の末退治することができたとかなんとか。もはや正常な思考などいらない。今はただ目の前のアユを斬ることだけを考えればいい。闘いなんてそんなものだ。囚われていた常識は既に刀の錆である。
隠されていた第三の刃、出刃包丁を半霊の中から取り出す。あまりに危険すぎるため対食材以外にはお爺様に使用を禁じられている凶悪な代物だ。刃は刃こぼれ一つ無く鈍く輝いている。
柄を強く握りアユへと振り下ろす。これで最期だアユ魔人よ。現世斬を漁夫「完全なる配置の罠 -地引網-」で破られたが地力が違いすぎたな。せめて幽々子様においしくいただかれるがよい!
「くらえっ!」
「ちょっとタンマ」
気の抜ける声とともにアユが姿を消した。いやスキマに飲み込まれたのだ。
勢いあまり振り下ろした出刃包丁が畳に刺さる。
気配を感じて振り向くと宙にスキマが開きアユが池へと落ちていくところだった。
「紫様っ」
「はいはーい」
またも後ろから気配がしたので振り向くと紫様がスキマに腰掛けていた。いつものように何を考えているのかよくわからない笑みである。ただ導師服の紫色の部分が朱色なのがいつもと違った。
「あのアユは紫様の仕業ですね!」
「そうよ」
あっさりと肯定し、少し拍子抜けする。
「なんであんなものを幽々子様の部屋に、悪趣味ですよっ!」
「そうかしらねぇ、部屋にいたのは本人だからしょうがないとして」
「しょうがないってなんですか!幽々子様だからってやっていいことと悪いことがって、‥‥‥え?」
なにか爆弾発言が聞こえた気がする。幽々子様がアユ? いやいや幽々子様は食べる側でアユは食べられる側、うん、違うな。
「あのアユは幽々子本人よ」
またまたー、冗談でしょう。まさかあのアユが幽々子様なわけがない。いくら境界を操る能力だからといって亡霊を魚にできるわけがない。亡霊と魚の接点なんてどこにあるのさ。せいぜい塩が似合う程度だ。
「ちょっとついてきて」
全然考えがまとまらない頭で何とか背中を追いかける。池のふちまで来ると止まったので私も止まり、池をのぞいてみる。
アユが錦鯉を食べていた。なにやってるんだこいつ、錦鯉がいくらすると思っているんだこのお。
しかしいい食べっぷりだった。まるで幽々子様である。ん? いやいやまさか、まさかねぇ。思わず汗が頬を流れ落ちる。
アユと目があった。死んだような目である。そして幽々子様は死んでいるのだ。あ、間違えた。魚はもともとこんな目だった。これは理由にはなりえない。落ち着け、落ち着くんだ魂魄妖夢、絶対紫様がからかっているに違いない。訊いて確かめればすむじゃあないかあ。
「いくらなんでも幽々子様をアユにはできないでしょう?」
「ふふ、驚く無かれ、「ゆ」と「あ」の境界をいじったのよ」
走り抜ける衝撃、驚異の事実、なんと西行寺アユ子だったのだ。
「ということで私も実は八雲あかりなのです。ってあれ?」
まさかお仕えする主人に刃を向けてしまうなんて‥‥‥。もはや死んで詫びるしかない。
楼観剣を抜き首にあてる。幽霊十人が殺傷できる刀だ。楽に死ねるだろう。
許されない事をしたのだ。この世とは、ここ冥界だけれど、お別れしなければならない。
覚悟はできているし、死んだあとも幽々子様には会えるだろう。寂しくなんて無い、寂しくなんて無いはずなのにふと涙がこぼれてきた。こうして全霊になればもうたやすく現世には降りれないだろう。つまり生きている彼女たちにはもう会えないのだ。なんだかんだで友達と呼んでもいいような関係がだったけれども、その存在は私の中で想像以上に大きかったようだ。
さようなら巫女に魔女、さようならメイドに兎、あななたちと過ごした時間は決して悪いものじゃあなかった。
瞳を閉じる。
刀を肌にあて‥‥‥。
おかしい、力を入れても肌に鉄のひやりとした感触がこない。
おそるおそる目を開けると紫様が目の前に立っていた。その手は楼観剣をにぎりしめ血が刃をつたっていた。そしてとても悲しそうな顔。
「紫様‥‥‥」
「馬鹿ね」
そういってぎゅっと抱きしめられた。とても温かい。自分でも気持ちが落ち着くのがわかった。
「詫びるならもっと方法があるでしょう。あなたは幽々子をかなしませたいの?」
「でも、私が刀を向けた事実は」
「そんなことあなたが原因じゃないでしょう。あなたにはそれが幽々子だとはわからなかっただけだし」
「主人と見極められないなんて従者失格です」
「誰もアユが主人だなんて気づかないわよ。もとは私が原因なわけなのだからあなたは自分を責めなくてもいいの」
「‥‥‥はい」
「よしよし、それでいいごふっ」
私は紫様を持っていた楼観剣でそのまま凪いだ。
「な、なにをするの妖夢」
「いえ原因はもとは紫様だったなあと思って」
私はすごい笑顔である。どこかの本の挿絵で笑顔は逆に恐怖を与えるとわかったので実践したのだ。
「幽々子様がアユなのも私が池に落ちたのも主人に刀を向けたのも最近ちょっと太ってしまったのも全て紫様のせいです。大丈夫、理解しました」
「いやいや最後のは違うわよ」
「心配しないでください。紫様が大人しくしてくれるなら三日で終わります」
「長い、長いわ妖夢!」
「ではまず指からいきましょう」
そう言ってじわじわと歩を進める。
「ままま、待って! 実はこのアユ、幽々子じゃないの! ほらゆゆこならゆが二つだからああこになるじゃない。だからこれは幽々子じゃないのわかった!?」
「ああ! 実は紫様が私にかけてくださった言葉も嘘だということになりますね。理由が増えました!」
そういって歩きから、小走り、全力疾走へと替え距離を詰める。
紫様もひっと声を漏らし、スキマで浮遊し距離を離そうとする。
こうして二百由旬の庭での鬼ごっこが始まった。
私だってわかっている。いくら私が凄もうと紫様は恐れなど微塵も感じないことくらい。わざわざ私にの悪ふざけにつきあってくださっているのだ。大方、仕事の息抜きにでもなればと思ったであろう。現に今紫様を追っている私はとてもいきいきできている。というか少し興奮気味だ。積もり積もった不満をこうして消してくれるんだなんて本当にすごい御方だ。眠ったりふざけたりする面ばかり見えるが本当は私たちのことをしっかりかんがえてくださっているのだ。
しかし部屋が汚れたのと池に落ちたことは消えないのでその分の制裁はしよう。それくらいはつきあってくれるだろう。
とりあえず幽々子様が変なものになっていないことを祈りつつ私は前方の紫様に楼観剣
を振り下ろした。
びたりびたりと体を動かし、そのたびに水滴と独特の生臭さが周りへ広がった。
その鮎はなぜか大きさが人間ほどもあった。まるでカマスである。自分がアユと認識できたのは不思議である。
また、鮎は幽々子様の着物にすっぽりとはまっていた。水色を基調とした桜の舞う着物、間違いなく幽々子様のものである。着ているようにもみえたが魚が一人、いや一尾でしかもあのひれで着ることができるはずもない。そもそも陸に上がることもできないので必然的に犯人がいることになる。既に目星はついている。どうせあの二人のどちらかであろう、両方かもしれない。全く、悪戯はいいが片付ける方の身にもなってほしい。
小さくため息をついた。
とにかくまずはこの巨大アユをどうにかしなければならない。いつまでも部屋が魚屋では駄目であるし、鮎も口をパクパクさせている。えら呼吸である。
巻きついている帯を解くと着物から鮎が転がり出る。転がることにより光の変化できらきらと輝くウロコ、湿り気を帯びた体にしなやかな曲線、ほんの少し背徳感を感じる。
え、背徳感? いやいやこんな魚類に欲など感じないだろう、これは食欲に違いない。あの銀色に輝く体躯、粗塩をまぶして炭火で焼いたらさぞうまいことだろう。
おっとよだれが。あわてて口を拭う。すぐ食事と関連づけて考えるのは幽々子様の癖が移ってしまったに違いない。困ったものだ。え、決して本人を馬鹿にしているわけじゃございません。ほんとです。
さてようやく本来の姿を取り戻したな、魚よ。とりあえずこいつは庭にある池にほうりこんでおこう。あの池の広さならこの巨体でも不自由しないだろう。
アユを抱えようとして体の下に手を入れる。ぐ、重い。これは相当な重量だ。いつぞや幽々子様をお姫様抱っこしたときより大変である。そしてなぜ私は鮎をお姫様抱っこしているんだろうか。ぬるぬるするんだよこいつ。その上びちびち跳ねるし。
「おい、やめろって。うわっ!」
尾びれの一撃が頬へと直撃し、私は障子を突き破り庭を転がり池へと突っ込んだ。一連の流れは私の目にはひどく遅く見え、舞い散る障子紙や口からこぼれ出る空気の泡がよく見えた。
強い衝撃を受け困惑する頭と節々が痛む体であったが、なんとか池から這い出ることができた。全身ぬるぬるのぐっちょぐちょである。非常に気持ち悪い。髪にからまっていた水草をはぎとり、部屋へと戻る。よし決まったぞ。今日のお夕飯がな。
廊下から部屋を見る。すでにアユは酸欠からかほとんど動かない。えらがヒクヒクとするだけで時折ぴちりとひれが畳を打つくらい。
いい気味じゃあないか。このまま息絶えるのを眺めているのも悪くない。が、味が落ちてしまうような気がする。早速三枚おろしにして台所へ持っていこう。それとも台所へ持って行ってからのほうがいいかな。血で部屋が汚れてしまうし。
めんどくさい、やっぱりここで斬ろう。幽々子様には適当な理由でもでっちあげておけばいいだろう。伝説のアユ魔人が白玉楼の錦鯉を解放しにきて、死闘の末退治することができたとかなんとか。もはや正常な思考などいらない。今はただ目の前のアユを斬ることだけを考えればいい。闘いなんてそんなものだ。囚われていた常識は既に刀の錆である。
隠されていた第三の刃、出刃包丁を半霊の中から取り出す。あまりに危険すぎるため対食材以外にはお爺様に使用を禁じられている凶悪な代物だ。刃は刃こぼれ一つ無く鈍く輝いている。
柄を強く握りアユへと振り下ろす。これで最期だアユ魔人よ。現世斬を漁夫「完全なる配置の罠 -地引網-」で破られたが地力が違いすぎたな。せめて幽々子様においしくいただかれるがよい!
「くらえっ!」
「ちょっとタンマ」
気の抜ける声とともにアユが姿を消した。いやスキマに飲み込まれたのだ。
勢いあまり振り下ろした出刃包丁が畳に刺さる。
気配を感じて振り向くと宙にスキマが開きアユが池へと落ちていくところだった。
「紫様っ」
「はいはーい」
またも後ろから気配がしたので振り向くと紫様がスキマに腰掛けていた。いつものように何を考えているのかよくわからない笑みである。ただ導師服の紫色の部分が朱色なのがいつもと違った。
「あのアユは紫様の仕業ですね!」
「そうよ」
あっさりと肯定し、少し拍子抜けする。
「なんであんなものを幽々子様の部屋に、悪趣味ですよっ!」
「そうかしらねぇ、部屋にいたのは本人だからしょうがないとして」
「しょうがないってなんですか!幽々子様だからってやっていいことと悪いことがって、‥‥‥え?」
なにか爆弾発言が聞こえた気がする。幽々子様がアユ? いやいや幽々子様は食べる側でアユは食べられる側、うん、違うな。
「あのアユは幽々子本人よ」
またまたー、冗談でしょう。まさかあのアユが幽々子様なわけがない。いくら境界を操る能力だからといって亡霊を魚にできるわけがない。亡霊と魚の接点なんてどこにあるのさ。せいぜい塩が似合う程度だ。
「ちょっとついてきて」
全然考えがまとまらない頭で何とか背中を追いかける。池のふちまで来ると止まったので私も止まり、池をのぞいてみる。
アユが錦鯉を食べていた。なにやってるんだこいつ、錦鯉がいくらすると思っているんだこのお。
しかしいい食べっぷりだった。まるで幽々子様である。ん? いやいやまさか、まさかねぇ。思わず汗が頬を流れ落ちる。
アユと目があった。死んだような目である。そして幽々子様は死んでいるのだ。あ、間違えた。魚はもともとこんな目だった。これは理由にはなりえない。落ち着け、落ち着くんだ魂魄妖夢、絶対紫様がからかっているに違いない。訊いて確かめればすむじゃあないかあ。
「いくらなんでも幽々子様をアユにはできないでしょう?」
「ふふ、驚く無かれ、「ゆ」と「あ」の境界をいじったのよ」
走り抜ける衝撃、驚異の事実、なんと西行寺アユ子だったのだ。
「ということで私も実は八雲あかりなのです。ってあれ?」
まさかお仕えする主人に刃を向けてしまうなんて‥‥‥。もはや死んで詫びるしかない。
楼観剣を抜き首にあてる。幽霊十人が殺傷できる刀だ。楽に死ねるだろう。
許されない事をしたのだ。この世とは、ここ冥界だけれど、お別れしなければならない。
覚悟はできているし、死んだあとも幽々子様には会えるだろう。寂しくなんて無い、寂しくなんて無いはずなのにふと涙がこぼれてきた。こうして全霊になればもうたやすく現世には降りれないだろう。つまり生きている彼女たちにはもう会えないのだ。なんだかんだで友達と呼んでもいいような関係がだったけれども、その存在は私の中で想像以上に大きかったようだ。
さようなら巫女に魔女、さようならメイドに兎、あななたちと過ごした時間は決して悪いものじゃあなかった。
瞳を閉じる。
刀を肌にあて‥‥‥。
おかしい、力を入れても肌に鉄のひやりとした感触がこない。
おそるおそる目を開けると紫様が目の前に立っていた。その手は楼観剣をにぎりしめ血が刃をつたっていた。そしてとても悲しそうな顔。
「紫様‥‥‥」
「馬鹿ね」
そういってぎゅっと抱きしめられた。とても温かい。自分でも気持ちが落ち着くのがわかった。
「詫びるならもっと方法があるでしょう。あなたは幽々子をかなしませたいの?」
「でも、私が刀を向けた事実は」
「そんなことあなたが原因じゃないでしょう。あなたにはそれが幽々子だとはわからなかっただけだし」
「主人と見極められないなんて従者失格です」
「誰もアユが主人だなんて気づかないわよ。もとは私が原因なわけなのだからあなたは自分を責めなくてもいいの」
「‥‥‥はい」
「よしよし、それでいいごふっ」
私は紫様を持っていた楼観剣でそのまま凪いだ。
「な、なにをするの妖夢」
「いえ原因はもとは紫様だったなあと思って」
私はすごい笑顔である。どこかの本の挿絵で笑顔は逆に恐怖を与えるとわかったので実践したのだ。
「幽々子様がアユなのも私が池に落ちたのも主人に刀を向けたのも最近ちょっと太ってしまったのも全て紫様のせいです。大丈夫、理解しました」
「いやいや最後のは違うわよ」
「心配しないでください。紫様が大人しくしてくれるなら三日で終わります」
「長い、長いわ妖夢!」
「ではまず指からいきましょう」
そう言ってじわじわと歩を進める。
「ままま、待って! 実はこのアユ、幽々子じゃないの! ほらゆゆこならゆが二つだからああこになるじゃない。だからこれは幽々子じゃないのわかった!?」
「ああ! 実は紫様が私にかけてくださった言葉も嘘だということになりますね。理由が増えました!」
そういって歩きから、小走り、全力疾走へと替え距離を詰める。
紫様もひっと声を漏らし、スキマで浮遊し距離を離そうとする。
こうして二百由旬の庭での鬼ごっこが始まった。
私だってわかっている。いくら私が凄もうと紫様は恐れなど微塵も感じないことくらい。わざわざ私にの悪ふざけにつきあってくださっているのだ。大方、仕事の息抜きにでもなればと思ったであろう。現に今紫様を追っている私はとてもいきいきできている。というか少し興奮気味だ。積もり積もった不満をこうして消してくれるんだなんて本当にすごい御方だ。眠ったりふざけたりする面ばかり見えるが本当は私たちのことをしっかりかんがえてくださっているのだ。
しかし部屋が汚れたのと池に落ちたことは消えないのでその分の制裁はしよう。それくらいはつきあってくれるだろう。
とりあえず幽々子様が変なものになっていないことを祈りつつ私は前方の紫様に楼観剣
を振り下ろした。
この雰囲気、僕は好きです。
なんかよくわからないけど面白かったです
よくわからないけど和みました
包丁以外にも何か入ってるのかな……