Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

夏と秋の境界

2009/09/06 14:34:35
最終更新
サイズ
5.08KB
ページ数
1

分類タグ


 「……いい加減、起きてよ」


 まだ残暑が厳しいこの季節。
 でも風は既に秋の気配を持って、肌を滑って行く。

 風を感じながら、空を見上げる。
 空が、高く、澄んでいた。
 もうそろそろ秋を司っている神が騒ぎ出す頃だろうか。

 (……面倒事は勘弁よ)

 そう、紅白の巫女は縁側に座ってぼんやりと考えながら、空から視線を落とした。
 自分の膝辺りに。












































   【 夏 と 秋 の 境 界 】



















































 「……いい加減、起きなさいよ」


 そして、同じ言葉を繰り返しながら、目を細めた。
 正座を崩した膝元に、金色の髪が散らばっていた。
 飴細工みたいな甘い輝きを放つ細い髪に、そっと触れる。


 「……起きろってば」


 ひっついているから、暑くて。
 触れている場所が、熱くて。

 霊夢は文句を言うように、「起きて」と繰り返す。
 柔らかな声音で、ゆったりとした口調で、静かに。
 まるで「まだ寝てて」と、祈るように。






 「……紫」



 指通りの良い髪を梳きながら、小さく名前を呼ぶ。
 縁側に並んで座っていたのに、風が心地良かったからか。
 この妖怪は眠くなってしまったようで、とろんとした深い紫紺の眼で膝枕をねだってきた。
 それを渋々了承して、もうどれくらい時間が経っただろうか。
 太陽は西に傾いてしまい、夜を呼び始めていた。

 影を落とす長い睫が、髪と同じ金色をしているとか。
 深い色をした瞳を瞼が隠すと、胡散臭さが軽減して酷く小奇麗に見えるとか。
 寝顔が、可愛いとか。

 そんなものを見ながら、いつも背中で揺れている柔らかな髪に、そっと触れて。


 そうしていたら、もうこんな時間。
 我ながら呆れてしまう。
 溜息をつきたい気分になるのに、不思議と口からそれは出なかった。



 「ゆかり……」


 ゆったりと呼ぶ。
 空が橙色で、東の方は藍色で。
 交わる場所は、この妖怪と同じ名前をした色。

 白い頬を、優しく撫でる。
 なるべく優しく。
 いつもコイツがしてくれるみたいに、優しく。

 コイツの体は、どこもかしこも手触りが良くて悔しくなる。
 もっと触れたくなるから。


 「ん……」


 小さく漏れる声。
 起こしてしまったかと思い、慎重に寝顔を見守る。
 唇はその一音だけ紡いで、あとは元通りの静かな寝息を立てた。



 「まだ……寝てて……」



 薄く開いた唇に、指先で触れる。
 ふにふにとした柔らかな感触が、何故だか切なくなって。
 親指の腹で輪郭をなぞるようにそっとそっと、触れた。





 「まだ……」


 ――――寝てて。






 上体を折り曲げる。
 垂直ではなく、同じ方向を向いての膝枕。
 逆さまの顔。
 桜色の唇に、そっとそっと、キスひとつ。

 甘ったる吐息が、自分の唇から漏れた。


 ゆっくりと唇を離しながら、霊夢は頬を染める。
 薄く開かれた深い深い紫色の瞳と、目があったから。

 「寝ててって、言ったのに」
 「イヤよ……勿体ないじゃない?」

 少しだけ寝ぼけているのか、目尻が幼く下がっている。
 そんな眼で悪戯っぽく微笑まれた。

 形の良い指が、霊夢の頬をなぜる。
 おいでおいでと、誘う。


 「……やだ」
 「照れ屋さんね」

 熱を持ってしまった頬を、楽しそうに触れる紫の指。
 それがくすぐったかったからやめさせる。指を甘く絡めるようにして。

 「もぅ。さっさと起きてよ。いい加減疲れたわ」

 照れ隠しにつっけんどんな言葉を紡ぐ。
 ほんとはそんなコト思ってやしないのに。

 互いの顔の距離は、未だに変わっていない。
 瞳の中に、相手しか映らない距離のまま。
 そんな距離で、紫が甘く笑んだ。



 「霊夢がもう一回してくれたら、起きてもいいけど?」



 しない。やだ。むり。できない。
 どの言葉でも良かったのに、どれも出てこない。
 できたのは、困ったように眉を寄せることくらい。

 仕方がないから、薄い瞼にごく短い時間、唇押しつけた。



 「場所が違うわ?」
 「うっさい……」


 恥ずかしくて小さくなる声に、紫がまた笑う。
 甘く、笑む。

 もう一方の手が霊夢の頬を包んだ。
 強くない、どちらかというと弱い力で引き寄せられた。




 「……だからまだ寝ててって……言ったのに……」


 拗ねた声音で紡ぐ言葉。
 言い終えたら、また唇を重ねられた。
 ちゅっと音を立てて、何度も。

 啄むようなキスは、切なくて甘い。
 柔らかな唇の感触が、触れている体温が愛おしくて。
 だから霊夢はいつの間にか、紫の頭を抱え込むように腕を回していた。



 夏が去って、秋が来る。
 秋が去れば、冬が来る。

 まだ遠い冬。でも、秋は短い。
 去っていく季節に手を伸ばしたって、届きはしない。
 留められやしない。

 冬が来たら、冬が来たら、春が恋しくて堪らなくなる。
 だって、こんな夏と秋の挟間でさえ、切なくて堪らない。


 霊夢は体勢を崩した。
 半ば覆い被さるようにして、紫の意外と薄い肩に腕を回す。


 「甘えん坊?」
 「……あんたほどじゃない」


 相変わらずの悪戯な笑みに、口を尖らせ返す。



 甘えてもいいでしょ。
 秋が終わったら……どうせ。



 きゅっと顰められる霊夢の眉。
 その皺の寄る眉間に、宥めるように紫が口付けた。


 「ふふ。かわいい」
 「黙っててよ……」




 ――――だからまだ寝ててって、言ったのに。



 もう一度、呟く。


 眠るのなら、手の届く場所で。
 寝顔を見てられる場所で。
 直ぐに口付けられる距離で。

 たとえばこの膝元だとか、腕の中だとか。
 そういう距離で。


 だから、まだ寝てて。
 もうちょっと、ここにいて。




 そう心の中で呟く、なんでもない日。


 そんな、夏と秋の境界な日。

























END
ゆかれいむが俺のロードぉおおおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!

* * * * *
■追記
実はこのお話は、とある方のお誕生日祝いとして捧げたものなのですが……。
なんとその方が素敵なイラストを描いて下さいました!!
【ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=6053909】

もうマジでおったまげたぉ!本当にありがとうございます!!(土下座)
それからたくさんのコメントもありがとうございます!
そうだよな!やっぱりゆかれいむはサイコーだよな!!Σd(´∀`*)
万屋和風愉菓子店
http://fuyukudu.web.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
素晴らしいゆかれいむでした
これからもゆかれいむに励みなさい
2.名前が無い程度の能力削除
塩辛をくれぇ……っ!!!甘すぎる!!
3.名前が無い程度の能力削除
これはいいなぁ……
こんな感じの二人大好きです
4.名前が無い程度の能力削除
ひゃっはあああああああああああああ!
くぁwせdrftgyふじこl

訳:これは とてもいい ゆかれいむ ですね
5.名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむ=我が幻想郷
6.名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむッ!
うおおおぉぉぉぉぉぉぉ、アブソリュート・ジャスティス!!
7.名前が無い程度の能力削除
砂糖の海に溺れて死ぬ・・・それもまたよし。
ゆかれいむいいよ~
8.名前が無い程度の能力削除
甘い…甘いのに悲しさが先に立つな。紫の冬眠設定はどうにも欝るぜ
9.削除
ハッハッハッ……やってくださる←悶え転がった後
いやいいゆかれいむごちそうさまっしたっ!
10.奇声を発する程度の能力削除
静かな甘さが堪らない!!!
11.名前が無い程度の能力削除
ちゅっちゅ…ちゅちゅ…
※驚きの甘さ!!
12.名前が無い程度の能力削除
あぁあああ・・・・・・これが、幻想郷か・・・・・・(ばたっ。
13.名前が無い程度の能力削除
主音声:フッヒーーーッッ!!フヒッフヒヒフヒフヒィィィーーーッ!!!!

副音声:甘いけど切ないゆかれいむでたまりませんね、ふぅ…
14.名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむぅうぅぅううううううう!!!!!!!!
甘くて蕩ける。
15.名前が無い程度の能力削除
あ、あとは任せたぞ・・・ゴファッ(吐糖
16.名前が無い程度の能力削除
嫌だ!この甘さと切なさに溺れたくなぁwせdrftgyふじこlp・・・・