Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

バンパいやーん、ばかーん。う、うっふーん。

2009/09/06 00:49:52
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1

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※タイトルに関しては正直スマンかった






 ズキュウウゥン! 

 あるいは、

 ぶっちゅううううううううう!


 
 そんな効果音が適切だろうか。曇天の散歩も良いかしらと、ふらりと紅魔館を離れたそこの主、
永遠に紅い幼き月『レミリア・スカーレット』。ところがどこへ行こうかと決める前に、いきなり
喧嘩を吹っかけられた。その相手こそ湖上の氷精『チルノ』である。

 お定まりの弾幕戦と相成ったわけだが、そもそもあまりに実力が開きすぎていた。氷の弾幕を
なんなくかわして、ちょいと悪ふざけが過ぎる氷精にお仕置きの”バンパイアキス”。レミリアの
唇は確かにチルノの唇を捉えて離さない。

 あまりにおてんばな氷精の元気をありったけ奪ってやろうと全身全霊込めての口づけである。
あまりに熱烈なそれは永遠に続くかのように思えたが、
「……ぅンっ……!」
少しばかりの水音たてて柔らかい唇と唇を離し、ぽうんと軽くチルノの身体を蹴り飛ばして着地。
けふっと可愛らしくげっぷをなさいますお嬢様。一方、地面に倒れたチルノは、いつもの元気は
どこへやら、ぼうっとした様子をみせている。

 精気を奪って大人しくなったか、と目論見がうまくいったと頷くレミリア。その視線の先で、
チルノがゆるりと身を起こす。その表情は普段のチルノからは思いもつかない、とても複雑なもの
だった。

 その目は泣く一歩手前のように潤み、しかし頬といい耳といい真っ赤になるほど染めている。
生意気ばかり出る口からは、今ひとつ不明瞭な呟き声。おや、とレミリアが耳をそばだてば、
聞こえてきたのは小さな小さな、チルノの声だった。

「あ……あた、……あたい、の、はじめてのちゅー……」

 ははん、とレミリアは得心した。どうやら今のがチルノにとってのファーストキスだったらしい。
湖の色より深い青く潤んだ瞳でレミリアに上目づかいのチルノ。様々な感情が心の中に渦巻いて
いるのだろうが、もはやそれをどうしていいのかわからないのだろう。可愛いところもあるな、と
レミリアは確かに思った。

「ふん、今のがあなたのファーストキスだったってワケね。まぁ悪くなかったわ。例えるならそうね、
氷に包まれたミントの葉のようね」

 ふふ、と妖艶に笑うレミリアを見て、びくりと肩を震わすチルノ。ただ、頬はさらに赤みを
増し、視線は地へと逃げて彷徨う。普通はファーストキスでこうまでなるものかと、レミリアは
己の過去を思い出す。

 レミリアのファーストキスの相手は、記憶が確かならば父親である。少なくとも物心ついた時には
ちゅっちゅされていた。とうに失われたそれを取り戻すことなど不可能と諦めて、レミリアは
呪われた己が運命に抗わずに生きていこうと決めていた。

 だが、その運命は妹の誕生によって大きく歪むことになる。可愛らしく美しい妹、その柔らかい
唇を守らなければいけない。守れるのは自分しかいない。そしてレミリアは父から守るために幼い
妹を地下へと閉じ込め、父を打倒し紅魔館の主となったわけである。こうして妹、『フランドール・
スカーレット』の唇は守られ、レミリアが存分にちゅっちゅしたという。そのような過去を持つ
レミリアにとって、多少ファーストキスの観念が狂っていても責められるものではなかろう。多分。
えーとまぁ、そういうことにしとけ。

 思えば私も若かったものだ、と幼女然としつつも500の齢を重ねた吸血鬼は思い、目の前の純潔を
失った妖精をもう一度見やる。どぎまぎと逡巡して、レミリアを直視できないのか、しかしチルノは
何か言いたげである。このままでは埒が開かないと、レミリアは促しの言葉。

「どうしたのかしら? 何か言いたいんでしょう?」

「あ……う……。れ、れみ、りあ……」

「なぁに?」

 殊更優しく声をかける。その声にほだされて紡がれたチルノの言葉は。

「あの、ね。ちゅー、も、もっかいちゅー、して……」

 どうやら初めてのキスに心まで溶かされたよう。可愛らしい氷精のもとへレミリアは歩み寄り、
その顎を指でくい、と押し上げた。一瞬、その小さな身体をびくんと跳ねさせて驚いたチルノで
あったが、レミリアの腕を払いのけるようなことはしなかった。むしろ、レミリアの真紅の瞳を
覗き込むチルノの青い瞳はその奥に期待を滲ませている。にこりと微笑むレミリア。チルノの瞳が
閉じられ、薄い唇がちょっとだけ突き出された。

 その瞬間!

「キィ―――――ッ!! ちちち、チルノちゃんのファーストキス!! ふぁ、ファーストキスは私が
奪う予定だったのにィ―――――ッッッ!!」

 トンチキな叫びと共に茂みから突如現れナイフを振りかざして、レミリアの背後から襲い来る
『大妖精』。レミリアは振り返りざま矢よりも速い動きでナイフを跳ね飛ばす。呆然とする大妖精の
腕をレミリアが握り締めた。

「あぁもう、お前も元気すぎるクチか」

 そう呟くや否や、大妖精をしっかと抱きしめ、可憐な唇めがけて”バンパイアキス”。
ズキュウウゥン! あるいは、ぶっちゅううううううううう!

「ふむ。妖精といえどもどれも同じというわけではないのね。さながらあなたの唇はシトラス、レモン。
安心しなさい、悪くはないものよ」

 そんなキス評価をするレミリアの側、事が済んで大妖精の顔もチルノと同じく恋する少女の
ものと成り果てた。もじもじするふたりの妖精を交互に見て、レミリアが言う。

「こんな野原ではまたいい加減五月蝿い連中が来てしまうかもね、ブン屋とか。さ、続きがしたい
なら私の館まで来なさい。別に嫌ならこのままあなたたちを放って私は帰るけど?」

 少し意地悪込めた言葉にふたりの妖精は慌てて首を横に振り、両側からぎゅうっとレミリアを
抱きしめた。やれやれ、カリスマと言うのもなかなか罪作りね、などと思いながらレミリアは
お供を連れて館へと戻った。












「咲夜ー。帰ったよー」

「お早いお帰りで……」

 紅魔館の玄関につくや自らの最も忠実な従者、メイド長『十六夜 咲夜』の名を呼ぶレミリア。
時を操る咲夜であるからどこにいようと一瞬で馳せ参じる。馳せ参じたはいいが微妙に咲夜の
表情が、今日の空のように薄曇へと変化した。

 散歩をしてくると言ってすぐに引き返したと思ったら、脇にふたりぶん何か妙なおまけが
ついている。そのおまけどもといえば妙に乙女な雰囲気で、レミリアにしっかりと抱きついて
いるのだ。

「ほい、おみやげ」

「またですかお嬢様」

「またとはずいぶんな言い草ね。お前が普段から働き手が足りないなどと言ってるから、主自ら
妖精を確保してやってるのに」

「……お戯れのついでに、でしょう? まぁ、確かにそのふたりは他の妖精よりはよほど優秀
だとは思いますが」

 レミリアが脇のふたりに前に出るよう促す。しかしチルノも大妖精も咲夜を警戒してレミリアの
服をぎゅっと握り締めたまま。やれやれ、と肩をすくめつつ、諭すようにレミリアは言う。

「怯えることはない。こいつも私の部下よ。あなたたちふたりはしばらく咲夜の下で仕事をしなさい」

「え……」

「れみりあ……」

 明らかに不安そうな、そしてここに来ればすぐさまキスの宴が始まると思っていただろうから、
不満も滲ませてレミリアを見上げる二人の妖精。想われびとの紅の吸血鬼は妖精たちの頭を
優しく撫でた。

「そんな顔をしないで。あなたたちふたりが頑張れば、キスなんていくらでもしてやるわ。
それどころか、もっと凄いことも……あるかもしれないわね? 頑張れる? 私に忠誠を誓える?」

「もっとすごいこと……!? れ、れみりあ、あたいがんばる!!」

「わ、私も! い、一生をあなたに捧げますぅ!」

 もっと凄いこととは吸血鬼ならぬ身、想像すら出来ないが、きっと凄いことに違いない。妖精
ふたりもそう思ったのだろう、ぱぁっと顔を輝かせてレミリアに誓いを立てる。

「そう。ならばいいわ。さぁ、そうとなったら咲夜の言うことを聞きなさい。多少仏頂面で冷酷で
容赦なく見えるけど、これでそこそこいいところもちょっとはあるから心配しないで」

「うん! よろしく、さくや!」

「はい! よろしくお願いします、咲夜さん」

「あ、え、えぇ、はい。よ、よろしくね。チルノに……確かあなたは”ダイチャン”でしたっけ」

 こっそりレミリアにボロッカスに言われて傷心の咲夜ではあったが、さすが完全で瀟洒な従者は
気を持ち直すのも早い。新しい紅魔館の住人となった二人にひとまず館を案内させるため、
ある程度信頼の置ける副メイド長的な妖精を呼び、チルノと大妖精を預けた。

「さて、余った時間をどうしようかねぇ……。……ん? 咲夜、どうした?」

 名残惜しげに去っていく二人の妖精に目をやってのち、ひとつ伸びをして、これからの時の
潰し方を考えようとした矢先、目に入ったのはどこか不満顔なメイド長。というか頬を
ぷっぷくぷぅと膨らましていれば嫌でも気付く。

「酷いです、お嬢様」

「何がよ?」

 いまいち要領の得ない言葉が飛んできた。

「いつもいつも妖精ばかりにカリスマをお見せつけになりあそばれて、咲夜の”お嬢様のカリスマ
入れ袋”はとっくにすっからかんですわ」

「は? ……あぁ。ふふ」

 妙な隠喩を使われたがそれも咲夜らしいとレミリアは笑う。要はもっと自分に構ってくれと
いう事だ。確かに最近色々なことに追われたり追われなかったりしてあまり構ってやってないのは
確かに事実だった。この有能なメイドに思いっきりへそを曲げられてはかなわないな、と
レミリアは思い至った。

「そうか。それはすまないことをしたな」

「え……えぇ、そうです。ホントに酷い方です、お嬢様は」

 謝罪の言葉らしきものが投げかけられるとは思わなかったのだろう。一瞬逡巡したがすぐに
いつもの、レミリア曰く仏頂面を装う咲夜。

「うん、本当にすまないね。じゃあ咲夜、どうしたらいい? 妖精と同じように扱って欲しいの?」

 にやにやと笑いながら、とてもすまないと思っている雰囲気ではなさそうなレミリアだが咲夜の
機嫌を直してやるつもりはあるらしい。妖精のように扱う、とはつまり。

「はい! 今すぐ! お嬢様のカリスマ的行為で!! 私を満たしてください!!」

 そう叫ぶや否や、咲夜は誰かを抱き招くように腕を前に突き出し、瞳を閉じ、唇を前に突き出した。
キスミープリーズ、情熱のベーゼよカモン! といった有様だ。そんな様子を見てやれやれ、と
小さく溜息をつきつつ、しかし微笑むレミリア。忠実な従者を労ってやるのも主の務めだ。

「行くわよ!」

「はい!」



 ゴガン! ゴガァンッ!



「あ、ごめん。デーモンロードウォーク暴発しちゃった」

 しかもC版である。ぴょこたんぴょこたんと二回跳ねれば闘牛祭りの哀れな村人よろしく撥ね
飛ばされた咲夜の細い体。地面に激突し鼻腔だけでなく耳とかからも面白い量の血を噴出しつつ
地面に倒れ伏す。しかしその顔は、”我が生涯に一片の悔い無し!!”とばかりに、満面の笑みで
あった。十六夜咲夜、レミリアになんかされるなら何でもいいのか。その通り、なんでもいい、そう
言い切れるほど、彼女は忠誠心の塊であった。

「もう少し技の精度を上げないといけないわねぇ」

 レミリアはそう呟いて、素晴らしい笑顔のまま失神した咲夜をパチュリーに診せるため紅魔館の
奥へと消えていった。
 236+BかC、ではなく623+BかCです。練習しましょうね、お嬢様。

 白でした。

 それにしてもあれです。
 ”バンパイアキス”をチルノに決めた時になんだかいけない気持ちになる人は挙手。

 (´・ω・`)ノ

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コメント



1.ちゃんぷるー削除
確かには背徳感あるなぁと思いつつ、へたれレミリア使いが挙手してみます。
2.名前が無い程度の能力削除
ロードウォーク暴発wwwwあるあるwwww
3.名前が無い程度の能力削除
初代ストⅡの頃から昇竜拳コマンドが鬼門だった俺参上。
バンパイアキス?まだ持ってねーやwww
4.名前が無い程度の能力削除
バンパイアキスはきちんと座標あわせて欲しかったな
諏訪子とかカスリもしねーじゃんw
5.謳魚削除
そんなけしからん神技(しんぎ)だったんですね。お嬢様の熱いベーゼ。

まぁあれですよ、私は一人で妖精二人がお嬢様に下剋上して組み敷く様を妄想しますよ。

だってチルレミと大レミのが好きなんだもん!(いっぺん死んで来やがれ)
6.削除
ロードウォーク暴発で吹いたww もちろんノ
7.名前が無い程度の能力削除
最近の傾向だと魔理沙とかもこうなりそうな……
いい…実にいい…
それはそうと挙手ノ
8.名前が無い程度の能力削除
バンパイアキスの全シーンを集めた動画があってだな。
神だと思ったよ。
もちろん、この作品もまた背徳のかおり漂うまさに、おぜうの魅力に溢れた作品でありもうした。
9.名前が無い程度の能力削除
吸血鬼のキスだと本当にこれくらいの効果がありそうで怖い。
10.名前が無い程度の能力削除
キスはみょんうどんいくさんあたりにやると非常にそこまでよ!な絵になる。
これもおぜうさまのカリスマのなせる技ですね
11.名前が無い程度の能力削除
最後のは自分もよくやるもんで吹いたw
しかしキスといえば、ゆかりんに打った時の受け止め方が完璧すぎる。レミゆか、あり・・・なのか?
12.sdsd削除
 長いこと創想話を見てきましたが、これほど破壊力の高いタイトルは他にありませんねw