Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

冬の温もり

2009/09/05 23:20:38
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幻想郷の冬は厳しい。

死の季節であり、春の準備期間である冬は、

その凍てつく風でいくつもの命を奪う。

そんな厳しい季節の中で、

古道具屋『香霖堂』の店主、森近霖之助は

睡魔に襲われようとしていた。

外が吹雪いていようとも、

香霖堂の中にはストーブがあるので、

夏はともかく、冬の対策は万全なのである。

「む…いかん。そろそろ寝るとするか」

体を起こし、室内の電気を消そうとしたその刹那。

―ドン

ドアのほうで1回ぶつかったような音がした。

「魔理沙か…?」

いくら頻繁に来る彼女でも、

さすがにこの吹雪の中では来ることはあるまい。

とは言え、確認はしないといけない。

「誰かいるのかい?」

呼んでも返事はない。

物か何かが飛んできたのだろうか。

霖之助は、寒さを覚悟しドアを開けた。

途端に、目の前を覆う白銀の嵐。

そして…きれいな金色の髪の少女―ルーミアが倒れていた。

「お、おい。大丈夫かい?」

呼んでもやはり返事はない。

怪我も無いので、飛んでいた時に何かの拍子で気絶したのだろう。

「とりあえず、部屋に運ばないとな…」

冷たくなってる彼女の体を抱き、

霖之助は奥の部屋へと連れて行った。





しばらくの時が経ち、

「ん、む…?」

彼女が目を覚ました。

「あ…れ?ここどこ?私は確か…」

彼女がさっきまで着ていた服は無く、裸であった。

「やあ、起きたかい?服は乾かしてるからね」

彼女が起きたと同時に、

部屋に霖之助が入ってきた。

「誰?食べれる人間?」

「助けたのに食べられるとは滑稽だね。僕は食べられないよ、人間でもない」

人を見ると、真っ先に食料と行き着くのは彼女の生態が故か。

「そーなのかー。じゃああなただれー?」

「ここ、香霖堂の店主をやってる森近霖之助という者だよ」

店というのは名だけで、ほとんど商売になってないのは言うまでもない。

「森近…なに?」

「霖之助だよ。好きに呼ぶといい」

「そーなのかー。じゃありんのゴホッゴホッすけゴホッ」

どうやら風邪をひいてしまったらしい。

人間には人間の、妖怪には妖怪の病気がある。

もちろん、霖之助のような半妖の病気だって存在する。

「風邪をひいたようだね。今日はゆっくり休むといい」

霖之助はいつ持ってきたのか、水桶と小さい布を持ってきた。

布を水に浸し、絞ると彼女の額に乗せた。

「すぐ良くなるといいね」

そういうと、彼女の髪をそっと撫でた。

「んっ…」

「じゃあ僕はこれで失礼するよ。おやすみ」

霖之助が立ち去ろうとすると、

撫でられた手が惜しいのか、

「霖之助もここにいて…」

と、彼の裾をつかんでいた。

風邪をひくと、人一倍人恋しくなると言うが、

それは妖怪でも変わりないようである。

「仕方ないね。そばにいるから休むといい」

霖之助は彼女の髪を再び撫で始めた。

それが心地良いのか、彼女は目を細め

安らかな顔をして眠りについた。

彼女が寝静まって、霖之助が1人。

「こうしていると、懐かしいな」

魔理沙が小さい頃、いつもこうして撫でていたものだ。

今はもう大きくなり、そういうことも少なくなったが。

「さて、僕もそろそろ…ん?」

自分の布団は彼女が使ってるので、そこらで雑魚寝しようとするが、

立ち上がろうとすると、何かに引っ張られた。

「そんなに僕を信用できないのかな」

霖之助の裾を彼女は未だにギュッと握っていた。

仕方がないので、霖之助は彼女の隣で眠ることにした。





「ふみゅ…?」

ルーミアは見慣れない天井を数秒見続けて、

自分が昨日風邪をひき、ここに泊まったことを思い出した。

辺りを見回しても、自分一人。

暇だったので、歩き回ろうと思ったら

力が入らず、倒れてしまった。

「やあ、起きたね。あまり動かないほうがいい。お粥は食べれるかい?」

後ろから、お盆を持った霖之助がこちらへ寄って来ていた。

「そーなのかー」

独特の伸びのある返事で返した。

「自分で食べれるね」

「力、入んない」

人間と妖怪では風邪の被害もまた違うのだろうか。

「はぁ…。仕方ないね…」

溜息をつきながら霖之助は、蓮華を1回掬い、

十分に熱を冷ましてから、彼女の口へと運んだ。

「あふっ、あふっ」

「まだ熱かったかな」

今度は更に冷ましてから、口へと運んだ。

「おいひい」

「それはよかった」

交わされる言葉は少ないが、

霖之助はこんな日も、偶には悪くないと思った。





吹雪もだいぶ収まってきたので、

「じゃあ、僕は少し出かけてくるからね」

彼女の病気を治すため、霖之助は永淋の所へ向かうことにした。

「私も行く」

「君は寝てないといけないよ。悪化したら大変だからね」

「一人は嫌…」

人(?)の温かさを知ってしまったからか、孤独になるのが怖かった。

すると、霖之助は彼女の頭を撫でながら、

「大丈夫だ、すぐに帰ってくる。それまで待てるね?」

「うん。すぐだよ?寄り道しちゃやだよ?」

妖怪の風邪というのは性格まで変わるらしい。

「もちろんだ。じゃあ言ってくるよ」

そう言うと霖之助は外へと出て行った。





「霖之助ー…早くー…」

まだ彼が出て10分と経っていない。

それなのに、彼女の心は寂しさで溢れていた。

今日に限って霊夢も魔理沙も来ない。

彼女らが来ないほうが、ルーミアの為でもあるのだが…。

「霖之助ー霖之助ー」

彼女の悲痛な言葉が香霖堂に響いていた。




「すまない。遅くなったね」

遅くなったとは言ってもそれほど時間は経っていない。

声をかけるが、返事はない。

「寝てるのか」

彼女の隣に座り、髪を撫でようとした途端、

「霖之助…?霖之助なの?」

「ああ、正真正銘霖之助本人さ」

すると彼女は、

「ヒック、さびしヒックかっヒックたよー…」

あまりの寂しさのためか涙を流していた。

「あまり時間はかけてないのだが…すまないね」

霖之助は頭や髪を撫でながら謝った。

「ひぐ、ふぐ、ふえぇぇぇぇぇえぇぇん」

霖之助の腕を顔につけ彼女はしばらくの間泣き続けた。




嗚咽も収まった頃、

「早速君の病気のことなんだが…どうやら慢性体疾患らしい」

これは現代の医学で言うインフルエンザのようなものだ。

「治るの…?」

心配そうな目で見てくるルーミア

最早ここまで来ると別人である。

「大丈夫だ。1週間程ここに泊まることになるが、構わないね?」

魔理沙のように騒がしいわけでもないので、

泊めることは、そこまで苦ではなかった。

「うん。ごめんね」

「気にしなくていい。それより早く元気になってくれるといいね」

霖之助は彼女の髪をいつまでも、優しく撫で続けた。

はてさて、これからの同棲生活がどんなものになるのやら…。
すいません。勝手に病気作ってしまいました。

多分存在しない…ハズ。

後、私は霖之助が好きです。

異論は認めません。

私が書く小説の8割は霖之助成分です。

ご了承ください。
白黒林檎
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
思わず同棲の意味を辞書で引いてみた。
間違ってないがなんか違うwww
どっちかっていうと子供のお泊まりかな。
2.名前が無い程度の能力削除
どうしてこう霖之助は保護者ポジがしっくりくるんでしょうか。
実に微笑ましいです
3.名前が無い程度の能力削除
日陰で過ごす専門家と宵闇の妖怪の同棲生活とな。
少し甘えん坊なのも病気なら仕方がない。