美鈴が帰ってこない
侵入されること自体はお嬢様も悪く思わないようだが、
門番がいつまでもいないままというのはどうも気にかかる
(大丈夫かしら? 死んでるって事は無いだろうけど・・・)
それに気分もあまりよくない
なんだか不吉な気配が付きまとっている
(もういっそのことあんな奴殺してしまえば・・・)
心にも無いことを思ってしまった
なんなの? 一体・・・
(コロセ・・・やめて・・・今の私なら門番など必要ない・・・何を考えて・・・)
「咲夜」
(もはや主の下につく必要も無い。レミリアも殺せ・・・!?)
「咲夜?」
「やめてっ!」
「ひょっ!?」
つい叫んでしまった
おかしい、絶対におかしい・・・
「咲夜、大丈夫? 顔色が優れないわよ?」
「大丈夫です・・・パチュリー様。それより何の御用で?」
「びっくりして忘れちゃったわ。まぁ大した用事じゃないのは確かね」
「そうですか・・・」
「ほんとに大丈夫? 少し休んだら?」
「そうします・・・すみません・・・」
咲夜は怖くなった
いつか自分が自分ではなくなってしまうような気がした
***雪の楽園(仮)***
「ハァ・・・はぁ・・・くっ!」
「近づいてみなさい。情報がほしいんでしょ?」
迂闊だった
今まで勝てていたのは偶然に近かった
今回はそうは行かない
今度の相手、レティ・ホワイトロックはある程度の距離があっても一瞬で近づいてきて、
つかみ技をかけてくる
しかも前転行動中は攻撃があたらない
どうすれば・・・!
こうなったのはレティが重要な情報を持っているからだった
彼女はこの異変の黒幕を知っている
それが誰か知りたければ勝って見せろ、ということだ
それからというもの、一定の距離をキープしたままにらみ合いが続いている
「来ないならこちらから・・・」
「ソニックブーム!」
追尾性のある気のブーメランを飛ばして牽制する
近づけない!
このままではらちがあかない
何とかして隙を作らせなければ勝ち目は無い・・・!
「がんばれー! まけるな! レティ!」
少しはなれたところから叫び声がした
この声は・・・チルノ?
「ッ! チルノ! 隠れてなさいって言ったでしょ!」
隙ができた! 今しかない!
半ば捨て身の速さで敵に突っ込んで行く
走りながら両手を振り上げ、相手の目の前で地面に突き刺す
「レイジングブロウ!!」
「なっ・・・!」
牙の形をした気の流れが相手を空へたたき上げる
カス当たりだったレティは空中で体勢を立て直そうとする
まだだ!
渾身の力で地面を蹴り、飛びながら目で照準を合わせる
右足に気の流れを集中し、会心の一撃を放つ
「南斗獄屠拳!!!」
ほとんどヤケで放った一撃は見事に命中した
これで・・・私の勝ちです!
心の中で叫んだ
二人同時に地面に落ちた
美鈴も力を使い果たし、受身を取れずに倒れてしまった
何とか立てる・・・
「ふぅ・・・完敗ね。さすが、紅魔館の門番を任されるだけあるわ」
「約束です。この異変の黒幕を教えてください」
「そうね、でもその前に・・・」
二人の会話を絶つようにチルノが駆け込んできて両手を広げ、こちらを威嚇した
「これいじょうレティをいじめるな!」
「いじめるなんて・・・」
「うそだ! あたいがかてないやつにやさしいやつなんているわけがない!」
「そんな滅茶苦茶な・・・」
だがチルノは本気だ
今にも泣き出しそうである
「チルノ、その人はそんな人じゃないわ」
「なんで? レティをこんなにしたんだよ!?」
「あなた、私を突き上げるとき、わざと外したでしょ」
「・・・・・・」
その通りだ
レイジングブロウはその見た目どおり、
直撃させれば軽く命を奪える
・・・それが妖怪であっても
情報を聞きだすためでもあったが、不必要に傷ついてほしくも無かった
「でも・・・でも・・・!」
「わかりました。レティさん、今度の冬に紅魔館へ来てください
その時に話しましょう」
彼女はうなずいた
一刻も早く知りたいところだったが、
こんなにも必死になっている小さな子を無視することはできなかった
「氷精の子、そのやさしさを大事にしてくださいね」
美鈴は紅魔館へ向かった
そしてなんとなく、不吉な予感がしていた
つづく
これがどう転ぶか…
ラスボスは咲夜さんなんでしょうかねー、次回にも期待!