この話は、作品集48、『幽香、どSからの卒業 』の続きになっております。
夏の猛暑も過ぎ去り、自慢の向日葵たちもすっかり力を失ってしまった。
どうやらこの太陽の畑と、暫しの別れをする時期が来てしまったようだ。
別れは寂しかったが、また来年会えると踏ん切りをつけて、次の居へと移ることにする。
そう、彼女は風見幽香。言わずと知れた、四季のフラワーマスターである。
彼女は、四季の変わり目には必ず、居を移す事にしているのだ。
彼女が今向かっている先は、魔法の森。
湿気が酷く、人も妖怪すらも余り立ち寄らないそんな場所にも、彼女の別荘はある。
小さいながらも綺麗な湖があり、そこでしか見れない珍しい植物もほっそりと生えている。
幽香にとって、これ以上ない程の素敵な立地条件であった。
魔法の森の上空に差し掛かり中ほどまで進むと、幽香は目的地の上空へと辿り着いた。
ふと、彼女の顔から笑みがこぼれた。
幽香はまずゆっくりと下降した。
そして気配は消すのではなく、わざと相手に気付かせるように優雅に──
そう、別荘には先客が居たのだ。
「あっ、幽香さん! 今年もまた、来てくれたんですね!」
「くすっ。可笑しな事を言う子ね……此処は私の別荘よ? 来客は寧ろ貴女の方でしょ──リグル。」
「し、失礼しました……!!」
照れ隠しに笑うリグルにつられるように、幽香もクスクスと笑った。
「でも……そうね、此処でまた暮らせるのは貴女のお蔭ね、リグル。留守の間、貴女に管理を任せて正解だったわ。ありがとう。」
「そっ、そんな滅相も無いですっ……! 幽香さんのお役に立てるならこれくらい──」
「リグル。前にも言ったと思うけど、そんなに硬くなる事はないわ。それにもっと胸を張りなさい、貴女は何れこの私のはん──コホン。」
「幽香さん?」
何かを言いかけ、不自然に頬を赤らめそっぽを向いてしまった幽香に対し、リグルは不思議そうに首を傾げた。
「と、とにかく……今日から冬を迎えるまで、寝起きを共にするのだから他人行儀は──きゃ……!?」
「幽香さん!」
幽香が自分に向かって歩いてきたと思ったら、次の瞬間には彼女が目の前に居た──リグルにはそう映った。
きっとこの時の幽香は大分気が緩んでいたのだろう。
心許せる空間と、心許せる相手に会えて。
だから普段やら無いようなミスをしてしまったのだ。そう、具代的には石ころに躓き、女の子らしい悲鳴を上げるなど、だ。
リグルが庇う様に幽香を抱き止め、溶け合うように視線を絡ませる二人……。
「リグル……背、少し伸びたかしら……?」
体を支えられながらも、そっとリグルの前髪を払う幽香。
前かがみになっている性で、自然と見上げてしまう形になってしまったのだ。
「そっそれは……その、たぶん……ちょっとくらいは……。」
しどろもどろになって答えるリグルの顔は真っ赤だった。
そんな彼女を見て、漸く自分の置かれた状況の異常さに気付いた幽香は、飛び退くようにリグルから離れた。
「コホンっ。と、兎に角こんなところで立ち話もなんだから、中に入りましょう。」
「は、はい!」
こうして三人の同居生活が幕を開けた。
つづく……
夏の猛暑も過ぎ去り、自慢の向日葵たちもすっかり力を失ってしまった。
どうやらこの太陽の畑と、暫しの別れをする時期が来てしまったようだ。
別れは寂しかったが、また来年会えると踏ん切りをつけて、次の居へと移ることにする。
そう、彼女は風見幽香。言わずと知れた、四季のフラワーマスターである。
彼女は、四季の変わり目には必ず、居を移す事にしているのだ。
彼女が今向かっている先は、魔法の森。
湿気が酷く、人も妖怪すらも余り立ち寄らないそんな場所にも、彼女の別荘はある。
小さいながらも綺麗な湖があり、そこでしか見れない珍しい植物もほっそりと生えている。
幽香にとって、これ以上ない程の素敵な立地条件であった。
魔法の森の上空に差し掛かり中ほどまで進むと、幽香は目的地の上空へと辿り着いた。
ふと、彼女の顔から笑みがこぼれた。
幽香はまずゆっくりと下降した。
そして気配は消すのではなく、わざと相手に気付かせるように優雅に──
そう、別荘には先客が居たのだ。
「あっ、幽香さん! 今年もまた、来てくれたんですね!」
「くすっ。可笑しな事を言う子ね……此処は私の別荘よ? 来客は寧ろ貴女の方でしょ──リグル。」
「し、失礼しました……!!」
照れ隠しに笑うリグルにつられるように、幽香もクスクスと笑った。
「でも……そうね、此処でまた暮らせるのは貴女のお蔭ね、リグル。留守の間、貴女に管理を任せて正解だったわ。ありがとう。」
「そっ、そんな滅相も無いですっ……! 幽香さんのお役に立てるならこれくらい──」
「リグル。前にも言ったと思うけど、そんなに硬くなる事はないわ。それにもっと胸を張りなさい、貴女は何れこの私のはん──コホン。」
「幽香さん?」
何かを言いかけ、不自然に頬を赤らめそっぽを向いてしまった幽香に対し、リグルは不思議そうに首を傾げた。
「と、とにかく……今日から冬を迎えるまで、寝起きを共にするのだから他人行儀は──きゃ……!?」
「幽香さん!」
幽香が自分に向かって歩いてきたと思ったら、次の瞬間には彼女が目の前に居た──リグルにはそう映った。
きっとこの時の幽香は大分気が緩んでいたのだろう。
心許せる空間と、心許せる相手に会えて。
だから普段やら無いようなミスをしてしまったのだ。そう、具代的には石ころに躓き、女の子らしい悲鳴を上げるなど、だ。
リグルが庇う様に幽香を抱き止め、溶け合うように視線を絡ませる二人……。
「リグル……背、少し伸びたかしら……?」
体を支えられながらも、そっとリグルの前髪を払う幽香。
前かがみになっている性で、自然と見上げてしまう形になってしまったのだ。
「そっそれは……その、たぶん……ちょっとくらいは……。」
しどろもどろになって答えるリグルの顔は真っ赤だった。
そんな彼女を見て、漸く自分の置かれた状況の異常さに気付いた幽香は、飛び退くようにリグルから離れた。
「コホンっ。と、兎に角こんなところで立ち話もなんだから、中に入りましょう。」
「は、はい!」
こうして三人の同居生活が幕を開けた。
つづく……
幽リグごちそうさまでした~
幽リグおいしいです