兎鍋~ 兎鍋~♪
柔らかお肉をぐつぐつ煮込み あら丸焼きもおいしいわ♪
焼き鳥片手にお酒を飲んで ほくほくお芋は甘くてうまい!
お魚あれども秋刀魚はないの?
あら鳥肉が残ってる では一緒に焼いていただきます♪
お魚火加減見ているうちに 鳥肉焼きすぎちょっぴりこげた♪
丸飲みするのはもったいない カリカリしていてこれも美味!
お口直しに葡萄をひと房 桃もお一つ頂戴な♪
今日もいっぱい食べたけど まだまだおなかはぐぅぐぅぐぅ♪
じゃ、2番いきまーす!
自らが作詞作曲した歌をマイク片手にノリノリで歌う幽々子。博麗神社に響くその美声と歌に合わせて舞う姿は神々しくさえ・・・・
「幽々子様、すとっぷ」
「え~なんでよぅ。せっかくノッてたのに」
「皆が怯えてます」
そう言って妖夢が指差した先。そこではてゐ、優曇華、ミスティア、静葉、衣玖、空、穣子、天子の8人が円陣を組み、肩を抱き合って泣いていた。哀れな食材たちは成す術なくガクガクブルブルと震え、捕食者を怯えた眼で見つめている。
そんな様子を、周囲の参加者はまた幽々子がからかって遊んでいると愉快に酒を飲んでいるのだが、当事者8人にそんな余裕はない。
「鍋、鍋・・・・・・」
「く、食われるぅ!」
「あらあら、どうしたのかしら?うふふ、大丈夫よ~」
そんな8人を見て、幽々子は口元は手で覆い隠したままわざとらしく小首を傾けて見せる。
そして美貌の捕食者はにこやかに、
「煮込む?まして焼くだなんて邪道邪道」
「生!?」
「当然よぉ」
弾んだ声で、幽々子。ほんの数瞬だけ獲物を狙う鷹のような瞳をして。
その圧力に耐え切れなくなったミスティアは泡を吹いて倒れ、てゐは放心している。残る6人もこの宴会場から逃げ出すべきか、観念して身を差し出すべきかの2択を迫られていた。
それを尻目に美しき亡霊姫は再びマイクを掲げ、
「さぁルーミアちゃんもご一緒に」
「うん!」
ヂュエット相手に声をかけ、BGMに合わせて美声を乗せる。
兎肉~ 兎肉~♪
柔らかお肉にしゃぶりつき あら丸かじりもおいしいわ♪
小骨を片手にお酒を飲んで ふかふかお芋は甘くてうまい!
お魚あれどもつまみはないの?
あら鳥肉が残ってる では両手にとっていただきます♪
お魚ちびちび食べてるうちに 茹でた鳥肉ちょっぴり赤い♪
丸飲みするのはもったいない ふにふにしていてこれも美味!
食後の甘味に葡萄をひと粒 白桃お一つ頂戴な♪
今日もいっぱい食べたけど まだまだおなかはぐぅぐぅぐぅ♪
3番いきまーす!
美声であるがゆえに一層性質が悪くなっているその歌を、またしても妖夢が止めに入った。
「幽々子様、幽々子様」
「なぁに妖夢?」
「あちらを」
妖夢が指差した先には当然あの8人が。
1番でノックダウンした2人は言わずもがな。秋姉妹は気絶中、うどんげは夜空を見上げて師匠に別れの言葉を紡ぎ、空は涙目になってさとりにすがりつき、天子と衣玖は抱き合ってこれまた泣いていた。そんな様子も、酒の入っている宴会出席者の面々は手を叩き、やんやと幽々子を煽っていたりして。
それを見た幽々子もさすがに行き過ぎたかなと、
「ではご希望にお答えして3番、いきま~す!」
そんなことを思うこともなく笑顔でぶんぶんと手を振り、場を盛り上げながらプリズム3姉妹にBGMをよこすよう催促した。ほどなくイントロが流れ、幽々子とルーミアは3番を歌いだす。
そうして3番を歌い終わった頃には8人は全滅し、全員が気絶という名の睡眠方法で夢の世界に旅立っていて。
ほかの参加者も酔いつぶれるなりしていて、今日の宴会もお開きのようだ。
「あらあらお酒が回っちゃったのかしら、仕様のない子達ねぇ。妖夢~」
「何でしょうか」
「うちに連れて帰って休ませてあげましょう」
そう笑顔で言い放つ。
じゅるりと音がしたのは、たぶん気のせい。そう妖夢は信じて8人を運ぶ作業に入った。
…まあどちらにしてもやばいですかねw