本日は晴天なり。
縁側でくつろぐ私の隣には、いつものように魔理沙がいる。
来ない日の方が少ないくらいの頻度で、魔理沙は私に会いに来る。
私としても、お茶一杯で暇を潰せる相手が毎日のように来てくれるのは、とてもありがたい。
……しかし。
何だろうな。
この違和感。
「それでさ、アリスが……」
いつものように他愛もない話をしている魔理沙を見ていると感じる、この違和感。
うーん。
「……っておい。聞いてるのか? 霊夢」
「え、ああ……」
そこで改めて魔理沙の顔を見て、
「あ」
ようやく気付いた。
さっきから感じていた、この違和感の原因に。
「ん?……どうした、私の顔に何か付いてるか?」
「ううん逆。付いてないのよ」
「へ?」
「……三つ編み」
「えっ」
魔理沙は咄嗟に、自分の左側の横髪をさわる。
そこにいつもあるはずの三つ編みが、今日は無かった。
「あっ……」
瞬間、かああと魔理沙の顔が赤くなった。
「珍しいわね。あんたが三つ編みするの忘れるなんて」
「あ、あ、ああああ」
魔理沙は急にわたわたとし始めた。
手を顔に当てたり視線をさまよわせたりと、非常に落ち着きが無い。
一体何を、そんなに動揺する必要があるというのか。
「や。別にそんなに慌てなくても……」
「れ、れいむ!」
私の言葉を遮るように、魔理沙は叫んだ。
「な、何?」
「ちょっ、ちょっといったん家に帰る!」
「へっ?」
魔理沙はそう言うや否や、呆気に取られる私を尻目に、箒に飛び乗り、瞬く間に視界から消えた。
「……いったい、なんだっていうのよ」
私の呟きに、答えを返してくれる者はなく。
まあ、なんとなく予想はつくけど。
長年の経験で。
……それから、およそ三十分後。
私の目の前には、いつもの三つ編みを携えた魔理沙が、満面笑顔で立っていた。
その表情は、褒めて褒めてと言わんばかりに輝いている。
「…………」
私が無言でいると、魔理沙はこれ見よがしに三つ編みを手に取り、ちらちらとこっちを見てくる。
ここでスルーしたら泣いちゃいそうなので、溜め息一つ、私は魔理沙が望んでいるのであろう台詞を口にする。
「……それするために、わざわざ家に帰ったの?」
「うん!」
「…………」
魔理沙があんまり眩しい笑顔でそう言うものだから、なんかもう、別にそれくらいうちでやればよかったのに、とか、そもそも一日くらい忘れてたって誰も気にしないでしょうにとか、そういうツッコミをするのも馬鹿らしく思えて。
だから私は、たった一言。
「……似合ってるわよ。魔理沙」
私のその言葉に、魔理沙はぱあっと表情を明るくして、
「えへへ」
と、嬉しそうにはにかんだ。
やれやれ。
本日は晴天なり。
乙女は今日も元気です。
了
縁側でくつろぐ私の隣には、いつものように魔理沙がいる。
来ない日の方が少ないくらいの頻度で、魔理沙は私に会いに来る。
私としても、お茶一杯で暇を潰せる相手が毎日のように来てくれるのは、とてもありがたい。
……しかし。
何だろうな。
この違和感。
「それでさ、アリスが……」
いつものように他愛もない話をしている魔理沙を見ていると感じる、この違和感。
うーん。
「……っておい。聞いてるのか? 霊夢」
「え、ああ……」
そこで改めて魔理沙の顔を見て、
「あ」
ようやく気付いた。
さっきから感じていた、この違和感の原因に。
「ん?……どうした、私の顔に何か付いてるか?」
「ううん逆。付いてないのよ」
「へ?」
「……三つ編み」
「えっ」
魔理沙は咄嗟に、自分の左側の横髪をさわる。
そこにいつもあるはずの三つ編みが、今日は無かった。
「あっ……」
瞬間、かああと魔理沙の顔が赤くなった。
「珍しいわね。あんたが三つ編みするの忘れるなんて」
「あ、あ、ああああ」
魔理沙は急にわたわたとし始めた。
手を顔に当てたり視線をさまよわせたりと、非常に落ち着きが無い。
一体何を、そんなに動揺する必要があるというのか。
「や。別にそんなに慌てなくても……」
「れ、れいむ!」
私の言葉を遮るように、魔理沙は叫んだ。
「な、何?」
「ちょっ、ちょっといったん家に帰る!」
「へっ?」
魔理沙はそう言うや否や、呆気に取られる私を尻目に、箒に飛び乗り、瞬く間に視界から消えた。
「……いったい、なんだっていうのよ」
私の呟きに、答えを返してくれる者はなく。
まあ、なんとなく予想はつくけど。
長年の経験で。
……それから、およそ三十分後。
私の目の前には、いつもの三つ編みを携えた魔理沙が、満面笑顔で立っていた。
その表情は、褒めて褒めてと言わんばかりに輝いている。
「…………」
私が無言でいると、魔理沙はこれ見よがしに三つ編みを手に取り、ちらちらとこっちを見てくる。
ここでスルーしたら泣いちゃいそうなので、溜め息一つ、私は魔理沙が望んでいるのであろう台詞を口にする。
「……それするために、わざわざ家に帰ったの?」
「うん!」
「…………」
魔理沙があんまり眩しい笑顔でそう言うものだから、なんかもう、別にそれくらいうちでやればよかったのに、とか、そもそも一日くらい忘れてたって誰も気にしないでしょうにとか、そういうツッコミをするのも馬鹿らしく思えて。
だから私は、たった一言。
「……似合ってるわよ。魔理沙」
私のその言葉に、魔理沙はぱあっと表情を明るくして、
「えへへ」
と、嬉しそうにはにかんだ。
やれやれ。
本日は晴天なり。
乙女は今日も元気です。
了
あなたのおかげで新たな視界が得られた
乙女な魔理沙がかわいくてもう……
この一文で悶え死んだわ
破壊力絶大にもほどがあるだろ