※警報、ACEXネタです。嫌悪感を覚えた場合は直ちにブラウザの戻るボタンを連打し、創想話に戻ることをお勧めします。
※警報、ストーリー的には前回の続きです。
<前回のあらすじっぽい補足>
「カリスマのために」
そんな理由で4ボス以上の妖怪を集めたレミリアは弱小妖怪たちに牙をむき、瞬く間に幻想郷全土を支配下に置いた。奮戦していた味方は次々に破られ、最後まで残ったチルノらバカルテットの集まりもフランドールのスターボウブレイクの前に壊滅、もはや風前の灯であった・・・・
~~MISSON02~~
まさかアレほどの威力だったなんて。フランドールは神社方向に移動したわ。その先からは見失ってしまったけれど。あとは、私たちだけだなんて・・・・
フランドールのスペカで私たちはほとんどの戦力を失ったわ。まともに戦えるのはチルノ、あなたと大妖精だけよ。私はあなたたちが道に迷わないよう管制しないといけないし。
それに無縁塚にも敵が集結しつつあるらしいから、これを無視すると本当に行き場がなくなる。
そこで今回の作戦を説明するわ。
3ボスとして参加してくれたアリスの家は湖と無縁塚の中間にあるんだけど、彼女がやられて以来敵の拠点として使用されていてここにいろんな物資が運び込まれ備蓄されているようなの。アリス邸を襲撃してこれを奪えば何とかなるかもしれない。そうすれば無縁塚への足がかりにもなる。逆に言えば、ここを取れなければ隊の維持もできないのよ。食料も底をついてしまう。多くは期待してないけど、頼んだわよ。
~~
「最強のあたいに任せれば万事解決よ!」
「気をつけてチルノちゃん。何があるかわからないよ」
「心配性だなぁ、大ちゃんは」
「事前情報では敵はメイド妖精だけど気をつけないと」
本当に事態を飲み込んでいるのかすら疑わしいチルノの自信過剰っぷりに、グリフィス5のコードネームを与えられた大妖精の気苦労は絶えそうもない。いくらメイド妖精だけが相手とはいえ、どんなエースでも気を緩めていたら落とされてしまう。
『アリス邸まであと500メートル、攻撃態勢に入りなさい』
レティからの通信。魔法の森を低空で飛翔する二人が目標を視認できる距離まできた。だが敵はまだ気づいていないのか、のほほんと談笑などしている。
その集団にチルノの氷弾が襲い掛かり、戦闘開始を告げた。
手近にいたメイド妖精を一人落とし、なおも進む。歩哨役のメイドを一瞬で落としてしまったため敵が二人の進入に気づくことはなく、ようやく二人の姿を認めた時にはチルノたちはすでにアリス邸の玄関傍まで侵攻していた。奇襲は成功だ。
《レーダーに反応。誰よこいつ》
《相手は妖怪?妖精?混乱しててわからない、誰か確認しなさい!》
《出れる奴は早く上がって迎撃して!》
「おぉ、レティの言ったとおり慌ててる」
どうやらここにも指揮を取るような妖怪はいないらしい。丁度2桁になろうかという数を倒したにもかかわらず、いまだ統制が回復する気配のない紅魔館のメイド妖精達をチルノたちは一方的に追い立てる形だ。時折飛んでくる奇数弾さえ回避していればいいチルノはますます調子ついて戦果を上げる。
《敵は妖精だ!》
《何ですって?1~3ボス同盟は全滅したんじゃなかったの!?》
《自分の目で確かめなさい!南十字星と⑨のマークなんてこっちでは使ってないわよ!》
どうやら敵からすれば既に全滅したことになっているらしい。まぁ最後まで戦っていた勇儀も雛も降伏してしまい、残っているのがレティ・チルノ・大妖精では全滅したに等しくはあるのだが。
チルノの服の袖とスカートにペイントされた、グリフィス隊を示すエンブレムと彼女の為だけの⑨マーク。以降『ネメシス』として敵は畏怖し、味方から希望の象徴とされるそのエンブレムを、メイド妖精達は逃げまといながらも確認しようと彼女に振り返る。
《⑨?チルノが!?私たちじゃ歯が立たないじゃない!》
《こちら小町。何があったんだい?》
《敵から攻撃を受けてる!早く助けに来て!》
《すぐには無理だよ、準備が整うまで持ちこたえてくれ。まさか反攻してくるとは》
敵妖精が通信機器で援軍を要請していた。
小町が応対したということは要請先は無縁塚だろう。ここの制圧にあまり時間をかけると厳しいが・・・・・・どうやら杞憂のようだった。戦闘は終始チルノの優勢で進み、敵はただ混乱し逃げまとい、さしたる反撃もできないまま次々に無力化されていた。
《助けて、追われてる!》
『アイシクルフォールのイージーすら避けられないほど混乱するなんて、想像以上ね』
使えるスペカをすべて消費しきって、最後に残ったアイシクルフォールeasyでもって敵妖精が落ちていくのをレーダーで確認したレティが意外なほどの戦果に驚く。だが、
「いけるよ!よーしこのまま凍りつけにしちゃえ!」
さらに調子つくチルノとは対照に、レティはチルノの限界を感じていた。
スペカ数も、その威力も足りない。
雑魚相手ならさすがに何とかなろうが、この先強力な妖怪相手に戦うのであれば今のチルノでは役不足なのは明らか。しかし彼女が主戦力となる以上、なにかしらのサポートが必要だろう。
そうレティが考える間にも戦闘は続き、既に佳境に差し掛かっていた。
《もうダメ、逃げるわ!》
《敵が空を飛んでるんじゃ逃げられないよ!》
《走って逃げるのよ!》
わずかに残ったメイド妖精達が、蜘蛛の子を散らすようにアリス邸からの脱出を図っていた。チルノは逃げるものは追わず、最後まで抵抗してくるメイド妖精を優先的に叩いていく。それすら今の彼女の敵ではなくバタバタとなぎ倒されるメイド妖精達。
「チルノちゃんが圧勝してるところなんてなかなか見られないかも・・・」
「 何 か 言 っ た 大 ち ゃ ん ? 」
「ううん、何も」
思うさまにらみつけてくるチルノと目を合わせないよう、大妖精はそっぽを向く。
『敵妖精撃墜を確認』
《建物の外へ!退避!》
最後に抵抗していたグループもアリス邸より離脱していく。レティは戦闘空域外へ離脱していく敵反応を確認し、ついで接近してくる敵影もないことも入念にチェックしてようやく肩の力を抜いた。要請していた援軍が来ることもなく、二人は周囲の制圧に成功したのだった。
ささやかではあったがこれが彼女の、いや弱小同盟の初勝利だった。
『敵が家を捨てて逃走を始めたわ、成功よ。アリスの家と人形達、それに備蓄物資を丸ごと入手ね。これでまだ戦えるわ』
◇ ◇ ◇
~~MISSON03~~
無縁塚への攻撃作戦を開始する。この戦いのために方々に散っていた味方が集まって、小規模だけど部隊が編成されたわ。
けれど無縁塚には小町やメディスンなどが来ると予想される。すでに増援の姿も確認されているわ。敵はアリスの家を失って補給路を断たれたからからここに集結するつもりのようね。他にも援軍が来ると思うから、これ以上増強されると味方が無縁塚を制圧することが難しくなるわ。その前に味方部隊に先行してこれを叩くのがあなたの仕事よ。味方を支援する為にも内部に入ろうとする敵部隊を阻止して。
あまりに進入を許すと今の戦力では無縁塚を落とすことは不可能になる。敵もアリス邸を失って警戒しているわ、注意しなさい。
~~
『グリフィス1、準備ができたわ。出発していいわよ』
「・・・・準備ってこれ?」
アリス邸。
人様の家に勝手に上がりこむのはいけないことだが『有事』ということで家主にはあとで謝っておこう、そんなことを考えながら戸口に向かうチルノ。その彼女はレティに渡されたスペカのようなものを見つめていぶかしんでいた。こんなの今まで見たことがない。
『サポート武器よ。数は少ないけどデータリンクで誘導攻撃できる特殊氷弾。エスコンで言えばSAAMの類似品、霊夢で言えば夢想封印・集の極劣化版。自転車だと補助輪かしらね』
「ほ、補助輪・・・・」
それはレティが遠隔操作で寒気を操り、あたかも自動追尾しているようにみせる氷弾。レティがチルノのサポートキャラとなることで可能にした、彼女の為のせめてもの救済措置。
しかし、それにしてはあまりにあんまりな例えにチルノは絶句する。レティはどこ吹く風。
『合流時間に遅れるわよ、早く行きなさい。一応幸運を祈っておくわ』
:
:
『クラックスからグリフィス1』
「・・・・・・」
呼びかけるが反応なし。
『グリフィス1?』
「チルノ!」
2度目で返答はあったが、補助輪の一件で不機嫌になっているチルノが突き放すように言う。
『だからコードネームを使いなさい』
「チルノって呼んでくれないと、今後絶対応答しないからね」
通信機相手にチルノはぷいと顔を背けた。その様子までは見れなかったが、相当にご機嫌斜めなのはすぐに感じ取る。こんなところで機嫌を損ねてもらっては困るとレティはしぶしぶ承諾した。
『この・・・・・・はぁ、了解チルノ。無縁塚内部に敵が侵入すればその都度連絡を入れるわ。無縁塚に入ろうとする敵をすべて叩きなさい』
そこに新たに通信を入れる者があった。これまで連合からの攻撃を逃れ生き残っていたヤマメたちだ。
『そこに見えるあなたがチルノね。こちらは黒谷ヤマメ。中の敵は私たちが請け負うけど増えすぎると太刀打ちできない、3体以上の妖精が内部に入らないようにして。私たちもあなたと同様本気でいく。このままでは終われないわ、一緒に戦いましょう!』
「おう!」
威勢のよい声をあげ、チルノたちグリフィス隊と内部攻撃部隊と二手に分かれて散開する。
索敵警戒するまでもなかった。ほどなくして敵妖精部隊が無縁塚を目標として向かってくるのがチルノたちの目に留まる。
《敵影確認!》
《妖精一匹どうということはない、このままいくわよ。アルファ1より全員に告ぐ、突撃開始!》
「今日のあたいは特に強いよ!」
レティに馬鹿にされての憂さ晴らしとばかりにチルノが飛ばしていく。元より雑魚妖精では歯が立たないほどにチルノは強いので、その勢いを止められる者はここにはいなかった。
《トパーズリーダーより各員、攻撃用意!》
《狙われてます、身動きが取れません!敵の妖精の弾幕が厚くて突破できない!うわぁ!?》
『敵妖精撃墜を確認』
《中に入ればどうとでもなるわ。とにかく無縁塚を目指すのよ!》
『あの妖精また一人撃墜してるわ。いいわよグリフィス1!』
チルノの奮戦振りを見ていたヤマメがエールを送った。その期待にチルノも答えて見せ、率先して打って出ていく。
隊列を切り崩されて慌てふためく敵妖精達。
《何人生き残れるの!?》
《ただの妖精じゃないわ、注意して!》
《弾幕展開!あいつを寄せ付けるな!》
『奇数弾よ回避して!』
「このくらい大丈夫!」
慌てた妖精たちが束になって弾幕を張るが、時折飛んでくる大玉や奇数弾も今のチルノにとっては脅威たりえず。
《外したわ》
《もっとスピードを上げて!》
チルノを知る者が見ても、これが本当にあの⑨だとは信じはしないだろう。それほどの戦果をすでに上げていたがもとより多勢に無勢、チルノの脇をすり抜けて妖精の一匹が突破してしまった。大妖精も負けじとがんばってはいるが彼女の相手までは手が回らない。
「この!!」
『チルノ、さっきのを使いなさい。それでいけるわ。発射時は私に声をかけて』
「??わかった、使ってみるね。発射!」
『了解、誘導開始』
チルノが射出した氷弾、あさっての方向に打ち出されたそれはわずかに直進した後急激に角度を変え、目標としていた妖精に吸い寄せられるように飛ぶ。狙い違わず、そのまま命中。
《また一人やられた!》
「おぉ!これは便利」
勝手にホーミングしてくれる(というよりレティがそうしている)武器にチルノが喜んだ。弾幕の数と威力はともかく、これで敵に命中させることができる。
だがそんな場合ではない。新たな敵がすぐそこに迫っていたのだ。
『北東方面より高機動妖怪の侵入を確認・・・・・・メディスンよ』
《あれがアリスの家を襲撃した奴なの?こいつを落とせば勲章ものね!》
「うぁ、何かすごい匂いの人形がいる」
チルノもメディスンの姿を認め、同時に人形から放たれている鈴蘭の匂いに閉口する。
《失礼しちゃうわね。スーさんの毒にやられちゃえ!》
『毒、ね。触れちゃダメ、特に吸い込んだらだめよチルノ』
「毒ごと凍らせれば問題ない。あたい頭いい!」
《わ、こいつ強い!》
放たれた毒の霧を空気ごと凍らせ、ついでとばかりに誘導氷弾をメディスンに向け連続発射。当然全弾命中し、チルノは反撃の暇も与えずそのまま弾幕でメディスンを撃ち伏せた。
現状でチルノに唯一立ち向かえる妖怪を失い敵妖精たちは完全に戦意を喪失、我先にと逃げ出していく。その様子をレーダー上で確認したレティも、何とかなったわねとそっと息をついた。
ヤマメのほうも混乱に乗じてなだれ込み、首尾よく成功したようだった。
『外の敵部隊殲滅を確認。よくやったわチルノ、作戦成功よ』
無縁塚という一大拠点の確保と、メディスンを落としたという戦果は大きいはずだ。さらにヤマメたちからの連絡によると、捕まってここに収容されていたパルスィと慧音も無事救出したとのことだった。
◇ ◇ ◇
「辺境の拠点、通信途絶える」
「同盟軍のむなしい抵抗」
⑨のエンブレム。
馬鹿の代名詞たるシンボルを背負う妖精が連合軍に敗北をもたらしたその日、だがそれは大きな話題にはならず軍部にも何の影響も感じられなかった。所詮はあのチルノ、そして一度打ち負かした妖怪の集団なぞ脅威でもなんでもない。それが連合側の妖怪たちが下した評価だった。まったく持ってその通りだと私も思う。
連日博麗神社で催されるレミリア主催の豪華な宴会。今日も会場では彼女の声が誇らしげに自らの妹について語っているが、暗記できるほど何度も聞かされた話で、おかげでこっちは椛弄りに専念できる。結構なことだ。
私は会場から夜空を眺めながら、今日も月が紅いのだと妙なところに感心していた。だが、通ぶってワインを語る魔理沙の次の言葉が、私の心に疑問を投じた。
「私の目の前で熱弁を振るうレミリア。
敵で残ってるのはもうほとんどいないはずだ、もうとっくに勝負はついているのにまだ解散しないなんて。これ以上何をするつもりなんだろうな?」
そもそもカリスマの回復というだけで4~EXボスが一堂に会して突然1~3ボスを襲うなど、不明な点は多かったはずだ。
戦争が始まってからこっち、報道員としていいように動かされてきたけど・・・・・・
「調べてみる価値はあるかもしれない」
私のつぶやきは単なる暇潰しの思いつきに過ぎなかった。
その時は・・・・。
※警報、ストーリー的には前回の続きです。
<前回のあらすじっぽい補足>
「カリスマのために」
そんな理由で4ボス以上の妖怪を集めたレミリアは弱小妖怪たちに牙をむき、瞬く間に幻想郷全土を支配下に置いた。奮戦していた味方は次々に破られ、最後まで残ったチルノらバカルテットの集まりもフランドールのスターボウブレイクの前に壊滅、もはや風前の灯であった・・・・
~~MISSON02~~
まさかアレほどの威力だったなんて。フランドールは神社方向に移動したわ。その先からは見失ってしまったけれど。あとは、私たちだけだなんて・・・・
フランドールのスペカで私たちはほとんどの戦力を失ったわ。まともに戦えるのはチルノ、あなたと大妖精だけよ。私はあなたたちが道に迷わないよう管制しないといけないし。
それに無縁塚にも敵が集結しつつあるらしいから、これを無視すると本当に行き場がなくなる。
そこで今回の作戦を説明するわ。
3ボスとして参加してくれたアリスの家は湖と無縁塚の中間にあるんだけど、彼女がやられて以来敵の拠点として使用されていてここにいろんな物資が運び込まれ備蓄されているようなの。アリス邸を襲撃してこれを奪えば何とかなるかもしれない。そうすれば無縁塚への足がかりにもなる。逆に言えば、ここを取れなければ隊の維持もできないのよ。食料も底をついてしまう。多くは期待してないけど、頼んだわよ。
~~
「最強のあたいに任せれば万事解決よ!」
「気をつけてチルノちゃん。何があるかわからないよ」
「心配性だなぁ、大ちゃんは」
「事前情報では敵はメイド妖精だけど気をつけないと」
本当に事態を飲み込んでいるのかすら疑わしいチルノの自信過剰っぷりに、グリフィス5のコードネームを与えられた大妖精の気苦労は絶えそうもない。いくらメイド妖精だけが相手とはいえ、どんなエースでも気を緩めていたら落とされてしまう。
『アリス邸まであと500メートル、攻撃態勢に入りなさい』
レティからの通信。魔法の森を低空で飛翔する二人が目標を視認できる距離まできた。だが敵はまだ気づいていないのか、のほほんと談笑などしている。
その集団にチルノの氷弾が襲い掛かり、戦闘開始を告げた。
手近にいたメイド妖精を一人落とし、なおも進む。歩哨役のメイドを一瞬で落としてしまったため敵が二人の進入に気づくことはなく、ようやく二人の姿を認めた時にはチルノたちはすでにアリス邸の玄関傍まで侵攻していた。奇襲は成功だ。
《レーダーに反応。誰よこいつ》
《相手は妖怪?妖精?混乱しててわからない、誰か確認しなさい!》
《出れる奴は早く上がって迎撃して!》
「おぉ、レティの言ったとおり慌ててる」
どうやらここにも指揮を取るような妖怪はいないらしい。丁度2桁になろうかという数を倒したにもかかわらず、いまだ統制が回復する気配のない紅魔館のメイド妖精達をチルノたちは一方的に追い立てる形だ。時折飛んでくる奇数弾さえ回避していればいいチルノはますます調子ついて戦果を上げる。
《敵は妖精だ!》
《何ですって?1~3ボス同盟は全滅したんじゃなかったの!?》
《自分の目で確かめなさい!南十字星と⑨のマークなんてこっちでは使ってないわよ!》
どうやら敵からすれば既に全滅したことになっているらしい。まぁ最後まで戦っていた勇儀も雛も降伏してしまい、残っているのがレティ・チルノ・大妖精では全滅したに等しくはあるのだが。
チルノの服の袖とスカートにペイントされた、グリフィス隊を示すエンブレムと彼女の為だけの⑨マーク。以降『ネメシス』として敵は畏怖し、味方から希望の象徴とされるそのエンブレムを、メイド妖精達は逃げまといながらも確認しようと彼女に振り返る。
《⑨?チルノが!?私たちじゃ歯が立たないじゃない!》
《こちら小町。何があったんだい?》
《敵から攻撃を受けてる!早く助けに来て!》
《すぐには無理だよ、準備が整うまで持ちこたえてくれ。まさか反攻してくるとは》
敵妖精が通信機器で援軍を要請していた。
小町が応対したということは要請先は無縁塚だろう。ここの制圧にあまり時間をかけると厳しいが・・・・・・どうやら杞憂のようだった。戦闘は終始チルノの優勢で進み、敵はただ混乱し逃げまとい、さしたる反撃もできないまま次々に無力化されていた。
《助けて、追われてる!》
『アイシクルフォールのイージーすら避けられないほど混乱するなんて、想像以上ね』
使えるスペカをすべて消費しきって、最後に残ったアイシクルフォールeasyでもって敵妖精が落ちていくのをレーダーで確認したレティが意外なほどの戦果に驚く。だが、
「いけるよ!よーしこのまま凍りつけにしちゃえ!」
さらに調子つくチルノとは対照に、レティはチルノの限界を感じていた。
スペカ数も、その威力も足りない。
雑魚相手ならさすがに何とかなろうが、この先強力な妖怪相手に戦うのであれば今のチルノでは役不足なのは明らか。しかし彼女が主戦力となる以上、なにかしらのサポートが必要だろう。
そうレティが考える間にも戦闘は続き、既に佳境に差し掛かっていた。
《もうダメ、逃げるわ!》
《敵が空を飛んでるんじゃ逃げられないよ!》
《走って逃げるのよ!》
わずかに残ったメイド妖精達が、蜘蛛の子を散らすようにアリス邸からの脱出を図っていた。チルノは逃げるものは追わず、最後まで抵抗してくるメイド妖精を優先的に叩いていく。それすら今の彼女の敵ではなくバタバタとなぎ倒されるメイド妖精達。
「チルノちゃんが圧勝してるところなんてなかなか見られないかも・・・」
「 何 か 言 っ た 大 ち ゃ ん ? 」
「ううん、何も」
思うさまにらみつけてくるチルノと目を合わせないよう、大妖精はそっぽを向く。
『敵妖精撃墜を確認』
《建物の外へ!退避!》
最後に抵抗していたグループもアリス邸より離脱していく。レティは戦闘空域外へ離脱していく敵反応を確認し、ついで接近してくる敵影もないことも入念にチェックしてようやく肩の力を抜いた。要請していた援軍が来ることもなく、二人は周囲の制圧に成功したのだった。
ささやかではあったがこれが彼女の、いや弱小同盟の初勝利だった。
『敵が家を捨てて逃走を始めたわ、成功よ。アリスの家と人形達、それに備蓄物資を丸ごと入手ね。これでまだ戦えるわ』
◇ ◇ ◇
~~MISSON03~~
無縁塚への攻撃作戦を開始する。この戦いのために方々に散っていた味方が集まって、小規模だけど部隊が編成されたわ。
けれど無縁塚には小町やメディスンなどが来ると予想される。すでに増援の姿も確認されているわ。敵はアリスの家を失って補給路を断たれたからからここに集結するつもりのようね。他にも援軍が来ると思うから、これ以上増強されると味方が無縁塚を制圧することが難しくなるわ。その前に味方部隊に先行してこれを叩くのがあなたの仕事よ。味方を支援する為にも内部に入ろうとする敵部隊を阻止して。
あまりに進入を許すと今の戦力では無縁塚を落とすことは不可能になる。敵もアリス邸を失って警戒しているわ、注意しなさい。
~~
『グリフィス1、準備ができたわ。出発していいわよ』
「・・・・準備ってこれ?」
アリス邸。
人様の家に勝手に上がりこむのはいけないことだが『有事』ということで家主にはあとで謝っておこう、そんなことを考えながら戸口に向かうチルノ。その彼女はレティに渡されたスペカのようなものを見つめていぶかしんでいた。こんなの今まで見たことがない。
『サポート武器よ。数は少ないけどデータリンクで誘導攻撃できる特殊氷弾。エスコンで言えばSAAMの類似品、霊夢で言えば夢想封印・集の極劣化版。自転車だと補助輪かしらね』
「ほ、補助輪・・・・」
それはレティが遠隔操作で寒気を操り、あたかも自動追尾しているようにみせる氷弾。レティがチルノのサポートキャラとなることで可能にした、彼女の為のせめてもの救済措置。
しかし、それにしてはあまりにあんまりな例えにチルノは絶句する。レティはどこ吹く風。
『合流時間に遅れるわよ、早く行きなさい。一応幸運を祈っておくわ』
:
:
『クラックスからグリフィス1』
「・・・・・・」
呼びかけるが反応なし。
『グリフィス1?』
「チルノ!」
2度目で返答はあったが、補助輪の一件で不機嫌になっているチルノが突き放すように言う。
『だからコードネームを使いなさい』
「チルノって呼んでくれないと、今後絶対応答しないからね」
通信機相手にチルノはぷいと顔を背けた。その様子までは見れなかったが、相当にご機嫌斜めなのはすぐに感じ取る。こんなところで機嫌を損ねてもらっては困るとレティはしぶしぶ承諾した。
『この・・・・・・はぁ、了解チルノ。無縁塚内部に敵が侵入すればその都度連絡を入れるわ。無縁塚に入ろうとする敵をすべて叩きなさい』
そこに新たに通信を入れる者があった。これまで連合からの攻撃を逃れ生き残っていたヤマメたちだ。
『そこに見えるあなたがチルノね。こちらは黒谷ヤマメ。中の敵は私たちが請け負うけど増えすぎると太刀打ちできない、3体以上の妖精が内部に入らないようにして。私たちもあなたと同様本気でいく。このままでは終われないわ、一緒に戦いましょう!』
「おう!」
威勢のよい声をあげ、チルノたちグリフィス隊と内部攻撃部隊と二手に分かれて散開する。
索敵警戒するまでもなかった。ほどなくして敵妖精部隊が無縁塚を目標として向かってくるのがチルノたちの目に留まる。
《敵影確認!》
《妖精一匹どうということはない、このままいくわよ。アルファ1より全員に告ぐ、突撃開始!》
「今日のあたいは特に強いよ!」
レティに馬鹿にされての憂さ晴らしとばかりにチルノが飛ばしていく。元より雑魚妖精では歯が立たないほどにチルノは強いので、その勢いを止められる者はここにはいなかった。
《トパーズリーダーより各員、攻撃用意!》
《狙われてます、身動きが取れません!敵の妖精の弾幕が厚くて突破できない!うわぁ!?》
『敵妖精撃墜を確認』
《中に入ればどうとでもなるわ。とにかく無縁塚を目指すのよ!》
『あの妖精また一人撃墜してるわ。いいわよグリフィス1!』
チルノの奮戦振りを見ていたヤマメがエールを送った。その期待にチルノも答えて見せ、率先して打って出ていく。
隊列を切り崩されて慌てふためく敵妖精達。
《何人生き残れるの!?》
《ただの妖精じゃないわ、注意して!》
《弾幕展開!あいつを寄せ付けるな!》
『奇数弾よ回避して!』
「このくらい大丈夫!」
慌てた妖精たちが束になって弾幕を張るが、時折飛んでくる大玉や奇数弾も今のチルノにとっては脅威たりえず。
《外したわ》
《もっとスピードを上げて!》
チルノを知る者が見ても、これが本当にあの⑨だとは信じはしないだろう。それほどの戦果をすでに上げていたがもとより多勢に無勢、チルノの脇をすり抜けて妖精の一匹が突破してしまった。大妖精も負けじとがんばってはいるが彼女の相手までは手が回らない。
「この!!」
『チルノ、さっきのを使いなさい。それでいけるわ。発射時は私に声をかけて』
「??わかった、使ってみるね。発射!」
『了解、誘導開始』
チルノが射出した氷弾、あさっての方向に打ち出されたそれはわずかに直進した後急激に角度を変え、目標としていた妖精に吸い寄せられるように飛ぶ。狙い違わず、そのまま命中。
《また一人やられた!》
「おぉ!これは便利」
勝手にホーミングしてくれる(というよりレティがそうしている)武器にチルノが喜んだ。弾幕の数と威力はともかく、これで敵に命中させることができる。
だがそんな場合ではない。新たな敵がすぐそこに迫っていたのだ。
『北東方面より高機動妖怪の侵入を確認・・・・・・メディスンよ』
《あれがアリスの家を襲撃した奴なの?こいつを落とせば勲章ものね!》
「うぁ、何かすごい匂いの人形がいる」
チルノもメディスンの姿を認め、同時に人形から放たれている鈴蘭の匂いに閉口する。
《失礼しちゃうわね。スーさんの毒にやられちゃえ!》
『毒、ね。触れちゃダメ、特に吸い込んだらだめよチルノ』
「毒ごと凍らせれば問題ない。あたい頭いい!」
《わ、こいつ強い!》
放たれた毒の霧を空気ごと凍らせ、ついでとばかりに誘導氷弾をメディスンに向け連続発射。当然全弾命中し、チルノは反撃の暇も与えずそのまま弾幕でメディスンを撃ち伏せた。
現状でチルノに唯一立ち向かえる妖怪を失い敵妖精たちは完全に戦意を喪失、我先にと逃げ出していく。その様子をレーダー上で確認したレティも、何とかなったわねとそっと息をついた。
ヤマメのほうも混乱に乗じてなだれ込み、首尾よく成功したようだった。
『外の敵部隊殲滅を確認。よくやったわチルノ、作戦成功よ』
無縁塚という一大拠点の確保と、メディスンを落としたという戦果は大きいはずだ。さらにヤマメたちからの連絡によると、捕まってここに収容されていたパルスィと慧音も無事救出したとのことだった。
◇ ◇ ◇
「辺境の拠点、通信途絶える」
「同盟軍のむなしい抵抗」
⑨のエンブレム。
馬鹿の代名詞たるシンボルを背負う妖精が連合軍に敗北をもたらしたその日、だがそれは大きな話題にはならず軍部にも何の影響も感じられなかった。所詮はあのチルノ、そして一度打ち負かした妖怪の集団なぞ脅威でもなんでもない。それが連合側の妖怪たちが下した評価だった。まったく持ってその通りだと私も思う。
連日博麗神社で催されるレミリア主催の豪華な宴会。今日も会場では彼女の声が誇らしげに自らの妹について語っているが、暗記できるほど何度も聞かされた話で、おかげでこっちは椛弄りに専念できる。結構なことだ。
私は会場から夜空を眺めながら、今日も月が紅いのだと妙なところに感心していた。だが、通ぶってワインを語る魔理沙の次の言葉が、私の心に疑問を投じた。
「私の目の前で熱弁を振るうレミリア。
敵で残ってるのはもうほとんどいないはずだ、もうとっくに勝負はついているのにまだ解散しないなんて。これ以上何をするつもりなんだろうな?」
そもそもカリスマの回復というだけで4~EXボスが一堂に会して突然1~3ボスを襲うなど、不明な点は多かったはずだ。
戦争が始まってからこっち、報道員としていいように動かされてきたけど・・・・・・
「調べてみる価値はあるかもしれない」
私のつぶやきは単なる暇潰しの思いつきに過ぎなかった。
その時は・・・・。
光学迷彩→にとりの十八番→にとりは3ボス
・・・あれ?