ああ、なんてことだろう。
私はアリスに愛情を注ぐ一心で、相手から注がれる愛情を疎かにしていたらしい。
つまり私たちの愛情はお互い一方的な方向に伸びていて、交わらないものだった。
ならば交わるようにどちらかが路線を切り替えればいい。
そう言うのは簡単だが、ここまできては私は路線変更をする気にもなれない。
だがあいつの直情的な好意に応えてやれるかも怪しいものだ。
では私はそもそもあいつに対して好意を持っていたのか?
答えはイエス、それだけは間違いない。
私たちの間には、決定的な考え方の違いがあるんだ。
あいつは私に対してストレートに好意を表現する。人前でもそういった姿勢は変わらず、自分たちは互いに好意を抱いているということをむしろ周囲にも知らせようとしているように見える。
だが周囲にあまり認知されていないのは、のらりくらりと私が意思的にしろ無意識にしろそれをかわし続けているからだ。だって仕方ないだろう、私にはそういうのは向いていないんだ。
例えば私が、公衆の面前であいつの名前を叫び抱きついたりしてみろ、空気が固まるだろう。それだけで済めばいいが私のイメージは崩壊するな。
それが魔理沙だったなら、賑やかな奴だと思われておしまいなんだがな。
だが私は魔理沙じゃない、どちらかというと持たれているイメージは霊夢に近い。
霊夢はあたり一面から寄せられている好意や敵意、あらゆるものを全て回避している。
回避と言っても私のように巧みなテクニックを使うわけではない、ストレートな拒否で避けている。
しかしそれでも、霊夢が慕われているのは事実。彼女はそういうものだと回りに強く認知されている。
もし霊夢が突然魔理沙に対して比類無き恋心を抱き、年がら年中付きまとい傍を離れないようになったら。霊夢は自分の行動がこれまで築き上げてきたイメージを失うことになるだろう。
そして今まで自分に寄ってきた者たちも愛想を尽かして去っていってしまうかもしれない、むしろ好都合かもしれないが。
私が危惧しているのはそういうことだ。
私が私の気持ちに素直になって行動することによって、今の自分の地位を失うこと。
地位と恋を同列に見ることはできない。
私には紅魔館のメイド長という地位があるからこそ、親しい人に囲まれて文句の無い生活を送っているわけだ。
メイド長という地位を失ったら、それこそ旅芸人になるか飲食店で働くか、殺し屋にでもなるか、なんにしても忙しいことになるだろう。
そうなっては私にとってもあいつにとってもいい事ではない、だから今のままでいることが一番いいのだ。
だが二人でいる時くらいはいいだろう。
でも二人でいる時くらいはと、その意図を伝えるわけにはいかない。
そうするとあいつは勘違いするだろう、自分は一緒にいられると恥ずかしい存在なのではないかと。
断じてそんなことは無い。あんな美しい人形のような少女はそうそういないのだ。
ただ少しワガママで、能天気で、それでいてちょっと寂しがりやで、誰かに実は支えてもらいたがっている可愛い子なのだ。
誰がそんな子を手放すものか。
そして、そんな可愛い子だからこそ不安になることがある。
私以外にも好意を持つ相手が現れたら、どうするんだろうと。
もし自分の立場だったら、そう考えても何も参考にはならない。
私にとっては他に性的な好意を抱く相手など居はしない、だからその気持ちがわからない。
そう考えるととても不安になり、そうなった時だけ私はあいつの家に行くようにしている。
私が訪れたとき、あいつはいつも山ほどの茶菓子とお茶を出して、精一杯もてなしをしようとしてくれる。わざわざ乱れた髪をセットして。
そこまでしなくていいと遠慮する一方で、私はそのアリスの好意を感じて安心する、
私はもしかしたら、あいつよりもワガママなのかもしれない。
自分を保身したいあまり、好意を無下にしている。
そしてどれだけ好意をまっすぐ受け止めてもらえなくても、何度も何度でも伝えてくれるあいつ。
失うのが怖い。私だけのお姫様。
「こんなところかな?」
「なるほどー詳しいですね」
美鈴さんと私小悪魔は、つっけんどんな咲夜さんの心情を想像して遊んでいた。
「そりゃあね、ちっちゃいころから知ってるもの」
「そう考えると、咲夜さんも普通の女の子ですよね」
「そうだね、アリスも気を使われてることはきっとわかってるんだろうけどね」
でも私は気がついている、さっきからそこの陰に咲夜さんが隠れていることに。
すぐに止めに来なかったのは図星だったから?それとも面白がっているから?
どちらだか私にはわからなかったが。
なんにしてもやっぱり咲夜さんも、やっぱり女の子なんだ。
「どう思いますか?咲夜さんは」
「………え?」
「そうねぇ、意外と図星なのが腹立つわ」
咲夜さんは呼びかけに自然と応えた、最初から合わせてあったかのように息のあった私たち。
美鈴さんは驚いて鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「さ、さくやさん、ど、どこから………?」
「………ああ、なんてことだろう、だっけ?」
「すいませんっしたー!」
もう慣れているようにしか見えない速度で土下座をする美鈴さん。
そこまでされては気分が悪いんだろう、咲夜さんは腰を下ろして美鈴さんをなだめた。
「別にいいわよ、貴女が私の気配に気がつかないくらい面白がって話していたことは気に食わないけどね」
「は、はいぃ」
「でも、図星だったならよかったじゃないですか」
「………そうね」
私に向かってふっとだけ笑う咲夜さん。
「私も意外とわかりやすい性格してたみたいね」
「わかりにくい性格なんてありませんよ、言うなればつかみどころがない性格です」
「霊夢みたいな?」
「違いないです」
相変わらず堂々とした物言いだ。
美鈴はそう小悪魔に感心した。
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私はアリスに愛情を注ぐ一心で、相手から注がれる愛情を疎かにしていたらしい。
つまり私たちの愛情はお互い一方的な方向に伸びていて、交わらないものだった。
ならば交わるようにどちらかが路線を切り替えればいい。
そう言うのは簡単だが、ここまできては私は路線変更をする気にもなれない。
だがあいつの直情的な好意に応えてやれるかも怪しいものだ。
では私はそもそもあいつに対して好意を持っていたのか?
答えはイエス、それだけは間違いない。
私たちの間には、決定的な考え方の違いがあるんだ。
あいつは私に対してストレートに好意を表現する。人前でもそういった姿勢は変わらず、自分たちは互いに好意を抱いているということをむしろ周囲にも知らせようとしているように見える。
だが周囲にあまり認知されていないのは、のらりくらりと私が意思的にしろ無意識にしろそれをかわし続けているからだ。だって仕方ないだろう、私にはそういうのは向いていないんだ。
例えば私が、公衆の面前であいつの名前を叫び抱きついたりしてみろ、空気が固まるだろう。それだけで済めばいいが私のイメージは崩壊するな。
それが魔理沙だったなら、賑やかな奴だと思われておしまいなんだがな。
だが私は魔理沙じゃない、どちらかというと持たれているイメージは霊夢に近い。
霊夢はあたり一面から寄せられている好意や敵意、あらゆるものを全て回避している。
回避と言っても私のように巧みなテクニックを使うわけではない、ストレートな拒否で避けている。
しかしそれでも、霊夢が慕われているのは事実。彼女はそういうものだと回りに強く認知されている。
もし霊夢が突然魔理沙に対して比類無き恋心を抱き、年がら年中付きまとい傍を離れないようになったら。霊夢は自分の行動がこれまで築き上げてきたイメージを失うことになるだろう。
そして今まで自分に寄ってきた者たちも愛想を尽かして去っていってしまうかもしれない、むしろ好都合かもしれないが。
私が危惧しているのはそういうことだ。
私が私の気持ちに素直になって行動することによって、今の自分の地位を失うこと。
地位と恋を同列に見ることはできない。
私には紅魔館のメイド長という地位があるからこそ、親しい人に囲まれて文句の無い生活を送っているわけだ。
メイド長という地位を失ったら、それこそ旅芸人になるか飲食店で働くか、殺し屋にでもなるか、なんにしても忙しいことになるだろう。
そうなっては私にとってもあいつにとってもいい事ではない、だから今のままでいることが一番いいのだ。
だが二人でいる時くらいはいいだろう。
でも二人でいる時くらいはと、その意図を伝えるわけにはいかない。
そうするとあいつは勘違いするだろう、自分は一緒にいられると恥ずかしい存在なのではないかと。
断じてそんなことは無い。あんな美しい人形のような少女はそうそういないのだ。
ただ少しワガママで、能天気で、それでいてちょっと寂しがりやで、誰かに実は支えてもらいたがっている可愛い子なのだ。
誰がそんな子を手放すものか。
そして、そんな可愛い子だからこそ不安になることがある。
私以外にも好意を持つ相手が現れたら、どうするんだろうと。
もし自分の立場だったら、そう考えても何も参考にはならない。
私にとっては他に性的な好意を抱く相手など居はしない、だからその気持ちがわからない。
そう考えるととても不安になり、そうなった時だけ私はあいつの家に行くようにしている。
私が訪れたとき、あいつはいつも山ほどの茶菓子とお茶を出して、精一杯もてなしをしようとしてくれる。わざわざ乱れた髪をセットして。
そこまでしなくていいと遠慮する一方で、私はそのアリスの好意を感じて安心する、
私はもしかしたら、あいつよりもワガママなのかもしれない。
自分を保身したいあまり、好意を無下にしている。
そしてどれだけ好意をまっすぐ受け止めてもらえなくても、何度も何度でも伝えてくれるあいつ。
失うのが怖い。私だけのお姫様。
「こんなところかな?」
「なるほどー詳しいですね」
美鈴さんと私小悪魔は、つっけんどんな咲夜さんの心情を想像して遊んでいた。
「そりゃあね、ちっちゃいころから知ってるもの」
「そう考えると、咲夜さんも普通の女の子ですよね」
「そうだね、アリスも気を使われてることはきっとわかってるんだろうけどね」
でも私は気がついている、さっきからそこの陰に咲夜さんが隠れていることに。
すぐに止めに来なかったのは図星だったから?それとも面白がっているから?
どちらだか私にはわからなかったが。
なんにしてもやっぱり咲夜さんも、やっぱり女の子なんだ。
「どう思いますか?咲夜さんは」
「………え?」
「そうねぇ、意外と図星なのが腹立つわ」
咲夜さんは呼びかけに自然と応えた、最初から合わせてあったかのように息のあった私たち。
美鈴さんは驚いて鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「さ、さくやさん、ど、どこから………?」
「………ああ、なんてことだろう、だっけ?」
「すいませんっしたー!」
もう慣れているようにしか見えない速度で土下座をする美鈴さん。
そこまでされては気分が悪いんだろう、咲夜さんは腰を下ろして美鈴さんをなだめた。
「別にいいわよ、貴女が私の気配に気がつかないくらい面白がって話していたことは気に食わないけどね」
「は、はいぃ」
「でも、図星だったならよかったじゃないですか」
「………そうね」
私に向かってふっとだけ笑う咲夜さん。
「私も意外とわかりやすい性格してたみたいね」
「わかりにくい性格なんてありませんよ、言うなればつかみどころがない性格です」
「霊夢みたいな?」
「違いないです」
相変わらず堂々とした物言いだ。
美鈴はそう小悪魔に感心した。
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レイアリや咲霊の場合はクールな二人組がクールな付き合い方をする様や
二人きりの時になると互いに(あるいはどちらかが)デレまくるギャップが良いと言われてますね。
咲アリの場合もやはりそういう魅力が多分にあるのだと思います。
>>こんなことまで想像してる俺は
俺も俺も!にげられないにがさない!
あ、性格の話でした。
俺も文には興せないが、妄想するだけならかなりの実力者だと自負している
このままでは俺の××が有頂天だ
×つかみどころがない
○つかむところがない