「わっ! 紫、何あれ!?」
「金魚すくいも知らないの?」
天子の質問に対し、馬鹿にしたような口調で返す紫。
そんな紫の態度に、天子はかちんとくる。だが、知らないものは知らない。何も斬り返せ無かった。
「むむむ……紫のいじわる。私、お祭初めてだもん」
「はいはい、金魚すくいっていうのは……」
紫の説明に、ふぇ~と興味深そうに相槌をうつ。
そんな天子を見て、紫は小さく笑う。
紫と天子、二人は人里の夏祭りに来ていた。祭りを知らないという天子に、紫が案内する約束をしていたのだ。
ちなみに、紫は浴衣を着用しておらず、いつもの格好ではあるが、天子はちゃんと浴衣を着用している。
天子の浴衣は、紫がプレゼントした物で、天子の髪と同じ色、青を基調とした浴衣だった。帯は紫色で、浴衣には淡い水色の水玉模様が点々と付いている。明るく感じさせるような、天子に似合う浴衣だった。天子の長い髪は、今だけ、首にかかるかかからないかくらいの長さに纏めてあり、いつも着用している桃の付いている帽子は着けていない。
まだ少しだけあどけなさが残った表情は、浴衣姿ということもあって、よりいっそう可愛らしく見える。
「んー……金魚を飼うの、面倒そうね」
「あなたには無理でしょうね」
「な、何ですって!」
「三日世話出来たら、良い方ですわ」
「いちいち人を馬鹿にして~」
「あら、少なくとも私から見れば立派な馬鹿よ。おめでとうございます」
「嬉しくなーいっ! もう良い! 一人でお祭回る!」
見るからにご機嫌ななめといった態度で、紫から離れて歩こうとするが――
「初めてのお祭、浮かれて迷子、多くの人が居るからぶつかってばかり、財布落として涙目……」
「な、何よ?」
「いえ、そんな未来が見えただけですわ」
紫は、ニコニコと意地悪い笑みを浮かべている。
天子は考える。悔しいが、そうなる可能性は充分にあった。既に今現在、突っ立っているせいで、人とぶつかっていたりする。
「ふ、ふん! せっかく来たんだから、最後まで一緒に居てあげるわよ」
「はいはい、我侭お姫様」
「な、何ニヤニヤしてるのよ! 別に不安だからとかそういうのじゃなくて……」
顔を赤くして、うーうーと唸る天子。
それを見て、紫はさらにニヤニヤする。
「だからニヤニヤするなー!」
「はいはいっと、ほら天子」
「えっ!? わわっ!」
紫が天子の手を引っ張り、己の胸へと抱き寄せた。
突然の行為に、天子は慌てる。
「な、何!?」
「人の邪魔になってたのよ、ほら」
天子が紫の胸に埋まったまま、顔だけをさっきまで自分が居た方向へ向ける。すると、ぺこりと頭を少しだけ下げて、人が渡って行った。
「ね、もう少し周りをちゃんと見なさいな」
「ん、分かったわよ」
そう言って、紫から離れようとした瞬間――
「あら、こんな大勢の前で抱き合って……そういう関係だったの?」
わたあめ片手に咲夜が話し掛けてきた。隣りには霊夢もいる。
慌てて離れる天子に対して、至って冷静な紫。
ちなみに、咲夜はいつものメイド服、霊夢もいつもの巫女服だった。浴衣が多いため、大勢の流れる人の中でも非常に目立つ。
「違うわよ!」
「でも珍しい組み合わせですわ。八雲紫に天人のあなた」
「そちらこそ、珍しい組み合わせじゃない? 霊夢にあなた、そういう関係?」
天子が、顔を赤くして否定の声を上げる。
咲夜の言葉に、紫も斬り返す。
咲夜はいつもと同じような態度だったが、霊夢は明らかにぶすっとした不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「えぇ、実はそういう関係」
「……咲夜、蹴り飛ばして良い?」
「蹴り返しても良いならね」
「……はぁ。こいつがレミリアから休暇を出されたらしいのよ。お祭だしたまには休め、ってね」
「お嬢様は来ないのですかと尋ねたら、『妹が行けないのに、姉が行くわけ無いだろう』と。私も残ろうとしたけど、良いから休めって追い出されちゃったわけ」
フランドールは多少自由になったとはいえ、万が一のことに備えて外出はほぼ禁止なのだ。特に、お祭のような一般人が大勢居る場所には連れて行けない。
だからこそ、レミリアも来ない。
なるほど、といったように頷く紫。天子は、フランドールのことを知らないため、頭に疑問符状態だった。
「なるほどね。でも、何で霊夢?」
「唯一暇そうで、かつ私の友人だから」
「いつからあんたは私の友人になったのよ」
「あぁ、間違えましたわ。私の恋人だから」
「……潰す」
霊夢が顔を赤くして針を投げるが、咲夜は身体を少しだけずらして避ける。
そのせいで、咲夜の後ろを歩いていた人の背中に針が刺さるが、誰も気にしない。
「とまあ、こういう風にからかってみると楽しいから。それに一緒に居て楽しいのよ」
「……ふん」
「それじゃあ、また。行きましょう、霊夢」
「あ、こら! 手引っ張るな!」
がるると唸る霊夢と、案外お祭を楽しんでいる様子の咲夜は、手を繋いで人込みに消えた。なんだかんだで完全に拒否しないあたり、霊夢も満更では無いのだろう。ただ、素直じゃないだけで。
再び、二人になる。
「さ、とりあえず私たちも行きましょう」
「……」
「どうしたの、天子?」
天子は黙ったまま、ジッと霊夢たちが消えた方向を見つめていた。
紫は最初、何故天子が見つめていたまま動かないのか分からなかった。
「んー……あぁ、もしかして」
そう小さく呟いて、何かに気付いたような表情を浮かべた。
「天子、手」
「え?」
「あなたがはぐれたら、捜すの面倒そうだからね。予防線よ」
そう言って、手を差し出す。
天子はほうけたまま、動かない。
しばらくして、顔に紅葉を散らした。随分と遅い反応だった。
「なっ!?」
「あぁもう、ほら」
「~っ!」
いつまでもフリーズしたままでは埒があかない。そう考えた紫は、少し強引に手を握った。
たったそれだけで、天子は俯いてさらに赤くなってしまう。紫の手から伝わる温かさ、柔らかい肌、綺麗な指が鼓動を高鳴らせた。
「さぁ、行きましょう。まだまだ見たいものがあるでしょう」
「う……うん」
そう言って、二人並んで歩く。
しばらく歩いているうちに、慣れてきたのか、少しずつ天子は調子を取り戻していた。
「紫、あれ何? さっき咲夜が持ってたけど」
「わたあめね。食べる?」
「うん!」
天子はわたあめ屋の人に頼んで、手にまいて貰った。歩いてる最中、そんな子どもを見たから試しにやってみたのだ。
天子の右手が、真っ白いわたあめに包まれている。
「えへへ~どうよ!」
「……子どもね」
「んなっ!?」
「ま、美味しいけど」
「あ、ちょ!? 勝手に食べないでよ!」
「もくもく」
「こら、やめてってば!」
天子のわたあめを、はむはむもくもくといったように食べる。
右手が使えない天子は、わたわたと暴れることしか出来ない。
「ん?」
「ちょ!? それ指だから!」
「はむはむっ」
「ひゃあ!? くすぐった……あはは! やめてってば!」
さすがに周りから見られ始めたため、食べるのをやめた。
わたあめは軽く半分以下になってしまっていた。
「紫のいじわる!」
「私が払ったのだから、私が食べちゃいけない理由はありませんわ」
「う~……はむっ」
残ったわたあめを、はむっと食べる。甘くて口の中で溶ける感覚が、新鮮だった。
ただし、目は紫を睨んでいる。
そんな天子に紫は、腹が立つほど爽やかな笑みを返した。
「紫、その顔気持ち悪い」
「あなたの顔にわたあめまいてあげましょうか?」
「すみませんでした。とてもウツクシイです」
「美しいの部分だけ片言なのが気になるのだけれど?」
「いふぁいいふぁい!」
天子の頬を、両手で伸ばす。予想以上に柔らかかった。良く伸びる。
「あ……」
そんな時、大きな花火が上がった。
耳に響く高い音とともに空へと上がり、大きな音を立てて闇夜に花を咲かす。
「凄い……」
「あれが花火よ」
ふざけることをやめて、ただ見上げる。
色鮮やかな花が、次々に打ち上げられている。
それらは、ほんの数秒で散ってしまうけれども、刹那を美しく輝かせて、見る者に感動を与えていた。
また、大きな音とともに、打ち上げられた種が開化する。
天子は、左手でなんとなく紫の手を握った。
今、大勢と一緒に見上げているのに、天子には何故か二人だけで見上げているように感じられた。
「紫、えと、その……ありがとう」
「んー?」
「お祭、連れてきてくれて」
「どうしたの? 素直な天子なんて、お酒を飲まない萃香より気持ち悪いわ」
「失礼ね! 私はただ、天から見下ろすだけじゃあ見られなかったものを見て、感謝してるのよ」
いつもは見下ろすばかりだった天子が、今は見上げていた。
空を明るく、綺麗に飾る花火を、二人で見上げている。
「どういたしまして」
「ん……」
握る手を、ギュッと強くした。
ギュッと握って、ギュッと握り返される。
そんな、子どもみたいなことをして、花火を見上げ続けた。
心地良いくらいの夏の風が、ふわりと二人の髪を撫でていった。
20~30%… あなたは私に過糖分で殺すつもりなのかっ
たとえあなたがブラックコーヒーを淹れてもまともに飲める気がしないぜ。甘すぎて。
貴方の書くゆかてんが大好物です!
ゆかてん!
誰か被害者がいたような気がしますけど、きっと糖分で頭がおかしくなっただけですよね!
ゆかてん!
とりあえず指はむはむで2828しないわけがないというww
甘い……またしても糖分表示偽装が行われたようですね。
それにしても、被害者についてスルーしすぎでしょうw
しかも甘いぜ、相変わらず甘いぜ!
あと、誤字報告です。
>「どうしたの? 素直な天子なんて、お酒を飲まない翠香より気持ち悪いわ」
萃香ですね。気持ち悪がられてるよ萃香。
というか、挙式いつですか?
当日には伊吹萃香さん、霧雨魔理沙嬢、レミリアスカーレットお嬢様が挙式を取り仕切ったり。
無茶苦茶盛大な悪寒しかしませんねぇ。
ういのうういのう天子はホントうい奴よのうw
ていうか咲レイがすんごい気になるんですけど?この二人の話はないんかい?
ゆかてんが、私的ベストカップリングであるところのゆかれいむと肩を並べてしまったんだが
責任とれよおぉぉぉぉぉぉ!!
咲レイなぁ…ちょっと思い付かないわぁ…
80%とかなら危ないですねw
>>2様
楽しんでもらえてなによりです。
>>3様
私基準ですからね。
ブラックコーヒー大好きです。
>>4様
糖分控え目ですぜ。
>>5様
まだまだ糖分はおさえてますぜ。
>>6様
わふぁ!? そう言ってもらえると嬉しいです。
>>7様
いえいえ、ありがとうございます。
>>澄様
指はむはむはロマンです!
>>9様
ちょっとだけですが、書きたかったので。
>>10様
私基準ですから!
被害者は……はい、スルーでw
>>11様
うわぁう!?
ありがとうございます。誤字修正しました。
>>12様
私も知りたいです。
>>謳魚様
悪ノリが凄そうですねw
>>14様
咲霊は……書けたら書きたいです!
>>15様
さぁあなたもゆかてんと叫ぼう!
>>箱様
過去100%まで書いてます。
>>17様
咲霊もマイナーですからねぇ。想像つきませんよね、中々。
>>18様
大丈夫でぃすかー!?
>>19様
素直じゃないですから、中々進展はしなさそうですw
なら何故こんなにニヤニヤが止まらないんだ。
あとものすごく咲×霊の続きが見たいです!
ありがとうございます。
>>22様
続きですか……むぅ、書けたら書いてみたいです。
部屋が砂糖で埋まってるんですが。
ちょっと消費者庁に通報してきます。(偽装表示的な意味で)
ザラメ吐いたwwww