一般的に紅魔館のメイドは役者不足だと言われる。
広大な敷地に対して、その管理を担う頭数が足りないのだ。
一般的に紅魔館のメイドは力不足だと言われる。
頭が弱く、たいした仕事が出来ないと思われているのだ。
だがしかし、それは真実を表していない。
紅魔館大廊下
紅魔館のほぼ中央を走る大動脈は、今日も妖精メイドでいっぱいだった。
しかし、その流れは一定でよどみが無い。
「あら、ごきげんよう」
「ごきげんよう。今日もいいお天気ね」
交わされる挨拶
「今日の毛玉シフトはM5321でよかったかしら」
「そうね、門番長は今日遅いでしょうから、先に片付けておきましょう」
粛々と伝えられる伝達事項
「だから私は言ってやったのよ、『一方ソ連は鉛筆を使った』ってね」
「で、ソ連ってなに?」
「ちょっと前に幻想郷入りしたらしいよ」
そこかしこで聞かれる小粋なジョーク
騒々しさとは無縁の、秩序に満ちた空間である。
だがこれもメイド長が起きるまでのこと。
「あっ、メイド長がいらっしゃったわ!皆、シフトは良いわね!」
ざざざざざっ
廊下に満ち溢れていたメイド達は次々に窓から飛び出し、壁面にへばりつく。
窓のふちから目だけを出して、紅魔館の瀟洒なメイド長、十六夜咲夜の一挙手一投足を見守るのだ。
しずしずと歩くメイド長を品評して曰く、
「今日は足運びがコンマ三秒遅いわ」
「やっぱり門番長が激しかったのかしら」
メイド長は覗かれているのに気づいていない。窓から覗く目のことを、単なる模様だと思っているのだ。
メイドのほぼすべてが窓に取り付くことで、まるで窓が縁取りされているように見えるこの現象。
「メイド長だけが見える冥土の入り口」として紅魔館七不思議に数えられている。
ふと、メイド長の足が止まった。
どうやら窓の汚れが気になるようだ。
「プランA実行!」
すかさず年かさのメイドが指示を出す。
それを受けた特命メイドが、任務を開始した。
ぱたぱたぱたっ
ぽすん。
妖精メイドが咲夜にぶつかる。
職業当たり屋も真っ青な、実に自然なぶつかり方だ。
「もう、廊下は走るなっていつも言ってるでしょう?」
「えへへ、はーい」
そういいながら手を広げて抱っこを要求する。
メイド長は意外と母性が強いのか、抱き上げられてかいぐりかいぐりされている。
「もう、あの子ばっかりずるい!」
「仕方ないでしょう。気づかれたらおしまいなんだから。
せいぜい古典を見て勉強するのね」
メイドたちの間では、東鳩は古典とされているのである。
広大な紅魔館の掃除は、メイドたちをセクションごとに分けて行われる。
「241セクション!メイド長到着まであと十分!」
「あい、さー!」
その中でも、メイド長が巡回するであろうルート、予想咲夜図はとても重要だ。
しつこい汚れは必ず落とし、メイド長に負担をかけないようにしなければならず、かといってある程度の汚れを残して置かなければ、メイド長にやさしく指摘してもらえない。
意地と欲望の交じり合うメイド交差点なのだ。
掃除で実績を残したものには、洗濯というご褒美が与えられる。
館に住む吸血鬼姉妹のちょっとおませな下着。
門番長の神々しさ漂う胸当て。
そして何よりも……。
「これは、まさか!」
「そう、メイド長が気合を入れているときにしかはかない黒くて薄くて○○なの!」
メイド長の下着である。
掃除に際して絶妙のバランスにより、メイド長からの声かけがあったのみに与えれる挑戦権。
厳しい資格試験(逆立ちで靴下合わせ、湿ったシーツの洗い方、妖精洗濯機など)
これらを通り抜けた精鋭のみがその素晴らしい仕事に就けるのだ。
以上のことからわかるように、紅魔館のメイドは、決して無能ではない。
高度な技術と、高い士気をもつ、メイド仕事だけに使うには役不足な精鋭だ。
ただ、能力を向ける先を少し間違っているだけなのだ。
>>「プランA実行!」
きっとプランBは空欄で、プランDは所謂ピンチなんでしょうか
有能の方向性がアレなところがまたカワイイwww
そして私も間違っていたですとぉ!?
ORZ
日本語が難しいのではなく、
我々が馬鹿になったんでしょうね。
失敗から作品を生み出せる作者さんにパルパルパルパル。
それより東鳩が幻想入りかorz