「あんたが声かけてよ…」
「………いいけど」
咲夜は私の家の前ですすり泣いていた少女に近づく。
少女は人の気配に感づいたのか、咲夜を見上げる。
「貴女、どこの子?」
「………」
「………あー」
驚かれていると思ったのか、咲夜はその場に座り込んで少女の目線にあわせた。
「大丈夫、私は人間よ」
「………うん」
か細い声で少女は答える。
おそらく格好からして近くの村の娘だと思うんだが、どうしてこんな森の中にいるのだろう。
その疑問を咲夜が代わりにたずねる。
「貴女どうしてここに?」
「……おにごっこしてて………きがついたら……」
言葉は少ないが理由には充分だ。
咲夜は無理に話させようとはせずあくまで要点を聞き出そうとした。
「貴女の家は?」
「………ここの近くの村……だと思う」
「ここまでくるのにどのくらい時間がかかった?」
「……1時間くらい」
「そう……」
確証を得ることができた、この少女は間違いなく北の村に住んでいる。
こうなったらやることは一つだろう。
「人形に送らせましょう、咲夜」
「私達で連れてけばいいでしょ」
私の申し出をあっさりと却下。
確かに退屈はしていたが、その子供が気がかりなんだろうか。
「案内してあげるわ、ついてきて」
「あ………はい」
結局、子供を送っていくことになってしまった。
文句を言いながら一緒についていってしまう私も私だ。
「慧音のところの生徒なのね」
「ふーん…」
「アイツの授業は面白いの?」
「うん」
少女はうんかううんしか言わない、あとは首を縦に振るか横に振るかだけ。
ただ好奇心は旺盛らしい、私達がいると安心するらしく、森の中にある様々なものに興味を示した。
「毒キノコよそれ」
「……」
無言で名残惜しそうに見つめて、元に戻す。
「あ、あとその木は近づかないほうがいいわ、人を食うからね」
「!!」
まがまがしい形に枝を伸ばした木があったものだからからかってしまった。
急いで咲夜の体に抱きつく。さすがに冗談なんだがここまで反応がいいと面白い。
冗談だと気が付いた咲夜は私を見て「やれやれ」と呆れた。
「寒いわね」
「そう?」
「……」
こくこくと少女が首を縦に多く振る。
「貴女平気なの?」
「私は人間よりは気候に強いからね」
「なるほど」
少女が私を見上げる、顔を見れば言いたいことはわかる。
「私は人間じゃないからね」
「!!」
これまたいい反応だ。
おそらくこの年くらいの子供なら、人外は恐ろしいものだという認識しか持っていないだろう。
その証拠にまた咲夜にしがみついて私を潤んだ瞳で見ている。
「とって食いやしないわよ」
弁解してくれればいいのに、咲夜は少女の頭を撫でるだけだ。
「あの……」
「ん?」
しばらく大人しく歩いていたが、少女の方から口を開いた。
「あの……名前……教えてもらえますか…?」
「……」「……」
私達は思わず顔を見合わせた。
何がそこまでこの少女を積極的にさせたのかも謎だし、自分達が名乗っていなかったことも思い出した。
「私はアリスよ」
「私は咲夜」
「……さくや?」
また咲夜のほうを気にかける。
でも何か様子がおかしい、今度は私のほうに近づいてきたぞ。
咲夜は優しく笑っているだけ。不思議がる様子は無い。
そうか…そういうことか。
「咲夜はいいやつよ」
「………」
「貴女が両親達から何を聞いていたのか知らないけど、そこは誤解しちゃいけないところよ」
「………」
「………ま、仕方ないわね」
そう言って笑う咲夜、仕方の無いことではないだろう。
しかし少女は私のいうことを理解してくれたらしい、また咲夜の方に近づいていく。
「………」
ものは言わないが、咲夜に無邪気な微笑みを向けた。
ちょっとだけ咲夜は嬉しそうにした。
「貴女もついてないわね、私達みたいなわけのわからない奴に助けられて」
自分宛の皮肉のつもりで言ったが、少女は怒らず笑わず、首も振らない。
むしろ明るい笑みを浮かべ、私と咲夜の手を取って、大きく手を振りながら歩くだけだった。
その少女の予想外の行動に、私達はまた顔を会わせた。
そしてこれだから子供は怖いと、照れたように笑いあってしまった。
.
やっぱりこの咲アリは良いな~
咲夜さんとアリスっていいなぁ
ところで、あとがきの最後の一言がとても気になるんですが……
親戚の集まりでも見てる分には良いんですが、相手しろとか言われると……
ところで後書き最後の2行は期待してよろしいのでしょうか?
でも不健全ネタではなさそうですね、いけるかな