Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

魔理沙がアリスを泣かす過程―Lunatic―

2009/08/23 18:52:56
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「たまにはアリスを泣かせてみようと思う」
 
 魔理沙は神妙な面持ちで切り出した。

「はあ」

 霊夢は心底どーでもよさそうに相槌を打った。
 だが魔理沙は構わず続ける。

「こうもあいつに泣かされてばっかりだと、私の気が済まん」
「へぇ、そんなにアリスに泣かされてたんだ。まあ泣き虫だもんねあんた」

 ずず、とお茶を啜りながら言う霊夢。
 すると、魔理沙は少しムッとした表情になった。

「……私は泣き虫じゃない」
「何言ってんのよ。ちょっといじめられたらすぐ泣くくせに」

 そう言って、霊夢は魔理沙のおでこを軽くつっつく。

「……そんなことない」

 そう言いながら、つっつかれたおでこを両手で押さえる魔理沙だが、もう既に泣きそうである。
 やれやれ、ここで泣かれるとまた面倒なことになる。
 そう思った霊夢は、はあと溜め息をひとつ吐くと、とりあえず話を戻すことにした。

「……で、どうやって泣かせるわけ? アリスを」
「それを今、考えてるところなんだ」
「そう。まあ精々頑張んなさいな」

 あのアリスがそう簡単に泣くとは思えないけど、と霊夢は心の中で付け加える。

「……ところでお前、なんかいい案ないか」

 いきなり他力かよ、と思わず霊夢はツッコんだ。心の中で。

「……そうね。安直だけど、死んだフリをするとか」
「それは駄目だ。そのネタはもうアリスに何回もやられた。つい最近も」
「あら。って……何回もやられてるってことは、あんたまさか、毎回引っかかって、毎回泣いちゃってるわけ?」
「…………」

 魔理沙は何も言わず、下唇をきゅっと噛んで俯いてしまった。
 いかん、この流れはいかんぞ。
 霊夢はちょっと焦ってきた。

「じゃ、じゃあこういうのはどうかしら」
「……なんだ?」
「アリスに、『お前のことなんか嫌いだ。もう私に近付くな』とか言ってみるの。これは効くんじゃないかしら」
「…………」

 魔理沙はふと考える。
 もしそれと同じ台詞を、自分がアリスに言われたらどうであろうか、と。


 

 少女想像中...



 
 ――よう、アリス!


 いつものように、アリスに声を掛ける魔理沙。


 ――…………。


 しかし、それに対するアリスの反応は、無言。
 感情のこもっていない、冷たい視線を向けてくるのみ。


 ――ど、どうしたんだよ、アリス。


 普段と違うその態度に、慌てる魔理沙。

 
 するとアリスは、はあ、と大げさに溜め息を吐き、冷淡な口調で言った。





 ――私、魔理沙のこと嫌いなのよ。もう近付かないでくれる?






「――――うぅっ」

 その瞬間、ドバッと、魔理沙の両目から大粒の涙が溢れた。

「え!? ちょ、なな何で!?」

 いきなり泣き出した親友の姿に狼狽する霊夢。

「お、おまえが、へんなこと、いうからだろぉ……」

 ドバドバ涙を流しながら魔理沙は言う。
 え? 私、そんな酷いこと言ったっけ??
 ものっそ焦る霊夢。
 
「えっと、その、ご、ごめん」

 訳が分からなかったが、霊夢はとりあえず謝ることにした。
 そうすることが、魔理沙が泣いた場合に最も有効であることを、霊夢は経験則で知っていた。
 
「うぅ……うううう」
「あああ、魔理沙、落ち着きなさい。ホラ、お茶もあるわよ。あったかいわよ。ね?」
「うぅ……ずずっ……ぬるい……」

 そんなこんなで霊夢がなだめること十五分、魔理沙はようやく泣き止んだ。

「……これは……効くな……ぐすっ」

 まだ赤い目をした魔理沙が、鼻をすすりながら言う。

「まあ、まさかあんたに効くとは思わなかったけどね……」

 半笑いを浮かべながら、答える霊夢。
 魔理沙は暫く下を向いていたが、やがて意を決したように顔を上げると、霊夢の方に向き直り、言った。

「……ありがとう。霊夢」
「へ? あ、ああ」

 いきなり真顔で礼を言われ、キョトンとする霊夢。
 しかし魔理沙は、真剣な表情のまま、続けた。

「私……これでアリスを泣かせてみせる」
「そ、そう。まあ、頑張って」
「おう! それじゃ、早速行って来る」
「ええ。気をつけて」

 魔理沙は箒に跨り、一気に飛び去っていった。
 霊夢は、魔理沙に思いっきり負けフラグが立っているような気がしたが、あえて気付かないフリをすることにした。










 
 ――それから、約三十分後。 
 
 ここは魔法の森にある、アリスの家。


「どうしたの? 急にやってきて」
「…………」

 アリスは紅茶を出しながら、魔理沙に声を掛ける。
 しかし、魔理沙はなぜか、何も言わない。
 さっきいきなりやってきたかと思えば、ずっとこんな調子だ。
 一体何があったのだろう。
 アリスは不審に思う。

「魔理沙。何か悩みでもあるの?」
「…………」

 いつになく優しい口調で問い掛けるアリス。
 対する魔理沙は、未だ無言のまま。
 
 さてどうしたものかしら、とアリスが天井を仰ぎ始めた頃、

「……アリス」

 ようやく魔理沙が口を開いた。

「何? 魔理沙」

 アリスはすぐに言葉を返す。

「……あの、な」
「うん」

 魔理沙はゴクリと息を呑む。
 大丈夫、大丈夫だ。

 神社から此処に来るまでの間、何回もイメージトレーニングをした。
 ほんのちょっと、いつもの仕返しをしてやるだけだ。



 ――お前のことなんか嫌いだ。もう私に近付くな。



 一言。

 たった一言、そう言うだけ。
 ただ、それだけのことだ。

 アリスが泣いたら、ごめんごめんと謝ればいい。
 いつも、アリスがそうしているように。


「……魔理沙?」

 不安そうな目で、アリスが魔理沙の顔を覗き込んでくる。
 魔理沙は思わず、視線を横に逸らした。
 アリスの顔を見ていると、言えないような気がしたからだ。


 ――よし。

 言うぞ。

 言う……。


 魔理沙が覚悟を決め、例の言葉を喉元まで引っ張り上げてきた、そのとき。


 
 ……不意に、魔理沙は考えた。



 ――でも、もしこれで、アリスが泣かなかったら?


 ――それどころか、自分が想像すらしていないような返事が、返ってきたら?



 そう、たとえば……。




 少女想像中...



 
 ――お前のことなんか嫌いだ。もう私に近付くな。


 魔理沙は、アリスの顔を見ないようにしながら、今まで一度も出したことのない、冷たい声で言い放った。


 ――…………。


 しかし、それに対するアリスの反応は、無言。
 感情のこもっていない、冷たい視線を向けてくるのみ。


 ――あ、アリス……?


 普段と違うその態度に、慌てる魔理沙。

 
 やがてアリスは、口元を歪めてふっと笑うと、冷淡な口調で言った。


 ――そう。ちょうどよかったわ。


 ――え……?


 魔理沙の心臓が、きりりと痛む。


 アリスは歪な笑みを浮かべたまま、言った。



 
 ――私も魔理沙のこと、嫌いだから。





「――――うぅっ」

 その瞬間、ドバッと、魔理沙の両目から大粒の涙が溢れた。

「え? ま、魔理沙!?」

 いきなり泣き出した魔理沙を見て、慌てるアリス。
 自分の意図した場合ならいざ知らず、こんなタイミングで唐突に泣かれると、流石に焦る。

「ううぅ……うううう」
「ちょ、ちょっと……一体どうしたっていうのよ??」
「あ、ありす……」
「な、何? 魔理沙」

 涙をぼろぼろ零しながら。
 顔をくしゃくしゃにして、魔理沙が言う。

「あ、ありすは、わたしのこと……きらい……?」
「はぁ……?」

 何がなんだか分からない……。

 とアリスは思ったものの、とりあえず、目下、自分の言うべきことは一つしかない。
 それだけははっきりと分かった。

「……魔理沙」

 アリスはそっと、泣きじゃくる魔理沙を抱き寄せた。

「あ、ありす」
「……ばかねぇ。私が魔理沙を、嫌いなわけないでしょう」
「ほ、ほんと……?」
「当たり前でしょ。今更何を言ってるのよ」
「うぅ……よ、よかったぁ……」

 嗚咽混じりの声でそう言うと、魔理沙もアリスの背中に両手を回した。
 小さな腕で、ぎゅうっと強く、抱きしめる。

「……もう。ホントに困ったちゃんね」

 まったくもってよく分からないが、とりあえず問題は解決したようだ。
 アリスはそう判断し、魔理沙の頭を優しく撫でた。
 
「うぅ……ありすぅ」
「はいはい」


 ……結局、その後魔理沙が泣き止むまで、優に小一時間は掛かったという。






主語と目的語を入れ替えたのに、なぜか同じ結末になるという不思議!
何でだろうね。
困っちゃったね。

ちなみに、今回タイトルがLunaticになってるのは、魔理沙がアリスさんを泣かすのはLunaticレヴェルで難しいよねみたいな感じの意味です。
何気にHardの方とちょっと意味が違ってます。
でもこれだと難易度固定ってことに……。
魔理沙どんまい。



P.S.

>>13様
そういえばそうでしたね。うっかりしてました。
まああれは故意に泣かせたわけじゃないのでノーカンという扱いで……。
まりまりさ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
あらやだこの魔理沙かわいい
2.ちゃいな削除
とてもかわいかったです。乙です!
3.名前が無い程度の能力削除
まさか本当にルナがくるとは。
魔理沙可愛すぎるって。
4.名前が無い程度の能力削除
ちょっww面白いわww
5.名前が無い程度の能力削除
結局何回もやったアリスさんマジ鬼畜www
6.名前が無い程度の能力削除
これはおもしろい
7.名前が無い程度の能力削除
かわいすぎるwwww
8.名前が無い程度の能力削除
これはいいアリマリwwww
魔理沙がかわいすぎるwwww
9.名前が無い程度の能力削除
魔理沙弱すぎるwww
10.名前が無い程度の能力削除
この魔理沙防御力低すぎだろ
何もしてないのにダメージ食らってんぞ
11.名前が無い程度の能力削除
難易度が上がる=魔理沙のヘタレ度が上がる、ですね!
この魔理沙お持ち帰りしたいわー
12.名前が無い程度の能力削除
その弱さが魔理沙の魅力だと思える今日この頃……。
全部あんたのせいだwww
13.名前が無い程度の能力削除
The Diary of Marisaでちょっとだけ泣かしてたっぽいね
14.名前が無い程度の能力削除
ある意味忙しないな魔理沙…w
15.名前が無い程度の能力削除
魔理沙というか「まりしゃ」だな
16.名前が無い程度の能力削除
やっばいこの魔理沙可愛すぎる
17.名前が無い程度の能力削除
耐久力が萃緋非じゃなくて本家シューティングな件について

弱い魔理沙ってかわいい、すばらしい
アリスもっとやれ
18.奇声を発する程度の能力削除
素晴らしきマリアリ!!!
19.名前が無い程度の能力削除
全自動魔理沙ちゃんはほんまにかわいいこやでぇ